第八十一話 師弟関係、過去と未来

ホープはライトから情報をたくさん得ていた。


「え!?私の師匠が、ここにいるんですか!?」

「そうだ、今はこの村から少し離れているが、たしかに一緒に暮らしているよ。」

「そうなんですね、あの、他に私たちについて知ってる事教えてもらえませんか?」


ここからは、ライトが知っているものを教えてくれたことになる。



クレイトスは、オーディンが何をしようとしてたか分かっているようであった。


しかし、全ては周りの者に打ち明けずに彼の中にまだ秘めているものがあるようだったと。



そして、生き残っている各流派の師匠達のこと。


狼流派……クレイトス


鷹流派……アレン


虎流派……ハワード


鮫流派……マイト・タップ


ホープの師匠達はまだ生き残っている。


他にも何名かは、ギムレーにて生き延びていると。



改めて、オーディンは何をしようとしてるのか。


一つはギムレーの王となり、この世界を自分の思い通りにする。

絶対的な力を手にすることで、何かをしようとしてると。



そして、これはクレイトスが一番危惧していたこと。



ゴブリン、オーク、その他全ての化け物はオーディンの息子、バルドルがと。




ヘルクリスマスによって、ホープを含むトップの戦士達とゴブリンを衝突させたのは、他でもない、



つまり、ヘルクリスマスは


ゴブリンやオークの生態は詳しく分かっていない、だが、彼らは人間が話す言葉を当たり前に話す。

それは、果たして普通のことなのか。


オーディンが王になる理由は、誰かを救うため、国の民により良い生活を与えるためなんかではない。


今わかっていることは、ヘルクリスマスで人間と化け物達をぶつけ合いお互いに被害を出させる。

そして、化け物の主導権はオーディンが持つ。


人間側に残された唯一の希望は、





そのホープも意図的にオーディンに作られ、彼の手のひらで踊らされていたと言って間違いない。

しかし、この世界に残された唯一の希望なのも間違いない。



これが今回分かったことである。



「なんだよ、それ。俺たちは何のためにこの力をつけたんだ。」


バンッ!

スノウは苛立ちを見せ、席を立つ。


「私たちは、オーディンの手のひらで踊らされて、ただただいいように使われてただけのおもちゃ……。」


ウルッ。

ヒメノの目には涙が浮かぶ。


「こんな話嘘だ!あたし達は、あたし達の意思で動いてきた!……って思いたいのに、体が、事実だと受け入れちゃってる。」


ブルブルブルッ。

リサは両手で肩を押さえ、震える。


「もし、私達が気付くことが出来ていれば、犠牲にならなくて良かった人たちが何人も……。」

ユキナは俯き、目を瞑る。


「僕らは、必要のない犠牲を生み出していたのか……。」

セドリックも顔を歪め、悔しがる。


「セラ達は、とんでもない罪を、犯してしまったーー。」

「違う!君たちは何も悪くない!」


バンッ!

ライトが勢いよく立ち上がる。


「ライトさん、何を。」

「セドリックくん、君は、君の意思で修練を積み、王国のために、民のために尽くしていただけであろう。」

「で、ですが。」


場が重い空気で埋め尽くされていたが、ライトがその重さを吹き飛ばすように大きな声で話し始めた。


「君たちには、何の罪もない!これは、守ってあげられなかった、だ。」

ライトは、ホープを励ますように立ち回る。


「ここにいるみんな、自分のためだけに武器を振るったか?私利私欲にまみれ、力でねじ伏せたか?」


スサッ。

スノウが、ヒメノが、一人ずつ顔を上げ始める。


そして、ライトを見つめる。


「違う!!君たちは、この国に暮らす民のため、弱者のためにその力を振るった!それを、その勇ましい行いを、?」

「ライト……。」

「君たちは、私たちの希望なんだ!勝手なことを言ってるのは分かってる、でもーー。」

「ありがとうな、ライト。」

スノウは微笑み、ライトを見つめる。


「スノウくん。」

「俺たちは、過去を生きるんじゃない、未来を生きるんだ……って、そして、それを作るのが俺たちの役割だ……って、誰かが言ってた。」

「それは、クレイトスの言葉だろうね。」




ライトは過去にクレイトスと話してた記憶を思い出す。


「クレイトスさん。特別勘の鋭いあなただから、何か僕たちに理解できてないものを一人で背負ってるんですよね?」

「そんな事はない、ただ、過去ではなく未来を生きる彼らにしっかりと道を作るのが、俺たちの役目だろ?その為に、俺は全力でやるべきことをやる。それだけだ。」

クレイトスはその大きな背中で語った。



時はライトの家に戻る。

「彼は、僕らの中でも特別大きな存在だった。僕らも彼に近づこうとしたが、何歩も先を歩いてた彼に追いつけなかった。そして、ヘルクリスマスの次の日、彼は一人で行動してしまった、のように。」



クレイトスはどのような人間なのか、そして、この世界のこと、少しずつだが確実に記憶のカケラを埋めていくホープ達。


全てを理解できるのは、まだ先の話。

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