第二十二章 英雄は次代を作る者と出会う
第百三十四話 セラの傷跡
「……っ、ん?」
目を開いた先には、青い空が映る。
雲一つない、最高の青空だ。
「あれ、なんでセラは横になってるんだろ?」
セラの脳には少し前の戦闘の記憶がちらつく。
「よお、起きたかセラ。」
スノウが隣に座り、周りを眺めている。
セラの目覚めを待っていたようだ。
「あ、うん、そっか。セラは、ミユウとの戦いの後お兄に寄りかかって、そのまま寝ちゃってたのか。」
「まあ、そんなところだ。痛むところは無いか?」
「うん、大丈夫だよ。心配かけてごめんね。」
「気にすんな。……なあ、起きて早々悪いけど一つ聞いてもいいか。」
バサッ。
セラは起き上がりスノウの隣に座る。
「うん、ミユウのことだよね。」
「ああ、俺がこの前戦った鹿流派のやつもそうだけど、セラが戦ってたミユウってやつも同じ流派使いだったよな?」
「そうだね、正直まだ理解が追いついていないよ。」
セラとスノウの理解が間に合わないのもそのはず。
スノウ達五人のトップを除く他の流派の人間は、一人もいないものだと考えていた。
しかし、立て続けに二人の流派を使う者が現れた。
敵として。
それは、彼らを混乱させるには十分すぎる要素であった。
「たしか、ミユウってのはセラが蛇流派の人間としてトップに加わるときに脱退したやつだったよな?」
「そう、セラがトップになるためにその座を譲ってくれた人。ミユウは戦いが嫌いだった。だから、トップにならなければ、普通の女の子として生きていけると思って、セラはお願いした。……けど、間違いだった。」
サッ。
セラは体育座りをして、顔を埋める。
彼女のオーラは、負に満ちていた。
「まあ、気にすんな……ってのは、無責任な奴が言う事だから俺はそんなことを言えない。あいつのことを覚えていてやれるなら、その方がいい。」
「うん、この先もセラがしっかり背負っていかなきゃいけないからーー。」
「セラがじゃねえ。俺たちが背負っていけばいいんだ。」
「え??」
セラはスノウの顔を見る。
すると、珍しく優しい顔でセラを見返してくる。
「だってそうだろ、俺たちはホープってチームであり、もはや家族みたいなもんだ。苦しんでる仲間がいたら、手を差し伸べなくてどうする。」
「けど、それはみんなに余計な負担をーー。」
「そんなこと考えるな。セラ、お前は俺より頭いいんだからこんなの簡単なことだろ?」
グンッ。
セラの目の前にスノウの顔が寄る。
「え?」
「一人が一つのものを背負うより、六人で一つのものを背負う方が当たり前に軽いだろ?」
「そ、それはそうだけど……。」
「仲間って、家族って、何のためにあると思う?俺は、お互いの足りない部分を補い合って、未来を作っていくためにあると思う。」
ファサッ。
スノウはセラの頭に手を乗せる。
「間違えることなんて、誰にでもあることだ。一度間違えたなら、次起こさないようにみんなで対策すればいい。……って、教えてくれたのはセラの方だろ?」
「……うん、そうだよね。たくさん間違ってきたお兄の言葉だと、説得力あるよ。お兄は一度間違えても、同じ間違いを繰り返してない。」
「ははっ、褒められてるのか貶されてるのか分からねえや。」
「もちろん、褒めてるよ。」
セラは力強い目でスノウを見る。
「ありがとう、お兄。セラは、こんなところで止まらない。みんなと一緒に、先に進む。だから、セラに何かあったら助けてね!」
「任せろ。いつでも、どこにいても助けてやるよ。」
「うーん、とても嬉しいけどその言葉は言う人を考えた方がいいよ、勘違いする人もいるだろうから。」
「ん?どう言う意味だーー。」
タッタッタッ!
他の四人が周りを探索し終え、戻ってくる。
「おーい!スノウ!」
「あ!セラさん!良かった、目が覚めたんですね!」
バサッ。
セラは立ち上がり手を振る。
「うん!みんな心配かけてごめん!」
「気にしないでください!セラさんが無事ならなんでもいいんです!」
ヒメノがセラの前で心から喜びを表す。
「それで、どうだった?」
「ああ、スノウの言う通りこの近くにはやはり町や村は見つからなかったよ。……けど、僕らが気になった場所があったんだ。」
「気になった場所?何があったんだ?」
セドリックが真剣な口調で話す。
「ここから20分くらい歩いたところに、微妙な魔力を感じたんだ。しかも、僕らの使える魔法とは違う何か奇妙な感じのものだった。」
「ヒメノちゃんの耳にも、リサさんの眼にも、私の鼻にも何も感じ取れるものはありませんでした。けど、もしかしたら、第六感を使えるお二人なら何か分かるかもしれません。」
「なるほどな、先生が残してくれたマークの近くでもあるのか。行ってみる価値はあるな。」
スノウはセラを見る。
「歩けそうか?」
「うん!みんなのおかげで、セラは元気復活だよ!」
「さすが、セラくんは頼もしいね。それじゃあ、早速行こうか。」
「ああ、目的地があって欲しいな。」
スノウ達は新たな地へと歩き始めた。
果たして、彼らを待つものとはいったい何なのか。
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