第百二十五話 襲撃、黒い者

ザザーッ!

スノウは黒い者とぶつかり合う。


ブオンッ!

スピードが凄まじく、砂煙が舞う。


「スノウ・アクセプト。お前は、ここで排除する。」

「なんだてめえは!」

「我に名は無い、ただ、お前を排除するために存在する。さあ、大人しく死ね。」

「こいつっ!!」


ガギーンッ!

スノウは黒い者と距離を取る。


「兄さん!手伝いますーー。」


シュンッ!

パリンッ!パリンッ!


黒い者がクリスタルを投げ、その中からはオークが生まれる。


ドスンッ!ドスンッ!

二体のオークはヒメノたちの前に立ちはだかる。


「グォォ!!」

「くっ、みんな気をつけて。こいつら、セラたちが知ってるオークとは格が違うみたいだよ。」

「そんな、兄さんが危険なのに!」

「俺は大丈夫だ!ヒメノ!みんな!そっちは任せる!」


オークの奥からスノウの声が響く。



「わ、分かりました!なら少しでも。」

「ああ、早くスノウとは合流したい。一気にいこう、みんな!」

「はい!」


スノウ以外の五人も戦闘態勢に入る。




まずはスノウサイド。



「さあて、今俺とお前二人ってわけだが、これが狙いってところか?」

「そうだな、お前は我の手で排除しなくては意味がない。早々に楽にしてやるから安心しろ。」

「やれるもんならやってみな!」


サーッ。

静かな風が彼らの髪を揺らす。

お互い睨み合う。



ザッ!

二人は同時に動き出す。


そのスピードで、宙を舞う葉っぱが真っ二つになる。



狼派一式ロウハイッシキ! 迅狼ジンロウ!」

「ふんっ!」


ガギーンッ!

刀と大きな両手持ちの鎌が火花を散らす。



ガギーンッ!ガギーンッ!

スノウに劣らぬスピードで黒い者も攻撃を続ける。


「さすが、トップに対して送られる刺客だな、並大抵の力じゃないってことか。」

「当たり前だ、お前を排除するのに必要な力が詰まっているのだからな。」

「そうかよ! 狼派五式ロウハゴシキ! 円陣狼牙エンジンロウガ!」


ガギーンッ!

回転斬りも容易く受け止める。



(なんだ、こいつから感じるのは?会ったことないはずなのに、どこか懐かしさを感じる。気のせいか?)


スノウの少しの油断を見逃さなかった。


「集中を欠くとは、余裕だな。白狼!」


シュンッ!


「おっと!」


フサッ!

黒い鎌の刃先がスノウの前髪をかすめる。


(戦いに対する嗅覚がとてつもねえな。俺の予想が当たってほしくはねえけど、少しかまかけてみるか。)


「はは、お前、ただの人間じゃねえな。俺たちホープみたいに戦闘慣れしすぎてるその体、俺と同類か?」

「何をふざけたことを、我がお前と同類なわけないだろう。」

「そうか?どうもお前からは近いものを感じるんだ。まあ、第六感のせいかもしれねえけどな。」

「……やはり、お前が一番厄介だ。最優先でこの場から排除しなくてはいけないな!」


カチャッ。

黒い者は鎌を横に構える。


「受け止めて見せよ。 鹿派一式ロクハイチシキ! 角狩カクガリ!」


ブンッ!

一気に間合いを詰め、スノウ目掛け大きな鎌を振り抜く。


「んだと!? 氷付与アイスエンチャント狼派八式ロウハハチシキ! 氷華ヒョウカ!」


カキーンッ!

カチカチカチッ!

スノウは瞬時に氷を刀に纏いガードする。


「ふっ、やはり受け止められるか、白狼。」

「その流派、この戦い続けてきた者に宿る感覚、てめえまさか!」

「何を驚くことがある。不思議なものでもあるまい、なんせ身の回りに四人も同じ人間がいるのだから。」


カチャ。

黒い者は再度鎌を構える。



「間違いねえ、お前も……なんだろ!」


スサーッ。

その場が静寂に包まれる。



「ふ、ふふ、ふふふ、何を言うかと思えば、そんなことか。」

「何がおかしいんだよ、こっちは大真面目だっての。」

「我をお前たちなんかと同類にするな!お前たちは運良く生きながらえたトップの残りもの。だが、我々は違う!オーディン様の希望としてお前たちの先を生きる、だ!」


ズンッ!

勢いよく距離を詰める。


「気安く同類などと言うな! 鹿派二式ロクハニシキ! 六波羅ロクハラ!」

「ちっ! 狼派六式ロウハロクシキ! 裂羅サクラ!」


ガギーンッ!ガギーンッ!ガギーンッ!

お互いの連続斬りが激しくぶつかりあう。



「オーディン様だと、お前オーディンに何されたか覚えてないのか!」

「何を言っている!オーディン様は、我々に生きる希望をお与えになったお方だぞ!そんな方を愚弄するお前は、やはり我の手で消さなくてはな!」

「ふざけてんのか!俺たちは、ヘルクリスマスの後に記憶を消されたんだぞ!!他の誰でもねえ、あのオーディンに!」


ガギーンッ!ガチガチガチッ!

刀と鎌が鍔迫り合う。


「そんなはずがない!オーディン様は、オーディン様は!」

「目を覚ませよ!俺たちはあの王に何かしてもらったか?恩を返さなくちゃいけないことがあるか?」

「それは!……それは。」


黒い者の覇気が少し弱まる。



「う、ぐっ!」

それに伴い、黒い者が頭を抱え苦しみ始める。


「お、おい!どうした!」

「う、あ、ああ。頭が、痛い。」

「おい!」


ズザッ!

スノウは黒い者に手を伸ばす。


「あ、ああ。」

黒い者もその手を掴もうとする。




しかし、



「う、がぁ!!」

パリンッ。


闇のオーラが突如現れ、その中に黒い者は苦しみながらも入っていく。



「おい!待て!」

「す、すまない。……白狼、取り返しのつかなくなる前に、僕たちをーー。」

「っ!?」


黒い者の口が何かを伝える。



シュンッ!

黒い者はその場から消え去る。



ギリッ。

スノウの拳に力が入る。


「くそがっ、ふざけんなよ。記憶もねえし、顔も知らねえよ。……けど、お前は俺たちのなんだろうが。」



スノウの戦いは怒りを残し、終わりを迎えた。

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