第百二十四話 伝言、新たな敵

「ここら辺だよな?地図をしまったっていう祠は。」

「デイミアンさんはそう言っていたね、僕らのいる地点はかなり近いと思うんだが、周りには特に何もないみたいだね。」


クルッ、クルッ。

ホープは辺りを見渡すが、特に祠らしき場所はない。


「確かに、ここら辺は岩の壁しかないね、セラ達場所間違えたかな?」



そんな中、リサは違和感のある場所を見つける。


そこには、高さ5mはあるであろう大きな岩が佇んでいる。


「ねえ、あの岩なんで置かれたみたいになってるんだろ?なんか変じゃない?」

「ん?ああ、言われてみれば何かを塞ぐみたいにおいてるね。」

「これだけの大きな岩、どかすにはかなりの力がいりますね。先輩、どうしますか?」

「うーん、ぶっ壊すのが手っ取り早いとは思うけどな、さすがに無理か?」


ジーッ。

スノウはリサを見つめる。


「え?あたしが壊せと?」

「そりゃあ、ファンサリルで町長の家のドア軽々と持ち上げてたじゃねえか。リサならワンチャンあるんじゃねえか?」

「まあ、可能性はあると思うよ。でもあたしだけじゃ厳しそうだし、グラニの力を借りよっか。」

「え、そんな簡単に戦神の力借りるんですか!?」


真面目なヒメノは冷静にツッコミをいれる。


「まあ、いいんじゃねえか?リサ、やってくれるか?」

「はーい! 共鳴突破クロスドライブ! 開始オン! 激情の神赤虎グラニ・オーズ! あたしと戦え!」


ゴォォ!!

リサはグラニの力を発動する。


「本当に良かったのでしょうか?」

「まあ、最善かはわからねえが、少しの時間ロスが惜しいからな。ここはリサに任せよう。」

「よし、じゃあいくよ! 虎派八式改コハハチシキカイ! 激昂虎牙斬ゲキコウコガザン!」


スパーンッ!

岩を縦に真っ二つに斬る。


ボゴーンッ!

斬られた岩が両側に倒れる。


「ふぅー、ありがとう、グラニ! 共鳴突破クロスドライブ停止オフ。」


シューンッ。

リサは元の姿に戻る。


「さすがの馬鹿力だな。おかげさまで入口が現れたぞ。」

「あ??今なんて言った??」

「ミスった、よーし!早く行くぞ!」


タッタッタッ!

スノウは足早に祠に入る。


「はぁ、本当にお兄は思ったことすぐ言っちゃうんだね、早く成長してくれないかな。」

「別にあのままでもいいよ、後で一発引っ叩いてくるから。」

「なんでしょう、力を扱えてるのはいいのですがなんか申し訳なさが残ります。」

「まあまあ!ヒメちゃんも少し楽に考えようよ!一応、セラ達がなんだから!」


タッタッタッ。

ホープは祠の中に入る。



サーッ。

冷たい風が彼らの肌を撫でる。


「すごいね、鉱石も所々にあるし、祠というより鉱山に思えるよ。」

「リサさんの言う通りですね、少し神秘的な感じがします。」


周りの美しい鉱石などに目を奪われながらも、やっと奥に辿り着いた。


そこには、一つの大きな箱が置いてある。



ただの箱のはずなのに何故であろうか、箱から何かオーラのようなものを感じる。


「これが、俺とセラの先生が置いて行ったメモが入ってる箱か。」

「そうみたいだね、開けよっか。」


サーッ。

セラが箱の蓋に手をかける。


パカッ。

その箱の中には、一つの巻物のようなものがしまってある。



「これが、地図?」

「なんですかね?兄さん、開けてみてくださいよ!」

「ああ。」


スサーッ。

スノウが開いた巻物は、広げると50cmくらいの長さになっており、確かにギムレーの地図が描かれていた。


「うーん、どうみてもただのギムレーの地図だな。あとは、この右の方の赤い点くらいか?」

「この赤い点、ノーアトューンの奥だね。セラ達でも行ける場所だ。」

「ん?スノウ、その地図の裏に何か書いていないかい?」

「え、裏?」


バサッ。

地図をひっくり返すと、そこにはクレイトスが書いたであろうメッセージが記されていた。


「なんだこれ?先生のメモか?」

「兄さん、読んでみましょうか。」




この紙を手に取った者へ


この紙が読まれたということは、俺の命は危険な状態なのだろう。

そして、このギムレーにも危険が迫っているのだろう。


これを読んでいる者が、人間であること、ひいてはトップであることを望む。



この世界は変わり続けている、今の国王によって。

やつの好きなようにさせてはいけない、この国が滅んでしまう。


もし、力を持つ者が読んでいるなら印をつけた場所にまで行ってもらいたい。


そして、守ってもらいたい。



我らの国を導いてくれる唯一の存在、



何があっても、あのお方を国王側に渡してはいけない。


我らの希望よ、どうか我らに力を貸してくれることを心から願う。




メッセージはここで終わっていた。



「なあ、これって。」

「うん、セラ達の先生、クレイトス先生はやっぱりわかってたんだ。この世界がオーディンに乗っ取られそうになってることを。」

「そして、アトリ様の子息、ヘルモーズ様がこの印のところにいる。僕らは、早く向かうべきではないか?」

「だな、俺たちの目的地は決まった。途中のノーアトューンで武器を作ってもらって、この印のところに行ってみるか。」


スタッ、スタッ、スタッ。

スノウ達は祠を後にする。



「さあて、とりあえずエーリュズニルに戻ってーー。」

スノウは何かを感じとる。


「っ!?気をつけろ!」


スーッ、ズザーッ!!

空から何かが落ちてくる。


落ちてきたものは、人の形をしている。

全身は黒いスーツのようなもので覆われている。



「なんだ、こいつ?」

「ターゲット確認、これより、。」


ブンッ!

ガギーンッ!

スノウの刀と黒い者の鎌がぶつかる。


「うぐっ!こいつ!!」

「お兄!」


スノウは謎の黒い人間とぶつかり合う。



いったいこの黒い者は何者か。

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