第二十一章 英雄は新たな力と敵を知る
第百二十八話 迷い、次の影
スタッ、スタッ、スタッ。
ホープの六人はノーアトューンへと向け、歩を進めていた。
「はあー、楽しみ!!あたし達の武器が新しくしかも強くなるなんて有難いことばかり!」
「そうですよね、この武器にもお世話になりましたが、少し傷やボロが出てきてますもんね。」
「どういうふうに作ってもらおうかな!今から頭ん中は武器のことでいっぱいだよ!」
リサとヒメノが賑やかに話す。
「あいつら、そんなに武器が好きだったか?」
「どうですかね、まあ、武器であっても新しいものを手に入れられる時のワクワクってのは止められませんよね。」
「そういうもんか、楽しそうだから別にいいけど。」
「っ……。」
セラが珍しく静かに歩く。
そして、セラの異変はスノウに感じ取られていた。
「おーい!リサ!ヒメノ!休憩にしようぜ!セラも休憩でいいよな?」
「え、あ、うん。」
スノウが珍しく気を遣う。
「じゃあ、お茶淹れますね!」
「ヒメノくん、僕も手伝うよ。」
「ありがとうございます!」
カチャ。カチャ。
ヒメノとセドリックがお茶の準備をする。
「じゃあ、あたしとユキチンで休憩できるように準備するね!」
「了解です!」
タッタッタッ。
リサとユキナで休憩場所になるよう、シートなどを敷き準備する。
タッ、タッ、タッ。
スノウがセラに近付く。
「なあ、セラ。」
「な、なに?」
「じーっ。」
スノウがセラの目を見つめる。
「な、なになに?」
「前髪に寝癖ついてるぞ?」
「うそっ!?」
ササッ!
慌てて鏡で自分の顔を見る。
だが、特に変わったところはなかった。
「ははっ、そんなわけないだろ?俺らは朝起きて、あんな激しい戦闘までしたんだから、寝癖なんてついてる暇ないっての。」
「んなっ!?」
「まあ、考えすぎるなってのは難しいと思うけどよ、まずは目の前の目標だけを考えようぜ。目の前のこともできないのに、その先のことが達成できるわけないだろ?」
「っ……。」
セラは俯き頭を縦に振る。
ワシャッ!
セラの頭の上に雑に手を置く。
「一人で考えすぎるな。俺にも少し分けさせろ。セラのリーダーでもあり、唯一の兄貴なんだからな。」
「う、うん。」
「よーし、いい子だ。」
ワシャワシャ。
スノウがセラのピンク髪の頭を撫でる。
「むかっ!」
ガシッ!
セラがスノウの足を踏む。
「痛っ!?」
「お兄に言われなくても分かってるよ、ばーか。」
スタタタタッ。
セラはヒメノ達の方へ走り寄る。
「うーん、分からん。」
スノウは足をさすりながら、ユキナ達の手伝いをする。
少し距離をとったセラは、深く呼吸をする。
「ふーっ。そうだよね、ありがとう。お兄。」
セラの顔に明るさが戻った。
ホープの六人は、お茶を飲んでゆっくりとする。
「はい、兄さん。」
「ありがとう。」
スサッ。
スノウはヒメノからお茶をもらう。
ズズズッ。
「ふぅ、やっぱりヒメノのお茶は美味しいな。」
「ふふ、ありがとうございます。」
束の間の休息を取る。
「なあ、セドリック。お前の剣は誰に作ってもらったんだ?」
「僕のは、王国で一般的に使われてるものと同じだからね、王国内の鍛冶職人だとは思うけど、誰かはわからないな。」
「隊長をやるような人でも、武器はみんなと一緒なんですか?」
「そうだね、僕がもっと気を遣えればいいのはもらえたかもしれないけど。でも、武器を使わなくて良い世の中になればいらないものになるからね。」
セドリックは微笑みながら話す。
「まあ、そりゃそうだな。その世界を作るためにも、俺たちが扱える最大級の装備でこの世界を取り戻さないとな。」
「ああ、そのためなら僕はこの力を惜しまず使うよ。」
「そういえば、セドくんフルバースト?っての使ってたよね?あれは何?」
「ああ、僕もこの前初めて使ったんだが、
セドリックは姉のハルカを助けた時の姿を思い出す。
「そうなんだ、セドくん無理はしないでね。」
「もちろんさ、無理したらうちのリーダーに怒られそうだからね。」
「うん?なんか言ったか?」
「なんでもないよ、さあ、そろそろ行こうか。」
ガチャ、ガチャ。
ホープは片付けをして、ノーアトューンへ向け再び歩き始めた。
♦︎♦︎♦︎
ここはヴァルハラのとある部屋。
「はー、まだ新型は難しいか。だが、これで終わるとは思ってくれるなよ、ホープ。」
タッタッタッ。
一人の黒い服を着た者がバルドルの前に現れる。
「おお、来たか。お前は、さらに成功に近い存在だ。今度こそ、ホープを葬ってくれることを期待させてくれよ。」
「はっ、かしこまりました。では、失礼します。」
スサッ!
黒い者は一瞬にしてその場から消えた。
「さすがに早いな、父上の力もだんだん戻りつつあるのかもな。さあて、新型二号はどうやってくれるかな。それに、最新作もそろそろ投入できるかな。」
ニコッ。
バルドルは不敵な笑みを浮かべる。
再びホープに危険が迫っていた。
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