第二十三章 英雄は未来を選ぶ

第百四十話 これからの道

「あんたが、アトリの息子?今感じてる違和感は、アトリの力を受け継いでるからか?」

「それもあるかもしれないな。……だが、私はまだ未来予知フューチャーサイトを使うことはできないんだ。」

「どういうことですか?まだ完全に使いこなせないとかですか?」

「鮫の子よ、そなたの言う通りかも知れないし、違うかも知れない。」


ミーミルの顔にシワがより、とても苦しそうな表情に。


「はっきりしないな、あんたはどう思ってるんだ?」

「私は、確かに父上であるアトリの元で育った記憶がある。だが、受け継がれるべきである特殊能力については、全くこの体に感じないのだ。」

「それって、あんたは本当はってことか?」

「ちょっと!お兄!」


バッ!

セラがスノウの口を抑える。


「ははっ、白狼の子は本当に真っ直ぐなのだな。……正直、その可能性もあると考えている。」

「そうなんですね……。」


その場が暗くなる。


それもそのはず、真の後継者を見つけ希望を抱いたが、儚く散ったのだから。


「そ、そうだ!ミーミル様!あたし達休憩できる場所借りられませんか?戦いで疲れてしまって!」

「あ、ああ、そうだな。気付かなくてすまない、アレンよ、皆を空いてる部屋に案内してもらえるか?」

「はっ、かしこまりました。こちらへ。」


スタッ、スタッ、スタッ。

アレンの後に続き、ホープはミーミルの部屋から外へ出る。


ピタッ。

途中でスノウは歩みを止める。



そして、ゆっくりとミーミルに振り返る。


彼の顔にはとても苦しそうな表情が。


「……。」

「……はぁ、考えすぎだっての。」

「っ?何か言ったかい?」

「いいや、なんでも。」


タッ、タッ、タッ。

スノウも部屋を後にする。



ホープは治療を受け、食事を部屋でとっていた。


「美味しい!今まで食べたことないものだらけだけど、どれも美味しすぎる!」

「これは食べなきゃ損ですね!」


パクッ、パクッ。

いつものようにリサとセラは大食感を発揮する。


「相変わらず二人はよく食べるね、僕らが少食に見えるよ。」

「やっぱり、たくさん食べた方が体にいいのでしょうか?けど、食べ過ぎたら余計なお肉が……。」

「あははっ、ヒメノくんも大変だね。まあ、二人は例外だと思うよ。」

「……。」


珍しくスノウは黙り、食事もあまり進んでいない。



「先輩?どうしたんですか?」

「ん?あ、いいや。少し考え事してた。」

「へえ、お兄って考え事できるんだ!」

「あ??常日頃から考えまくってるっての!」


ザワザワザワッ。


食事の場は賑やかである。

やはり、彼らには笑顔が一番。



「ねえ、兄さんはミーミルさんのことどう思いますか?」

「どうって、アトリの息子かどうかってことか?」

「はい、実際に本当の子供じゃなかったとしたら、この国を継ぐ人はもういないんじゃないかと……。」

「でも、あたし達みたいにいきなり力を思い出すみたいに使えるようになるかもよ。まだ答えを出すのは早すぎるんじゃ。」


ホープのみんなは意見を出し合う。


「なあ、俺思うんだけどよ、このギムレーの国王になるのに?」

「え、それは、確かに……。」

「俺たちはここにアトリの息子、ミーミルがいるって知ってて来たわけじゃない。なんなら、たまたま出会えてラッキーってレベルだろ?」

「それはそうだけど、この国の王はアトリ様も含めて同じ血筋の方が継いでいるんだ。そこを崩すわけにはーー。」

「なんでだ?」


スノウはセドリックの言葉に純粋な疑問を持つ。



「なぜって、それは昔からそうしてきたからで。」

「確かに、今までの文化っていうのか?そういうのは大切かもしれねえけど、それに縛られて?」

「つまりお兄は、ミーミル様がアトリ様の息子でもそうでなくてもあの方の意思で選ぶべきだと思ってるってこと?」

「そうだ。向いてる向いてないはあるにしても、だからってそいつのやろうとしてることを他人が否定する資格は誰にもない。」


スノウが真面目な話をしていることに、皆が驚く。


しかし、彼の意見は皆の中でも納得いくものであった。


「お兄のいう通りかもね、セラ達も自分たちで何度も道を選んできた。それは誰かに決められたものじゃない、セラ達の意思で決めてきた。」

「たしかに、そうだね。あたし達がミーミル様に着いて行きたいからどうか、そこが重要な気がしてきた!」

「ああ、仮に本当にアトリ様の息子であっても僕たちが同じ方向を向いていないなら、心から協力はできないね。」

「そういうこと、とりあえず明日ミーミルと話してこよう。その先の選択は、それからだ。」



彼らは世界をひっくり返すことができる力を持っている最強の戦士。

たかが17年前後しかこの地で生きていない子供達。



ただし、彼らは自分の力の強大さを知っている。

間違った使い方をしないため、日々必死に考えて生きている。


今現在、オーディンという一人の神に支配されているギムレー。


彼らの選択はこの世界にどのような道を作り出すのか。

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