第十五話 犠牲と涙、壁は突如現れる
フワーッ
ヒメノは暗闇の中を浮かんでいる。
(なに、この感じ?私は、どうなったの?)
ヒメノは暗闇の中で目を覚ます。
周りには何もなく、音すらも感じない。
(ここは、どこ?私はさっきまで、みなさんと洞窟でーー。)
(お母さん!お父さん!)
遠くから声が聞こえる。
(何?聞き覚えのある感じ。)
(行かないでよ!一人は嫌だよ!)
(これは、私の昔の記憶?)
ヒメノは両親を亡くした事件のことが頭に浮かぶ。
私にはもう、何もない。あの時は、あの男を、この世界を憎んだ。
全てどうでもいい、壊れてしまえとすら思ってた。
でも、あの瞬間。
「僕が、ヒメノちゃんの家族になる。」
スノウから声をかけられる。
「すごく痛いよね、その痛みを僕にも分けてもらえないかな。」
「スノウくん……。」
ガシッ。
「うわーんっ!」
私は、スノウの胸の中でたくさん泣いた。
とても嬉しかった。
私は、スノウと義兄弟の契りを交わして兄弟となった。
それから先は二人で一緒に冒険して、お手伝いして、私の不安をスノウが……いや、兄さんが埋めてくれた。
「そうか、私は孤独になりたくなかったんだ。そのために、ずっと兄さんと一緒にいたいからここまで来たんだ。」
ポトッ。
ヒメノは涙をこぼす。
「ここは、死んだ後の世界なんですかね。何も感じない、怖い。」
ササッ。
ヒメノはうずくまる。
「やっぱり私は、孤独から解放されないんですね。」
この数週間の記憶が呼び起こされる。
この空間に奇妙な音さえ流れてきた。
「ごめんなさい、皆さん。私は、ここでーー。」
「ヒメノー!!」
奇妙な声の中から、スノウの声が響く。
「に、兄さん!?」
「ヒメノ!手を伸ばせ!」
「ど、どこですか!どこにいるんですか!」
ヒメノにはスノウの声が届くが、姿は見えない。
「分かるはずだ!力を使え!」
「私の力、そうだ、
体の自由が効かない中、すべての力を使ってスノウの
声の方向を探す。
「メ、ノ。メノ。……ヒメノ!」
「兄さん!」
ヒメノは残りの全ての力で声の方向に手を伸ばす。
「私はまだ、みなさんと、兄さんと一緒に生きていたい!過去が孤独だったかなんて関係ない!私は、今!!兄さんから離れたくない!!」
ピカーンッ!
ヒメノに光が差し込む。
「もちろんだ、約束しただろ。俺は、ヒメノのことを絶対離さないって。」
パチッ。
ヒメノは現実の世界で目を開ける。
横たわった体勢でスノウの手を握りながら。
「兄さん、ただいま。」
「ああ、おかえり。ヒメノ。」
ヒメノは意識を取り戻し、紫の光は全て収まっている。
「兄さん、迷惑をかけてしまってーー。」
「何言ってんだ、妹の面倒を見るのは兄貴の務だ。」
「っ、ありがとうございます。」
ツターッ。
ヒメノは涙を流しスノウに寄り添う。
「スノウ!ヒメチン!大丈夫!?」
リサが慌てて向かってくる。
「はい、リサさん。もう大丈夫です。」
「よかったよ、ヒメチン!でも、お願い。一人で無茶しないで。」
リサは涙を浮かべヒメノに語りかける。
「ヒメノちゃんのおかげで助かったのは事実です。ですが、先輩もヒメノちゃんも無理しすぎです。お城の時の先輩も似た状態でした。」
「あはは、覚えてたか。」
「当たり前じゃないですか!先輩もさっきみたいにすごい力を使って、三日間眠り続けました。あえて私たちは、触れなかっただけです。」
ユキナはスノウとヒメノの前に立つ。
「お願いです二人とも、その力が私とリサさんにも使えるなら、教えてください。私は、誰一人欠けてほしくないんです。」
「あ、ああ。分かった、俺らの分かる限り話すよ。」
「お願いしますね、まずはこのダンジョンから戻りましょうか。」
四人は立ち上がる。
「ヒメノ、歩けるか?」
「はい、なんと、かーー。」
フラッ。
ヒメノはふらつく。
「おっと、だから、辛いなら頼れって言っただろ。この頑固もの。」
ガシッ。
スノウはヒメノを支える。
「ありがとうございます。兄さん、わあっ!」
ヒメノはスノウにお姫様抱っこされる。
「これで問題なしだろ!」
「いや、いろいろ問題ありますよ!何より恥ずかしいから、せめて他の背負い方で!」
「注文の多い妹だ。兄貴権限で、このまま村まで帰るぜ。」
「待ってくださいってば!兄さんのバカ!」
スタッ、スタッ、スタッ。
四人は怪我を負いつつも入り口まで戻る。
そこには、四人が受け止めるには悲惨な情景が。
「マジ、かよ。」
「これは、あのフレイヤって人が。」
入り口近くにいた軍人三人の死体が転がる。
見るも無惨な姿で。
「ねえ、この人たちは、なんの罪も犯してないのに、何でこんなふうに殺されなきゃいけないの。」
「リサさん……。」
ユキナは言葉を詰まらせる。
「俺たちは、この結果をしっかり受け止めないといけねえ。」
ザッザッザッ。
スノウは頭のない死体に寄り添う。
「兄さん?」
「俺たちは最強の戦士だったんだろ。だったらせめて、俺らの手の届くところは守らないといけない。その範囲を広げ続けなくちゃいけない。それが、俺らの使命なんだと思う。」
ギリッ。
スノウは唇を噛み締める。
ポトッ。ポトッ。
うっすらと血が流れる。
「全員、まずはノーアトューンの!安全を確認するぞ。もうこれ以上被害は広げさせない!」
「了解!」
四人は急ぎノーアトューンに向かう。
彼らはこの先多くの壁にぶつかる。
それを乗り越えた先にある未来とは……。
第三章 完
◆◆◆お礼・お願い◆◆◆
第三章まで読んで頂きありがとうございました。
ホープ部隊に新たな敵が現れ、これからも多くの敵と命の駆け引きが続きます。
スノウ達の今後を気になってくれる方!
中二病いいぞ! 次は誰が力を発揮するのか!
ホープの四人組 応援してるぞ!
と思ってくださいましたら、
ぜひ、レビューや★評価とフォローをお願いします!
ここまで読んで頂きありがとうございます!今後とも宜しくお願いいたします!
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