第四章 英雄に安寧の時は訪れない

第十六話 力の正体、新たな影現る

タッタッタッ!

四人は全速力でノーアトューンに戻る。


ガチャンッ!

「エインズ!生きてるか!」

スノウはドアを開け、エインズの鍛冶屋に入る。


「なんじゃ、そんなに慌てて。」

「エインズさん、よかった。無事なんですね。」

リサは胸を撫で下ろす。


「何があったんじゃ?」

「それが……。」

四人はここまでの経緯を全て話す。


「なんじゃと、まさかモンスター以外に敵がいるとは。」

「採掘場にいた、というよりわざわざやって来たってのが正しいかもな。」

「ターゲットはぬしらを含めたこの村全部だったんじゃろうな。」


チャカンッ。

エインズは鍛冶に使うハンマーを置き、四人の方を見る。


「え、この村ごと壊す予定だったということですか?」

「そうじゃろうな、ここの鉱石を使って、トップの戦士たちの武器を作れるのはわしらだけじゃ。」

エインズは落ち着いている。


「だが、襲って来た奴は単純に血の気が多くて主らを先に殺したかったんじゃろうな。」

「エインズ、こんなことは今までもあったのか?」

「ないと言ったら嘘にはなる。じゃが、ぬしら戦士たちに守られたからわしらは生きてる。」


場の空気が重くなる。

彼らのせいで、傷ついた人がいるのかもしれないと感じていた。


「じゃが、まずは礼を言わせてくれ。ありがとう。鉱山を取り戻してくれて、わしらを守ってくれて。」

「は、はい。お礼を言われるほどでは……。」

ヒメノが俯くと、


「一つ忘れんでくれ。ぬしらはただの若い子供じゃ。ぬしらのおかげで助かった命はたくさんある。だから、だ。胸を張ってくれ。」


ガチャガチャ。

エインズは鉱山に行く用意をする。


「わしは、掘削員を連れて鉱山に入る。近くの宿で休んでくれ、そこで治療もしてくれるはずじゃ。」

「分かりました、ありがとうございます。」


ペコリッ。

ユキナはお辞儀をする。


スタッ、スタッ、スタッ。

四人は宿屋に向かい、各々の部屋に向かう。


「ふぅー。なんとか、生き残れたな。」

スノウはベッドに座る。


スノウの腰には何もない。

そう、一本はフレイヤに折られもう一本はヒメノとフレイヤとの戦闘の際に折れた。


「武器なしじゃやれること少ないし、まずは情報整理からだな。」


ガチャッ。

スノウは部屋を出て、ヒメノの部屋に入る。


コンッコンッコンッ。

ガチャンッ。


「ヒメノ、入る……ぞ。」

「へっ?」

ヒメノは着替えてる最中。


ブーツを脱いだ生足に、シャツは脱ぎかけ。

ロングパンツも履き替えてる途中でかなり際どい格好。


「な、な、な、なな、な、な、な、なんでー!」

「あ、えと、悪い!」


バタンッ!

スノウはとっさに外に出る。


「さすがに兄妹とはいえ、アウトだよな。」




数分後……

ドアの奥から声が聞こえる。


「兄さん、入っていいですよ。」

「あ、ああ。」


キィーッ。

スノウは静かに開ける。



そこには腕を組んで立つヒメノの姿。


「さ、て、と、兄さん。お話があります。」

「はい。」

「まあ、鍵を閉めてなかった私にも非はありますが、さっき見たことは即忘れてください!もし、忘れられないなら、物理的に。」

ヒメノは足蹴りを構える。


「だ、大丈夫だ!すぐ忘れる、あんな姿は即消去するってことでーー。」

「あんな姿って、それはそれで、私に女の魅力がないみたいじゃないですか!確かに小さいですけど、って何言わせるんですか兄さんのバーカ!」

「言ってねえ!俺はそこについては何も!」

二人がイチャついてると、


「スノウ、ヒメチンいるの?入るよ?」

「そろそろお話ししようかなと思いまして。」

リサとユキナの声が聞こえる。


「あ、はい!どうぞ入ってください!」


バタッバタッバタッ。

ヒメノの返事と共に、二人が入ってくる。


「どうしたの?そんなに慌てて?」

「あ、いえ、何でもないです、あはは。」

「ふーん。」

リサはニヤけてヒメノを見つめる。


「な、何ですか?」

「いーや、なーんにも。」

四人は改めて話し合いを始める。


「まずは、俺が城の時に使った力からだな。……といっても、俺の意思で発動はできないんだ。」

「どういうこと?スノウの力じゃないの?」

「まあ、俺の力ではあるのかもな。けど、俺の頭の中に声が響いたんだ。たぶん、白狼フェンリルのな。」

その場が静まり返る。


「たぶんって、じゃああの姿は?スノウの姿が狼みたいになってたじゃない!」

「そうです!先輩、なんか人間ではない何かに変身してました。」

リサとユキナは話に食いつく。


「正直、そこは俺にも分からない。」

「私も兄さんと同じです。たぶん紫鷹グリンカンビの声が響いて、その次には戦ってました。そして、意識が戻ったら戦いは終わってた。」

「じゃあ、あの力は二人の意志に呼応して私たちの中にある力が結集……いや、暴走したってのが正しいのかな。」

リサは頭を抱える。


「私とリサさんにも、同様の力があると考えた方がいいですね。使わないに越したことはありませんが、またフレイヤのような化け物が出て来た際に発動する可能性があります。」

「とは言っても、自分で力を制御できない以上俺たちができることはあるのかな。」

また沈黙が流れる。


「でも、まあ!まずは生き残ったんだし、まずは美味しいものでも食べよ!それが一番!」

リサが元気よく立ち上がる。


「リサさん、そうですね。兄さんとユキナちゃんもそうしましょう!」

「ん、ああ、そうだな。」

「そうですね。お腹も空きましたし!」

四人は部屋を出て、食堂に向かう。


スノウは先頭を歩くリサを見つめる。


(はあ、無理しやがって。丸わかりだっての。)

スノウは心の中でそう呟いた。


♦︎♦︎


「フレイヤよ、何か言いたいことはあるか?」

「い、いえ。俺様の責任です。」

オーディン・シンはソファに苦しそうに座っている。


「私たちのダメージは、オーディン様に直結するのを忘れたか、この阿呆が!」

黄色い体の人型に説教を受けるフレイヤ。


「では、次はどうする?」

「わしが行く。この阿呆の尻拭いをしにな。」

「分かった、、任せるぞ。」


黄色い体の人型、トールは城を達つ。


ホープ部隊に再度危険が迫っていた。

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