第六十三話 さあて、狩りの時間だ!

「助かるよ!それじゃあ必要なものなんだけど。」

ハリソンは一枚の紙を取り出す。


「この二つなんだ。一つ目が、シルクリザードの素材。もう一つが、ロックボアの素材。」


シルクリザード……絹のように柔らかな体で、並大抵の攻撃は受け流すトリッキーなモンスター。


ロックボア……体をあらゆる鉱石で覆うことで、自前のスピードを乗せた突撃は大木を三本連続で折るという。


いずれも、セクヴァベックの近くに生息しているが、最近は凶暴種も確認されているとのこと。


「君らなら心配はないと思うが、気を付けて行ってきてほしい。」

「分かった、そしたら二班に分かれるか。この近くの知識があるのは……。」

「僕とセラくんだね。僕ら二人は別れたほうがいいかな。」

六人が作戦会議をする。


「そしたら、セラ。お前は誰がいい?」

「え!選んでいいの!そしたらね〜。」


ニヤリッ。

セラは意味深な笑みをこぼす。


「セラは、お兄とヒメちゃんで!」

「え!?あ、分かりました。」

「俺も問題なしだ。リサとユキナもセドリックのチームでいいか?」

スノウがいつになく周りを気にかける。


「問題なしだよ!」

「同じくです!」

「それじゃあ、セラチームは、シルクリザード。セドリックチームは、ロックボア討伐。これでいこう!」

「了解!」


ホープは部屋を出て、各出口に向かう。


「さあて、狩りの時間だ!」


ホープは三人ずつのチームに別れ、素材を取りに行く。




まずは、セラチーム。


シルクリザードは広い草原の中に生息しており、全長5mはある大型モンスターなので特に目立つ。



「セラが俺を選ぶのはなんとなく予想ついたけど、ヒメノともそんな仲良かったのか?」

「当たり前じゃん!セラはコミュ力高いで有名なんだよ!それに……。」


サササッ。

セラはヒメノの耳元近くで囁く。


「チャンスだよ。」

「っ!セラさん!」

「あははっ!さーて、シルクリザードはどこかな〜。」

セラは手を広げピクニック気分。



(セラさんが余計なこと言うから、変に意識するじゃないですか!)


ヒメノはもう一つのことで葛藤していた。


(私は、兄さんの義理の妹。今のままでも十分楽しい。けど、もし私が思いを伝えてホープが気まずくなったりしたら……。)

ヒメノは自分の気持ちに従うべきか、このままでいるべきか考え込んでいた。


「……ノ。……メノ。……ヒメノ!」

「はっ、はい!」


スノウの呼びかけでヒメノは現実に戻る。


「どうした?何か考え込んでたみたいだけど。」

「い、いえ!たいしたことじゃないです!」

「そうか?でもなんか慌ててるみたいだし。」

「いや、だから!私は別にーー。」


ドタッドタッドタッ!


「グワァーー!!」

どこからともなく何かの泣き叫ぶ声がする。


「お兄!ヒメちゃん!ダーゲットのお出ましだよ!」

「おっ、分かった!行こうぜ、ヒメノ!」

スノウはヒメノに手を伸ばす。


「あっ……。」

ヒメノにはその手が、いつまでも一緒にいていいと言われてるように感じた。


「はい!!」

ヒメノはその手を取り、セラの方へ走る。


ドガンッ!ドガンッ!

「グワァーー!!」

シルクリザードは辺りの岩や木を壊し続けている。


タッタッタッ。

スノウとヒメノがセラと合流する。


「おいおい、あんな気性荒いのか?」

「セラも詳しくは知らないけど、なんかがある。まあ、とりあえずは倒さないとーー。」


セラは振り向きざまに、スノウが手を繋いでヒメノを連れてきた姿を見る。


「ふふっ、本当。お兄はこれからも大変だね。」

「ん?何か言ったか?」

「いーや、なんにも!セラが注意を惹きつける!その間にお兄達任せるよ!」


ズザッ!

セラが刀を構え走り出す。


「さあて、ヒメノ!いくぞ!」

「はい!」

二人も後を追う。


「ガァァ!!」

シルクリザードは尚も暴れている。


バゴンッ!バギッ!

周りの岩や木が弾け飛ぶ。


「自然破壊は、ちょっと許せないな! 希狼派四式キロウハヨンシキ! 廻閃牙カイセンガ!」


サシッ!

セラの回転斬りがシルクリザードの顔に傷をつける。


「うわー、硬いってよりしなやかすぎて斬り辛い。」

「なら俺に任せな!」


ズザーッ!

スノウがシルクリザードの足元に潜り込む。


氷付与アイスエンチャント! 狼派九式ロウハキュウシキ! 狼燭ロウソク!」


グサッ、グサッ。

二本の刀を地面に刺し、そこから二つの氷の蝋燭が貫く。


氷で刺されたことにより、動きが自由に取れない。


「グギャァァ!!」

ブンッ!

シルクリザードの尻尾がセラに迫る。


「え、やばっーー。」

「セラさん!」

ヒメノが空を飛びセラを救い避ける。


「ありがとう!ヒメちゃん!」

「どういたしまして!……この位置からなら。」

二人はシルクリザードの頭上に位置する。


「セラさん!」

「うん!なんとなく、考えてることわかるよ!任せて!」

「いきます!」

セラはさらに高く飛び上がり、ヒメノは風を纏う。


風槍ウインドランス展開! 鷹派八式オウハハチシキ! 竜巻タツマキ!」


ブオーッ!

ヒメノの放った竜巻がシルクリザードを覆う。


「おっと。ヒメノのやつ、俺のこと考えてたのか?」

スノウはなんとか竜巻を避ける。


「ここからなら、一撃で!」

セラは刀を構え直下に降りる。


ビリビリビリッ!

セラの刀に雷が帯びる。

雷充填ライトニングチャージ! 希狼派十式キロウハジュウシキ! 雷刃剣ライジンケン!」


刀身に雷が全て集まり、一つの落雷の如くシルクリザードに落ちる。


ドゴーンッ!

さらに竜巻により電撃が全身に回っている。


「ウギャァァ!!」


コトンッ。バサッ。


シルクリザードは大きめの布の素材と、何か宝石のようなものを落とす。


「いえーい!完璧!」

「いやいや本当か!?俺ごと竜巻に巻き込もうとしてただろうが!」

「そこは、兄さんを信じたんですよ!」


何はともあれ、セラチームは任務完了。


彼らの強さについては、もう言うことはないだろう。

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