第六十一話 忌み嫌われ子とは
時は、スノウが三歳の時に遡る。
スノウとセラの両親は仕事で王国のある地域、グラズヘイムへよく通っていた。
二人でいる時間が長かったが故に、幼少の頃からお兄ちゃんとしての意思が強かったスノウは、三歳の時にはすでに家事を少しできるようになっていた。
「お兄ちゃん!セラと遊んで!」
「いいよ!遊ぼう!」
二人は家の近くで追いかけっこをしている。
平和な毎日。
鳥はさえずり、花々はゆらゆらと揺れ、活気にあふれていた。
が、セラの様子が変わる。
「えほっ、えほっ。」
「大丈夫?セラ?」
「えほっ、えほっ。なんか、苦しい。」
「え!?大丈夫!?」
セラは急に咳き込む。
「えっと、えっと、そうだ!お兄ちゃんがお医者さん呼んでくるね!」
「えほっ、えほっ。うん。」
ザッザッザッ!
スノウはダッシュで町の医者の元へ向かう。
コンッコンッ。
すぐに町の医者の家まで辿り着き、ノックをする。
「はーい。ん?どうしたの僕?」
「セラが急に苦しそうなの!お医者さん、助けて!」
「それは大変!どこにいるの!?」
「町の少し離れたところ!」
その言葉を聞いた医者は、途端に顔色を悪くする。
「それって、アクセプトさんの家かい?」
「お医者さん知ってるの!?そうだよ!だから早くーー。」
「ひぃ!近寄らないでくれ!」
バタンッ!
医者は何かに怯えるかのように、ドアを勢いよく閉める。
「え?お医者さん!助けてよ!」
「来ないでくれ!あの家族とは関わりたくない!」
「なんで?」
そこから医者は反応がなくなり、スノウは急いで家に戻る。
「セラ!大丈夫!?」
「う、うん。少しお砂を飲んじゃったみたい。ぺっぺっしてたら治った!」
「よ、よかった。」
スノウは一安心。
その夜、両親が帰ってきた時にスノウが聞く。
「お昼ね、セラがすごい咳しててね、だからお医者さん呼びに行ったら来てくれなかったの!なんでかな?」
「スノウ、町中に行ったのか?」
スノウの父親が問いかける。
「うん、だってセラが苦しそうだったから。」
「そうか、ごめんな、スノウ。」
「え?なんでお父さんが謝るの?」
スノウは首を傾げる。
「あなた、もしかしたら……。」
「何を言ってるんだ!今までも、たまたまに決まってる。」
スノウの両親は眉間にシワをよせ険しい表情になる。
「ん??」
スノウは理解できずにいた。
次の日、町の医者の家が突如として燃えた。
理由は不明。
そして、家の中から焼死体が一人。
その家に住んでいた医者である。
町の中である噂が広がっていた。
子供が火をつけたと
そして、その子どもの特徴は、
青い髪に、青い眼の子供
その知らせはスノウの家にまで届いた。
「あなた、これじゃまた……。」
「ああ、町を出よう。二人に、危険が及んでしまう。」
そして、アクセプト一家は町を変えた。
しかし、移動する町々で似たような事件が起きる。
ある時は、宿家が倒壊し、
ある時は、広場が爆発し、
ある時は、殺人事件が発生し。
そして、その場所に必ず居合わせてしまったのが。
スノウ・アクセプト。
もちろん、彼は何もしていない。
だが、彼は何故か事件の先々に居合わせてしまう。
故に、彼がいく先々で事件が発生したことから、彼をこう呼ぶ者が出てきた。
その噂は途端にスノウ達を巻き込む。
家を移しても、噂は消えることはない。
時には、家に落書きが。
買い物へ行くと、父親も母親もケガをして帰ってきた。
そしてスノウも、
「お前が
「この化け物!この町から消えろ!」
シュッ!シュッ!
小石がスノウに投げつけられる。
「くっ!」
スノウは走って家に帰る。
「お兄ちゃん?大丈夫?」
セラがスノウに寄り添う。
「うん、大丈夫だよ。だから、セラは家にいるんだ。」
「わ、分かった。」
そうして、なんとか一年を生き延びた。
だが、その先で、スノウはある事件に巻き込まれる。
その日、スノウは町を歩いていた。
「お前か!青い髪に青い目!
武装した盗賊のような男達が、五人ほどぞろぞろとスノウに寄ってくる。
「ぼ、僕に用ですか?」
「ああ、実はお前に懸賞金がかかっててな。悪いが、その首をくれよ!」
「え!?」
スノウをめがけ、五人の男達が迫る。
ザザッ!
「誰か!助けて!」
スノウが走りながら助けを呼ぶも、周りの大人達は見て見ぬ振り。
(なんで、なんで誰も助けてくれないの?)
スノウはひたすら走る。
が、
ドテッ!
足がつまづき倒れる。
「痛っ!」
それを好機と見た剣を持った男が迫る。
「もらった!」
「くっ!」
スノウはなんとか転がり避ける。
サクッ!
「痛っ。」
スノウは右頬に縦に傷が入る。
静まり返ったその地に、血が滴り落ちる。
「ははっ!ガキが!死んじまえ!」
サァーッ。
辺りが急に寒くなる。
シュッ!
男の剣がスノウの眼前にまで迫る。
カチッカチッカチッ。
「な、なんだ!?」
男の剣は、スノウに当たる直前でカタカタ震える。
「う、ぐっ!!」
スノウの目は青く光り、男を睨みつけていた。
男はなぜか動けない。
だが、理由は簡単。
恐怖に支配されたのだ。
「ひ、ひぇー!
男達は慌てて逃げ出す。
「はぁ、はぁ。くそっ。」
スノウはふらふらしながらも、なんとか立ち上がる。
そして天を仰ぐ。
「僕は誓う。もう、大人なんて、信用しない。」
スノウはここから先、一度も大人に敬語を使わなくなった。
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