第九十七話 最後の五神

「あははっ!お前がこの町の長か!見つけた!見つけた!」

「何をしに来た!ここがどこだか分かってるのか!」

「分かってるよ!オーディン様から命を受けてここまで来たんだから!さあ、うちのヴァルキュリア隊隊長を返してもらうよ!」


外では、空をぷかぷか浮かぶ女とルカが睨み合っていた。


「ルカさん!」

スノウ達がギルドからルカの元へ走る。


「あらあら!ホープも見つけた!イズンちゃんラッキー!!」

「何ですか!あなたは!」

「え?あたし?あたしはね、イズンだよ!あなた達を、殺しに来たの!」

「こいつ!」


ジャキンッ!

スノウ達は武器を構える。


五神の中の一人、

青い髪に青いフリフリの洋服。髪の毛はツインテールにしていて、ゴスロリ系の姿をしている。

感情の神とも呼ばれる。



「イズン様!おやめください!」

「えー、いいじゃん!ゲンドュル!少しくらい〜」

「ダメです!オーディン様からは、セドリック・リーンベル隊長の回収を頼まれたのですよ!」

「んー、はーい。」


パタッ。

イズンは地面に降り立つ。


「はぁ、全くイズン様は。あなたが、ルカ・ロナウド町長ですね。」

「ああ、そうだが君は?」

「申し遅れました。ヴァルキュリア隊、隊員。ゲンドュルと申します。」


バサッ。

背中に翼を生やした女性は、ルカにお辞儀をする。


ヴァルキュリア隊隊員 ゲンドュル

剣を腰に携え、言葉遣いも丁寧でとてもしっかりとした女性。

金髪の長い髪に、金色の装備がよく映える。


「そうか、わざわざ来てくれてありがとう。ただ、一つ謝罪をしなくては。」

「謝罪ですか?」

「ああ、先ほどの信号弾は誤報なんだ。町で訓練をしていたところ、誰かが撃ってしまったみたいで。」


ルカは嘘をついて、ホープを守ろうとする。


「そうでしたか、であれば仕方がありません。今後はお気をつけて頂ければと思います。」

「ああ、かしこまった。申し訳ないことをしたーー。」

「そんなわけないよね〜」


スタッ、スタッ、スタッ。

イズンがゆっくりとルカに向け歩く。


「イズン様、申し上げたとおりですが、どういうことですか?」

「うーんとね、あなた、。なんでそんな嘘つくのかな?」

「嘘ですか?なぜ僕が嘘をつく必要が?」

「それはね、あなたに直接聞くわ!」


ブンッ!

イズンの足蹴りがルカに迫る。


「っ!?ルカーー。」


バギーンッ!

イズンの蹴りを一本の剣が受け止める。


「何をされてるのですか、イズン様!」

「あはっ!出てきたね、!」

「この町の人は無関係だ!」


ギィンッ!

イズンの足を弾き、セドリックはルカの前に立つ。


「セドリック!なんで!?」

「すまない、スノウ。こうするしかなかったんだ。」


カチャンッ。

セドリックは剣を納める。


「ゲンドュル隊員、僕をグラズヘイムに連れて行ってくれ。」

「かしこまりました、隊長。」


パリンッ。

ブワーンッ。


何度も五神が逃げる際に使った禍々しい闇の輪っかが出てくる。


「こちらに準備致しました。いつでも行けます。」

「ありがとう、ゲンドュル隊員。」


スタッ、スタッ、スタッ。

セドリックはゆっくりと歩く。


「待てよ!セドリック!」


スノウが呼び止める。


「スノウ、短い間だったけど、とても楽しかったよ。君たちという光が、この先も照らし続けられることを祈ってる。」

「セドリック、本気なんだな。お前一人で、。」


スノウはセドリックを見つめる。


「ああ、これは、僕が解決しなきゃいけないんだ。だから、許してくれとは言わない。勝手に抜ける僕を、恨んでくれて構わない。ただーー。」

「誰が恨むもんかよ。セドリック、これだけは忘れるな。お前の家は、。」

「っ!?」


セドリックが振り向くと、そこには真剣な眼差しを向けるホープの五人の姿が。


「……ああ、ありがとう。」


ブワーンッ。

セドリックは闇の中に消え、後を続きゲンドュルも中に入る。



その場は少しの間、静寂に包まれる。



「セドリックさん……。」

「ユキナ、大丈夫だ。必ず、また会う。」

「……はい、そうですね。」



バサンッ!

何かが空を飛ぶ風が起こる。


「なんだ!?」

「あははは!!これで邪魔者は消えた!それじゃあここからは、イズンちゃんの好きに暴れていいんだよね!」

「あいつ!何をする気だ!」

「決まってるじゃん!嘘をついてた、その町長を殺すのよ!!」


ブンッ!

空からルカに目掛け土の刃のような物が飛んでくる。


「ルカッ!」

「くっ!」


カキーンッ!カキーンッ!カキーンッ!


ルカに迫った土の刃が弾き飛ばされる。



そう、リサの長剣によって。



「あら、間に合っちゃったか。ざーんねん!」

「何が残念なの!あんた、この町がどういう立場かわかってるの!」

「そんなの関係ないよ!イズンちゃんはね、弱いくせに足掻いてる虫ケラが大嫌いなの!!」


ギリリッ。

リサは強く歯を噛み締める。


「そうなの、なら、あたしが分からせてあげる。」


チャキンッ!

長剣がイズンの方を向く。


「あんたは今、ただ必死に生きてる人を殺そうとした。その罪の重さ、その身で知りなさい!!」


リサとイズンが対峙する。


五神と虎を継ぎしトップの戦いが、始まろうとしていた。


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