第九十五話 力と解明
ホープはセドリックと別れ、五人となりグリトニルのギルドに入る。
キィーッ。
アハハハハッ!
カチャンッ!
そのギルドは、多くの冒険者で賑わい活気に満ちている。
対照的に、ホープは少し暗い雰囲気。
「少しうるさいかもしれないが、許してくれ。」
「いや、気にならないレベルだ。」
スノウ達はテーブルを囲うように腰掛ける。
「噂には聞いたことがあったが、君たちが、周りの村や町をオーディンから助けてくれてるっていうホープなのか。」
「ああ、俺がリーダーのスノウ・アクセプトだ。」
「そうか、本人に会えるとはな。」
今のホープの暗さの中に、本題に入れる雰囲気はない。
そんな中、ユキナが口を開く。
「あの、セドリックさんはどうなるんでしょうか?」
「彼の言ってたとおり、グラズヘイムに送られるだろう。帰還ではなく、送還という形で。」
「送還……。あの、セドリックさんはーー。」
「君たちの仲間だろ?」
ルカは鋭い目つきで問いかける。
「……ああ、あいつは、セドリックは俺たちの仲間だ。」
「だろうな、そんな気はしていた。」
「だったら!すぐにセドリックさんを!」
ダンッ!
ユキナが勢いよく立ち上がる。
「それはできない、俺も、この町の長として民を危険に晒すことはできない。」
「そ、それは……。」
力なくユキナは座る。
「まあ、まずは俺たちが落ち着かねえとな。」
ドサッ。
スノウは手をユキナの頭に乗せる。
「セドリックは死ぬわけじゃねえ、まずは、俺たちの目的を果たさねえとな。」
「先輩……。」
スノウの手は温かく、少し震えていた。
「まあ、君らが本当に安全な存在だと分かれば俺たちはホープに協力しよう。それまでは、我慢してくれ。」
「話が分かる町長で嬉しいよ、ルカ。」
「ちょっ!兄さんーー。」
「構わないよ、噂通りで安心するさ、誰とでも分け隔てなく話をするスノウリーダー。」
ルカはスノウ達に対して警戒を緩める。
「それで、なぜオーディンがこの町を襲わないかって話だったか?」
「ああ、周りの村はオーディンに従わなければ力ずくで従わされるか、破壊されるって聞いてる。でも、この町は一度も襲撃にあってないんだろ?」
「まあ、そうだな。それも、前国王のアトリ様とこの国を守ろうとしたお前達トップの師匠のおかげだろうな。」
「どういうことだ?」
ここから、ルカはグリトニルの事実を話し始めた。
グリトニルは、アトリ前国王の生まれ育った地であるらしい。
昔から鉱山資源や畜産物に長けており、人と人の交流がとても盛んな町であった。
そんな町で、前国王は育ったのだという。
そして、アトリ前国王の能力。
前国王アトリは、まだギムレーの町や村が争いなどで傷つけあっていた時に国王となる。
国王に選抜された理由及び方法は分からないが、少なからず彼の力を知る者から推薦された可能性は高い。
そして、彼はあらゆる困難や災害に対して事前に対策を講じて、国全体にアドバイスを行なった。
その結果、ギムレーの地域はとても豊かな場所となり住む民は幸福に満ちていた。
しかし、そんな中でアトリ前国王は突然の病死に倒れ、後任のオーディンに王座が渡された。
オーディンも初めのうちは支持を集め、良い国王として崇められていた。
ただ、一つの発令が国民から非難を浴びる要因となった。
そう、FC計画である。
ヘルクリスマスの対策として、各町や村から子供を選抜しグラズヘイムに招集した。
それが、オーディンの自作自演などとはつゆ知らずに。
中には、子供達を送ることに反対する場所も生まれた。
それを罰したのが、当時のヴァルキュリア隊及び五神である。
抵抗する勢力は、当時の人間では想像も出来なかった魔法や流派の攻撃で為す術なく敗退した。
だが、オーディンが王となったその時から今日まで、グリトニルは一度も襲撃を受けていない。
それはなぜなのか。
オーディンは、あらゆる力を持ちそれを自分の家臣である五神に一部ずつ分け与えている。
そのオーディンでも持ち合わせていない力。
そう、
ギムレーを自分の好きなようにしたいオーディンにとって、未来を見ることができる
というわけで、グリトニルはまだ襲撃を受けていないのだ。
「ここまでが、俺たちの知る事実と見解だ。」
「なるほどな、オーディンは自分の力を五神に使わせてる……てことは、五神が受けたダメージはオーディンにつながる?」
「まあ、そうなるな。五神はオーディンの一部だから。」
ルカは背もたれに寄りかかる。
「それともう一つ、グリトニルにはFC計画の際に使われた資料も残っている。」
「資料?どんなことが載ってるんだ?」
「当たり前なこと聞くなよ。お前達トップになったやつの修行についてだよ。」
「っ!?」
その場にいた全員が固まる。
やっと、自分たちの記憶を補填することができそうなのだ。
果たして、FC計画でスノウ達は何をしてきたのか。
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