第百六十五話 力の証明、記憶

「ふんっ、希望などこの世界には残されていない!ただ腐敗していく世界をなにも出来ずにただ見守っていくのが人間だ!」

「そんなことない!一人一人の人間は確かに弱い生き物だよ、けどね、弱いからこそ、託すんだ!自分がやりたいことを、世界のためになると信じて次の世代の人たちに!」

「それを失敗し続けてきたのがこの世界の姿だろうが!」


ブンッ!

新たに闇の槍を生み出し、セラ目掛け放つ。


「くっ!足に力がーー。」

「やらせるか! 完全上限解放フルバースト! 開始オン! 戦騎術センキジュツ! 弍ノ次ニノツギ! 剛衝砕波ゴウショウサイハ!」


ブンッ!

ガギーンッ!

力を解放したセドリックは、槍を弾き飛ばす。


「ぬおっ、その力は、トップとは違うな。」

「ああ、そうさ。僕も、強くなりたいと願って日々努力してきた。そして、ギムレーをより良いものにするために騎士団に入った!」


ガギーンッ!

全身を光り輝かせたセドリックは、勢いよくエンペラーに斬りかかる。


「ふんっ、しかし、貴様ら五人が強くなったとしても、未来は変えられない!」

「ふざけないで、私たちの未来は変えられる!」


キランッ!

エンペラーの頭上に光るものが。


「あなたの勝手な考えを押し付けないで! 共鳴突破クロスドライブ! 開始オン! 慈愛の神紫鷹グリンカンビ・フリッグ! 私と飛んで!」


ヒューンッ!!

ヒメノがエンペラーの顔面目掛け直滑降。


「雑魚が!お前の攻撃は効かないと言ったはずだ!」


ブンッ!

勢いよく拳を伸ばす。


「なら、その体で受けてみてください! 焔槍バーンランス! 展開! 鷹派十式改オウハジュウシキカイ! 紅月獄炎コウゲツゴクエン!」


シュボォァァ!!

ガギーンッ!

大きな火を足に纏い、勢いを殺さずにかかと落としをぶつける。


「うぐっ、さっきまでとは、違う力だと。」

「当たり前です、この力は、私一人のものじゃない!私の相棒の力が、宿ってるのだから!」


ドガンッ!

拳を弾き飛ばし、そのまま脳天に直撃。


「うがぁ、そんなバカなーー。」

「よそ見は厳禁ですよ! 共鳴突破クロスドライブ! 開始オン! 寛容の神緑鮫ヨルムンガンド・ロヴン! 私と踊って!」


シュンッ!

ユキナは隙を逃さずに、足元に迫った。


「しまっーー。」

「あなたの弱いと思う人間の力、その身で耐えられますか!! 鮫派六式改コウハロクシキカイ! 鮫肌鋭刃槍サメハダエイジンソウ!」


グルンッ!

ジャギンッ!ジャギンッ!

目にも留まらぬ速さの回転斬りが、エンペラーの両足を斬り刻む。


ドタンッ!

膝をつき、体勢を崩す。


「ぬあっ、くそ!俺は、俺はこんなところで、死ねないんだ!弾け飛べ!!」


ヒュイーンッ!!

ドゴーンッ!

再び闇の魔法を体に纏い、爆発させる。


エンペラーは近くに人の気配を感じられない。


「はぁ、はぁ、はぁ。何人かは巻き込めたかーー。」

「何言ってるの、誰もそんなものに当たってあげないよ。」


ジャギンッ!

リサはエンペラーの前に勇ましく立つ。

さらに、他の四人は容易く避けていた。



「な、なぜだ!なぜ、そんな力を持っているのに、こんな世界のために使う!自分の力を自分のために使わない理由が俺には分からん!」

「なぜかって、そんなの、簡単だよ! 共鳴突破クロスドライブ! 開始オン! 激情の神赤虎グラニ・オーズ! あたしと戦え!」


ドゴーンッ!

リサが力を解放する。


「腐敗する世界に尽くす貴様らの考えが、俺には分からん!」

「この世界は、あたし達人間が作り上げた!それが、今の世界になってる。その結果、もしあたし達が苦労することになってしまっていても、それを直すのもあたし達の役目!」

「ふんっ!本当にこの世界の人間が同じことを考えてると思うか!弱い人間どもは、自分のことしか考えていない!」

「なら、あたし達が先頭を歩いてみんなの指針になる!


ブンッ!

エンペラーは槍を作り出し、リサに迫る。


「貴様らの理想論、ここで崩してやるよ!」

「やれるものならやってみなさい! 敵を焼き尽くせ! 焔龍ボルケーノドラゴン! 虎派七式改コハナナシキカイ! 煌龍灼熱爪コウリュウシャクネツソウ!」


ブォォォォ!!

ジャギーンッ!

真紅色の龍の炎を纏った長剣が、槍を迎え撃つ。



「ぐっ、この力は、やはりオーディン様の配下、戦神の力かーー。」

「これがあたし達人間と相棒の力だよ!その身で受け止めなさい!!はぁぁ!!」

「ぬぁぁぁ!!!」


ガギギギギッ!

二人の攻撃は一進一退。


「ふんっ、やはり最強の俺は、お前たちに引けを取らない!ここで死んでしまえーー。」

「だから、人間は一人じゃないんだよ。」


シュンッ!

セラがエンペラーの背後に立つ。


「なっ!?貴様は、動けなかったはずじゃ!」

「あんたを倒すためなら、このくらいの痛み、乗り越えてやるさ! 轟雷充填スパークチャージ! 黒狼初式コクロウショシキ! 雷撃双爪刃ライゲキソウソウジン!」


バリリリリッ!

雷の斬撃を二刀から複数放つ。


「ぐぉぉ!!」

「終わりだよ!エンペラー!」


リサとセラの攻撃が重なり、


轟焔クリムゾン!」


シューンッ。バゴーンッ!

雷と炎が重なり、爆発を起こす。



「はぁ、はぁ。倒した?」

セラが状況を確認する。


そこには、全身に傷だらけで倒れ込むエンペラー。


「くそっ、俺の負けか。」

「そうだよ。あんたは、セラ達に一人で挑んできた。それが、最大の敗因よ。」

「オーディン様のことを思っても、お前達はこんなことができるのか。」

「どういうこと?」


セラはエンペラーに近づく。


「聞け、ホープ。オーディン様が、なぜお前達の記憶を消したのか。」


衝撃の事実が明かされようとしていた。

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