第五十九話 苦しみを乗り越え、先へ向かう

一つの戦闘が終わりを迎えた。



空にかかっていた暗い雲は外れ、晴れ渡る。

少し気温が下がっただろうか、一人の人間の影響で。


「兄さん……。」

「先輩!」

ホープの五人はスノウを見上げる。


スーッ。スタッ。


スノウはふわりと地面に降り立つ。


「ありがとな、フェンリル・テュール。」


シューンッ。

スノウはいつもの姿に戻る。


「よお、お前ら。無事か?」

「あ、は、はい。私たちは平気ですが、兄さんの方は?」

「ああ、少し疲れたけどぶっ倒れるほどじゃねえ。」

「そうですか、それよりもさっきの力はーー。」

ヒメノがスノウに質問を投げかけようとすると、


「えほっ、えほっ。」

周りに倒れ込んだ町の人たちが意識を取り戻し始める。


「ヒメノ、まずは救助からだ。」

「はい!分かりました!」

ホープの六人は、救助活動を開始する。



なんとか、怪我をしていない人が大半だ。




だが、


「おい!あんた、生きてるかーー。」

「……。」

「っ!くっ!」


ゴスッ!

スノウは右拳を地面に打ち付ける。


最初に自分の腹を刺した男は、永遠の眠りについていた。


「くそっ、ごめんな……助けられなくて……。」

スノウは男の手を握り、顔を歪め悔しさを露わにする。



「お兄!こっちは大丈夫だったよ。そっちは……。」

「っ……。」

「お兄……。」


セラの目には、昔のように全てを背負おうとしてるスノウの姿が映った。


ファサッ。

セラはスノウに背中から覆い被さり、スノウを慰める。


「お兄、そんなに助けられなかったのは、の罪だよ。」

「ああ、頭では分かってるんだ。全員を助けるなんて、綺麗事だってことは。けどよ、この人がが見つからないんだ。」

「その答えは、今の世界に生きてるセラ達には見つけられないんじゃないかな。……でも、そのを生み出さないことは出来る。そのために、旅をしてるんだから。」


セラは知っている。抱え込みすぎる自分の兄のことを。


それを和らげてあげるのが自分が一番やるべきことで、やりたい事なのだとも。


最強の戦士達は、戦いに勝ってのだ。



晴れ渡ったはずの空に、一つだけ雲が残る。

完遂できなかった彼らを、哀れむかのように。




「君たちが、僕たちを助けてくれたのか?」

一人の男がセドリックに近付いてくる。


「あ、はい。たどり着くのに時間がかかってしまい、申し訳ありませんでした。」

「な、何を言うんだ。君らがきてくれなかったら、僕たちはみんな死んでたよ。」

男は、周りを見渡し手当てをしているホープの姿を見る。


「君たちが、ホープなのか?」

「はい、僕はセドリック・リーンベルと言います。」

「おおっ!やっと出会えたよ、これも神のお導きか。僕は、ハリソン・ウェアーズ。この町の町長だよ。」



ハリソン・ウェアーズ。29歳。

褐色の肌に、黒いスポーツ刈りがとても似合う屈強な男。

スノウ達が探していた、トップ達の戦闘服スーツを使っている本人である。



「あなたがハリソンさんですか!良かったです、僕たちもちょうどお会いしたかった。」

「なら、みんなで私の家に来てもらえないか?お互い話したいことが多くありそうだ。」

「分かりました。全員集まり次第伺います。」

「それと……。」

ハリソンはその場で90度に体を曲げお辞儀する。


「町を助けてくれて、ありがとう。」

「そんな、僕たちは……。」

セドリックの顔には、戸惑いの表情が浮かんでいた。


この事態を引き起こしたのは、他でもない、自分が仕える王の直属の部下。


セドリックの中で何が正しいのか、葛藤していた。



「よしっ!これで簡単な治療は出来ました!」

「ありがとう!君らは強いんだね。」

「いえいえ、私たちはやれることをしただけですよ。」

ユキナは立ち上がり、周りを見渡す。


「みんな!集まってもらえるかい!」

セドリックが全員を集める。


「ハリソンさんを見つけたよ。これから、みんなで向かうことを伝えておいた。」

「良かった〜。ハリソンタンも無事なら、これからの話もできるね!」

「リサくん、そのあだ名はどうかと……。」

セドリックが苦笑いをする。


遅れて、スノウとセラも合流する。



「あっ、兄さん!セラさん!ハリソンさんが待ってくれてるみたいです!みんなで行きましょう!」

「あ、うん!分かった!ヒメノちゃん先に向かってて!セラは家知ってるから、お兄を連れてくよ!」

「分かりました!」


スタッ、スタッ、スタッ。


スノウとセラを置いて、四人は先にハリソンの家へ向かう。


「ねえ、お兄。一つ聞いていい?」

「ああ、どうした?」

「さっきの力、本当に体に影響はない?」

セラはじっとスノウを見つめる。


「ああ、確かに疲れは出てるけど、本当に異常はないよ。」

「うーん、そっか。じゃあ、お兄を信じる。……けど、一つ忠告だよ。」


バサッ!

セラはおもむろにスノウを抱き寄せる。


「これから先何があっても、これだけは絶対覚えておいて。……お兄は、セラが、ヒメちゃんが、リっちゃんが、ユキちゃんが、セドくんがいる。覚えるまで、ずっと言い続ける。」

「セラ……ああ、絶対に忘れない。お前達に誓ったんだ。もし忘れたらセラの好きなようにしていい。」

「じゃあ裏切ったら、セラが後ろから斬り裂くから。」

「怖い妹だな。……でも、セラにそんなことはさせない。」


スノウは強い眼差しでセラを見つめる。



スノウは再認識した。そして成長できた。



自分は、



第九章 完


◆◆◆お礼・お願い◆◆◆


第九章まで読んで頂きありがとうございました。


彼らはロキとの戦いをなんとか乗り越えました!

そして、スノウも少しずつ成長していける。


スノウ達の今後を気になってくれる方!

次は戦闘服登場!? スノウの過去も露わに!?

ホープの六人を応援してるぞ!


と思ってくださいましたら、

ぜひ、レビューや★評価とフォローをお願いします!


ここまで読んで頂きありがとうございます!今後とも宜しくお願いいたします!



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