第三章 英雄は時に暴走する
第十一話 旅立ち、五神の追跡者
「
ジャシンッ!ジャシンッ!
スノウはフォールクヴァングの村に襲ってきた、ブラックベアーという大きなクマと戦っていた。
「ガァ!」
ブラックベアーの爪が迫る。
(左爪が斜め30°からくる。)
カキーンッ!
スノウは爪を刀で捌き、
「
シュンッ!
スピードに乗せた一撃で腹を斬り裂く。
バタンッ。
討伐完了。
ブラックベアーは大きな爪の素材となる。
「はぁ、最近多いな。フォールクヴァングは比較的安全な村なはずなのに、モンスターが何でこんなに?」
「スノウ!」
スタッスタッスタッ。
リサが走ってくる。
「お疲れ!そっちも終わったの?」
「ああ、討伐完了だ。そっちも終わったか?」
「うん!誰も怪我してないし、完壁ってやつ!」
スタッ、スタッ、スタッ。
二人はギルドに向かう。
町の中はいつも通り落ち着いた雰囲気。
そよ風が心地よい。
ガチャ。
ギルドのドアが開かれる。
「あ、兄さん。お帰りなさい。」
「おう、お疲れ。」
ズザッ。
四人はテーブルに座る。
ガチャンッ。
「今日も皆さんありがとうございました!」
看板娘のミナがお礼を言う。
そして、イチゴのショートケーキが置かれる。
「え!なになに!ご褒美!?」
リサは目を輝かせる。
「はい!今日までの三週間で、何回助けられたか!これはギルドからのささやかなお礼です!」
「ありがとうございます。ミナさん。」
ヒメノは微笑む。
「いただきます。」
四人はケーキを食べ始める。
パクッ、パクッ、パクッ。
ひと時の休憩が、彼らを癒す。
「なあ、提案なんだがそろそろ動いてみないか?」
「鍛冶屋の話ですか?」
「ああ、そうだ。」
スノウとヒメノが話し合う。
「俺らがやることは、まず鍛冶屋に会うのが最優先だろ。そこで武器もより強くできたら、記憶を取り戻すきっかけにもなるだろ。」
「そうですね、兄さんの言う通りだと思います。それに、気になることがもう一つあって。」
「リサが鼻にクリームつけてることか?」
リサはケーキを食べ終えている。
「へっ?」
「リサさん、もう少し落ち着いて食べてください。」
「あ、ありがとう!」
フキッ、フキッ。
ユキナがヒメノの鼻を拭く。
「そうじゃなくて!最近、鍛冶屋さんのいるノーアトューン方面からモンスターの襲撃が多いんです。もしかしたら、ノーアトューンも危険ではないかと。」
「そうなのか!?ならすぐにでも行ったほうが。」
「そうなんですが、フォールクヴァングも危険に晒すわけには。」
ガチャッ!
ギルドのドアが開く。
「あ、ハンクさん。」
リサがハンクに気付く。
「おお、みんな。ちょうど良かった。」
村長のハンクが四人に近づく。
「ハンク、どうしたんだ?」
「ああ、急なんだが君らに直々に来た依頼があるんだ。」
バサッ。
ハンクが依頼用紙を出す。
「ノーアトューン鉱山の奪還?」
「そう。ノーアトューンの所有する鉱山が、モンスターによって占拠されてしまったらしい。あそこの金属がなければ、ここら一帯の鉱石の流通が途絶えてしまう。」
ハンクは紙を折り畳み、スノウに渡す。
「行ってきてはくれないか?」
「行くのは全然構いませんが、この村にモンスターが迫ってきたら……。」
「ヒメノ君、心配しないでくれ!我々も戦う力はある程度あるし、アトレウスさん達も呼ぶ予定だ。」
ムキッ!
ハンクは力こぶを作る。
「ヒメノちゃん!私たちもノーアトューンに行かないとでしたし、ハンクさんのお願いを聞きましょうよ!」
「う、うん。そうですね!」
カチャ、カチャ。
四人は装備を持ち、村の入り口に向かう。
「ノーアトューンの鍛冶屋に会うなら、これを持って行ってくれ。」
ハンクが緑の勾玉を取り出す。
「何だこれ?お守り?」
「まあ、そんなもんだ。これを見せれば話が早く進むはずさ。」
「ありがとう!ハンクさん!」
四人はハンクに別れを告げ、ノーアトューンに向かう。
「ノーアトューンはここから3時間くらいだったよな?」
「そうですね、途中休憩入れたとしても夕方までには着けますね。兄さん地図持ってます?」
「ああ、これか?」
スノウはヒメノに地図を渡す。
「村の本でこの地域に生息するモンスターを調べたんです。何か法則はあるかなと思って。」
「頭の良いヒメチンなら何か気付けたり??」
「まあ、脳筋のリサよりは可能性高いだろうなーー。」
ゴスッ!
リサの拳がスノウの横腹に直撃。
「何か、言った?」
「いや、なに、も。」
「先輩たち!ふざけてないで早く行きますよ!」
ヒメノは場をまとめる。
地図に記載されてるモンスターは、ブラックベアーにウォーウルフ、ラビットニードルがノーアトューン近くに生息する。
だが、ここ二週間はフォールクヴァングに出没している。
これは偶然か?それとも……。
新天地、ノーアトューンへ向けて四人の初めての旅はここから始まった。
♦︎♦︎♦︎
ところ変わりここは、ギムレー。
オーディン・シンのいる城。
王の間にオーディン・シン及び五体の人らしきものが並んでいる。
「オーディン様。
全身青い人間のようなものが膝をつく。
「ご苦労。早速だが、一人ノーアトューンに向かってもらう。行きたいものはいるか?」
「あ、じゃあ俺様が行きます!何人殺せばいいんです!!」
ドチャ、ドチャ。
赤い体をした鬼のようなものがはしゃぐ。
「そうだな、数はいくらでも良いがそこにいる鍛冶屋とその周辺を抹殺してこい。」
「OKです!全滅させればいいんですね!早速行ってきます!」
赤い鬼はダッシュで城から出る。
「全く、騒々しいな相変わらず。まあ、せいぜい足掻くのだなホープよ。
スノウ達の元に、危険が迫っていた。
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