第三話 特殊能力と黒服の男

ドゴーンッ!

スノウとヒメノは背後から何かの気配を感じる。


「この感じ、リサとユキナも!」

「みたいですねーー、っ!兄さん前!」

「グォォ!!」


ブンッ!

スノウに向けてオークが足蹴りを見舞う。


「くそっ、間に合わなーー。」

「させません!! 鮫派一式コウハイッシキ! 断鮫だんこう!」


ガゴーンッ!

ユキナは両手でオークの蹴りを受け止める。


「私の大切な仲間は、傷つけさせない!」

オークの蹴りを弾き変えす。


ズザッ!

「後は任せて! 虎派一式コハイッシキ! 猛虎モウコ!」

リサの握った拳で、オークの頭を潰す。


コロンッ。

青いクリスタルが落ちる。


その場に少しの静かな時間が。


「流石だな。助かったぜ、ユキナ、リサ。」

「あ、いや、別に先輩のためとかじゃないですから……。」

ユキナはもじもじする。


「出た!ユキチンのツンデレ!」

「ちょっとリサさん!誰がツンデレですか!」

四人に多少のゆとりが生まれる。


「これで全員戦う力が手に入ったな。」

「そうですね、兄さんはこれからもっと進むべきだと思いますか?」

スノウとヒメノは話し合う。


「そうだな、言いたいことは分かる。この先何か嫌な気配がぷんぷんするしな。」

「でも、あたしもユキチンも力使えるし、ここがどこか調べたほうがいいんじゃない?」


リサは奥を見つめる。

(この先、500mくらいにあいつらがいる。)


「リサさんどうしました?」

「ユキチン、ここから500mくらい先にやつらいるから、少し警戒して。」

「そんなに奥が見えるんですか?」


ユキナはリサの目を覗く。


「えほっ、えほっ、何この匂い。」

「え、匂い?」

「はい、リサさんの言うこの先から嫌な匂いがします。」

ユキナもリサも自分の特徴に気づく。


「なるほどな、俺たちは何かしらに特化してるみたいだな。例えば、俺は感覚、ヒメノは音、リサは眼、ユキナは鼻ってところか。」

「これがあたしたちの特殊な武器ってところかな?」

リサは目を大きく開いて周りを見渡す。


「それと、あの化け物の匂いに混ざって金属の匂いがする部屋が近くにあります。」

「金属?剣とか防具とかあるんですかね?」

ヒメノは通路の先を見る。


「使えるものだとしたら損はないな、ユキナ案内してくれ。」

「分かりました。」


タッタッタッ。

四人は走って金属の匂いがする部屋に向かう。


「ここです。」

「OK、あたしが開けるね。」

リサがゆっくりとドアを押す。


ギィー。


「おお!こりゃいいな!」

スノウは目を輝かせる。


そこにはたくさんの武器が格納されている。

剣、槍、盾、ハンマー、その他もろもろ。


「使いやすそうなの探しましょうか。たくさんありすぎて、目移りしますが。」

ヒメノは冷静に触れて確かめていく。


「どれがいいかな!ねえねえ!ユキチンはどんなのがいいと思う?」

「え、リサさんは力が強そうですし……。」

「斧でも持たせとけばいいだろ。」


シラー。

スノウの発した言葉で場が凍る。


「それは、どういうこと?」

リサが手を鳴らしながらスノウに寄る。


「あ、いや、力をうまく使えそうかなってさ、はははーー」

「つまり、あたしみたいなゴリラ女には斧がお似合いってこと?」

リサの顔がまさしく虎のように怖くなる。


「いや、その、すみませんでした。」

スノウは怯えて頭を下げる。


「兄さん、リサさん、時間ないんですから早く探しますよ。」

ヒメノが仲裁する。


「それじゃ、俺はこれかな!」

スノウは二本の刀を手に持つ。


「兄さんの珍しい武器ですね、刃が片方にしかついてないですし。」

ヒメノはマジマジと見る。


「まあ、なんとなくこれが使いやすそうだし何よりカッコいい!」

「あたしもスノウと同じ剣だよ!ほら!」

リサは2m以上ある長い剣を手に持つ。


「なんですかそれ!長すぎませんか?」

「ユキチン分かってないな、長ければ長いほどあたしの力を全体に乗せらるんだよ!」

「あ、ああ、なるほど。」

(リサさん、もしかしてバカの人?)


「ヒメノのそれはなんだ?ブーツ?」

「そうです!履いてみたら、私のなんじゃないかってくらいぴったしで!」

ヒメノの靴は鉄製であり、見た目以上に軽い。


「私はこれにします!」

「ユキナちゃんのは槍ですね!」

銀色の槍で、手持ちの部分に青いテープが巻かれている。


「よし、これで一応は揃ったしこのまま先にーー。」

スノウは扉の方に気配を感じる。


(嘘だろ、さっきまでそこには誰もーー。)


「誰だ!」

「しまった……。」


スタタタタッ。


「おい!待てっ!」

高速で逃げる人影。全身黒ずくめで顔は視認できなかった。



「兄さん!今のって。」

「ああ、気づくのに遅れたが同じ人間だった。」

四人は黒ずくめのいた場所まで走る。


「誰もいないね、あたしの目にも映らない。」

「私もなんの匂いも感じません。」

リサとユキナは力を試していた。


「まあ、気にしてもしょうがねえ。とりあえず先に向かおう。」


スタッ、スタッ、スタッ。

スノウたちは次の部屋に向かう。



♦︎♦︎


スタタタタッ。



「ふぅー。あいつら、やっぱり生きててくれたか。」

男はフードをとって息を整える。


顔には無数の傷、50歳くらいの風貌で、腰には錫杖を下げている。

「少し期待させてくれよ、俺たちの希望たち。」


その男も歩き始める。スノウ達が向かう場所に。


「オーディン、せいぜい油断して王座に座ってろ。お前が悔いる日は遠くない。」


その男は、ニヤリと笑いマントを払った。

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