第百話 新しい地へ

スサーッ。

風がスノウとセラの髪を揺らす。


その二人の顔には、固い決意が宿っていた。



「兄さん!セラさん!」


タッタッタッ。

ヒメノ、ユキナ、リサが門まで走り寄る。



「おう、これで揃ったな。」

「はい!兄さん達早いから急いで準備したんですよ!」

「ごめんね、ヒメちゃん。少し焦ってたのかも。」

「いえいえ!責めてるわけじゃなくて……でも、セラさんもそういう一面あってホッとしてます。」


ヒメノは胸を撫で下ろす。


「え?なんで?」

「だって、セラチンあたし達の前じゃ全く取り乱さないから、完璧女子みたいに見えちゃってさ!でも、おっちょこちょいな一面があって安心したの!はい、これ!」


リサの手には、セラが常に右腕につけているアクセサリーが。


「あっ!セラのベルト!何で忘れたんだろ?」

「セラさんすごい急ぎ足でしたから、その時に落としたのかと。」

「そっか、ありがとうねみんな!あと、セラもみんなと同じただの女の子だよ!仲間外れにされたら、セラ泣いちゃう!」

「たまに泣くくらいはいいんじゃねえか?」


シャキーンッ。

セラの冷たい視線がスノウに刺さる。


(やべっ!何か間違えたっぽい!)

「よ、よーし!全員集まったし、行くか!」


タタタタタッ。

スノウは足早にその場を離れる。


「あ!逃げた!ねえみんな、女心のおの字も理解できないお兄どう思う!?後で教育しなきゃ!」


タタタタタッ。

セラもスノウの後を追う。


「うふふ、仲の良い双子ですね。私たちも行きましょう!リサさん!ユキナちゃん!」

「そうだね!」

「はい!」


タッタッタッ。

ホープの五人はヒミンビョルグに向かい始めた。



ここからは、ホープは五人で行動することとなった。




「ヒミンビョルグってここから近いんだったよな?」

「そうみたい。あたし達がいたグリトニルからだいたい一時間くらいだって!」

「なら途中でお茶したいな!ヒメちゃん、何かお菓子もらってたよね?」

「はい!ルカさんからグリトニルで人気な、甘い芋を使ったお菓子もらいました!途中で食べましょう!」


スタッ、スタッ、スタッ。

ホープの五人はいつも通り歩いていく。


「あの、先輩。一つ聞いてもいいですか?」

「なんだ?」

「セドリックさん、何を抱え込んでたんですか?すごい苦しそうな顔をしてました。」


ユキナはセドリックがグリトニルでいなくなる時の表情を思い出す。


確かに、彼がいなくなる時は顔をしかめ何かを考え込んでいるようだった。



「それは、俺にも分からないんだ。俺にも打ち明けてはもらえなかった。ただ、俺たちが想像もできないような大きなことなのは予想はつく。」

「セドリックさんとても真面目ですから、背負いすぎて自分を傷つけてなければいいんですが。」

「まあ、できるだけあいつのところに早く向かおう。後悔はしたくない。」


30分ほど歩き、少しの休憩に入る。


ズズズッ。

パキッ、パキッ。


さっぱりとしており、少し苦味のあるお茶と、甘い芋を潰してミルクと共に練り、焼いたお菓子をみんなで食べていた。


「美味しい!あたしこの味大好き!」

「本当に美味しいですね!私も作ってみたいです!」

「ヒメちゃんは料理好きだね!おかげさまで、美味しいものたくさん食べれて嬉しいよ!」

「そんなそんな!照れますよ〜」


賑やかな会話が野原を包む。



「先輩、何を見てるんですか?」


遠くを見つめているスノウに、ユキナが声をかける。



「ん?いや、次の町でヴァルキュリア隊の歴史が分かるんだとしたら、もしかしたら現役のあいつらと会うかもしれないだろ?」

「確かにそうですね、でも、そこにはセドリックさんはいないでしょうね。」

「だよな、まあ、戦いにならなければ何でもいいけどな。」


パキッ。

スノウもお菓子を口に含む。



休憩を終えたホープは、ヒミンビョルグに近付いていた。



「リサ、ここから見えるか?」

「うん、あたしの目にはよく映ってるよ。特に何も違和感はない。」


リサの千里眼にはヒミンビョルグの町が見える。


「とりあえず行ってみるか。」


スタッ、スタッ、スタッ。

正門から中に入る。



「ずいぶん落ち着いた町だな。」

「そうだね、セラ達の通ってきた町の中で一番静かかもーー。」

「あ、あなた達は!」


ガサッ、ガサッ、ガサッ。

鎧が揺れる音と共に、数人走り寄る。


「あ、私たちに何かご用ですか?」

「申し遅れました、私たちはセドリック隊長の部下にしてあなた方ホープにブレイザブリクで助けられた者です。」

「ああ!あのデュポンが暴れた町のーー。」

「ちょっと!リサさん!」


ムグッ。

ヒメノがリサの口を抑える。


「いえ、いいんです。デュポン前隊長は、変わられてしまったのですから。」

「なあ、ヴァルキュリア隊について知りたいんだけど、お前達何か知らないか?」

「あ、それでしたらこの町の書庫に行って頂ければ。そこの管理人さんの、ラスさんがいろいろ詳しいですよ。」

「書庫か、分かった。ありがとうな。」


スタッ、スタッ、スタッ。

ホープの五人が動き始めると、



「あ、あの!」

「どうした?」

「あなた方と、セドリック隊長はどういう関係なのですか?」


セドリックの部下の兵士は心配そうな顔で見つめる。


「そんなの簡単だ、俺たちのだよ。」

「っ!……ありがとうございます。隊長も救われる時が近いかもしれないですね。」

「ん?それってどういう?」

「隊長は今、王国にと報告がありまして。」



セドリックの現状を知ったホープは、どうするのだろうか。

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