第二十七章 英雄は過去を知り、先へ進む

第百六十一話 二度目の襲来

スタタタタッ。

スノウを除くホープとホワイト隊は、ヴィーンゴルヴに保管されているクリスタルの部屋に向かっていた。


「アヤちゃん、どこに隠されてるか分かりますか?」

「正直勘ではあるけど、反対側の入り口近くに大広間があるの。その隣に、ガッチリ固定されてた部屋があるから、そこが怪しいかも!」

「じゃあ、まずはそこからですね。……兄さん。」


ヒメノがぼそっとこぼす。


「大丈夫だよ!スノウは正直かなりのバカで、鈍感な男だけど、あたし達を裏切ったことはない。だから、今回も信じよう!」

「……そうですね。私も、信じて待ちます。」

「よし、そしたらセラ達もしっかり仕事をーー。」


ピキーンッ!

セラの第六感が何かを知らせる。


(この先、危険!)


「みんな!止まって!」


ザザーッ!

セラの一声で全員が扉の目の前で止まる。


「どうしたんだい!?何かこの先に?」

「分からない、けど、何か嫌な感じがする。」

「さすが、セラくんの第六感だね。そしたら、僕が先頭で行くよ。」

「分かった、気を付けてね、セドくん。」


キィーッ。

ゆっくりとセドリックは扉を開ける。


ガシャンッ!

何かが上空より降りかかる。


「くっ! 戦騎術センキジュツ! ロク! 反射光リフレクター!」


ガギーンッ!

上から降りかかるものを光の盾で受け止める。


「任せて! 虎派八式コハハチシキ! 虎牙剛斬コガゴウザン!」


ドゴーンッ!

リサの重い一撃が、降り注いだものを砕く。


「岩?こんなのに潰されてたら、ぺちゃんこだったね。」

「まったくだ、ありがとうリサくん。」

「このくらい余裕だよ!」


スタッ、スタッ、スタッ。

皆ゆっくりと部屋の中に入る。



そこには、多くのテーブルや椅子が並べられ、食堂のような空間であった。


とても広く、憩いの場として使われてた形跡すら残っている。



「ここは、王国の食堂かな?」

「そうかもしれませんね、この並びとか家具、食堂で間違い無いですね。」

「こんなところに隠されてるのかい?」

「はい、確かこの部屋の端の方に。」


アヤセは反対の入り口近くにある扉を見つける。


「あれです!」

「本当にあった!それに、いかにもセラ達を含めて誰も入れたくないって雰囲気だね。」

「アヤちゃんさすが!」


その扉はガチガチに魔法で覆われており、結界のようになっている。



「よし、なら僕たちであそこをこじ開ければーー。」


ピキーンッ!

セドリックの危険感知アラートが発動する。


「何かくる!」


シュイーンッ!

ドスッ、ドスッ。


突如として闇のオーラが広がり、そこからノーアトューンで戦ったオーガが二体出てきた。



「おお、やっぱり来たか。作戦通りだな。」

「そりゃそうだ、オーディン様のお考えなのだから外れるわけがない。」

「あなた達は、あの時のオーガ!」


ヒメノの声と共に全員が武器を構える。


「よお、早くやり合おうぜ!」

「こっちはあまり戦いたくないんだけどね、セラ達急いでるから。」

「そう冷たいこと言うなよ、お楽しみはこれからだから!」


ジャギンッ!

オーガ二体は黒い大きな斧を構える。


「くそっ、やっぱりこうなるよね。みんな、準備して!」

「アヤちゃん、一つお願いしていい?」

「なに?」


コソコソッ。

ユキナはアヤセに耳打ちする。


「私たちがオーガをどうにかする。その間に、ホワイト隊であの扉を越えて、クリスタルを壊してもらえない?」

「え!?だけど、少しでも戦力は多い方が。」

「確かにそうだけど、あの二体はこの前戦ったばかりだから私たちに任せて!クリスタルも同じくらい危険だし、アヤちゃんに任せたいの。」

「……うん、分かった。絶対に、無理しないでね。」


スタタタタッ。

ホワイト隊は戦場から身を隠す。



「さあ!お楽しみの始まりだ!!」

「全然楽しみではないよ! 戦騎術センキジュツ! ! 剛衝斬ゴウショウザン!」


ガギーンッ!

斧とセドリックの剣がぶつかり合う。


「ふんっ!トップでない貴様も、やはり割とやるようだな!」

「じゃあ、お待ちかねのトップだよ! 虎派六式コハロクシキ! 円虎玉砕エンコギョクサイ!」


グルンッ!

バギーンッ!

リサの回転斬りが斧を弾き飛ばす。


「さあて、セドチン!二人の力見せちゃおうか!」

「ああ、こいつはここで倒す!」


セドリックとリサが同じオーガと対峙する。



「ほおっ、ならば俺はーー。」

「よそ見してたら危ないよ! 雷充填ライトニングチャージ! 希狼派三式キロウハサンシキ! 雷狼ライロウ!」


ビリリッ!ガギーンッ!

セラの素早い攻撃がオーガを襲う。


「ふんっ、その程度!」

「セラだけじゃないよ!ヒメちゃん!」

「はい! 鷹派一式オウハイッシキ! 三日月ミカヅキ!」


バギーンッ!

オーガの顎をヒメノのサマーソルトがとらえる。


「うぐっ、生意気な!」

「二人とも下がって! 開け! 水面ウォーターサーフェイス! 鮫派五式コウハゴシキ! 逆槍陣サカヤリノジン!」


ジャギンッ!

ザバーッ!

槍を地面に刺し、水の壁を生み出す。


シュンッ!

斧は水を切っただけで、セラ達はいない。


「ありがとう、ユキちゃん!」


三人はオーガから距離を取り、戦闘態勢に入る。


「あはは!楽しいぜ、やっぱり戦いはよ!!」

「そう思ってられるのも今のうちだよ!いくよ、ヒメちゃん!ユキちゃん!」


二体のオーガとの戦いの幕が切って落とされた。

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