第五十五話 怒りの解放、枷の外れる音
「ほう、人質か。これは厄介だな、うちの調査隊の要であるヴァルキュリア隊の隊長を持っていかれるとは。」
「だろうな、じゃあどうする。力づくでこいつを取り戻す力と覚悟はお前達にはあるか?」
「それは言うまでもない。ぬしらは、ここで全員死ぬ運命だ。」
ヒューンッ。
ロキは時計塔の上から、空間に吸い込まれるように姿を消す。
「え!?消えた!?」
「リサさん!前!」
「うがぁ!」
男が斧を振り回す。
「くそっ!
パキーンッ!
リサの長剣が斧を砕き飛ばす。
「ユキちゃん!ロキの匂いは追える!?」
「ちょっと待ってください!今やってみーー。」
パシュンッ!
ユキナの近くの家の屋根近くから、何かが風を切り迫る。
「このっ!
パリィン!
放たれた矢が叩き折られる。
「ありがとうございます、セラさん。」
「油断は禁物だよ、あいつ、どこからでも狙ってくる。」
「なら、あたしの眼で!」
リサは千里眼を使い空を見渡す。
が、何も動くものはない。
「嘘でしょ、本当に消えてる?透明になってるってこと?」
「まずは身の安全からだ!みんな、背を合わせて二人一組に!」
セドリックの号令と共に、二人ずつペアを作る。
「セラ!俺と来い!」
「オッケー!」
スノウとセラが背中合わせ。
そして、ヒメノとリサ、ユキナとセドリックが背中合わせになる。
「うがぁ!」
「あう、ああ!」
空から見えない矢が飛び交う中、町人達も武器を持って襲ってくる。
「くそっ、行動不能に出来ないんじゃキリがねえな。」
「でも、操るってことはロキが何か仕組んでるはず!セラ達がそれを探し出せれば!」
作戦を練ってる間も攻撃は止まない。
パシュンッ!パシュンッ!
カキーンッ!カキーンッ!
「このままじゃ、いずれ体力切れになってーー。」
ピーンッ。
ヒメノの地獄耳に何かが聞こえる。
ピンッ、ピーンッ!、ピン。
それは、何かを引くような、弦が張るような音。
(なんの音?何かが引っ張られてる?……もしかして!)
「リサさん!町の人たちの頭上を炎魔法で焼き斬ってください!」
「え?あ、わ、わかった! 敵を貫け!
リサの長剣に纏われた炎の龍が、爪で薙ぎ払うが如く空を切る。
パチッ!パチッ!パチッ!
バタンッ!バタンッ!
数名の町人が途端に地面に倒れこむ。
「な、なに何?何が起きたの!?」
「リサさんの炎で、操りの糸を焼き斬ったんです。もしかしたらとは思いましたが、この人たちは操り人形のようにロキに動かされてるんです!」
「さっすが!ヒメちゃん天才!」
リサの炎が襲った町人たちは確かに動かない。
「これで町の人は解決だね。後は、僕たちがどうやってロキを倒すか……。」
「それは、俺とセラに任せろ!」
「え、先輩何か作戦が?」
「ああ!俺たちなら、な!!」
スノウとセラは改めて背中をピッタリとくっつける。
「セラ、やりたいこと、分かるな?」
「もっちろん!セラに任せて!」
二人はおもむろに目を瞑る。
周りはザワザワしているはずだが、
スノウとセラの周りは水一滴の音がうるさいと感じるであろう雰囲気。
「先輩?なにをしてーー。」
パシュンッ!パシュンッ!
二つの矢がスノウとセラに飛んでいく。
「っ!兄さん!セラさん!危ないーー。」
シュッ、パキンッ!パキンッ!
第六感でしなやかに動いたスノウが矢を弾き飛ばす。
そして1秒もあけずに、
「
矢が飛んできた位置に向け、セラの斬撃が迫る。
バゴンッ!
「えほっ、えほっ。何故、的確に捉えられる?」
雷の斬撃がロキに直撃する。
「ロキが出てきた!今ならーー。」
「待ってくれリサくん!ここは、二人に任せよう。」
「え?」
リサの視点には、スノウとセラが静止してるため今にも斬られそうになっているのが映る。
「そういうことね!
リサはスノウ達の近くの人たちを押さえ込む。
「みんな!スノウとセラくんを守るように動こう!彼らの攻撃の射程に入らないように!」
「任せて!」
四人は、スノウとセラを囲むように配置する。
(やっぱり、こいつらは頼りになるな。)
(さすが、お兄の仲間達は信頼できる。)
「くそっ、拙者の力に勘づいたか。ならっ!100人全員集合や!!」
ピンッ!ピンッ!ピンッ!
町の中からぞろぞろと武器を持った人たちが襲ってくる。
「敵も本気出してきましたね。」
「でも、ユキナちゃん。これくらい私たちなら!」
「うん!切り抜けられます!」
四人は誰も傷つけないように、町人の行動を抑え、隙を見てリサが炎攻撃で糸を断ち斬る。
(ちっ、やたらと連携ができる。これが最強の戦士ーー。)
バゴンッ!バゴンッ!
「ぐはっ!」
ロキに氷の斬撃が二発直撃。
ドゴーンッ!
そのまま屋根の上に落ちる。
「さっすがお兄!」
「当たり前だろ!」
「ぐぬぬっ。」
ロキはふらつきながら立ち上がる。
「さあて、そろそろネタ切れじゃねえか。ロキ。」
「げほっ、げほっ。さあて、本当に追い詰めたつもりなのかな?」
ロキは右手を細かに動かし、
「た、助けて!」
「っ!?」
六人の後方から男の助け声が響く。
その男の手にはナイフが握られ、自分の腹に向けられている。
「何してるんですか!早くナイフを離して!」
「は、離せないんだ。あ、あぁ!」
「まさか、ロキ!」
セドリックがロキに向け怒号を飛ばす。
「ふははっ、これは、貴様らの罪よ!」
「っ!?やめろっ!!」
シュンッ!
スノウがナイフを腹に向ける男に向かって飛び出す。
「あ、あぁ!助けーー。」
まだホープの戦いは終わらない。
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