第五十四話 射神の罠

☆セクヴァベック……防具職人の町で、ハリソンが町長を務める防具やアクセサリーの加工士達が多くいる。

普段から、フリーマーケットなどが開かれ賑やかな場所。




のはずだが、



「セラ、セドリック、ここが本当にセクヴァベックなのか?」

「うん、セラもここにきたことあるし場所は合ってるよ。……けど、何かが違う。」

「スノウ、僕もこの町の静けさは違和感しか感じない、調べてみよう。」


ズサッ、サッ、ズサッ。

六人は周りを警戒しながら歩き始める。



不安に駆られながら周りを見渡す。

それを後押しするかの如く、暗い雲が太陽を隠す。


キィーッ。


「っ!」

六人は武器に手をかける。


「ぁ、あっ。あ。」

「良かった、この町の人ですか?」

「ぁ、ああ。あ。」

ヒメノの質問に町の人は何も答えられない。


ただ、口をぱくぱくするのみ。


「先輩、あの人何か様子が……。」

「ああ、少なからず正常ではないーー。」


キィーッ。キィーッ。


あちこちの扉が開きその中から町の人たちが出てくる。

のそのそと、気怠げに。



「あのー、すみませーー。」

リサが町の人に近づいた瞬間、


「う、がぁ!!」

町の人たちはその手に剣や金槌、槍を持って襲ってくる。


「え、ちょ、ちょっと!」

「くそっ!」


ゴスンッ!

スノウは鞘を付けたまま刀を構え、剣を受け止める。


「おいっ、あんた!俺たちに争う意思はーー。」

「あ、あう、ええ。」

「っ!」


ズサッ!


武器を弾き、スノウは距離を取る。


「なんか変だ、あいつら。」

「お兄!」

「ああ!全員戦闘態勢!ただし、

「了解!」

他五人も武器を構え、襲いかかる町人達を応戦する。



「う、あぁ!」

「がぁ!」

町人達は混乱しているのだろうか。武器を振り回し、ホープを襲う。


「一体なんなの!?あたし達何か悪いことした!?」

「いや、リっちゃん、違うよ。この人達に、戦意はない。」

「え!?それじゃなんでこんなこと!」


ブオンッ!

斧が縦回転しながら飛んでくる。


カキーンッ!


「戦意がないというなら、この人達はってことかい?」

セドリックが斧を弾き返す。


ザザッ、ザザッ、ザザッ。


のそのそと一人、また一人と町人が迫ってくる。



「兄さん、どうしますか。」

ヒメノとスノウは背中を合わせる。


「まずは、動きを止める。全員!こいつらを行動不能にさせることだけを考えろ!」


サッ!

スノウは風を切って走り込む。


「うぁ!」

「悪い、少し我慢してくれ。」


ゴスッ!


スノウは目の前の男のうなじを叩き、気絶させる。




襲撃されてから、二分ほど経過するがホープは違和感に気付く。



「はぁ、はぁ、ねえ、みんな。セラが思うにさ、本当に行動不能になった人いる?」

「セラさん、多分……いや、確実に減ってないですね。足音がひとつも消えないです。」

「だよね、てことは。」


ブワッ!

セラは近くにあったテーブルを投げる。


「うがぁ!」

三人ほど下敷きになり、動けなくなる。


「この人達は、ってのが正解かな。」

「でもセラチン!操るって、こんなに大勢をどうやって。」

「ユキちゃん!何か、この人たちとは違う匂いはない!?」

「さ、探してみます!」


ユキナは全神経を鼻に集中させる。


パシュンッ!

何かが空を切る。


その音をヒメノは捉えていた。

(何か、飛んでくる!)


「っ!ユキナちゃん!伏せてーー。」


バッ!


カキーンッ!


「せ、先輩!?」

「怪我はねえか、ユキナ。」

「は、はい。私は、なんとも。」

「そうか、良かった。」

スノウが飛んできた何かを抜刀し叩き落とした。


(今の攻撃、矢か?確実にユキナを殺しにきてた。)


「う、ぅあ!」

ぞろぞろと町民達が襲いくる。


「くっ!なんで、こんな!」

リサが三人の攻撃を受け止める。



パシュンッ!

再度、何かが空を切る。


狙いは、リサ。


「またかっ! 狼派一式ロウハイッシキ! 迅狼ジンロウ!」

スノウの足に血管が浮き出る。


バキーンッ!

そして、全速力の攻撃で飛んできたものを弾く。


「セラっ!」

「分かってる!あの時計塔の上! 雷充填ライトニングチャージ! 希狼派六式キロウハロクシキ! 雷電ライデン!」


ビリビリッ! ザンッ!


雷の斬撃が時計塔の上を目掛け駆け抜ける。


キィーンッ!

何も見えないその時計塔の上から、斬撃が空に弾かれる。


「ほう、さすがホープ。拙者を捉えるか。」

「うそっ!誰かいる!?」

「リサ!あいつは見えるか!」

「うん!任せて!」

リサは千里眼を使い敵の姿を捉える。


「紫の服に、バンダナみたいなの巻いてる。後は、う、浮いてる?」

「紫の服に、この奇妙な戦い方……まさかっ!」

「セドくん!誰かわかるの!?」


パシュンッ!パシュンッ!

二本、何かが空を切る。


「おっと。」

セラは華麗に飛んで避ける。


「その戦い方、君なんだろ!射神シャジンロキ!」

「おおっ、これは奇遇だ。リーンベル隊長。まさか、裏切ったと聞いてはいたが本当だとはな。」

「裏切った……僕は……。」

「何勝手なこと言ってんだ! 氷付与アイスエンチャント! 狼派二式ロウハニシキ! 蒼波ソウハ!」


シュンッ!シュンッ!

二つの氷の斬撃が風を切りロキに迫る。


カキンッ!カキンッ!

「ふん、ならばなんだと言うのだ。」

「簡単さ、このホープのだ。てめえら、ヴァルハラにいる奴らに自由に動かれるのは癪にさわるんでな!」

「スノウ……。」



五神のうちが一人、射神シャジンロキ。

ホープとの戦いは、これから一層激しさを増すのであった。

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