第百八話 不吉な進行

「あなたはここで待っていてください。」


ガチャンッ。

セドリックが牢屋に入れられる。


「なんでだ!なぜ、国王様にお会いすることが叶わない!僕は、ヴァルキュリア隊隊長、セドリック・リーンベルだぞ!」

「理由はお伝えできません。もうすぐ迎えが参りますが故、しばしこちらにて。」

「おいっ!待ってくれ!」


スタッ、スタッ、スタッ。

一人の兵士が牢屋から遠ざかる。



「くそっ!国王様から真実を聞きたいだけなのに、なぜ牢屋に連れて来られる。」


ドサッ。

セドリックは椅子に座る。



(マルクス君は、無事逃げられただろうか?そして、彼のおかげでデュポン前隊長が変わってしまった理由がわかった。彼も、人質を取られていたんだ。つまり、操られていたっていうのが正しい……。)


ガシャンッ。

セドリックは肘を膝の上につき、頭を抱える。


(もしかしたら彼だけではないかもしれない。国王側に人質を取られて無理やり従わされている者もいるはずだ。……もう一つ気になることとしたら、何がデュポン前隊長をあんな化け物にしたんだ?)


ブレイザブリクでメギンギョルズを嵌めることで力を得て、暴走したデュポンの姿が蘇る。


果たして、メギンギョルズとはどんな道具なのだろうか?



「まだまだ分からないことばかりだ。少しでも情報を集めて、どうにか。」



牢屋で待つこと30分。


スタッ、スタッ、スタッ。

ガチャンッ。


一人の人間が牢屋の扉を開く。


「出番だ、隊長さん。」

「……、はい。っ!?バルドル様!?」


ガチャッ。

セドリックは立ち上がり扉を開けた人間についていく。


牢屋に続く松明が、二人の顔を照らす。


「さあ、いきなりだが大事な仕事を頼むぞ。セドリック隊長。」


ニヤリッ。

バルドルは不適な笑みを浮かべる。


「お仕事ですか?それは、どういう。」


二人はある部屋に入り、対面する形で椅子に座る。



「簡単なことだ、君の力でホープを。」

「な、なぜですか!?ホープの彼らは王国で聞かされていたような、卑劣な人間ではありませんでした!」

「だから何だというのだ、王国にとって敵であることに変わりはないだろう。」


バルドルは至って冷静。

セドリックの発言を予想していたとすら感じられる。


「なぜ彼らを倒すことしか考えないのですか!手を取り合って、未来に向かって共に進むという選択肢もあるはずです!」

「そんなものは、俺たちにはない。ましてや、国王にそのようなこと言ってみろ、ただではすまんぞ。」

「ですが!彼らが何の罪を犯したというのです!記憶をなくしながらも、多くの人間たちを必死に助けてきました!むしろ、この国を滅ぼそうとしているのは、五神の方ーー。」

「それ以上言うようであれば、君の大切なものが消え去ることになるぞ。」


グッ。

セドリックは歯に力がはいる。


「……、分かりました。私の力で可能な限りホープに対抗してみます。それと、一つだけ教えて頂けませんか。なぜ、デュポン前隊長はあんな姿になったのですか?」

「ああ、メギンギョルズのことか。あれは俺が作り出した力を引き出すための生きたアクセサリーさ。ただ、力無き者には牙を剥いてしまう危険なものだがな。」

「まさか、それを使ってしまったデュポン前隊長は、そのメギンギョルズに命を取られたということですか?」

「そんなところだ、彼の力の無さには俺も期待不足だったよ。」


ハァー。

大きな溜息を吐く。


「あなたには、あの力を使うことでデュポン前隊長が命を失うことを分かってたんじゃないのですか!」

「もちろん、あいつでは使いこなせないことは分かっていたさ、もう少し活躍を期待したがな。」

「あなたは!人間の命をなんだと思ってるんですか!!命はみんな平等、おもちゃではないんですよ!」


セドリックは今までに聞いたことないような声で怒りを表す。


「もちろん、命とは大切なものだよ。デュポンの命が無くなったことで、俺たちの手駒が減っちまったんだからな。全く、残念で仕方ないよ。」

「あなたって人はーー。」

「そろそろおしゃべりは終わりにしようか、リーンベル隊長。君には、俺に歯向かえない理由があるんだから。さあ、作戦の説明だ。」

「くっ。」



セドリックはバルドルから今回の作戦について聞く。


「そんな!そんなことをしたら、多くの人の命が!」

「俺たちの目的のためだ、犠牲は仕方がない。」

「何でわざわざを仕掛けるのですか!僕には、理解ができません!」

「理解はしなくていい、ただ、従うだけでな。」


ボワッ。

バルドルは手から闇の炎を出す。


「そして君には、実験体になってもらうよ。さあ、俺を楽しませてくれ。フォールクヴァングの終わりと共に。」

「くっ……、すまない、みんな。」


セドリックは弱々しくバルドルに従う。



この五日後、セドリックは多くのクリスタルを携え、フォールクヴァングに進み始めた。



スノウ達ホープとの再会も、すぐそこに迫っていた。


ホープvsセドリック。


望まぬ戦いが始まってしまう。




第十七章 完


◆◆◆お礼・お願い◆◆◆


第十七章まで読んで頂きありがとうございました。


王国側の事情を知り、デュポンの暴走の真実も知りました。そして、セドリックはフォールクヴァングに侵攻を開始、ホープも向かっている。彼らがぶつかり合う時、何がどうなるのか……


スノウ達の今後を気になってくれる方!

セドリックvsホープの行方は!? 何がセドリックを縛っていたの!?

ホープの六人を応援してるぞ!


と思ってくださいましたら、

ぜひ、レビューや★評価とフォローをお願いします!


ここまで読んで頂きありがとうございます!今後とも宜しくお願いいたします!

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