第十三話 武神の武神による武神のための悦び

サァーッ。

洞窟に静かに風が吹く。


四人は狭い洞窟を歩く。


ツカッ、ツカッ、ツカッ。

鉱山なだけあり、所々にある松明がなければ暗闇の世界だ。


「こんな暗い場所じゃ、戦うのなんてごめんだな。」

「そうですね、兄さんの感覚、私の聴覚、リサさんの視覚、ユキナちゃんの嗅覚がかなり重要になりますね。」

先頭をリサ、スノウ。後方をヒメノ、ユキナで歩く。


「そろそろくるよ、みんな。」

リサが千里眼で敵を見つける。


「キシャア!」

「ゴァ!」

二種類の物体が動いてるのが見える。


「あのモンスターは?」

「オオムカデと、バッドデーモンかな。」


オオムカデは、全長2mあり皮膚が鉄のように硬い虫

バッドデーモンは、二足歩行し超音波で物を壊すコウモリである。


「リサさん、敵の数はどれくらいですか?」

「ざっと見えるだけで、30体くらい。」

「てことは、この先の広いところから先がモンスターの住処になってるんですね。」


カチャッ!

四人は戦闘体制に入る。


「いくぞ、3,2,1!」

スノウの合図と共に一斉に動く。


「?キシャァ!」

狼派一式ロウハイッシキ! 迅狼ジンロウ!」


シュンッ!シュンッ!シュンッ!

スノウの素早い攻撃は、オオムカデ三体を斬り裂く。


「クキャ!」

バッドデーモンが空を飛ぼうとする。


「させません! 鷹派二式オウハ二シキ! 鷹弾イーグルシュート!」


ブンッ!グシャンッ!

ヒメノの高速の蹴りが、二体のバッドデーモンを貫く。


「キキィィ!!」

オオムカデが動き出す。


「気付くのが遅かったよ! 虎派一式コハイッシキ! 猛虎モウコ!」


ブワッ!ザシュ!

リサの大きな一振りが、オオムカデを吹き飛ばす。


数体のモンスターは逃げ出す。


「行かせません! 鮫派三式コウハサンシキ! 破甲槍ハコウソウ!」


バゴンッ!

ユキナの槍の衝撃波で、戦闘不能となる。



ガギーンッ!ザシュッ!ドゴンッ!

四人はその後も軽快にモンスターを討伐する。


「クキャ!」

最後のオオムカデが倒れる。


「片付いたか。」

「そうですね。」

スノウとリサは周りを見る。


「特に音もしないですね。」

「私の鼻でも何も感じません。ふぅー」

ヒメノとユキナは肩の力を抜く。


「この光ってる石が鉱石か?」


カチッカチッ。

スノウは光る石に触れる。


「キレイですね、兄さん!これが加工されると私たちの武器になるなんて!」

「確かに、鍛冶屋さん達ってすごいんですね!」

リサとユキナはマジマジと鉱石を見る。


「この辺りも安全そうですし、報告に戻りましょうか。」

「そうですね、ユキナちゃん怪我ないですか?」

「大丈夫ですよ!みなさんも平気そうですね!」

四人は入口の方へ向かう。


「ノーアトューンにいる間に、俺たちの記憶のカケラ的なものを探しときたいな。」

「そうですね、一週間は滞在できますし何か手掛かりくらいはーー。」


ズンッ!!


この洞窟一帯に、何かの圧力を感じる。


「な、何!?」

リサは目を凝らす。


「特に変わった匂いはしません、でもなんか嫌な感じが……。」

「ああ、俺の感覚が危険信号出しまくりだ。」

四人は武器を構える。


ッサ!


何かが動く音がする。


「っ!きます!構えて!」

ヒメノが発するとともに、


スタッ。


四人の目の前に、赤い人間のようなものが突如現れる。

その赤い物には、角が二本生えており、赤い小鬼のような風貌。全身に切り傷が無数あるのも目立っている。


「誰だ、てめえは。」

「えほっ、えほっ。なにこれ、血の匂い?」

ユキナは咳き込む。


「おおっ!すごいね!大正解!」

赤い人型は腰からあるものを取り出す。


「んなっ……。」

「う、うそ。そんな……。」

赤い者の手には、人の首が。洞窟の前にいた人のものだ。


「これね!俺様のコレクション!いいだろう!」

赤い者はヘラヘラと笑う。


「分かってんのか、赤野郎。」

「え?赤野郎じゃないよ!俺様はフレイヤ!君らを殺す神の名前だよ!」

「何したか分かってるのかって聞いてんだ!!」

スノウは怒りを露わに、フレイヤに斬りかかる。


カキーンッ!


スノウの刀をフレイヤは腕で受け止める。

「いいスピードだね、でも、俺様には届かない!」

「んだと!」


フレイヤは逆手で、掌底突きをする。


ゴスッ。

「がはっ!」

スノウは吹き飛ばされ、壁にぶつかる。


「スノウ!このっ!ユキチン、合わせて!」

「は、はい!」

リサとユキナが突っ込む。


虎派八式コハハチシキ! 虎牙剛斬コガゴウザン!」

鮫派三式コウハサンシキ! 破甲槍ハコウソウ!」

二人の攻撃がフレイヤを襲う。


「きひひ!」


バキーンッ!

フレイヤは両腕で容易く受け止める。


「本当に君らが最強なの??」

「何、この力……きゃあ!」

リサは弾き返される。


「リサさん!ちっ! 鮫派一式コウハイッシキ! 断鮫ダンコウ!」

ユキナの重い一撃をフレイヤに放つ。


ブンッ!

「弱いよ、君たち。」

「うはっ。」

ユキナの攻撃は受け流され、さらに蹴り飛ばされる。


「何て強さなの、こんなやつに敵うわけーー。」

「ヒメノ!俺に続け!あいつを惹きつける!」

スノウはさらにスピードを上げる。


「兄さん!」

狼派四式ロウハヨンシキ! 牙突四閃ガトツシセン!」

「弱いっての!」

スノウの攻撃を上手くいなし、フレイヤは蹴り飛ばす。


「えほっ、えほっ。」


ポタッ、ポタッ。

スノウは血を流す。


「くっ! 鷹派二式オウハ二シキ! 鷹弾イーグルシュート!」


カキーンッ!


ヒメノの蹴りをフレイヤは人差し指だけで受け止める。


「お前は、最弱。」

「っ!」

「ヒメチン! 虎派一式コハイッシキ! 猛虎モウコ!」


バゴーンッ!

リサの攻撃でヒメノは離される。


「はあ、つまらない。」

鮫派三式コウハサンシキ! 破甲槍ハコウソウ!」

狼派一式ロウハイッシキ! 迅狼ジンロウ!」

ユキナとスノウの素早い連携で、フレイヤを攻撃する。


サクッ!

スノウの一撃はフレイヤからかすかに血を流させる。


「君らじゃ勝てないよ!!」

「うわー!」

フレイヤの回し蹴りで、三人は吹き飛ばされる。


スノウの刀がフレイヤの元に落ちる。


「こんなもの。」

パキンッ!


スノウの刀が踏み割られる。



ドスッ、ドスッ。

「俺様に傷つけたんだ、お前から殺してやるよ。」


フレイヤは倒れてるスノウの目の前に立つ。


「くそがっーー。」

「この刀、お前のだよな。なら、お前に返すよ、頭にな!」


刀がスノウの方を向き光る。

フレイヤはもう一本の刀を振り上げる。


「スノウ!」

「先輩!」

リサとユキナの声が響く。


「やめて!やめて!兄さん!!」


ヒメノの頭に過去の記憶らしきものが流れる。

誰かに置いて行かれる記憶だ。


(いやだ、いやだよ。もう、一人になりたくない。)

ヒメノは怯える。


(怖いですか、この瞬間が。)

(怖い、怖いよ。もう、失いたくない。もう、何も……。)

(なら、あなたが助けなさい。)

ヒメノは声に耳を傾けている。


(助けられるの?私に?)

(ええ、助けられるわ。私を使えば。でも、後戻りはできないわよ。)

(そんなの、必要ない!助けられる力があるなら、何も後悔しない!)


ヒメノがゆっくりと起き上がる。


「何だ、お前?」

「もう、何も失わない。私が、必ず、助ける!!」


ドゴーンッ!

ヒメノを紫の光が纏う。


彼女の肩から、紫色の翼が生える。そして、足が鷹の足のように尖ったものになる。


限界突破オーバードライブ! 開始オン!」


ヒメノの反撃が始まる。

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