第二百六話 神と神
バギーンッ!
スノウの刀とオーディンの光る拳がぶつかり合う。
「お前達は、私の元から離れていった。人間なんかを信じてな!」
「ここは人間が作り上げた世界だ、俺たちが奪っていい道理はない!!」
「それは、私たちのヴァルハラが奪われたのも同じことだろう!ヴァルハラに侵入してきたやつらのせいで、たくさんの同胞を失った!」
「俺たちの仲間がこんな形を望むとでも?確かに俺たちはいくつもの仲間を失った、けど、こんなやり方は間違ってる!」
ガギーンッ!ガギーンッ!
二人の武器がぶつかり合い、火花が散る。
「何が間違いか!私たちは、余所者にたくさんの命を奪われた。だから、私も同じようにこの世界を奪うのだ!」
「そんなことをして、何になる!悲しみの連鎖はどこかで断ち切らないといけない!俺たちが繰り返しては、もっとたくさんの悲しみが生まれる!」
「なぜ私達だけが辛い思いをしなくてはならない!やられたなら、やり返してもいいはずだ!
ズーンッ!
辺りの重力が増し、動きを遅くさせる。
「うぐっ、オーディン!お前は、一人じゃねえだろ!」
「黙れ!私は一人だ、いつも、いつまでも!だから、私が世界を作り、新たな仲間を生み出すのだ!」
「そんなこと、続けてはいけないの!
バリリリリッ!
ガギーンッ!
魔法を使う手を雷を纏った刀が弾く。
「くっ、ヴァール!お前まで!!」
「確かにあたし達はたくさんの苦しみを味わった。けど、それを人間にも経験させて何になるの!あたし達と同じ犠牲者を生み出さないために、手を取り合うんじゃいけないの?」
「そんなものを望んでは、私たちのような余所者は邪気にされる。そして、苦しみにもがきながら死んでいくのだ。」
「なんで勝手に決めつけるの!人間達は、そんなにひどい存在ではない!あたし達が語りかけたら、しっかり応えてくれる人もいる!」
ガゴーンッ!
ズザーッ!
ヴァールが衝撃波で吹き飛ばされる。
「ヴァール!」
ガシッ!
ヒメノがセラの体を支える。
「ありがとう、グリンカンビ。」
「いいえ、オーディン、あなたって神は!」
「ふんっ!夢物語をペラペラと話す神に、私は興味がない。早く死んでしまえ、裏切り者ーー。」
「ふざけるでないわ!
ボォォォ!!!
ガギーンッ!ガギーンッ!
炎の爪がオーディンを止める。
「グラニ、お前までなぜそっちに!」
「確かに、わしは他の種族を嫌っておる。じゃが、オーディン、お主のやり方にはちと違和感を感じたのじゃ。」
「違和感だと?どこにだ、私が作る世界に何を感じた!」
「それじゃよ。なぜ、一人で作ろうとするのじゃ?人間をすぐ信用できないのもわかる、なら、なぜわしら戦神だけでも信頼してくれなかった!!」
ガゴーンッ!
グラニに力負けしたオーディンが壁にぶつけられる。
「えほっ、えほっ。信頼か、そんなものはとうに捨てたのさ!神が神でいられる世界を作れるためなら、なんでもしてやる!」
「そんなことしはったら、あんたの周りは誰もついてこないよ。
ザプーンッ!!
ガギーンッ!
槍から生まれた大きな鮫が、オーディンを喰らわんとする。
「ヨルムンガンド!お前は戦いが嫌いなはず!なぜわざわざ争うことを望む!」
「確かにうちは争いが嫌いや。……けど、人間達は、ホープのみんなはうちらにとても暖かかった。あんたにも分けてやりたいわ、オーディン。」
「そんなものは必要ない!私は、一人でやっていけるわ!」
「どんな生き物でも、一人では何もできない。あんたもそれは感じてるやろ!」
ガゴーンッ!
隙をつかれたユキナに足蹴りが入る。
「えほっ、オーディン。あんたは思い出すべきや、仲間とは何かを!」
「そんなものは、生きる力を持たぬ弱者が作り出したまやかしよ!頼ることでしか生きていけない弱者に、私はなるつもりはない!」
「ふざけないでください!お互いが支え合うから私たちのヴァルハラも出来上がってたのでしょう!
ガギーンッ!ガギーンッ!
ヒメノの空からの二連蹴りがオーディンに直撃。
「うごっ!グリンカンビ、お前の大切な仲間も侵攻してきた奴らに殺され、ギムレーでも散っていったであろう!なのになぜ手を貸す!」
「人間が、アトリ様が初めに手を差し伸べてくださらなければ、私たちはもっと前に死んでいました。だから、恩返しがしたいのです!」
「恩だと?アトリはもう死んだ!いないものに恩を返すことはできぬ、ならば、アトリの意思を継いで世界を続けてやるのが私たちの役目だろ!」
「それは違います!ギムレーには、ミーミル様がいます。私たちは、彼をお支えすることこそが、最大の恩返しになるのです!」
シュイーンッ!
バァァンッ!
光の爆発がどこからともなくホープを襲う。
「なんだ!?」
「なるほどな、私にもわかったぞ。……戦神よ、やはりお前達は私の敵だ!」
シューンッ。
オーディンの体から光が抜ける。
そして、
ドゴーンッ!
突如として、オーディンの体から闇の力が溢れ出る。
「なっ!?光魔法を使ってたオーディンから闇魔法!?そんなことあり得るのか?」
「セドリック、あれは、逆転の力だ。オーディンは光の魔法使い、光とは闇と対にある存在、光を完全に出し尽くすことで、闇の力を受け入れたんだ。」
「そんなことが、けど、適性がない魔法を使うなんて、オーディンの体が。」
「ああ、あいつは、自分が自分じゃなくなることを覚悟で仕掛けてきてる。くそっ!」
ズザッ!
ホープ六人が集まる。
「はははっ!これが闇、光の対の力!最高だ、最高ではないか!」
バゴーンッ!
光の力以上に強い闇の力を発動する。
オーディンはさらに危険な存在となってしまった。
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