第三十二話 長との対面、不穏な気配

「さあて、お互いのことも少しは理解できたし今日はお開きにするか!」

「ああ、楽しかったよスティング。ありがとう。」

「ごちそうさまでした!」

テーブルの上には、空いた皿が16枚。


半分以上はリサのお腹の中に消えていった。


「明日、うちの町長にあいさつでも行っておくか?その方が動きやすいだろ。」

「そうですね、私たちもお会いできるならお願いしたいです。」

「了解した。隊長の俺に任せておけ!」

スティングは酔って寝てるアウルを担ぐ。


「じゃあまた明日な!」

「お兄さん、お姉さん、ばいばーい。」

スティングとライラは帰路につく。


「あたし達も帰ろ!」

「そうですね!リサさんまた食べ過ぎでは?」

「ユキチンみたいな、グラマーになるには必要な栄養よ!」

ユキナとリサはいつもの会話をしている。


「なあ、ヒメノ。IWSの構造、分かってはいるつもりだが、あれで体に負担はないと思うか?」

「正直、負担は大きいと思います。仮に、今以上の力を使えるようにしたら、体が壊れてしまいますよ。」

「だよな、スティングとアウルは訓練されてるから多少はマシって感じか。なら、他の村とかに配備されてないのは合点がいくな。」


四人は宿屋につき別々の部屋に入る。


「ふー。やっと一息つける。」

ヒメノはベッドに横になる。


「風魔法を使って、部分的に強化。私の風槍ウインドランスを体中に発生させてるってのと同じなら、私には耐えれない負荷になる。」

ヒメノは考え始める。


「あれが本当に完成品?ゴブリンは倒せても、オーククラスが出たらどうか分からない。でも今以上のものを作っても、使いこなせる人はいない。どこがになるんだろ。」

深く考えようとするが、疲れも溜まっておりヒメノ達は眠りにつく。



次の日。



「全員揃ったな?」

「はい。いつでもOKです、兄さん。」

「それじゃ、スティングのところに行くか。」

スノウ達は昨日の酒場に向かう。


「おう!ホープ!」

「おはよう、スティング。」

「思ったけど、スノウ常に呼び捨てなんだな。敬語とか苦手系か?」

「はい!兄さんは、大の敬語苦手人間です!」

スノウはうるせえと言わんばかりに、酒場に入る。


「おお、君たちが世界を救ってくれた英雄。ヘルクリスマスを終わらせたトップ達か。」

「ああ。あんたが町長か?」

「いかにも。わたしは、ヴァルヴァ・ヴァン。この町の長にしてIWSの開発者だ。」


ヴァルヴァ・ヴァン 40歳 男性

歳の割には白髪が多く、丸渕メガネがよく似合う。


「え、ヴァルヴァチン自らあの兵器を開発されたんですか?」

「ん?うむ、そうだ、あれはわたしとわたしの助手で作り上げた最高傑作さ。」

「すごい!そういえばヒメチン、何か聞きたいことあるんだったよね?」

ヒメノが町長の前に歩み寄る。


「ヴァルヴァ町長、率直にお伺いします。あれは、人の体にとって問題のない武器なのですか?」

「もちろん!あれは試行に試行を重ねて、やっと辿り着いた人類の。まだ改善もしていくが、今のままでもゴブリンとまともにやりあえる。」

「そうですか、そう聞けて安心しました。」

ヒメノは距離を取る。


「君らもまだここに来たばかりだろ。ゆっくりしていきなされ。」

「はい、ありがとうございます。」

ユキナがお礼を言い頭を下げる。



……その瞬間、


「うっ!えほっ、えほっ。」

「ユ、ユキチン!?大丈夫!?」

「は、はい。ちょっと、むせてしまっただけです。」

ユキナは少し辛そうな顔をする。


「町長、自分が彼らにこの町を案内しようと思います。よろしいでしょうか?」

「そうじゃな。スティング隊長になら、安心して任せられる。」

ホープとスティングの五人は酒場を後にして、市場の方へ向かう。


「先輩、耳貸してもらえますか?」

「ん?どうした?」

「先ほどなんですが、町長の体からすごい濃いがしました。」

スノウは立ち止まる。


「やっぱりか。あの野郎。」

「え?先輩も気付いてたのですか?」

「いや、血の匂いは分からなかった。ただ、会った瞬間に俺も第六感シックスセンスが働いてな、何かを隠してるってのは何となく分かった。」

二人は違和感に気付いていた。


「でも、情報が少なすぎますね。もう少し何かーー。」


ウィーン!ウィーン!


また警報が鳴り響く。


「な、またか!」

「嘘だろ、二日連続で現れたことなんて今までなかったはずだぞ。」

「来ちゃったものはしょうがない!俺たちが先いくから、スティング達も頼むぜ!」

「分かった!」


スノウとユキナは正門へ。

ヒメノとリサは裏門へ向かう。


「なんか胸騒ぎがする。ユキナ、早く終わらせてもう一回町長に会いにいくぞ。」

「分かりました!私も確認したいので。」



スティングはブラック隊の建物に入る。


「アウルはまだか、なら俺だけ先に。」

「スティング兄、また行くの?」

「ライラ、ああ。この町を守ってくる!」

「分かった、気をつけて。」

スティングも正門へ向かう。



タッ、タッ、タッ。

アウルもブラック隊の建物に向け走る。


「あ、アウルくん。ちょうどいいところに。」

「え、町長?何です?俺、早く行かないと。」

「君には、さらにいいものを与えるよ。」

「いいもの……?」

アウルは町長について行く。


ホープとブラック隊、ファンサリルを守る戦いが始まろうとしていた。

……一つ、不安を抱えながら。

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