第百二話 戦乙女との邂逅
ホープの五人は、ラスからヴァルキュリア隊についての情報を得ていた。
「なるほどな、デュポンが変わっちまったってのは本当だったのか。」
「そうらしい、少なからず子供の頃からデュポンさんのそばにいたセドリック隊長はよく分かっていたのだろう。」
「そういや、あいつ言ってたんだよ。デュポンから、命はおもちゃじゃないって学んだって。」
ブレイザブリクで、デュポンの亡骸を前にセドリックがこぼした言葉。
「それは、デュポンさんは本当に命の重さを知っている人だったからだろう。彼が、ヴァルキュリア隊を率いてる中で何人もの仲間を失ったはずだから。」
「モンスターによってですか?」
「それもあるだろうが、五神に逆らって消された人も多いだろう。」
「どういこと!?」
バンッ!
リサは勢いよく立ち上がり、椅子が動く。
「そのままじゃ。神に歯向かった人間達は邪魔者として処分されるんじゃ。」
「あの神達、そんなことまで!?」
「許せない、何の罪もない人たちを。」
ギリリッ。
セラの歯に力が入る。
「そうまでして、オーディンはこの国が欲しいのか?」
「そうなんじゃろうな。だが、そう容易くは渡さないようにアトリ様は何か策を打った。」
「
「そう、やつの肉体支配を使えば力を奪うことは可能じゃ。」
肉体支配、つまりはその人間を自分の思うように扱える。
自分の力にすることと同義になる。
「厄介な能力だな。オーディンの周りに歯向かったら消されて、従うっていえばオーディンのいいように使われる。最悪な王だ。」
「同意見じゃ。じゃから、ヴァルキュリア隊の中でも国王の行動に疑問を持つ者もいる。そやつらと、協力できればもしくは未来も明るいかもしれんが。」
「確かに、セラ達はスノトラさんってヴァルキリーから依頼を受けてるんです。ゴブリン達を生み出すクリスタルを集めるように。」
「おお。確かに彼女はセドリックに絶大な信頼を持っておったな。」
ガチャガチャ。
書庫の外で何か物音がする。
「誰だ!?」
「ここに来る者は、彼女達しかおらん……。逃げよ!ホープよ!」
「ですが!」
キィーッ。
ガシャッ、ガシャッ。
書庫の扉が開かれ、鎧を着た三人が入ってくる。
「失礼します。ラス様、こちらにいらっしゃいますか……っ!?ホープ!?」
「お前は!?エルムトの祠で会ったスノトラ!?」
扉から入ってきた先頭に立っていたのは、エルムトの祠で会ったスノトラであった。
「何止まってるんだい、スノトラ?」
「あたし達まで入れませんですわよ……っ!?」
続けて入ってくる二人の戦乙女の目にスノウ達が映る。
ガチャ。
二人の戦乙女は武器を取ろうとする。
「なぜホープがここに!この町まで襲うつもり!」
「待て、彼らはそんなことをする人では!」
「スノトラさん、騙されてはいけません。ここで排除しなくては!」
「待てよ、戦乙女さん達。」
スサッ。
スノウが冷静に立ち上がる。
「ここで暴れるのはお互いにとって何も生まないだろ、被害が出ても平気な外まで動かないか?武器は抜かないと誓うさ。」
スノウは二つの刀を鞘に入れたまま手のひらにのせる。
「……まあ、その意見には同意だ。いいだろう、貴様の案にのろう。この先の広間まで来い。」
ガチャガチャ。
戦乙女達は書庫から出ていく。
「ま、待って!あなたはスノウさんだろ、お互いに話をーー。」
スタッ、スタッ、スタッ。
スノウはスノトラの隣を歩き過ぎる時に、
「俺に合わせろ。」
と、一言だけ言い残し書庫から出ていく。
「……、分かった。」
ガチャガチャ。
スノトラも部屋を出る。
「行きましょう!兄さんを追わないと!」
「ホープ諸君、彼女達は……。」
ラスが何かを言いかけ、口を閉じる。
「大丈夫!安心してください!絶対に誰も死にません!!」
セラが何かを察しラスに声をかける。
「わ、わかった。終わったら、話させてくれ。」
「了解です!では、私たちも。」
スタタタタッ。
ヒメノを先頭にホープも書庫から出る。
「頼むぞ、ホープ諸君。彼女達は……被害者なんだ。」
ラスは両手を重ね、祈りを捧げるように呟いた。
ところ変わり、町の近くにある大きな広場に戦乙女三人とホープは集まった。
「ここは、私たちが訓練によく使っていた場所だ。ここなら問題はない。さあ、大人しく捕まるか、あたし達に倒されるか決めるんだ。」
「なんでその二択しかないんだ?俺から三つ目の提案だ、手を組まないか?」
「ふざけたことを!」
ブンッ!
一人の戦乙女が剣を構え突進してくる。
「あたしがやらせてもらうよ!」
バキーンッ!
リサが剣を弾く。
「ほおっ、あんたがあたしの相手かい。」
「ええ、よろしくね。」
「私もお手伝いします!」
カチャッ。
ヒメノも加勢する。
「なら私は!」
「セラ達と遊んでね!」
ブンッ!
セラともう一人の戦乙女がぶつかり合う。
「セラさん!私もいきます!」
ユキナも槍を持ち戦闘態勢に入る。
「よお、スノトラ。まさか、ここで戦えるなんてな。」
「スノウさん、信じてます。」
ガチャッ。
スノウは刀を構え、スノトラも槍を構える。
戦乙女とホープの戦いが始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます