第百三十七話 隠された町への奇襲

ダダダダダッ!

スノウ達は魔法のカモフラージュから外に出て、辺りを見渡す。


「敵っぽいやつはいるか?」

「スンスンッ、っ!先輩、複数体先ほどは感じなかった匂いがあります、気をつけてください!」

「確かに、何かはいそうだけど全く見えないよ。どこにいるーー。」


ピキーンッ!

セラは何かを感じとり、刀を構える。

それと同時にスノウも刀を構えた。


「そこね! 雷充填ライトニングチャージ! 希狼派六式キロウハロクシキ! 雷電ライデン!」

「当たれ! 氷付与アイスエンチャント! 狼派二式ロウハニシキ! 蒼波ソウハ!」


ビリリッ!ビリリッ!

シュバンッ!シュバンッ!

雷と氷の斬撃が一直線上に飛んでいく。


ドゴーンッ!

何もないはずのところに斬撃が直撃し、爆発が起こる。


「な、なに!?あそこに何かいるの?」

「みたいだな、第六感がなかったら見逃しちゃうね。」

「でも何が……っ!!皆さん!見てください!」


ヒメノの声で全員が爆発した方を見る。


ブワワンッ、ブワワンッ。

何もないはずのところに、幻影のようなものが蠢く。


「グォォ!!!!」


そこから三体の新種のオークが出てくる。


全長は7m程ある銀色の個体、両手には金属製のグローブをはめている。顔部分に機械が取り付けられており、何かに操られてるように見える。


「おいおい、透明だったのか?バルドルの仕業だろうし、なんでもありじゃねえか。」

「かなり厄介そうだね、みんな気をつけよう。」


三体のオークがゆっくりと迫ってくる。


「よしっ、三チームに別れるぞ!俺、セドリック、セラがあいつらの位置を掴む!それをカバーしてくれ!」

「了解!」


ダダダダダッ!

六人が戦闘に入る。


「俺と来い!ユキナ!」

「はい!」



まずはスノウとユキナの戦い。


「グォォ!!」

ブンッ!ブンッ!


素早いパンチが迫ってくる。


「スピードもかなりあるな、死角からいくぞ!」

「分かりました!」


ズザーッ!

二人はスライディングでパンチを避け、足元に寄る。


狼派三式ロウハサンシキ! 瞬迅狼波シュンジンロウハ!」

鮫派三式コウハサンシキ! 破甲槍ハコウソウ!」


ジャギーンッ!

バゴーンッ!

スノウの居合斬りとユキナの衝撃波が両脇に突き刺さる。


「うぐっ、グオ!!」


ブルンッ!

回転して二人を遠ざけようとする。


「読めてるぜ! 狼派五式ロウハゴシキ! 円陣狼牙エンジンロウガ!」


ブンッ!

ズシャン!

ジャンプで頭上まで飛び、回転斬りを頭に入れる。


「次は私が! 鮫派四式コウハヨンシキ! 閃鮫センコウ!」

「グオッ!」


シュンッ!スカッ。

早い槍の突き攻撃が避けられる。


カチッ。

シューンッ。


「な、消えた!?」

「なるほどな、光学迷彩みたいなもんだ。質量ごと消せるわけじゃねえ、まだ近くにいるぞ!」

「でも、どこにーー。」


ブワッ!

ユキナの反応臭センサーに微かに金属の匂いが引っかかる。


(うっ、くる!)


バギーンッ!

「うぁ!!」


槍を防御用に構えていたが、オークの力はエグいものであった。


「ユキナっ!!」


ザザザザザッ!

ガシッ!ズザーッ!

吹き飛ばされたユキナを全速力でスノウが受け止める。


「えほっ、えほっ。すみません、先輩。」

「いいや、いい反応だった。下手したら、一発で体が粉々になりかねない。」

「そうですね、先輩、私を指示してもらえませんか?」

「ん?ああ、分かった!」


ピキーンッ!

二人は全神経を集中させ、常に感覚共有シンクロを発動する。


(こっちに来る、残り10mだ!)

(分かりました!)


ズザッ!

二人は真っ向から迎え打つ。


ブンッ!

何かが風を切る音がする。


「俺が止める! 氷付与アイスエンチャント! 狼派八式ロウハハチシキ! 氷華ヒョウカ!」


バキバキバキッ!

オークの攻撃をグローブごと氷漬けにして受け止める。


(重っ!ユキナ、任せる!)

(はい!)


「開け! 水面ウォーターサーフェイス! 鮫派七式コウハナナシキ! 鮫様舞シャークダンス!」


ブンッ!ジャギンッ!ジャギンッ!

鮫のように優雅に踊りながら槍で斬りつける。


「グギァ!」

「おわっ!」


ズザーッ!

痛みによって力を増した攻撃に、スノウが吹き飛ばされる。


(先輩!)

(大丈夫だ!っ!?ユキナ距離を取れ!狙われてるぞ!)


ブンッ!

再度拳がユキナを襲う。


「くっ!」


スンッ!

ユキナは前髪をグローブにかすめられるが、なんとか避ける。


「はあ、はあ、生きてることが奇跡に感じます。」


スノウもユキナもかなり疲労が溜まる。


それもそのはず、感覚共有シンクロを常に発動させ、全神経を集中させながらお互いに指示を出し合っている。

疲れないわけがない。



(長期戦は不利だ、一気に行くぞ!)

(任せてください!)


ズザッ!

二人は合流し、目の前にオークがいそうなところを見つめる。


(こっちに向かってきてる、だいたい10mだ。)

(やれるだけやりきりましょう!)

(ああ!)


ダッ!

二人は並び走って、迎え打つ。


ブンッ!

グローブが迫る。


(俺たちなら、こいつを倒せる!流派を極めた者が使える最後の技!)


氷付与アイスエンチャント! 狼派終式ロウハシュウシキ! 狼牙双刃乱舞ロウガソウジンランブ!」


バキバキバキッ!

ズシャン!ズシャン!ズシャン!

刀を氷が覆い、空中に氷を作り出し壁として使うように反射しながらオークを斬り刻む。


「合わせます! 私の、最後の技! 作り出せ! 水面ウォーターサーフェイス! 鮫派終式コウハシュウシキ! 鮫狂詩曲シャークラプソディ!」


ブシャンッ!

ジャギンッ!ジャギンッ!ジャギンッ!

水の槍を片手に生み出し、二本の槍でオークを斬り刻む。


そして、二人の高速な連続斬りはお互いがぶつからないように完璧に調和されており、オークは動くことすらできない。


「はぁぁぁ!!!!!」

「これで!終わりです!!」


二人の攻撃が完全に重なった。


氷水滅波コキュートス!」


ドゴーンッ!

オークは目にも留まらぬ連撃で為すすべなく倒れる。


ポトンッ。

クリスタルが地面に落ちる。


「えほっ、えほっ。あれ、力が、入らなーー。」

「ユキナ!」


ガシッ。

二人は武器を手から離し、スノウは力が抜けたユキナを支える。


「悪いな、無理させちまった。」

「いえ、私が望んだ戦いができました、助けてくれてありがとうございます。」

「いつでも助けるっての、次はユキナに傷をつけさせないようにしないとな。」

「べ、別にそこまでしなくても。」

んだよ。」


バッ。

ユキナはスノウから顔を背ける。


「どうした?」

「う、うるさいです、こっち向かないでください!」

「え?なんで?」

「なんでもです!」


オークを倒す方法は見出せたが、ユキナを攻略する方法は見出せないスノウであった。

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