第百五十九話 彼の最期
「な、なんだ!何が起きてる!?」
パキパキパキッ!!
あたり一面が氷で覆われる。
「おいおい、なんだこの空間は!?」
「俺の空間だ、フェンリルの力と俺の氷魔法、
「ははっ、やっぱり規格外なんだな、トップってのは。けどな、俺もオーディンの力をもらった最強の戦士!舐めるんじゃねえぞ!」
バキバキバキッ!
氷がサイファーの足元を凍らせる。
「な、なに!?」
「言っただろ、ここは俺の空間だって。それに、今のお前じゃ無理だ。」
「ふざけんなよ、白狼!!」
ドゴーンッ!
地面の氷を割り、サイファーはスノウに迫る。
「気付けよ、お前はもう終わりだ。」
「んなっ!?」
グワンッ。
サイファーが体勢を崩し、フラフラとする。
「な、なんだ?なんで、自由に動けない?」
「お前のその体は、もうお前のものじゃねえんだよ。」
「何言ってやがる!この最強の体が、遅れをとるわけーー。」
バリバリバリッ!
サイファーの切れた右腕から、闇の力がどんどん抜けていく。
「なんだ!?何が起きてーー。」
「もっと早く気付くべきだったんだ、メギンギョルズの危険さにな。」
「まさか、俺の体が!?」
シュイーンッ!
闇のオーラがサイファーを包み込む。
「嘘だ、ふざけるな、俺はまだ、まだやれる!」
「もうやめろ、サイファー。お前は、俺には勝てない。諦めて力を解放しろ。」
「そんなことしてたまるか、ここに、目の前に俺の仇がいるんだから!」
「そんなこと言ってる場合か!てめえは、このままじゃ死んじまうんだぞ!」
バキーンッ!
左手の闇の鎧も砕け散る。
「くそ、なら、最後の一撃でお前を殺す!」
「この馬鹿野郎が!」
「死ね!スノウ・アクセプト!!」
ブンッ!
サイファーが左手の尖った手でスノウの顔を刺そうと迫る。
「もうやめろ、お前の攻撃は。」
「油断してんじゃねえよ、スノウ!」
「これは油断じゃねえ、届かねえんだよ、お前の攻撃は。」
スンッ。
尖った手は、スノウの顔前で止まる。
「な、なんでだ、なぜ俺は、お前に勝てない!」
「そんなのてめえで考えろ、サイファー。」
ガタッ。
パリーンッ!
全身の闇の鎧が割れ、サイファーは倒れ込む。
「嘘だ、なんで。」
バタンッ。
息も絶え絶えにサイファーは地面に這いつくばる。
「ふぅ、
シューンッ。
スノウは元の状態に戻る。
二人の戦いは終わりを迎えた。
スノウはサイファーの顔を覗き込む。
「はぁ、はぁ、なあ、俺はこれから、どうなるんだ?」
「さあな、まあ、今までその力を使ったやつは力を扱い切れずに消されていったぞ。」
「そうか、はははっ。やっぱり、そんな簡単に力ってのは手に入らねえんだな。」
「当たり前だ、努力をした者の上にしか、成功ってのはふってこないんだ。」
スサッ。
スノウの手がサイファーの顔に触れる。
「ふっ、俺は甘えてたんだな。力を手に入れられるって聞いて、すぐに食いついちまった。」
「それがオーディンのやり方なんだろう。お前は、オーディンに騙されたんだ。」
「あいつに服従するつもりは元からなかった。けど、利用するつもりが利用されてたんだな。」
サイファーのメギンギョルズから、闇のオーラが溢れ出す。
「はあ、ここで死ぬのかーー。」
「そう簡単に死んでもらっちゃ困る。」
ブンッ!
カキーンッ!
スノウの刀がメギンギョルズを斬り落とす。
「な、なにを!?」
シューンッ。
闇のオーラは霧散していく。
「お前には、死ぬ前に教えてもらいたいことがあるんだ。」
「……いいぜ、俺にはもう選択する権利はねえんだから。」
サイファーは大人しくスノウのいうことに従う。
「サイファー、お前はオーディンと話したことがあるんだろ?」
「そうだな、力をもらうときに少しな。」
「オーディンは何をしたいんだ?なんで、人間の世界をあいつは乗っ取ろうとする?」
「さあな、けど、アトリがオーディンを変えたってのは聞いたことあるぜ。」
サイファーによると、前国王のアトリはオーディンにギムレーを乗っ取られないように対策をしていたようだ。
「どういうことだ?」
「俺も詳しくは分からねえ、けど、お前なら。」
ガシッ。
サイファーが左手でスノウの顔に触れる。
「な、なんだ?」
「オーディンから聞いたんだ、力を分け与えるということは、自分の記憶を渡すことに等しいってな。お前なら、その記憶を読み取れるんじゃねえか?」
「そんなことが俺にーー。」
シュイーンッ!
スノウの頭の中に何かが流れ込む。
「アトリ様、この国はもう人間で作り上げていくには腐敗しすぎてしまっている。いくらあなたがすごい方でも、これは変えられない。」
「確かに、今この国は変わらなきゃいけない時に来ている。しかし、君の意見は受け入れられない。」
「なぜですか!この世界のことを考えるのであれば、これが最善ーー。」
「だからといって、人間を全て消してこの世界を作り変えるのには賛成できない。」
スノウの中にアトリとオーディンの会話が流れ込んできていた。
二人の会話は、何を指しているのか。
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