第一章 記憶を失った英雄、復讐者となる

第一話 英雄、人生のリスタート

スノウはベッドの上で、周りを見渡す。


俺は、何をしてたんだ……。

なぜベッドにいる?

思い出せない、思い出せない。


子供の頃の記憶はある、多分6-7歳くらいまでの。

当然名前もわかる。俺は、スノウ・アクセプト。


「記憶喪失、ではない?でも、俺はさっきまで何してたんだ?」

スノウは頭を抱える。


「あれ、兄さん?」

ヒメノが前のベットから起き上がる。


「ああ、ヒメノ。おはよう。」

「おはようございます。ところでここは?」

ヒメノは周りを見渡す。


「俺にも分からない、それとヒメノはこれまでの記憶はあるか?」

「え、あれ?私はさっきまで何を?なんか部分的に覚えてないような。」

「やっぱりか、俺もないんだ。部分的にぽっかりと。」


スタッスタッスタッ。

スノウとヒメノは部屋から出る。


「何が起きてるんでしょうか?」

「さあな、とりあえず少し調べてみるか。」

少し歩いた隣の部屋から声が聞こえる。


「だから!ユキチンも記憶取られたんだよ!」

「ですが、にわかに信じがたいと言うか……。」

リサとユキナの声だ。


コンッコンッ。

スノウは壁をノックする。


「おい、二人とも!」

声をかけ部屋に入る。


「スノウ!ヒメチン!良かった、一緒で。」

「先輩達ももしかしてーー。」

リサとユキナは立ち上がる。


「ああ、そのまさかだ。俺たちも昨日からざっくり10年分くらいの記憶が欠けてる。」

「やはり。先輩達ともなると、私たち全員部分的に記憶喪失ってことですね。」

「そんなことありえるのか?まあ、とりあえず四人揃った。ここがどこだか少し調べてみようぜ。」


スタッスタッスタッ。

四人は警戒しつつ廊下を歩く。


「この施設も良く分からないし、この服も何?

なんか戦闘服みたい。」

リサは自分の服装に疑問を持つ。


全身黒服で、肩にはギムレーの国旗が貼られている。


「まずは、私たちがなぜ記憶がないのか手がかりがあればいいのですが……。」

ユキナはふと奥を見る。


「先輩たち、あそこ!広間みたいですよ!」

「よし、俺が先頭で行く、ついて来い。」


タッタッタッ。

スノウが先頭で広間に出る。




その瞬間ーー


ドカンッ!ドカンッ!


地響きに近い騒音がする。


「なんだよ、あれ!?」

スノウが指差すその先にいたのは



ゴブリン。

3mはあるであろう化け物。



「くそっ!撃て!撃て!」

一人の男性が声をかけると同時に、数人が矢を放つ。


カン、カン、カン。

ゴブリンは全く怯まない。


「うざいなお前ら。死ね。」


ブオンッ!

ゴブリンが手に持つ斧で軍人らしき人たちを蹴散らす。至る所に血飛沫が。


「うわー!!」

逃げ惑う軍人達。


「兄さん!逃げましょう!このままじゃ私たちも!」

「ああ、さっきの部屋までーー。」


ズキンッ!ズキンッ!


「うっ!」

スノウがしゃがみ込む。


「どうしたの!スノウ!」

リサが駆け寄る。


「なんだ、この痛み。頭が熱い、心臓が痛い。」


(目を覚ませ。)

スノウにどこからか声が聞こえてくる。


「誰だ!?」

「え?先輩と私たち以外には誰もーー。」

ユキナは周りを見る。


(お前は我の宿主、白狼フェンリルの戦士)


「うっ、やめろ!頭が!」

スノウはうずくまる。


「どうしたのよ!スノウ!」

「兄さん!しっかりして!」


(さあ呼べ!我の名を!)


「……フェン……リル?」


(契約完了コントラクトオン)


ゴォ!!!!!


スノウの体から青い光が登る。


「っ!離れて!」


ガシッ!

リサがユキナとヒメノを引き寄せる。


「げほっ、げほっ、俺は……戦士、あいつは……敵!」

スノウがゆっくりと立ち上がる。


「敵は、斬る!斬る!斬る!」

スノウが目にも止まらぬ速さで駆け出し、ゴブリンに突っ込む。


「なんだ、このガキ!」

ゴブリンは斧を振り下ろす。


ピキンッ!

(1.2秒後に俺に当たる。なら、右にまわり込む!)

スノウの第六感が発動する。


ブンッ!バキッ!

斧が床に食い込む。


「なに!?」

慌てるゴブリン。

その隙をスノウはついた。


狼派一式ロウハイッシキ! 迅狼ジンロウ!」


ドゴンッ!

スノウは右拳を思い切り振り抜く。

その一撃は、青い光と共にゴブリンの横腹を突く。


「ゲハッ!」


ポトンッ。

ゴブリンはその場に倒れ、白いクリスタルとなる。


「はあ、はあ、何だ?……俺が倒した?」

スノウは元に戻っている。


(なんだこの力?手が熱い、けど倒せた。それにあいつの動きがわかった?)


「兄さん!」

ヒメノ達三人が走り寄る。


「おう、みんな無事か?」

「私たちは無事だけど、それよりあんたよスノウ!何が起きたの!?」

リサが質問してくる。


「俺にも分からない。ただ、頭に声が響いてその声に応えたら今の力が使えて。」

「頭に声……先輩にだけその力はあるのでしょうか?」

ユキナは自分の拳を見るが、特に変わったことはない。


「分からない、けどなんとか出来そうだ。もっとヒントを探しに行こうぜ。」

「兄さんが無事ならいいですが、無理だけはしないでくださいね。」


四人は広間から続く道に向かう。


「うわー!化け物だ!」

「誰か、誰か救援を!」


さらに奥から悲痛な叫びが聞こえる。


(うっ、この先30mにあの化け物が二体いる。)

再度スノウの第六感が発動する。


「みんな気をつけろ、この先二体いる。」

「え、先輩そんなことわかるんですか?」

ユキナが質問する。


「なんとなくな、第六感的なやつだ。今は急ぐぞ!」

「ちょっと、スノウ!待ってよ!」


スタタタタッ。

四人は次の部屋に走り向かう。


♦︎♦︎


「ああ、これだこれが私の求めていた世界!」

王の間にいるイスに座ったオーディン。両隣にはでかいオークが佇んでいる。


「私の邪魔をするものは、もういない!最高の世界!新世界の誕生だ!」

オーディンは足を組み替える。


「さあさあ、もっと楽しませてくれよ。弱き人間達。」

オーディンはワインを飲む。


「弱者の足掻きは、滑稽だな。哀れや哀れ。ふははっ、ふはははは!!」


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