第81話 新日本政府の動向
街の案内は概ね順調に進められた。
そもそもダリウスとジーナは娘の住む街を見学したいだけであったので、特にこれといって行きたい場所はないそうだ。
浜岡は完全に付き添いと興味本位で来ただけなので、今回メインになるのはやはり備蓄担当兼料理班長である中野の買い出しだ。
まず最初に彼女が希望した場所はカーク商会のお店だ。
何はともあれ、まずは軍資金調達だそうだ。今回の為に中野はこの世界で珍しい野菜や果物をチョイスして持参していた。
店主であるカークは不在だったが、きちんと下働きの者に情報共有されていたのか、中野が持ち込んだ食材はどれも良い値で買い取ってくれた。
代わりに中野もあれこれ食材を購入していく。
「これ、出汁に使えそうね! あ、これも色が映えて良さそう!」
久しぶりに豊富な食材を目にした中野は、目を輝かせながら色々と購入していった。
次に向かったのは商人街にある服飾店だ。ただし、こちらはほとんど見るだけで終わった。
「た、高すぎる……」
「うーん、流石に手が出ないわねぇ」
中野とジーナは恨めしそうに金額の札を見つめていた。
この世界の嗜好品はどれも高額なのだ。庶民たちの服はシンプルで、自分たちで縫うか、古着だけで間に合わせる。
嗜好品と言えば、お酒なんかも販売しているが、そちらはそこまで高くもない。ただし安酒は不純物が多く、舌の肥えた地球人にとっては、お世辞にも美味しいとは言えない代物だ。
「まぁ、臭みを取るだけなら……これでもいいかな?」
お財布と相談して中野は何本かの安酒も購入した。
後は各エリアを見て回ってから、俺たちが寝泊まりしている≪翠楽停≫へと招き入れた。六人用の部屋なので八人だとベッドの数が足らないが、俺は寝袋を使い、シグネはジーナと一緒のベッドに寝て貰う。
「なんか、ベッド使わせて貰って悪いな、矢野君」
「久しぶりのベッドだろ? 遠慮せず使えよ」
俺のベッドは浜岡に譲った。
「あれ? 矢野君は佐瀬さんと一緒に寝ればいいじゃない。ベッド広いんだし」
「ちょっと中野先輩!? なに言っちゃってるんですか!!」
「え? 二人は付き合ってないの? もしかして……名波さんと?」
「ふえ? ち、違いますよぉ!」
なんか女子たちで恋バナを始めてしまった。同じ部屋で丸聞こえなのでとても居た堪れない。
「イッシン君。まさか……シグネとじゃないだろうねぇ?」
恋バナにまさかのダリウスさんが参戦!?
「んな訳ないでしょう!!」
そんなこんなで一夜が過ぎた。
メルキア大陸で覇を唱える大国、バハームト王国には、全ての魔法が記録されている魔法書が存在する。
一般的な魔導書は、火・水・雷・土・風のみ記載され、聖書は光属性のみ、死者の書は闇属性のみとなるが、魔法書は七種全ての属性がその一冊に記されている。
一般的には“魔導書”と呼称されているそれらは、神々から贈られた原初八十四の魔法は勿論の事、新たに人類が生み出した魔法も全て記録され続けている。
ただし、誰かが編み出したら即魔法名が載るという訳ではなく、それが“新たな魔法”として世界や神々から認められ、そこで初めて魔導書に記される……とされている。
未だ真相は分からず、王国が所有する魔法書でずっと研究は続けられてきたが、この日新たな魔法名が記載されているのを王国魔導士が気付いた。
「大臣! また新たな魔法が生まれました! その名も【マナウェーブ】! 習得人数は既に三名います!」
魔導書に記載されるのは、魔法名と現在習得している人数が記載される。後は番号も記載されているが、これは完全に魔導書に登録された順番だ。
今回の新魔法は『No.110 マナウェーブ 習得者:3名』と、魔法書にあるリストの一番下に付け加えられただけだ。
「ううむ、この1年の間で新魔法が三つも誕生するとは……やはり異世界人が開発したのだろうか?」
バハームト王国は魔法書の情報で、いち早く魔法取得者の人数が激増している異変に気が付き、割と早い段階で地球人たちとコンタクトを取っていた。
現在は一部の転移者たちと協力関係を取りつつあるが、中には王国に敵対的な集団も存在し、悩みの種ともなっている。一概に転移者と言っても思考や人種は様々なようだ。
「今年の冬にNo.108の【クリーンニング】、春過ぎにNo.109の【プラントコントロール】でしたか。【クリーニング】は再現出来ましたが……」
新魔法は魔導書に名前や習得人数が載るだけなので、それがどういった効果を持つのか、そもそも何の属性魔法なのかすら、初めは全く分からない有様だ。
唯一のヒントである魔法名を頼りに、試行錯誤を繰り返す他ないのだ。
「一番手っ取り早いのは、習得者から魔法を教わる事だが……【プラントコントロール】は五名、【マナウェーブ】はたった三名か……」
前者は植物を操る魔法だと思われるが、【マナウェーブ】の方はいまいちピンとこない名称だ。これは再現にかなりの時間を要しそうだ。
「習得者が少ないと言えば、元
神から贈られ、人類が生まれた時から存在していたとされる“原初八十四の魔法”は、そもそも番号が刻まれた状態で記載され続けてきた。
故に長い間、No.12とNo.60、それとNo.82は名前部分が空欄状態となっていた。それらを『
その
「当然だ! 【リザレクション】は間違いなく神級魔法だ。知っていても再現は難しかろう。王はそれよりも、未知の魔法を優先して解明せよとのお達しだ」
死者蘇生の魔法は確かに魅力的だが、王はそれよりも自分たちの知らない魔法が存在するのを避けたかったようだ。
魔法書を有するバハームト王国は、全ての魔法名を知れるというアドバンテージから、それらの知識に関しては周辺国より常に一歩先をリードしていた。
その優位性を失われ、敵対国から後れを取る事を王は懸念していたのだ。
「まずは【プラントコントロール】からだ。恐らく水か土属性辺りが濃厚だろうて。魔法適性のある異世界人を重宝せよ!」
「「ははぁっ!」」
世界は徐々に大きく動きつつあった。
地球人類が一斉に転移した際、日本政府の陣容は大きく変わりつつあった。
その大きな発端となったのが、小山小太郎内閣総理大臣による俗称「ロリコン総理の変」である。
異世界転移の際、少しでも情報が欲しい大事な局面で、事もあろうに日本を代表する小山総理から発言された質問内容は、「10才未満の女の子を嫁に貰うことはできますか?」だ。
この発言により日本国民だけでなく世界中のマスコミからも叩かれ、小山総理は転移前の僅かな時間で総理大臣の地位を辞職、政権は同政党内でもライバル的な存在であった蛭間大門総務大臣とその一派が引き継いだ。
蛭間総理大臣代理は転移した後に政権を見直し、新たに新日本国の樹立を宣言。皇族関係者の集団とは全く別の場所へ転移となった為、地球の時とは異なった形態の国が誕生した。
ただし、いきなり大統領だの新国王だの名乗り上げても、元日本国民たちが納得しないだろうと予想した蛭間は、新日本国の初代総理大臣として就任し、引き続き民主的な政治を継続する事を国民たちに誓っていた。
新日本国の滑り出しはそこそこ順調ではあった。
まず立地に恵まれ、周囲に魔物が少なく、広い平野部で近くには海もあった。ただし平野の周囲は深い森に囲まれており、そこには魔物がうじゃうじゃいる事から、新日本国政府はまず、平野部と森の浅い場所を開拓した。
そのお陰で居住区やインフラなどは最短で整備されてきたが、ここで一つ問題が生じた。森の中には魔物だけでなく、他種族が棲んでいる里があちこちに点在していた事が後から判明した。
その種族の大半がエルフ族か獣人族で、人族に分類される日本人は敬遠されがちであった。現地人との交流は思うように進まなかったのだ。
その最たる要因がエネルギー問題だ。
国造りを発展させる為に一番手っ取り早いエネルギーは火力発電だが、森や山を切り崩し、資源を燃やして街づくりをする日本人に対し、エルフ族は最大限に警戒を強めていた。
勿論、新日本政府も彼らと事を構えるつもりは毛頭なく、その点を指摘されてからは火力に代わる新たなエネルギーを模索し、そして魔法の力に着目し始めた。
そこで一気に研究を進められたのが新たな魔法科学技術、通称魔導エネルギーである。
主な動力源は魔物から採取される魔石で、そこに籠められている魔力を使い、既存の電化製品を動かしていこうという画期的なシステムである。
その実験は見事成功し、今では国内だけなら電気も通り、ネット回線も使用できる程だ。
資源は常に不足しがちだが、早い段階で鉱山や油田を見つけられたのが非常に大きい。ただし、それらも森の住人たちの反感を買う理由となっているので、あくまで最小限の採掘に留められている。
この世界ではレアメタルも多少はあるみたいだが、魔物の素材や未知の鉱石などで殆ど代用が利くのも大きかった。魔法の素材とはかなり汎用性があるようだ。
こうして資源問題は徐々に解決していったが、肝心要の動力部分である魔石だけが圧倒的に不足していったのだ。
「探索者制度は概ね好評ですね。既に募集人数が想定の3倍近く集まっております」
「まさか危険な外へ出たがる者が、そんなに多いとは……」
「まだまだ娯楽が不足しておりますからね。それとエルフ族の情報が漏れたのも要因かと……。彼らを一目見たいというマスコミやマニアの連中が煩いです」
「これ以上彼ら先住民との軋轢を生む要因は避けたい。エルフの里がある西側の森は立ち入り禁止にした方が宜しいでしょうか?」
「しかし、北部や南部の森は手強い魔物が多いと報告にもある。いきなり“探索者が大勢死にました”なんて事態は御免だぞ!」
「探索者資格を得る際の講習に、しっかり現地人との交流マナーを叩きこむ必要がありそうですな」
「試験内容をもっと上げても問題ないだろう? 倍以上の募集が来ているんだから、振るい落とすくらいで丁度良い」
「あー、そこで一つご報告があるのですが……」
一人の官僚が報告書を片手に挙手した。全員の視線が彼に注がれる。
「先日、魔導電波の出力を上げた際、どうも想定以上の範囲に電波が届いてしまったようで、我が国の領域外からも多数の問い合わせが来ております」
「領域外から……だと!?」
「我々以外のコミュニティから、という事かね!?」
「はい、そのようです。今も一部の地域と携帯電話で通話が可能な様でして、外部から救難要請が出ていたり、逆に外にいる家族を救助して欲しいと国民からも要望が出ております」
「むぅ、これは……またマスコミが騒ぎそうな案件だな…………」
新日本国は内側の発展に注力していた為、外部への進出はまだこれからという段階であった。近くの平野部や森に転移した国民は救助できたが、森の深い場所までは自衛隊や政府直轄の探索チームでも未だに踏み込めていないのだ。
エルフ族との数少ない交流で、この地域がどうやらバーニメル半島と呼称されている事は知り得たが、それ以上の情報はあまり多くは入ってこないのだ。
これでは外にいる者を救助しようにも、直ぐには動きようがない。自衛隊員の数も不足しており、二次災害だけは避けたいのだ。
一先ずこの場は、探索者制度の細かな見直しと、マスコミへの対応が話し合われただけで、外部からの救助要請に関しては今後の課題となった。
関係者各位が退出する中、先程挙手した官僚が一人の男を引き留めた。
「宇野先輩。ちょっと宜しいですか?」
「お? 長谷川、どうした?」
前政権時代、宇野は若くして防衛大臣を務めていた優秀な男だったが、彼は例のロリコン総理、小山派閥の人間だったので、新日本政府樹立の際、要職から外されていた。
元大臣なだけあって、こういった話し合いには参加できる立場だが、今の彼に以前のような発言権はない。
それでも元一等陸尉でレンジャー特技の経歴を持つ彼は重宝され、部下や後輩からも慕われており、こうやって声を掛けられる事も珍しい光景ではなかった。
「実はまだ精査中の情報なのですが、探索募集者の中に、気になるメールが届きまして……」
「ほう? さっき言っていた、外部の連中からも応募があった件か?」
「ええ、そうです。我が国の場所を尋ねる質問が多かったのですが、その中の数名に、逆に自分たちの位置をはっきり明かしている者がおります」
長谷川の言葉に宇野はピクリと眉を動かしただけで、大人しく彼の説明を聞いていた。
「エイルーン王国のブルターク街より、か。確かに具体的な場所が書かれているが、我々はエイルーン王国とやらの位置が分からんぞ?」
「ええ。ですがこれが本当なら、この送信者とコンタクトを取ってみるのも面白そうじゃないですか?」
長谷川がニヤリと笑うと、宇野も同じく笑みを浮かべた。
「そうだな。他の外部の者たちからも情報交換をしたいが、この送信者が一番有益そうだな。何か分かったら俺にも教えてくれ。小山さんには俺から伝えておく」
「……世間ではロリコン発言の一件で、未だに評判悪いですよ?」
「仕方がないさ。でも、そのお陰で自由にやらせて貰っている。逆に蛭間一派は徐々に株を落とし続けているだろう?」
幸先の良いスタートを切った新日本政府だが、勿論その全てが順調という訳ではなかった。既に多くの問題や犠牲者が出ており、極めつきは竜の襲撃事件だ。あれで現政権の評判は一気に地へ堕ちた。
今回の探索者制度は、そんな国民の不満を払拭しようと画策された面もある、新政府の一大プロジェクトであった。
尤も、その探索者制度の発起人は小山元総理とあってか、蛭間派からしたら苦渋の決断でもあった。
その後も政府は何度かの話し合いを重ね、数週間後には探索者制度がスタートするのであった。
俺たちは現在、オルクルダンジョンの50階層を攻略していた。
一度60階層まで到達した俺たち≪白鹿の旅人≫だが、61階層へ進むのは時期尚早だと判断した。流石にAランクの魔物が複数同時に襲ってくるかもしれない階層の探索は厳しい。
それに今回は以前からダンジョンに行きたがっていた乃木が参戦している。その為俺たちは1階層から再スタートして攻略を進めて行った。
低階層はかなり無茶をして強行したお陰か、たった2週間で50階層のボス部屋手前まで到達できた。
「よし、行くぞ!」
50階層のボス部屋は森林エリアを模した狭いフィールドである。相手は……ゴツゴツしたサイのような魔物だ。こいつは完全に初見の魔物だ。
「ロックライノスだって!」
シグネが鑑定で魔物の名前を教えてくれる。
「——【サンダーボルト】!!」
佐瀬が先制攻撃を仕掛けるも効果が薄い。どうやら土の加護持ちのようだ。
グオオッ!
ロックライノスは大きく吠えると、体表に岩のようなものを纏わりつかせた。
(あれは……【アースアーマー】ってやつか!?)
確か土属性に岩の鎧を身に着ける魔法が存在した筈だ。あれは相当に堅そうだ。
「任せろ!」
乃木は臆せず岩サイの正面に接近すると、軽く跳躍して頭部に飛び蹴りを放った。
「ぐっ、届かなかったか!?」
頭部をガードする岩の鎧こそ破壊したが、中までダメージは通らず、その代償に乃木はサイの突進をまともに受ける。
「乃木! 大丈夫か!?」
「あ……ああ! 問題ない!」
乃木は予め【アースバリアー】を展開させていた。彼は最近になって土魔法を覚え始めたのだ。バリアー系魔法は同属性の耐久力を上げる守りの魔法なので、岩サイからの攻撃を緩和できたようだ。
「——【ウインドーカッター】!」
シグネが今回の探索で覚えた新技、中級魔法である風の刃をロックライノスへと叩きこむ。土属性は風に脆く、岩の鎧がどんどん剥されていく。
その剥き出しになった箇所を名波は見逃さなかった。
「——【ショット】!!」
名波は覚えたての戦技型威力系技能スキル、射撃の威力を上昇させる【ショット】を発動させた。
俺の魔力をふんだんに盛り込んだ魔法の矢は、露出したロックライノスの頭部に見事命中した。矢は内部までしっかり突き刺さり、岩サイは堪らずのたうち回る。
「今度こそ!」
乃木はリベンジとばかりにナイフを投合してサイの頭部に突き刺すと、再びジャンプして刺さったナイフを蹴りでめり込ませた。
グオオォッ!?
それが断末魔の叫びだったのか、ロックライノスはそのまま横倒れになって活動を停止させた。
「俺が出る幕、なかったな」
「私も要らなかったかもね」
俺と佐瀬は揃って苦笑いを浮かべた。
ダンジョンボスの二週目はやはり宝箱の出現率も落ちるのか、殆どの部屋でドロップ品のみであったが、今回はしっかり出てくれた。
「これは……手甲武器か?」
「俺たちは素手で戦わないしなぁ……乃木が使う?」
ドロップ品は売るより、使える物が有効活用した方が良いと思ったので乃木に勧めてみた。彼は一応ナイフを装備しているが、基本スタイルは土魔法で身を固めての肉弾戦である。
「それじゃあ、お言葉に甘えて使わせてもらおう」
ボスを倒して、50階層の転移ポイントから地上へと戻る。
今回はあくまで乃木に付き合う形なので、ここで一旦終了となる。あまり長期間乃木が離れているのも、あちらのコミュとしても不安だろう。
俺たちは一度ブルタークのギルドでドロップ品を査定して貰い、必要分だけ抜いて他は全て売り払った。少し資金が心許なくなっていたので丁度良い。
まだ日が落ちていないので、そのまま乃木を東の森へ送り届けることにした。
「今回は世話になったな、矢野氏。今度何かで礼をさせてくれ!」
「こっちも対価はしっかり貰ってるから、気にするな」
乃木には海で獲れたカツオを貰っている。乃木は魔物討伐だけでなく、偶に海へ漁に出かけるそうだ。しかも釣り竿とか網を使うのではなく、なんと素潜りと槍という原始的な狩猟方法だ。
(こいつ一人でも生活できるんじゃないか?)
流石サバ研部長の肩書は伊達ではなかった。
俺たちは乃木を送り届けた後、再びブルタークを目指した。
その道中、俺はスマホに目を通しながらエアロカーを操縦していた。
「ちょっと! ながら運転は危ないわよ!」
「空は安全だろう? せいぜい魔物を撥ねないように気を付けるだけさ」
良い子は絶対に真似をしてはいけない。地上も空もドライバーの皆様は安全運転を心がけましょう。
「それよりまた返信が来たぞ? 今度は王国の体制や法律を教えて欲しい、だってさ」
前に新日本政府が告知した探索者募集について、俺は問い合わせ先である防衛庁へ質問をしてみた。
すると別のアドレスから防衛庁に宮仕えしている長谷川という人物から返信がきたのだ。返答内容は『現時点で外部の人間に探索者制度を適用させるかは前向きに検討中』だそうだ。
新日本政府はまだ外側への調査を終えていない事から、現状国の正確な位置を把握できていないらしい。
逆に向こうからは様々な質問が返ってきた。
俺は話せる範囲で長谷川という人物に情報提供を続けてきた。
だが未だ新日本政府からはっきりした位置の情報が来ないのと、探索者への参加が出来るかの明確な返答も頂いていない。
(まさか、このまま有耶無耶にして、一方的に情報を搾り取る気じゃないだろうな?)
別に困っているのならいくらでも力を貸すが、こちらを騙して一方的に情報を搾取するつもりなら、少し対応を改めなければならないなと俺は思い始めた。
「で、どう返事するの?」
「……少し間を置こう。それと明日から、逆に俺たちで新日本国を探してみないか?」
「明日は買い物したいから、明後日からにしない?」
確かに今日はダンジョンから戻ったばかりで、少し休憩も必要だろう。
俺は佐瀬の提案に頷いて、明日は自由行動とし、明後日から新日本国を探し始める事にした。
◇◆◇◆ プチ情報(人物紹介) ◇◆◇◆
名前:名波 留美 ヒロイン? 候補その1
種族:人族
年齢:20才
※70話時点のステータス
闘力:4,605
魔力:734
所持スキル 【自動翻訳】【感知】【短剣使い】【双剣使い】【走力】【弓】【命中】【スラッシュ】【探知】【隠密】
鹿江大学二年生で佐瀬とは高校時代からの親友。大学では同じ写真部に所属しており、佐瀬とは違うベクトルの可愛い系で男子からも人気が高い。
本人は陽気な性格で運動が得意。アウトドアを好む反面、異世界物のアニメやゲームも嗜んでおり、様々なジャンルに興味を抱いている。
転移後は落ち込む親友を慰めつつも、新たな世界リストアに骨を埋める覚悟を早々に決めており、佐瀬を誘って魔法やスキルの訓練に励む。結果、佐瀬はすぐに新たな魔法を習得したが、名波は魔法を覚えられなかった。
契機となったのがイッシンとの出会いと佐瀬が一度殺された件で、彼女は強さを求めるのは当然として、更により一層の覚悟と信念を持ち始める。仲間の命が最優先で、それを害する者には容赦がない性格となる。でも、魔法は覚えられなかった。
戦闘スタイルは短剣と包丁の二刀流という風変わりな近接戦闘が主流で、後は最近弓もマスターしつつある。だが、なんと言っても名波最大の武器は察知スキルが進化した【感知】にあり、彼女に不意打ちや罠はまず通用しない。
魔法も習得したかったが……やはり覚えられなかった。
名波が魔法を習得する日は訪れるのだろうか?
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