第99話 開戦

「我々はもう少し情報を集めた後、一度新東京に戻るつもりです」


 視察団は戦争に巻き込まれることを懸念して、なるべく早くにブルタークを発つらしい。開戦すれば、いつも通りに越境して街に出入りするのは厳しくなるはずだからだ。


「ちなみに矢野さんたちは、どうされるのですか?」


 巻き込まれないよう街を離れるのか、それともまさか参戦するのか、色々な意味を含めて長谷川は俺たちに尋ねた。


「…………まだ、分かりません。少なくとも好んで戦場に出ようとは思いませんよ」


 国家間との戦争が勃発した際に、冒険者を強制的に兵士へ取り立てる権限は、例え王族、貴族でも存在はしない。


 しかし、そんなものは建前で、街に住む一冒険者が領主クラスの大貴族の要請に逆らう真似はなかなか難しいだろう。


 無理強いすることは冒険者ギルドとの軋轢を生むが、言ってしまえば”ただそれだけ”だ。いざ自分の領地や既得権益が危ないと知れば、そんな外聞はお構いなしに冒険者へ戦場参加への強制招集をかけるだろう。


 この街に住むベテラン冒険者からはそのように聞いていた。



「とりあえず皆で相談して決めます。最悪、逃げますよ」


 いざとなればエアロカーで飛んで逃げればいい。代償として、以降この街には居づらくなるが……まだ様子を見る時間くらいは残されているだろう。


「そうか。もし何か目新しい情報があったら教えてくれ。こちらも教えられる範囲の情報はそちらに送ろう」


「助かります」


 こうして宇野たちとの話し合いは一旦幕を閉じた。




「戦争、ねぇ…………私は嫌よ」


 宇野たちが帰り、俺たちだけで話し合いを始めると、開口一番に佐瀬が自分の気持ちを表明した。


「俺だって嫌さ。戦争なんてお金と時間と命の無駄さ」


 ただし完膚なきまでに相手を打ち負かせば、国家にとっては確かに利があるのだろう。それは前の世界でもそう変わらない。敗者はいいように奪われ搾取されるだけだ。


「でも、街の方まで飛び火することもあるんでしょう?」


 これまで王国と帝国は幾度も戦争を繰り広げていた。過去に数度、ブルタークの街まで戦火が伸びてきたこともあったらしい。街の外壁が高いのはその名残だそうだ。


「ほとんどは西にある要塞町フランベール止まりらしいけどな。過去には北方民族自治区を抜けて帝国軍が奇襲してきた事例もあったそうだ」


 ただし俺たちが仕入れた情報の殆どが口伝で、一般人が軍事関連の記録を閲覧できる機会は皆無に等しい。詳細な真実までは知りようもない。


「じゃあ、戦争が終わるまで他の場所に逃げちゃう?」


 シグネの言葉に誰も即答できなかった。


 戦場には参加したくない。


 それは全員同じ気持ちだが、ただ街を見捨てて逃げるのかと問われると言葉に詰まってしまう。ブルタークには少し長く居過ぎた。もし仮に万が一、街が帝国の手に落ちそうなら、その時は助力してもいいのではないかとも思っている。


 これも全員意見が一致した。



 その後も様々な議論を交わしながら相談し、最終的には様子見することで落ち着いた。そもそもまだ戦争が始まるとも限らない上に、例年の小競り合い程度で収束する可能性も十分にあるからだ。


 もし仮に貴族から戦争参加の要請が来た場合には、街の防衛や後方支援のみ受け持とうという形で決着がついた。




 それから1週間後、何の前触れもなく戦端は切って落とされた。


 ただし帝国軍が攻めてきたのは、ブルタークからはずっと南西、王都よりも更に南にある開けた戦場だ。


 その地も過去幾度も帝国と争った係争地帯だが、時期は過去に例のない収穫シーズン真っただ中と早期に行われた。


 何はともあれ、開戦である。




「まさか本当に起こるとは……」


「食料の値が上がり続けてるわ」


 帝国との戦争が開始され、王国領内全土で厳戒態勢が敷かれていた。


 北との国境は完全に封鎖されてはいないものの、見張りや巡回兵の数は明らかに増え、街の出入りも少々厳しくなった。


 ダンジョンの出入りは自由で、殆どの冒険者たちは普段通りに活動していたが、D級以上の冒険者たちには、極力長期不在にならないようお願い・・・された。ギルドからとはなるが、恐らく後ろに国や領主が絡んでいるのだろう。


「ギルドと国は不干渉じゃなかったの!?」


「お互い完全に無視できる存在ではないんだろう。そうじゃなかったら武装組織の営利団体なんて、国が許可するはずもないからね」


 俺たちは現在この街に居る唯一のB級冒険者パーティということで、極力居場所が分かるよう副ギルド長直々にお願いをされてしまった。


 まあこの程度は予想の範疇だ。


 最悪なのは殺し合いの最前線へ強制的に送り出される事である。そんな事態になれば、俺たちは即この街を離脱するだろう。


「まだ北部の戦端は開かれてないんだよね?」


 名波が尋ねてきた。


 今回戦場になったのは帝国国境沿いの南部であり、フランベールは北部となる。


「そう聞いているけど、この世界の情報伝達なんて数日遅れてくるかもなぁ。もしかしたら今頃、フランベール辺りでドンパチやり合っているのかも……」


 丁度その時、タイミング良く長谷川からメッセージが届いた。どうやら今話したばかりの要塞町フランベール付近でも帝国軍との戦闘が開始されたようだ。ドローンで観測しているのだろう。


(思ったより規模がデカい。まさか小競り合いじゃなくて本気で王国を獲りに来てるのか?)




 長谷川から情報が届いた二日後、遂に冒険者ギルドに戦争参加への依頼が舞い込んできた。


 依頼主はこの街の領主マルムロース侯爵家、対象はブルタークに滞在する全ての冒険者である。依頼内容はランク問わずに街の防衛任務と、西に急遽設けた兵站施設への配備である。


 そして俺たち≪白鹿の旅人≫は兵站施設の方への依頼をお願いされてしまった。これはかなり断りづらい。


「……どうする?」


「補給基地の防衛って事よね? それだけならいいんじゃない?」

「私も問題無いと思うよ」

「人殺し無しなら賛成!」


 3人は問題無いというが、俺はどうにも不安だ。


「ただの小競り合いなら問題ないだろうが、帝国が本気だとしたら敵補給拠点なんて真っ先に潰したい対象だぞ? それでも大丈夫か?」


 俺が少し脅すように伝えると3人とも一瞬顔を顰めたが、それでも意見を変えないようだ。


「防衛なら追い払えばいいだけだしね」

「私の【感知】スキルなら、奇襲も通じないよ!」

「私たちより強いステータスの人って殆どいないし、大丈夫じゃない?」


「まぁ、それもそうか……」


 更に言えば俺の【ヒール】に【蘇生】もある。少し考えすぎだっただろうか?



 正式に参加を決めた俺たちは、全員でギルドへと足を運んだ。するとそこには久しぶりに顔を見た男がいた。


「おー、イッシン! お前らも来たか!」


「ハワードギルド長! 戻られたんですね!」


 ギルド総会に出席して長らく不在であった男が戻って来ていた。


「ああ、何とかギリギリ間に合った。本当はもう少し早く到着予定だったんだが……」


 彼は他の大陸に船で出掛けていた。そんな船を扱っているのは、西バーニメル通商連合国のニューレ港しかありえない。


 連合国から王国へと戻るには帝国を横断するルートが最短なのだが、不穏な帝国の動きを察知してか、やや遠回りでブルタークへと戻って来たらしい。


「≪白鹿の旅人≫の配属先はここ、フランベールの後方に設けられた食糧庫施設だ」


 ハワードはギルドの所有する秘蔵の地図を広げ、俺たちの配属先となる地点を教えてくれた。


(キャメル村より少し西側か……)


 昇級試験で以前訪れた村に近い場所だ。そこに簡易的な兵站基地が設けられているようだ。これが小競り合いレベルなら物資はフランベールに集約するらしいが、どうやら要塞が落ちることも想定しての後方配置らしい。


(王国側も普段通りの戦じゃない事は重々承知の上か……)


 俺は少しだけケイヤの事が心配になった。彼女は精鋭部隊である聖騎士の所属だ。使い潰されるような人材ではないだろうが、かといって遊ばせるような駒でもないだろう。恐らく最前線に近い場所に投入されるはずだ。


 だが今は彼女の事より、まずは自分や仲間たちの心配だ。俺はハワードの話に集中した。


「イッシン、可能な限りでいいので、スキルや習得済みの魔法を教えてくれ」


「それは…………」


 普通、冒険者の手の内を探る行為は、例えギルドでも行わない。それは元冒険者であるハワードも熟知しているはずだが、一体どういう意図だろうか?


「ここに参考リストがある。例えば【土魔法】持ちなら守備隊や工作班に、【弓】スキルや攻撃魔法を扱えるなら後方火力部隊に回される」


 どうやら一口に兵站防衛部隊といっても、様々な配置先や仕事があるようだ。それらを習得しているスキルや魔法で判断して振り分けているらしい。


「魔法やスキル持ちは当然優遇される。だからお前たちが明かしてもいい手札があるなら、なるべくオープンにした方が成功報酬も増える。条件の良い希望の配置に就きやすくなるかもだぞ?」


「なるほど、確かに……」


 これは上手い遣り方だ。冒険者を纏める側も戦力把握ができ、手の内を明かす冒険者にも十分なメリットが与えられる。


 俺たちはハワードが用意してくれたリストを参考に、どの程度情報を明かそうかと相談していた。


「ねぇ、これなんかどうかな?」


 名波がそっと指差したのは、物資運搬とその護衛任務である。街と兵站を往復するのは面倒だが、安全そうな上に報酬も悪くない。しかもある物を所持していると、更に報酬が増す仕組みのようだ。


(マジックバッグ系を持っている冒険者は優遇、か……)


 マジックバッグはかなり貴重なアイテムだが、俺たち以外に所有している冒険者パーティも少なからずいるらしい。そんな貴重な存在は、後方で物資を運ぶ安全な場所に配備される。しかも運んだ量で報酬も上がるので、俺たちにとっては美味しい配属先だ。


(問題はマジックバッグの存在を明かす事になるが、伝説レジェンド級の方じゃなければ問題ないかな?)


 実は近々、小型ポーチの方は所持している事を開示しようかと考えていた。理由は二つある。いい加減物資を隠れて収納するのが煩わしいのと、ゴーレム君1号の存在だ。


 俺が創り出したゴーレムは大きくて、普段は同行させる訳にもいかない。街中で歩かせたら即領兵に問い詰められるか、冒険者たちに魔物と誤認されて攻撃されてしまうからだ。


 マジックバッグで出し入れする事は確定事項だが、この先ゴーレムの存在までずっと隠し通すとなると少々骨が折れる。元々夜営時の護衛の為に生み出したのだから……。


 だからいっそのこと、ゴーレムと合わせて小型ポーチの存在も明かす事にしたのだ。



「ギルド長。俺たち、この任務をしたいんですが……」


「む、物資の搬入作業か。これは倍率が高いから、スキル無しだと通らないかもしれんぞ?」


 当然そうだろうと考えた俺たちは小型バッグのことを説明する。するとハワードはニヤリと口角を上げた。


「やはり持っていたな。ま、ダンジョン攻略のスピードやギルドへ持ち込む量を考えれば、そうじゃないかとは思っていたがな」


 どうやらハワードには薄々勘付かれていたようだ。


「分かった。≪白鹿の旅人≫は物資運搬でエントリーしておく。これならまず希望は通ると思うが、あくまで決めるのは現地の部隊長だ。念の為、他に有用なスキルがあれば書き込んでおいた方が無難だぞ?」


 ギルド長曰く、不逞な輩であればマジックバッグだけ取り上げて、冒険者自身は危険な場所へ配属してちょろまかす、という悪辣な軍人も少なからずいるそうだ。


 本来B級冒険者相手にそんな暴挙に出る命知らずはいないそうだが、俺たちは上がりたてでまだ若い。そんな邪な者が現れないよう、しっかり強さは見せつけておくようにと、ありがたい訓示を頂いた。



 細々とした話し合いは終わり、俺たちは明朝、西門の外で集合となった。俺たちと同じ兵站駐屯部隊志願の冒険者たちと足並みを揃えて出立する予定らしい。








 いよいよ出立の日、多くの冒険者と兵士たちがブルターク西門付近に集まっていた。


 正門前は混沌としていた。


「冒険者諸君! まずは黄色い布を巻いた兵士に所属先を尋ねろ!」

「前線希望の冒険者は赤い旗の場所だ!」

「おい、そこ! それ以上揉めるようなら捕まえるぞ!」

「兵站駐屯部隊はあちらの青い旗の所だ!」


 纏まりのない冒険者たちを、熟練の兵士たちが声を張り上げ、次々と案内していく。かなり手慣れた様子だ。


(結構な頻度で戦争があるらしいからな。長年住んでいる者にとっては最早風物詩なんだろう)


 何時まで惚けていても始まらないので、俺たちも黄色い布を腕に巻いた兵士を捉まえて所属先を尋ねた。


「パーティ名と名前、それとランクを言え!」


「≪白鹿の旅人≫、イッシン。ランクはBです」


「B級冒険者!? お前たちが、あの“白鹿”か!?」


 どうやら俺たちはそこそこ有名人なようだ。


 まぁ、それもそうだろう。今のところ、この街には俺たちしかB級冒険者はいないと聞いている。今回は戦争の依頼で余所の街からも冒険者たちが集まっていた。


「諸君らは青い旗の場所だ。そこにいる兵に詳細を尋ねてくれ。武運を祈る!」


「ありがとうございます!」


 俺たちは案内の兵に礼を述べると、早速青旗が立てられている場所へと向かった。そこには既に多くの馬車や積み荷が用意されていた。


 そこで何やら指示出しをしている兵士に声を掛けた。


「む、お前たちのパーティ名は?」


「≪白鹿の旅人≫のイッシンです」


「ほぉ、君らがそうか。聞いていた以上に若いな……」


 男は40前後の少し豪華な鎧を着た兵士で、俺たちを値踏みするように観察をした。


「うむ。あとはサヤカ、ルミ、シグネの3名だな。話は聞いている。君たちはマジックバッグの類を所有していると聞くが……どの程度を運べる?」


 兵士が親指を立てて後ろにある荷物を指す。どうやらあれが運ぶべき物資なのだろう。


「そうですねぇ。馬車の荷台の倍は可能です。中に収納しているデカブツを取り出せば、更に倍ですね」


 俺の説明に兵士が眉を顰めた。


「デカブツ? 出来れば一度で少しでも多くの物資を運びたい。その収納している物は置いていくことが可能か?」


「いえ、それでしたら歩かせます・・・・・


「……は?」


 呆気にとられる兵士を余所に、俺は名波にアイコンタクトを送った。ジャンケンの結果、小型ポーチの所有権は名波にある。


 彼女は俺の意図を汲み取ったのか、ゴーレムをポーチから取り出した。


「なっ……なぁっ!?」


 突然巨大なゴーレムが出現し、兵士は口を開けて見上げていた。周囲にいた兵士や冒険者たちも、こちらを見てざわつき始めた。


「こ、これは一体なんだ!?」


「ゴーレムです。大丈夫、俺が作ったゴーレムなので、指示通りに動きます」


「こ、これがゴーレム……なのか?」


 兵士は冒険者と違い、あまりダンジョンに潜らない為か、ゴーレムを初めてみたようだ。


 俺が簡単に命令を出すと、ゴーレムはその指示通りに身体を動かした。


「す、凄いな。流石はB級冒険者と言ったところか……」


「これで彼女の小型ポーチには馬車の荷台、四台分の容量が入ります」


 本当はもっと入るが、色々他の私物も収納しているので、それが限界だ。


「ちなみにだが、こいつに荷物を運ばせたり作業を手伝わせたりする事は可能か?」


 おお!? そこまで頭が回らなかった。


 あくまでバッグの中身を空ける為に出して、あとは戦力としてしか考えていなかった。力持ちで疲れしらずなゴーレムなら、荷運びや拠点作りにも最適だろう。


「可能です。こう見えてコイツ、結構頭がいいので」


「よし! それじゃあ早速荷物を積み込むのを手伝ってくれ! あそこに置いてある物から優先的に運んでくれ。なるべく番号毎に纏めてだ!」


 俺たちは兵士指示の下、荷物を収納したり、馬車に詰め込んだりした。俺たちの他にも二組マジックバッグ系アイテム持ちの冒険者が居たようで、後は力自慢の冒険者パーティと兵士たちの総勢50人以上が兵站駐屯部隊のメンバーなようだ。


 最初に俺たちが話しかけた者こそ、兵站駐屯部隊の隊長らしく、名前をゼネトーというらしい。



 俺たちが作業をしている間に、他の部隊は準備が整ったようで、一足先にフランベール方面へ出立した。


「よし、我々も進むぞ!」


 準備を終えた俺たちも遅れて出立した。


 持ちきれない荷物はそのままブルタークに置き去りにし、また再び取りに来る予定だ。これから戦争が終わるまでの間、俺たちは街と基地を何往復も行き来する事になる。


 ゴーレム君1号にも荷物を運ばせる事は可能だが、移動時は戦力として手を空けた方が良いだろうというゼネトー隊長の判断で、結局ゴーレムは無手のまま馬車に並走させている。


(疲れ知らずだから平気で付いて来るなぁ)


 正確には動く毎に内蔵魔石の魔力を消費し続けているが、後部の箇所に触れさえすれば何時でも俺の魔力を充電させる事も出来るし、佐瀬の魔法【コミュナス】なら多少の遠隔からでも魔力供給が可能だ。


 もっとも動力にはAランクの魔石を使用しているので、一日中走らせたとしても魔力切れを起こす心配はない。



「なぁ、あのゴーレムどうしたんだ?」


「どこかで捕獲したのか?」


 馬車で同席となった男の冒険者に尋ねられた。


 ちなみに女性陣は女性同士で馬車に相席している。軍といってもそこら辺の配慮はある様だ。


「俺が作ったんだよ」


「マジか!?」

「すげえな!?」

「あれ、いくらなら作って貰えるんだ!?」

「金貨40枚なら出せるぞ!」


 倍率の高い物資運搬の仕事を任される冒険者だけあって、どうやら金はそこそこ持っているようだ。中にはマジックバッグ持ちもいるらしいし、仕事には困らないのだろう。


(少なくとも金貨40枚以上の評価か……こりゃあ、実際はもっと高いだろうな)


 今のところ、これ程のゴーレムを所持する者など俺は聞いたことがない。もしかしたら小型ポーチより、こちらの方が知られたら不味い存在だったかもしれないが、もう今更だ。


「申し訳ないが無理だ。金額云々じゃないんだ。ゴーレムのコアを手に入れたら相談に乗れるだろうけど……」


「ぐっ、ゴーレムのコアかぁ……」

「そんなもん、ダンジョンでドロップすんのか?」


 多分ダンジョンでは無理だと思う。俺も実際目で見て分かったが、あれはやはり一種の生命体に近い。魔石やゴーレムのパーツとは全く別種の生きた素材……生物の心臓のようなものだ。


 例えゴーレムコアを奇跡的に入手したとしても、長時間経過すれば恐らく生命エネルギーが失われてしまう。そうなればゴーレム君1号と同じ製造法でも、恐らく性能までは再現できないだろう。


 俺は生き物を蘇生したり癒したりは得意だが、ゴーレム工学やその技術はまだまだ拙いのだ。多分この世に出回っている人造ゴーレムの殆どは機械そのもので、ゴーレム君1号は寧ろ人造人間に近い存在だ。だから俺でも創ることが出来た。


(ホムンクルスとか、そっち方面って訳だ。まさに禁忌の技術だな……)


 この世界にホムンクルスなんてものがあるのかは知らないが、俺は人が踏み入れてはいけない領域に土足で入り込んだのではないだろうか。


 女神様から天罰が下らないか、俺は人知れず冷や汗を流した。








◇◆◇◆ プチ情報(人物紹介) ◇◆◇◆



パーティ名:≪カスケード≫


 前島をリーダーとする男女二人ずつの混成探索者パーティ。イッシンたちが馬車で二度目の新東京へ向かう道中、護衛についてくれた4人組。


 全員がファンタジー好きで、転移直後から魔法やスキルを鍛錬していたお陰か、探索者制度初期では階級の高いD級探索者パーティである。




名前:前島

選択スキル:身体強化


 20代後半の青年でパーティのリーダー。闘力はチーム一



名前:清水

選択スキル:水魔法


 社会人二年目の二次元好き女性。




名前:三城さんじょう

選択スキル:回復魔法


 20代前半の元看護士でチームのヒーラー




名前:岡

選択スキル:盾


 チームの盾役である元大学四年生




 これで一旦人物紹介は終了です。今後はまた別のミニ情報を載せていこうかと考えております。人が増え次第、また何時か人物紹介を復活させる予定です。

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