第98話 爆誕、ゴーレム君1号

「————聞いた話は大体こんなもんね」


「なるほどねぇ……」


 佐瀬からドワーフ王国の内情を聞いた俺は顎に手を当てて考え込んだ。



 佐瀬はここ最近、名波やシグネと共にドワーフの街巡りをしながら、それとなくデバル王国内の情報を探ってくれていた。


 その話を聞いた俺は1点、気掛かりなことが浮かんだ。


 俺の様子を察したのか、逆に佐瀬が尋ねてくる。


「なんか気になるの?」


「……ああ。帝国軍が最近大人しいって情報が、少しな……」


 国境線付近の山脈で日々小競り合いを行なっているデバル王国とガラハド帝国だが、どうも最近帝国側が大人しいらしく、姿を見せなくなったそうだ。


 それ自体は喜ばしい情報なのだが、そう浮かれてはいられない。何しろ帝国は四方八方に喧嘩を売るような、大変好戦的な国家だからだ。


 仮にドワーフ王国側の軍が引いたとなると、どうなるか……大規模攻勢の前準備か、もしくは余所へ戦力を投入し始めているのではと、つい悪い方に勘ぐってしまうのだ。


 それを話すと佐瀬は納得したような顔をした。


「確かにその心配もあるわよね。ドワーフたちは大規模攻勢があるんじゃないかと警戒しているようだけど……」


「帝国の敵はデバル王国だけじゃないからな。エイルーンに飛び火しなければいいけど……」


 まぁ、こんな短期間で俺たちが簡単に知り得た情報なのだから、エイルーン側も当然掴んでいるのだろう。それ以上は一介の冒険者が考えるような事ではないので、俺たちは俺たちで危機に備え、国の事は王族や貴族に任せることにした。




 期日の一週間が過ぎ、シグネと名波は注文した工房へ武器を受け取りに行った。


「うわー! うわあーっ!」


 シグネは透き通る様に綺麗な日本刀の輝きに感嘆の声を上げ続けた。


「やっと満足いくモノが仕上がったぜ! ニホン刀も中々に奥が深い。魔力さえあれば強度も多少は上がるが、切れ味に特化した武器だ。扱いと手入れには十分注意しろよ!」


「ありがとう! デンタさん!」


 デンタというドワーフはスキル【鍛冶(上級)】を習得しているだけでなく、【装飾(上級)】も納めている凄腕職人だそうだ。その効果もあってか、シグネのミスリル製日本刀は性能だけでなく、美しさの方にも磨きがかかっていた。しかも鞘の方も更に凝った一品だ。


 それだけの鍛冶師が何故今回依頼を受けてくれたかと言うと、貴重なミスリルを丸ごと提供した上に、日本刀の製造工程を伝授したからだ。


 後はシグネ自身のコミュ力の高さだろうが二人は意気投合し、他の仕事をキャンセルしてまでも、この一週間彼女の武器造りに注力してくれたのだ。


「ほら、嬢ちゃんの依頼品も出来たぞ!」


「ありがとうございます!」


 デンタは名波の武器もミスリルで拵えてくれたようだ。アダマンタイト製の包丁とは別に、ミスリル包丁も作って貰った。彼女自身は魔力量も低く、今のところ十全に生かせる武器ではないが、今後何かで役に立つことがあるかもしれない。


 それとは別で投げナイフも数本購入していた。そちらは既に出来合いのモノとなっていたが、それでも素晴らしい出来栄えであった。


 シグネは自分の刀を見つめながら何かを呟いていた。


「んー、ニ〇リン刀……ザ〇ゲツ……ザ〇テツケン……」


 どうやら己の武器に命名しようと考えているようだ。


(シグネちゃん。三番目の名前だと、こんにゃくが切れなくなる呪いがかかるから止めた方が良いよ?)


 それと版権云々もあるので絶対止しましょうね!



 無事に武器も作ってもらいゴーレム制作のヒントも得た俺たちは、ブルタークの街へ戻る事にした。








 秋も徐々に近付き、この世界に来てちょうど丸一年が経過した。


 俺たちは街で暫く自由に生活し、名波とシグネは新しい武器の感触に慣れるまでダンジョンで腕を磨き、佐瀬も一人魔法の練習に明け暮れていた。


 俺はというと、ゴーレムの研究は勿論、魔法の研究も同時に進めていた。


 以前気になった回復魔法を持続できないかという発想だ。


 理想は俺が致命傷を負った直後に【ヒール】が自動で発動する仕組みだ。もっと欲を言えば、俺が死んだ直後に【リザレクション】が発動すれば文句なしなのだが……


(魔法の予約……それが出来れば成功したようなものだが……)


 なかなか上手くは行かない。まず、どういった条件で、どの魔法を発動させられるのか、そういった仕組みが全く理解できない。


(【セイントガード】はそれが出来ている。この魔法にヒントがあるはずなんだが……)


 セイントガードは術者がダメージを一定以上負うと、自動で肩代わりしてくれる防御魔法だ。この仕組みさえ解明できれば、まさしく理想の魔法が実現するのだが、当然すぐに分かるような代物ではない。


 何しろこの魔法は人類史上から存在し、神が与えたとされる原初八十四の魔法だ。つまり神様が創造した魔法なのだ。それをただの人間が理解し、再現するのは非常に困難なのだろう。




 魔法の研究が全く捗らないので、俺はゴーレムの方に気持ちを切り替えた。


 実はこちらはとても順調であった。


 今までは何故ゴーレムが命令通りに動くのかが理解できなかった。単純に動かすだけならば簡単だ。それは他の研究者たちも造り上げているらしい。


 だが、例えば「俺たちを守護しろ!」という命令を実行させるには、本当に様々な行動が必要となる。ただ走って、攻撃して、防御してでは足りない。相手の力量に合わせて距離を詰めたり間合いを計ったり、時には力加減も必要だろう。


 それを一つ一つ、状況毎に命令していてはキリがない。というか、ゴーレムが覚えきれない。



 だが、実際に本物のゴーレムに触れることで、俺はその一端を理解した。


 彼らは生物に近い存在なのだ!


 だから命令を与えられると、それを実行しようと己で考え工夫を凝らす。ゴーレムの知能に違いがあるのは当然だ。賢い者もいれば頭の悪い魔物もいるだろう。


 実力が違うのも当然だ。強い肉体のゴーレムもいれば貧弱なボディしか与えられなかったゴーレムもいる。



 その点でいうと、俺が拾ってきたゴーレムは、知能だけならかなり優秀だ。そしてその根幹を成すのが心臓部……ゴーレムのコアだ!


 最初は魔石に酷似した器官こそが頭脳を担っているかと思っていたが、あれはただ命令を縛り付けるだけの魔力供給器に過ぎない。一度破壊して改めて判明した。重要なのはゴーレム種のどこかに埋め込まれている、魂や脳の部分でもあるコアの方なのだ。


 ゴーレム工学の教本では、コアの再現はほぼ不可能とされており、それは俺も実際に弄ってみて痛感させられた。だから魔石にプログラムを刻んで、同時に動力源としていた。近代ゴーレムは普通そうやって造られる。



 そこで件のゴーレムからそのコアを綺麗な状態で除去した俺は、試しにゴーレムの粘土で形作った小型人形にそれを植え付けた。


 最初は当然失敗した。全く動かなかったのだ。


 それでも僅かにだが生命エネルギーは感じられたので、僅かにだが生きてはいた。恐らく新たな身体の方が問題だったのだ。


 俺は鹵獲したゴーレムを参考に、新たなボディをゴーレム粘土で造り、そこへ素材を組み込んでいく。人と同じように血管代わりとなる、魔力に馴染みやすいキマイラの血を流用し、魔物の魔石を臓器代わりに見立てて動力源とした。


 俺に医学の知識は無いが、こいつは純粋な生物でも、ましてや人間でもないので、要はそんな感じであれこれ足し引きして何度も調べ続けた。


 すると徐々にどれが不要でどれが使えるのかが判別できるようになった。生命維持に問題があるかどうかは、俺の固有技能である生命エネルギーの多寡でそれとなく理解できる。


 失敗したら回復も蘇生も出来るしね。




 そうして何度も何度も試行錯誤を繰り返して、漸く実験機第一号が完成した。


 その名もゴーレム君1号…………ネーミングは後で募集する事にしよう。


 小さい人形サイズのゴーレムは身体能力こそ低いが、俺の言葉を全て理解し、命令通りに動いて見せた。


 終いには、なんと【ファイア】を放って見せたのだ。


「おお!? 凄いぞ、ゴーレム君!」


 感動した俺は、今まで収集した貴重な素材を惜しみなく投入していった。


 身体のパーツやサイズが変わるにつれ様々な不備が出てきたが、そこは組み合わせや配置を変化させ、徐々に改善していく。


 しかもそれに併せ戦闘能力も上がってきている気がする。貴重なAランクの魔石も惜しみなく与えた所為か、とんでもない強さに成長していった。


(やばい……こいつが反乱でもしたら、大惨事だぞ!?)


 頭の中ではやり過ぎだと思いつつも、欲求に負けた俺はどんどんゴーレム君を強くしていった。どうやら俺にはマッドサイエンティストの才能があったようだ。



 ゴーレム研究にのめり込み一カ月、やっとゴーレム君1号は完成と相成った。








 とある日、今までゴーレム制作を秘密にしていた俺は三人を連れて、何時もの人気のない西の演習地にやって来た。


「何? 見せたいものって?」


「じゃじゃーん! こいつだ!」


 俺はマジックバッグからゴーレム君1号を取り出した。


 そう、このゴーレムはスイッチをOFFにすればマジックバッグに収納もできる優れものなのだ。


「ゴーレム!? しかも大きい!」

「もしかして完成したの!?」

「え? これ動くの!?」


「ふっふっふ」


 俺は自身より二回りは大きいゴーレムに起動命令を出すと、頭部に備わっている目の箇所がキュピーンと光った。勿論、俺が設計した演出である。


「「おおっ!?」」


 これには名波とシグネも目を輝かせた。やっぱりロボットの起動といったらこの演出だろ。目キュピーンは外せないね!


「ゴーレム君1号、あそこの岩に駆け寄ってパンチ攻撃だ!」


 俺が指示を出すとゴーレム君1号は物凄い速さで岩に迫ると、その勢いのまま岩を剛腕で粉砕して見せた。


「す、凄い!?」

「パワーだけならAランクレベルかも!?」


「まだまだ! ゴーレム君1号、ジャンプしてそのまま空中で待機だ!」


 ゴーレム君1号はその巨体からでは信じられない跳躍力でジャンプをすると、背中部分に取り付けたバーニアから炎を大噴射し、暫くのあいだ空中でホバリングをして見せた。


「ええええっ!?」

「ふわあああっ!」

「凄い! 凄すぎるよ、イッシンにい!」


 そうだろう? だが、驚くのはこれからだ!


「トドメだ! ゴーレム君1号、あそこの岩に向かって【ファイア】!」


 ゴーレム君は右の掌を目標に向けると、そこから【ファイア】を放出して見せた。その魔法は確かに最下級の【ファイア】なのだが、ゴーレム君の魔法制御技術は俺以上で、魔力量も幾つもの魔石を使って強化してある。


 その魔法には中級魔法レベル相当の威力が籠められていた。


 火魔法が着弾すると、目標物周辺は爆発して辺り一面を焼失させた。


「魔法まで!? しかもイッシンより凄い!」

「ご、ゴーレムに先を越された……」

「すっごく……カッコイイッ!」


 なんか佐瀬は失礼な感想を、名波はまぁ……ご愁傷様。シグネはストレートにゴーレムを褒め称えた。


「と、とんでもないモノを生み出したわねぇ……」


「ああ、正直自分でも驚いている」


 実力だけならB級冒険者をも凌ぐだろう。今は単純な命令を与えて動いているが、例えば“敵を倒せ!”と命じればもっと複雑かつ器用な立ち回りも熟して見せる。実際に俺との模擬戦では危うくこちらが負けそうになった。こいつの知能だけは最初から高かったのだ。


「ねえ、魔法は火以外にも使えるの?」


「残念ながら今のところは無理だ。それも【ファイア】しか使えない」


 恐らくコアに適性でも刻まれているのだろう。あれこれパーツの品を変え手順を変えと試みてみたものの、結局威力が変わっただけで【ファイア】しか放てなかったのだ。


 ゴーレムコアは成長をするのだろうか?


「それでも凄いよ! というか羨ましい!」


 相変わらず魔法が使えない名波はゴーレムを妬ましそうに見つめていた。


(止めろ! 嫉妬で壊すなよ!)


「すっごいねぇ。空も飛んじゃうし!」


「一時的だがな。火の魔法で無理やり飛ばす事は可能だ」


 結構な内臓魔力を消費するが、知能の高さ故か空中姿勢制御が抜群に上手いのだ。あんな真似は俺にも、恐らくシグネの風魔法でも出来ない。


「ふーん、”ゴーレム君1号”もう一回飛んでみてよ!」


 シグネが気安く話し掛けると、ゴーレムはそれを命令と受け取ったのか、バーニアから炎を噴出して再び上空に飛び上がった。


「きゃっ!?」

「うわっ!?」

「ごほっ、ごほっ……」


 近くにいた俺たちは、その衝撃で舞い上がった土埃をもろに浴びてしまった。


「ちょっとシグネ! やるならやるって言って!」


「わわわ、ごめん! サヤカねえ。まさか言う通りに飛ぶとは……」


「え? これって私たちの命令でも動くの?」


あ、あれ? そういえば、俺は特に彼女たちの命令に従えだなんてプログラムはしていない筈…………あ!


「そういえば“ゴーレム君1号”という名前をトリガーにしていたから……多分、誰の命令も受け付けるんじゃないかと…………」


 自分で言ってて重大な欠陥に今更気が付いた。こいつ、このままだと赤の他人の命令でも聞いてしまうぞ!?


 佐瀬と名波がジト目でこちらを見つめてくる。


 うん、本当にごめんなさい……



 それから俺は彼女たち監修の下、ゴーレムに様々なセーフティーロックを掛けることにした。








 それから暫くはゴーレムの調整を繰り返す日々であった。スペックは問題無いのだが、やはり外見をもう少し凝りたいのと、武装を増やしたいと考えていた。


 武装と言っても攻撃面はこれ以上不要なので、主に防御と制圧用のアイテムを備え付けた。例えば人が持てないような巨大な盾、しかもマジックアイテムの盾で伸縮可能な逸品である。


 本来はバリケード用で設置する防壁なのだが、ゴーレム君1号のパワーなら盾としても運用が可能だ。普段は左腕に装着させ、有事の際に展開できるようにした。


 それと右腕には強靭なネットを放出する武装も取り付けた。暴徒たちを傷つけず鎮圧させる為の装備である。ゴーレム君1号は力の加減が上手いが、捕獲用の手段は多いに越したことはない。


 それと各関節部を補強する為に三人の許可を貰って貴重な”世界樹の樹脂”を使用することになった。シグネによるとその樹脂は、かなりの硬度と柔軟性を兼ね揃えた奇跡の素材らしい。


 おまけに火属性以外の魔法耐久性も抜群の代物だ。これにより弱点である関節部はしっかりガードされている。一番重要な心臓部のコアも超分厚いアダマンタイト合金で保護されており、この守りを突破するのは俺たちでも骨が折れる。


 セーフティーロックもキチンと施したし、事前に基本的な命令はしっかり植え付けている。例えば一番怖いのは仲間や他人への誤射だが、”人は殺すな”としっかり命令しているし、俺たち以外の命令も受け付けないようにしてある。


 だが、あまり命令ばかりで雁字搦めにしては彼の知能の高さを殺す事にも繋がりかねないので、あくまで最低限の命令しかインプットしていない。


 例えばその一つが命令系統だ。


 本来なら矛盾した命令が被らないよう、俺たちの中でも優先順位を付けるべきだが、あえてそれをせず、ゴーレム君1号の判断に任せる仕様にした。


 ちなみに名前はそのままゴーレム君1号となった。


 色々名前を募集してみたが、佐瀬は可愛らしい名前を、名波は厨二病臭く、シグネは版権無視のデンジャラスなネーミングばかりであった。


「だいふく……可愛いのに」

「炎龍神機……恰好いいと思うけどなぁ」

「ガ〇ダム mk-ⅩⅢ!」


 止せ! 最後のは絶対止めろ! こっちの世界でも著作権係争で勝てる気がしない!




 まぁ、こんな感じでここ最近は皆ゴーレム制作に夢中であった。俺も今回の一件で十分な手応えがあったので、ゴーレムのコアさえ手に入れば二体目を作る事も可能だろう。



 あと話すような情報と言えば、第三回目の視察団が新東京からこの街にやって来たくらいだろうか。


 しかも今回の視察団は28名と過去最大規模で、その半数は更に王都を目指して旅立って行った。


 今回は長谷川氏と宇野事務次官も同行しており、彼らはブルターク滞在班となる。



 視察団の半数が王都に出て一週間後のことであった。


 俺は長谷川から連絡を受けて、宇野と長谷川の両名を≪翠楽停≫の部屋に招待した。何でも早急に相談したい事があるそうだ。



「早速だが本題を話そう。矢野君たちは戦争の噂を耳にしたかい?」


 宇野の言葉に俺は眉を顰める。


「もしかしたら、程度の噂なら聞きましたが…………もしかして本当に起こるんですか?」


 それに答えたのは長谷川であった。


「我々もその噂はよく耳にします。この辺りでは収穫期を終えた後は数年に一度は帝国が仕掛けて来るそうですね?」


 その情報は俺が以前、長谷川たち新日本政府にも伝えた内容であった。街の人間なら誰でも知っている有名な話だ。だから収穫期を迎えると、そろそろ戦争が起こるのではと口々に噂をするのだ。


 実際起こるかどうかは微妙らしいが…………


「昨日、王都へ向かった連中が情報を持ち帰った。この街もそうだが、食料品を始めとした生活品の値段が全て上昇している。それと……こいつだ」


 宇野は自らのスマホを取り出すと、ある写真を俺たちに見せた。


 それは空から撮影された王国軍の姿であった。


「これは……!?」


「ドローンで撮影した。これと同じように、国境沿いの周辺で王国兵たちの行動が活発になっている。こっちは塹壕らしきものを作っている写真、こちらは恐らく兵站を準備する為の簡易的な後方砦だろう」


 宇野は空撮した王国軍の写真を次々と俺たちに見せていった。


(ドローンか。そんなものを大量生産されたら、エアロカーの運用にも気を付けないとな)


 軍事的な話は良く分からない俺は、別の事を考えていた。


「専門家としての意見を言わせてもらえるのなら、そう遠くない内に戦争が起こる。それも収穫期を終えず直ぐに、だ」


 宇野の言葉に俺は衝撃を受けた。


「まさかそんなに早く? もしかして何時もの小競り合いじゃあないんでしょうか?」


「分からん。が、気になるのはそれだけじゃないんだ。これが問題の一枚だ」


 そう言って宇野が見せてくれた写真は、今までと違い兵士の姿が遠くに移っているだけだ。それに陸ではなく、ほとんど空を写していた。


「あれ、この空に浮かんでいる黒いのは?」


 佐瀬がある事に気が付いて指を差した。確かに空には黒い物体が見える。しかし、これはまさか……


「そうだ。これもドローンだ。しかも我々のモノじゃない。こいつは帝国方面から飛んできて暫く空を飛行した後、やはり西へと去って行った。つまりは帝国側のドローンだ」


 その言葉に俺たちは今度こそ強い衝撃を受けた。


「今回の戦争、もしかしたら地球人側が組みしているかもしれない」


 宇野は俺たちの予感をはっきりと言葉にするのであった。








◇◆◇◆ プチ情報(人物紹介) ◇◆◇◆



パーティ名;東方英傑


 元日本人高校生であるリクをリーダーとした冒険者パーティ。名前の由来である東方は日本の事を指し、四人共全員が英雄願望のある新進気鋭のチーム。


 イッシンたちに手ほどきを受けた時にはまだE級冒険者であったが、現在はスピード昇級してC級になり、主に王都周辺や南部で活動をしている。




名前:徳元リク

選択スキル:水魔法


 ≪東方英傑≫のリーダー。元々文武両道な学生であったが、異世界物が大好きで、夢にまで見た転移に心を動かされ、反対する両親たちを説き伏せて仲間たちと共に冒険へと旅立つ。


 水魔法は日常で使用する為と割り切って、戦い方は槍での近接戦闘が主になる。一応補助として魔法も行使する。


 彼はメンバーの中で唯一の黒髪だが、拘りでもあるのか”染色の秘薬”を使用していない。最近は金銭的な余裕も出てきて、装備も新調した。




名前:四元ヒカリ

選択スキル:勇者の卵


 ≪東方英傑≫の一人でリクの幼馴染という、不動かつ負けフラグ満載なポジション。リクの事が好きで旅について行く。”染色の秘薬”で長い髪を金色に染めている。


 彼女はリクとは違い運動も勉強も苦手であったが、同じ異世界物好きという共通の趣味がある。スキルも英雄願望から思い切って【勇者の卵】を選択し、それが当たりだったのか、メンバーの中でも総じてステータスの成長が著しい。


 剣と持ち盾を装備し、近接戦闘だけでなく魔法も使いこなす万能タイプ。今ではチームのエース扱いとなっている。




名前:佐々木シノ

選択スキル:鑑定


 ≪東方英傑≫のメンバーで斥候役シーカーを担当。リクとは同級生で中学からの付き合い。リクのことが好き。ショートカットの髪を銀色に染めている。


 装備は短剣に弓と名波に酷似しているが、二刀流ではない。闘力もそこまで高くは無いが、その代わり雷属性を始めとする魔法を習得している。




名前:門倉カエデ

選択スキル:剣


 ≪東方英傑≫のメンバーで純粋な前衛タイプ。魔法は苦手。リクとは高校からの付き合いで、やはりリクのことが好き。髪はポニーテールで青色に染めている。


 元々剣道部でもある武士系少女。ただし西洋剣を好んで使っているので、我流の剣術となる。

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