第101話 街道での戦い

 リーダーらしき男の合図で17名の賊たちは動き出した。


 ここまで来たら相手は帝国兵、ないしは不審人物と確定させていいだろう。


「俺が前に出て迎え撃つ! マルコたちは佐瀬とココナの護衛を頼む!」


「お、おう!」

「任せてください!」


 ココナは佐瀬と同じ魔法使いタイプで近接戦闘が苦手だ。マルコは剣士、コランコは斥候だが、闘力は恐らく賊より低いと思われる。この人数差で前に出ても殺されるのがオチだ。


 俺は単身前に出て、【セイントガード】でまずは身を守る。


 賊の一人がこちらへ掌を向けた。あちらにも魔法を使える者がいるようだが、その動きを佐瀬は見逃さなかった。


「————【ライトニング】!」


「ぐあっ!?」


 ライトニングは射程も速度も優れた使い勝手の良い魔法だ。相手の魔法耐性がどの程度かは知らないが、本気の佐瀬の【ライトニング】は俺でも痛い。


「なっ!? まさか雷魔法の使い手か!?」

「もう一人は火魔法だ! どちらも手練れだぞ!」


 ココナも火属性の下級魔法【ブレイズ】を解き放った。だがそれは相手の魔法耐性でレジストされたようだ。


 相手も魔法を放つが、佐瀬の二撃目の魔法で相殺し、残りはマルコの盾やコランコの魔法で防いでいく。


 マルコの盾は以前ダンジョンで共に手に入れた代物だろう。あれは特殊な効果こそないが、防御力はそこそこあったはずだ。


 コランコはいつの間に習得したのか、水魔法で相手の火魔法を相殺させていた。


 俺にも向かってくる魔法をレジストしながら、単身賊たちに突っ込んでいく。まずはこちらに注意を向けさせる狙いだ。


 案の定、邪魔な前衛から排除しようと考えたのか、弓兵の一人がこちらへ矢を射掛けるが、俺は難なく魔剣で打ち払う。余程特殊な弓でない限り、正面からなら当たる心配はない。


「ち、こいつやるぞ!」

「まずは白髪のガキを全員で掛かれ!」


 賊の後衛組は徐々に散開しながら佐瀬たちの方を狙い、こちらの火力を封じる構えのようだ。その隙に前衛組全員で俺を囲う気だろう。


(流石にこの人数差はやばい! だが————)


 俺には名波から受け取った小型ポーチがある。そこからゴーレム君1号を取り出した。


「んなぁっ!?」

「なんじゃ、ありゃあっ!?」


 突如現れたゴーレムに賊たちは驚きの声を上げていた。


「ゴーレム君1号! あの鎧を纏った者たちを無力化しろ!」


 俺が命令を下すと、ゴーレム君は即座に行動を開始した。


「ぶぎゃっ!?」


 まずは一番近くにいた盾持ちの男が殴られて吹き飛ばされた。瞬時に盾でガードしたようだが、そんなのお構いなしに殴りつけて相手ごと吹き飛ばす。


「こ、こいつ!」


 即座に横から別の剣士がゴーレムを斬りつけたが、切断するどころか傷ひとつ付けられなかった。


「ば、馬鹿な……ぐはっ!」


 お返しとばかりにその剣士も殴り飛ばす。


「くっ! このゴーレム、Bランク以上はあるぞ!」

「スキルを使って応戦しろ! どこかに弱点があるはずだ!」


 男たちがゴーレムを囲う形で距離を取った。だが、そうはさせない!


 俺はこの隙に向こうの後衛組を狙う素振りを見せた。それに気付いた指揮官が慌てて指示を出す。


「そのガキを後ろに行かせるな!」


 即座に近くに居た前衛3人が俺へと向かってくる。


(3人なら……相手になるぜ!)


 俺は空いている左手で【ウォーター】を射出した。殺傷能力の低い属性魔法だが、魔力を籠めれば相手を吹き飛ばすくらいはできるし、属性不利な雷魔法の使い手が少ないのが水属性の利点だ。


「ぐっ!」


 1人吹き飛ばすことに成功し、その間に1対2だ。俺は近くにいる男の方に肉薄した。


「「——【スラッシュ】!」」


 奇しくも両者同じスキルをほぼ同時に放つ。軍配は…………俺の方に上がった。


「——んだとぉっ!?」


 ノームの魔剣の強度は伊達ではない。そこに俺の闘力も加われば、余程の相手でない限り打ち勝てる。


 相手の剣を切断し、返し刃で左腕を切断した。


「ぐあああああっ!?」


 悲痛な声に耳を塞ぎたくなるが、そんな余裕は無い。すぐそこにもう一人が迫っていたからだ。俺は腕を斬り飛ばした勢いのまま身体を捻らせて屈むと、一気に迫って来た敵の横に跳躍して、同じように片腕を斬り飛ばした。


「ひいいぃぃっ! お、俺の腕がぁ……!?」


 俺は他に近づいてくる敵がいないか辺りを見回すと、視界の端にキラリと光る何かが迫るのを捉えて、慌てて回避した。


(————矢か!?)


 飛んできた方角を見ると、蒼褪めた様子で第二射を準備している弓兵の姿が見えた。俺は即座にそいつも無力化しようと駆けつける。


「く、来るなぁ!」


 二射目も正確に俺の頭部を狙ってきたが、射手が見えてさえいれば当たる事はない。頭を傾けて矢を躱す。


(もう次の矢は撃たせない!)


 相手が俺の間合いに入り、剣を振り下ろそうとした瞬間、横から何か衝撃を受けて吹き飛ばされた。


「ぐっ、何だ!?」


 衝撃を受けた瞬間、何かが割れるような音が響いた。これは【セイントガード】の防御膜が割られた音だ。


 魔法の効果で俺のダメージを肩代わりして消失したのだろう。


 どうやら俺はいつの間にか相当威力のある攻撃を受けたようだ。慌てて周囲を観察するも、近くにいるのはあたふたする弓兵くらいで、後は遠くにいる者だけだ。


(矢は……落ちてない。魔法攻撃か? 全く魔力を感じなかったぞ!?)


 まるで気配の無い攻撃であった。


(待てよ? 気配がない……本当にそうか?)


 俺は索敵型の【探知】スキルを使用する。このスキルは名波の【感知】のように常時発動型ではないが、その分同レベルの【察知】よりかは探索精度が上の探知系技能スキルだ。


(いる! 直ぐ近くに……そこだ!)


 俺はすぐ真横に迫る気配の者に剣を振るった。


「ぐああっ!?」


 悲鳴と共にどこかで見た外套を纏った男が血を吹き出しながら倒れた。どうやら斬りどころが悪かったようで、一撃で死亡したようだ。


「まさか相手も≪隠れ身の外套≫持ちがいたとはなぁ……」


 油断した。名波がいない時点で俺も予め【探知】を使っておくべきであった。


 改めて、近くにいる射手に目を向ける。


「こ、このぉ!」


 その間に三射目の準備を終えた弓兵がこちらを射らんとするも、俺が手を下す前に【ブレイズ】の魔法が彼に直撃した。


「ぎゃあああっ!」


 全身火達磨になりながら転げまわる男に、俺は消火代わりに一発【ウォーター】の魔法を撃ちこんで気絶させた。


「そういえば、さっき【ウォーター】で吹き飛ばした男は……」


 男の方を見ると既に倒れていた。恐らく佐瀬の雷魔法だろう。


 俺は【探知】を使いつつ、残敵の位置を確認した。形勢はこちらに大きく傾いているようで、相手の大半は地に伏しており、残りは森の中へと逃げて行った。それをゴーレムが追う形となっている。


「ゴーレム君、追撃はしなくていい!」


 深追いし過ぎるとさっきの俺みたいな目に遭うかもしれない。恐らく先程は弓兵に迫ったタイミングで透明状態の男から斬撃を食らったのだろう。


(【セイントガード】に助けられた。やはり実戦ともなると違うな……)


 ゴーレムは俺の言う通り追撃を止めると、急いで佐瀬の方へと駆けつけた。


 戦闘時は後衛である佐瀬を優先して守る様に予め指示してある。最終判断自体はゴーレム君1号自信に任せているが、それを忠実に実行しようとしているのだろう。



 俺は周囲に敵が潜んでいない事を確認すると、佐瀬たちの下へ駆けつけた。


「終わった、のかしら?」


「少なくとも俺の【探知】には引っかからない」


 ただし俺の索敵型スキル以上の隠密型スキルを持っていれば話は別だ。その事を4人に伝え、俺たちは周囲を警戒しながら、まずは倒れている敵兵たちを拘束することにした。


 腕を斬り飛ばした者は簡単に止血だけ済ませ、命が危なそうな者は少しだけヒールを施す。相手はこちらを殺そうとしてきた賊だ。腕を再生させる気もないし、ポーションも勿体なくて使いたくない。


 小型ポーチから縄を取り出して、一人一人縛っていく。ついでにゴーレムも一旦小型ポーチに収納した。


 その異様な光景を目の当たりにしたマルコたちが近づいてきた。


「成程な。そのポーチがあったから運搬班に抜擢された訳か」


「そう言うこと」


「しっかしアンタ、更に強くなってるわねぇ」


「おまけにあんなゴーレムまで……あれ、どうしたんです?」


「自分で作った」


「「「はあああっ!?」」」


 3人揃って驚いた後、ゴーレムについてあれこれ聞きたそうにしていたが、今はそんな状況ではない。


「よし、こいつらはここで縛ったまま放置だ。名波たちを追おう!」


 俺たちは5人揃ってブルターク方面へ駆け出した。


 本当は俺だけの方が早く着けるのだが、さっきのような連中がまだいないとも限らない。ゴーレムは実力こそピカイチだが索敵能力には乏しいのだ。


『駄目、念話が届かない場所に居る!』


 佐瀬は【テレパス】を使用して名波たちに念話を試みるも、そもそも繋がらないようだ。【テレパス】は一度接続した事のある者ならば距離が離れていても利用できるが、一定以上離れてしまうと使えない。


 どうやら結構遠くまで馬車が逃げたのか、それともまだ逃走の最中なのか、追っている名波たちは勿論の事、賊の姿も見当たらない。



「あ、あれ!」


 暫くすると血だらけで倒れている者の姿が見えた。一瞬ドキッとするも、それは鎧姿の男であった。ただし頭部が一部吹き飛んでいた。


「この傷は……恐らく名波の矢だな」


「ナナミって……ルミの嬢ちゃんか?」


「矢でどうなったらこんな傷になるんですか!?」


 同じ弓矢使いでもあるコランコが驚きの声を上げる。


(まぁ、普通の矢なら無理だよなぁ……)


 ただし名波の使ってる矢は俺の魔力をかなり籠めた特別製だ。≪精霊の矢筒≫は全部で6本、その全てに俺の魔力を籠めている。使い切っても≪精霊の矢筒≫に矢は自動補充されるが、それ以降は再び誰かが魔力を籠めなければ矢の威力は上がらない。


「む、待て! あそこの茂みにも誰か倒れてる!」


 一行が足を止め、慎重に俺が指した方へと近づいていく。そこで呻き声を上げながら倒れていたのは、やはり鎧を着込んだ賊の仲間であった。彼は比較的に軽傷な様で、放っておくと回復してしまいそうだ。


「こっちは多分、シグネが風魔法で吹き飛ばしたな。とりあえずこいつも拘束しておこう」


 佐瀬の【パラライズ】で痺れさせ、街道に運んでからロープでしっかり縛っておいた。


(よく考えたらこんなロープ、身体強化か魔法で逃げられるかもなぁ)


 しかし現状ではどうすることも出来ないので、佐瀬の【ライトニング】で気絶させてから再び馬車の足取りを追う。


 駆け出して数分後、ようやく佐瀬の念話が届く位置に来た。


『留美、そっちの状況はどう!?』


『敵は全部倒したか逃げたよ! シグネちゃんも無事。でもケイトが……』


『ケイトがどうした?』


『相手の魔法を受けて重体なの! 矢野君、早くこっちに来て!』


 それを聞いた俺は佐瀬にアイコンタクトを送ると、彼女も同じ気持ちか頷いたので俺一人だけ先行することにした。


 念のために、護衛としてゴーレムを出現させる。


「うおっ!?」

「ま、また出た!?」


 マルコたちを驚かせてしまったようだが、今は問答している時間も惜しい。説明は佐瀬に任せて俺は全力で街道を走り抜けた。


 それからすぐに横倒しになっている馬車が見えた。どうやら馬も死んでいるか負傷しているようだ。横倒しになっていてピクリとも動いていない。傍でシグネが涙目になりながら馬の方を見守っていた。


「矢野君!」


「ケイトの容態はどうだ!?」


「駄目! さっきから意識が無い! ポーションも効果ないみたいだし……出血し過ぎたのかも」


 急いで彼女の全身を調べる。右腕はちぎりかけ、両脚も骨折していそうだ。傷口と口からも吐血しているのを見ると、内臓もやられていそうだ。


「——【ヒール】!」


 俺は全力全開のヒールをケイトに施した。これで今まで治らなかった怪我はない。多分大丈夫だ。


 見た目もすっかりよくなり、呼吸も感じられるようになったので、ケイトの治療は一旦止めた。


 俺はシグネの方に向かう。


「イッシンにい、お馬さんが……」


「安心しろ! 俺が治す!」


 2頭とも倒れていたが、うち片方はまだ息があったので【ヒール】で癒した。しかしもう片方の馬は既に息絶えていた。


(……仕方ない。お前らも一週間の付き合いだ)


 俺はマルコたちがまだ到着していない事を確認すると、急いで【リザレクション】を発動させた。先ほどの戦闘ではそこまでの魔力消費はなかったので馬1頭生き返らせるくらいは問題ない。


 眩い光が収まると、馬は何事もなかったかのように立ち上がった。


「ありがとう! イッシン兄」


「シグネもお疲れだったな。他の賊はどうした?」


「……一人はあっちで死んでるよ。他の二人は逃げちゃった」


 シグネが指差した茂みの方に向かうと、これまた頭部が破壊された男の遺体があった。おそらくこちらも名波の仕業だろう。


「ごめん、矢野君。加減が出来なかった……」


「いや、こっちこそ二人に任せちゃって済まない。こっちで何人か捕らえたから問題ないよ」


 今思えば名波とシグネの2人だと、敵を制圧するのに不向きなことに気付かされた。名波だと殺傷能力が高すぎて、生かして捕らえるのは格下でないと難しい。


 シグネの魔法も【ウインドーカッター】だと威力が高すぎる。かといって、それ以外の魔法だと少々威力が弱すぎるのだ。


 さっき倒れていた男は恐らく魔法耐性が低かったのだろう。だからシグネでもギリギリ悶絶させることに成功できた。だが長時間気絶させるまでには至らなかった様子だ。


 相手を死なせず無力化するのは思っていた以上に難しいようだ。


(俺の場合は【ヒール】があるから、やり過ぎても問題ないけどな)


 ケイトを守りながらの多人数相手の戦闘だ。二人は本当に良くやってくれた。



 やがて佐瀬たちも合流し、ケイトも目を覚ました。彼女は自分が大怪我を負った事は朧げに憶えているようだが、そこから先の記憶はないようだ。俺が魔法で治したと知ると何度も頭を下げて感謝の言葉を述べてきた。


「イッシンさん、ありがとうございます! 貴方は私の命の恩人です!」


「いやぁ、ケイトが無事で何よりだよ」


 鼻の下を伸ばしながら照れている俺を佐瀬はジト目で睨んでいた。


 仕方ないだろう!? 年下の女の子に命の恩人だと感謝されるなんて、男なら一度は憧れるシチュエーションだぜ!


 あれ? そういえば佐瀬の時はどうだったっけ?




 それから俺たちは話し合い、捕まえた連中を見張りながら、街の兵士が来るのを待つ事にした。


 馬車は馬こそ結果的に無事だったが、荷台の方は大破してしまっているので走行不可能だ。流石の俺も馬車までは治せない。【木工】スキルを持ってはいるが、根本的に知識と技術不足なのでどうすることも出来ない。


 幸いと言っていいのか今は物資を取りに向かっている最中で小型ポーチも空だった。壊れた馬車は小型ポーチに収納させて、拘束したままの賊たちを回収しに街道を戻った。


 急いで戻ると全員まだ気を失っていたようで、俺たちは一人一人捕らえた者を運び、それぞれロープで結んで密集させた。


 これで魔法でのロープ切断は難易度が増しただろう。味方にも被弾するからだ。


「それでは、私たちは急いで街に報告へ向かいます!」

「それじゃあ、行ってくるね!」


 街への報告はケイトと名波に行ってもらう事にする。名波なら【感知】で不意打ちを避けられるだろう。念の為、ゴーレム入りの小型ポーチも彼女に返した。




 それからは一度捕らえた者たちが騒ぎ出したりしたが、佐瀬が適度に雷魔法で痺れさせたり気絶をさせた。


「すげぇ、これが噂に聞く≪雷帝≫の雷魔法か……」

「もはや賊共が哀れですね……」


 佐瀬は二つ名で呼ばれるのが気に喰わないらしくマルコたちを睨んだが、ココナは貴重な雷魔法に興味津々で、あれこれ佐瀬と魔法談義に花を咲かせていた。


 シグネは暇つぶしに捕らえた男たちを一人一人鑑定していた。


「最高でも闘力4千ちょっとだったね」


「いや、十分高いだろう。B級冒険者レベルの兵士が 小隊クラスの人数で侵攻、か……」


 結局こいつらが何をしたかったのかが分からない。名波の話では、逃がした二人も森の方へと逃げて行ったそうだ。てっきり街へ特攻でも仕掛けるのかと思っていたがそうではないらしい。


(特攻紛いの少数での敵地侵入。けれど勝てないと分かれば撤退も視野に入れている……)


 レベルからみても捨て駒ではあり得ない。寧ろ精鋭の類だ。


 一見無茶にも思える行動だったが、偶々出くわした俺たちが強かっただけで、もし彼らが勝っていたらどうしただろうか? こいつらは再び森の中へ潜み、次の獲物を探し回っていたのだろうか?


(攪乱? いや、威力偵察……か?)


 シグネの話では、最初に見た連中の中に【鑑定】持ちがいたらしい。だが馬車を追う事に夢中で慌てていたらしく、顔までははっきり憶えていなかったそうだ。ここにいないという事は、逃げられたか死体のどれかが鑑定士だ。流石の鑑定型スキル【解析】も、死体の状態では名前くらいしか情報が分からないらしい。


(死体を兵士に突き出さなくていいのなら、蘇生させて調べる方法もあるが……そこまでしなくてもいいか)


 こっちのステータスは4人とも偽装ないし阻害済みだ。鑑定で視られて不利になる情報はひとつもない。


 ゴーレムの存在を知られたことについても、既にブルタークの冒険者たちには知れ渡っている情報だし何も問題はなかった。




 やがて名波とケイトが連れてきた兵士たちから簡単な事情聴取を受けた。どうやら定時連絡で顔を見せない巡回兵が出始めているようで、第七兵団では既に別動隊が調査に出向いている際中のようだ。


 その中での今回の騒動である。


 賊の連中はどうも北方から越境し、遭遇した巡回兵を一人残さず抹殺してここまで侵攻してきたようだ。


(間違いなく帝国兵だろうな)


 22名の帝国兵は一体何を目的としてきたのだろうか。どうやら第七兵団も強行偵察部隊だと考えているようだ。


(別動隊がいない限りは、それしかないだろうな)


 それに今回の件で第七兵団も、北方側と街道の警備に人員を割かなければならない。帝国の偵察部隊は壊滅に等しい被害を被ったが、全くの無駄という訳でもないのだろう。


「諸君ら≪白鹿の旅人≫がいてくれて助かった。お陰で調査もスムーズに行えそうだ」


 俺たちは今回の戦争に参加する際、いくつかのスキルを開示している。【回復魔法】や【鑑定】などだ。


 後は攻撃魔法と弓スキル持ちなのと、ついでに小型ポーチの所持も事前に記載していた。少しでも安全な後方に置いてもらう為である。


 それを知っていた臨時調査隊の隊長がシグネに賊の鑑定を依頼したのだ。


 それと話の流れで俺がケイトを魔法で癒した事も報告してある。彼女の装備の破損具合を見れば、どれだけの怪我だったかが伺える筈だ。それをこの短時間で完治させたとなると、かなりの治癒魔導士だと認識されかねない。


(ちょっと見せすぎたか? 今後は少し自重するか?)



 だが、その判断は少し遅かったのだと、後日俺は思い知らされる事となる。








◇◆◇◆ プチ情報(スキル紹介) ◇◆◇◆



スキル名:【雷魔法】

タイプ:魔法型

系統:魔法系

分類:適性スキル

レベル:1

主な所持者:佐瀬


 雷属性の主に攻撃・補助魔法の習得や使用の適性を補助するスキル。地球人を除くと最も使い手の少ないレア属性。最速の魔法でもある。




スキル名:【土魔法】

タイプ:魔法型

系統:魔法系

分類:適性スキル

レベル:1

主な所持者:浜岡、オッド


 土属性の主に攻撃・補助魔法の習得や使用の適性を補助するスキル。全属性の中でも防御に優れた魔法。




スキル名:【風魔法】

タイプ:魔法型

系統:魔法系

分類:適性スキル

レベル:1

主な所持者:シグネ


 風属性の主に攻撃・補助魔法の習得や使用の適性を補助するスキル。補助スキルが優秀。シグネは風魔法を習得した後で適性スキルを習得した。




スキル名:【全属性】

タイプ:魔法型

系統:魔法系

分類:適性スキル

レベル:EX

主な所持者:不明


 全属性の主に攻撃・補助魔法の習得や使用の適性を補助するスキル。スキル保有者は稀で、EXレベルはユニークスキルに該当する。

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