第102話 劣勢

「≪白鹿の旅人≫には転属依頼が出ている」


 事件から二日後の第五駐屯地にて、俺は兵站駐屯部隊のゼネトー隊長からそう言い渡された。


「て、転属って……一体何故!?」


「詳細は俺にも分からんが、フランベールの人員が足りず、応援要請が出ている。明日中に兵士・冒険者合わせて200名の配置替えを行うそうだ」


 まさかの事態である。


「フランベール? 最前線ではないんですよね?」


「流石にこんな早く町までは攻められておらんよ。ただB級冒険者パーティである≪白鹿の旅人≫は、是非寄こして欲しいと西方軍から要請が出ている」


 どう考えても一昨日の一件が原因だ。どうやら最前線で戦っている西方軍の耳にも、俺たちの活躍が届いたようだ。


(冒険者なんて予備戦力だろうに……そんなに切羽詰まった状況なのか!?)


 俺は即答せずに少し考えてから口を開いた。


「…………あくまで依頼、なんですよね?」


「ああ、そうなるな。依頼主も依然変わらずに侯爵家からだ」


 つまりはYESしか、ほぼ選択肢が無いわけだ。


 俺は少しでも抗う為に交渉を試みる。


「ゼネトー隊長もご存じの通り、俺たちのパーティは女子供の集まりです。中には人殺しや血生臭いのを好まないメンバーもいます」


「む、冒険者としてそれもどうかと思うが……まぁ、そうだな。元々、運搬作業を希望していた君たちだ。私からも配属先は考慮するよう西方軍と大隊長に進言してみる」


「……ありがとうございます」


 ここらが限界だろう。


 彼らとしても冒険者の、ましてや子供を最前線に送るような事を好き好んでしている訳ではないのだろう。だが、状況がそれを許さないようだ。


(こりゃあ思っていた以上に前戦は地獄のようだな。タカヒロたち……大丈夫か?)


 彼らの安否も気にはなるが、今はそれよりも自分たちの事だ。今から俺は佐瀬たちにこの件を伝えなくてはならない。そう考えると気持ちが沈んで仕方が無かった。








 ゼネトーの宣告通り、翌日には配置換えの件は正式に通達され、多くの冒険者たちが要塞町フランベールへと移動を開始した。


 その道中、一昨日見た三人組がいた。


「お? イッシンたちも転属か?」


「あ、貴方たちは……」

「teamコ……じゃない、炎名の雷!」


「「「雷名の炎・・・・だ!!」」」


 シグネちゃん、惜しい!


 ちなみに俺は雷名の嵐だと思っていた。もう分かりづらいしteamコココでもよくね?


「ったく! テメエが”teamコココ”なんて呼ぶから、嬢ちゃんたちも真似し始めてるじゃねえか!」


「だって覚えづらいし……マルコたちもフランベールに転属?」


「雷名の炎! 簡単だろが! ……ああ、そうだよ!」

「折角街道を散歩するだけの仕事だったのに……あと、雷名の炎よ!」

「多分、一昨日の一件で買われてしまったんでしょうね。それと雷名の炎です!」


「分かった、もう分かったから! 三人してパーティ名を連呼すんな!」


 いい加減覚えてあげないと可哀そうなので、脳内にしっかり刻み込むとする。


(雷に炎、雷に炎っと…………なんで雷魔法使えないのに雷?)


 余計な事を考えたせいで憶え損なった。すまんな、teamコココ。


「俺たちだけじゃねえぜ? ほら、あいつらも、あっちのパーティも、有名どころはほとんど転属だな」


 辺りを見れば≪千古の頂≫に≪オルクルの風≫の連中も見えた。他にもギルドでちょくちょく話をする連中が多い。ほとんどの冒険者がフランベール送りらしい。


「まさか最前線に送られねえだろうな?」


「私、嫌よ!? 一昨日のような連中を相手にしていたら、命が幾つあっても足りないじゃない!」


 ココナは一昨日の戦闘で奮闘していたが、自分に飛んでくる魔法を相殺するのに精一杯で、気が付けば相手の後衛は佐瀬が一通り倒してくれたようだ。マルコとコランコも決して弱くは無いのだが、前回は流石に相手が悪かったのか、一人も倒せていない。


「この前の連中はやけに強かったからなぁ。あれはしょうがないよ」


 俺はさりげなくフォローを入れる。むしろteamコココが自分の身と佐瀬を守ってくれたお陰で、こちらも十全に動く事ができたのだ。仕事としてはかなり上出来な部類だろう。


「で、お前さんらはまた物資の運搬作業か?」


「いや、医療班に呼ばれた。それ以外も仕事があるようだが、基本町からは出るなと言われたよ」


「そうか。俺たちは後方側の巡回警備だ。まぁ、戦闘になる事は無い……と思う」


 前回も安全な巡回警備だと思っていたのにあのザマだ。マルコたちも不安なのだろう。だからこうして俺たちとお喋りをして気を紛らわしているのだ。


「死にさえしなければ、どんな怪我でも治してやるよ! だから……死ぬなよ?」


「おうよ!」

「ええ!」

「任せてください!」


 その返答はどこか空元気な様に聞こえた。








 フランベールに到着すると、まずは宿泊場所を案内された。多くの冒険者や兵士は町の外で野営することになるが、俺たちは特別待遇らしい。みすぼらしい宿だが、大きな一室を与えられた。


「風呂が無い……」

「トイレも共同だよぉ……」


 しかし、女性陣には不評であった。


「仕方がないさ。良い宿はどこも満室らしい」


 一応もっといい宿に泊まれないか交渉してみた。宿泊代はキチンとこちらが出すので、風呂付で泊れる場所はないかと尋ねるも、良い宿ほど軍のお偉方や貴族の子息たちに割り当てられているらしい。


「もー! いっそ、大暴れして戦争を終わらせるのは駄目なの!?」


 シグネが大胆な発言をしてきた。彼女の言う大暴れとは、別に大虐殺をする訳ではなく、敵兵を全てノックアウトさせるか、力を見せて敗走させる、と言った表現だろう。


「別にいいけど、その後すっごく面倒になると思うぞ?」


「んー、んむむ……っ!」


 彼女もなんとなくそれが不味い事は察しているのだろう。ラノベ物の定番だ。力を見せれば権力者たちが放っておかない。いや、既にその一歩手前まで来ている気もする。


「あはは、ゴーレム君1号の存在が知られていなかったら、大暴れしてもらう手もあったんだけどねぇ」


 謎のゴーレム、突如現れ戦争を鎮める、か……


「それをしたら、今後ゴーレム君1号は日の目を見ることが無くなるぞ?」


「ああ、そうか……」


 俺たちのゴーレムは既に噂されているが、その強さまでは知られていない。精々そこらにいるCランクの通常ゴーレムか、1ランク上のB辺りだと思われている。


 実際の実力はAランク相当で、この中の誰よりも近接戦闘が強く、火力もそこそこあるし空も飛ぶ、まさにビックリドッキリゴーレムなのだ。


「でも、このまま帝国軍が押して来たら、本気を出すしかないわよね?」

 

 その際はゴーレム君にも本領発揮してもらう。


「……そうだな。なんだかんだで王国には愛着があるし、知り合いが死にそうなら俺は躊躇わない。だから皆も各自の判断で好きなように行動してくれ」


 力を出し惜しみして自分や知り合いが不幸になるのは馬鹿げている。そうなるくらいなら、多少の面倒事は受け入れるつもりだ。




 午後からは早速仕事に就く事となった。


 俺たちのパーティに与えられた任務は負傷した兵を出来得る限り治療する事。ただし、その仕事は回復魔法【ヒール】の扱える俺と佐瀬だけで、他の二人は俺たちを含めた医療班の護衛となっている。


 本来なら名波とシグネは別の仕事に従事して欲しそうな話を耳にしたが、どうやらゼネトー隊長が進言してくれた事が、多少の効果があったらしい。


(言うだけ言ってみるもんだな)


 俺たちは基本パーティ単位での行動で、戦闘にも不参加だ。ちなみに町が攻められた場合はその限りではないというお話だ。


(B級冒険者と言っても、こちとら成り立てなんだ! なんでもかんでも押し付けられて堪るか!)


 しかし、もし仮に俺たちが壊滅させたB級冒険者パーティ≪黒星≫が存命なら、帝国のスパイという裏の顔を持つ彼らも、この戦争で暗躍していたのだろうか?


 帝国と言えば、俺たちが助けた中国人や獣人族の脱走者たちは無事なのだろうか? ワン・ユーハンをリーダーとした中国人たちは帝国に囚われている家族を救うため、内部から切り崩しを試みると口にしていた。


 また元≪黒星≫であるナタルとオッドは獣人族らと共に獣王国へ向かったはずだ。今頃は無事に国境を超えることが出来ただろうか?


 俺は様々な事を思いながらも、怪我をして運ばれてくる負傷兵の治療を行っていた。


「うぅ、いてぇ……いてぇよぉ……」

「お、俺の足が……」


 中には手足を欠損している者も多く、佐瀬は顔色を蒼褪めながらも、なんとか踏ん張って治療行為を続けていた。だが所詮彼女の回復魔法は最下級であるただの【ヒール】で、俺のチート【ヒール】とは性能が圧倒的に落ちる。


 せいぜい止血するくらいが関の山で、重傷者にはベテランの治癒魔導士が当たることになっている。それが佐瀬には悔しいのか、必死に頑張っていた。


 一方俺はというと、治そうと思えばどんな傷でも短時間で治せるが、当然そんな事はしなかった。必死に治療行為を行っている佐瀬や他の治癒魔導士、それに怪我人には申し訳ないと思うが、俺の異常な回復魔法は極秘事項だ。


 それでも抑え気味な俺の治癒力は大分高いとの評判で、重傷者も何人か任せられることになった。


(せめて俺が担当する奴だけは助けてやるから……悪く思うなよ?)


 俺は無心に治療行為を続けるのであった。








 フランベールに来てから五日目の午後、そろそろ新しい重傷者たちが増えているだろうと思った俺たちは休憩を切り上げ、治療施設へやってきた。だが、さっき仕事していた時から患者が増えている様子は見られない。


「あれ? 今日は怪我人、どうしたんです?」


 俺が医療班の班長に尋ねると、彼も困惑していた。


「それが、さっきから誰も運ばれて来ないんだ。それに心なしか兵士の動きが慌ただしい様にも思える」


「それは————」


 ――――どういう事かと尋ねようとした時、町中に設置されている鐘が鳴り響いた。


「こ、これは!?」


「な、なに!?」


 俺たち冒険者は鐘の事など知らされていないが、周囲にいる兵士の動きを観察するに、恐らく何かの合図なのだろう。


「班長、これは……?」


 俺が尋ねると、彼は険しい表情のまま呟いた。


「鐘が二度ずつ繰り返し……これは、迎え撃つ合図だ!」


「迎え撃つ、ですか?」


 強襲や撤退の合図ではないようだが、迎え撃つとは…………まさか!? 前線がここまで押し込まれているというのか!?


 だとしたら、完全な負け戦の流れである。いや、ここは要塞町と謳われるような場所だ。ちょっとやそっとではここを抜くのは無理だろう。


 だが、それはこの町が最前線になる事を意味する。今までの後方勤めとは危険度も桁違いに跳ね上がる。


(おいおい、帝国軍はそんなに強いのか!?)


 もしくは王国軍がだらしないか、だ。


「い、イッシン、どうするの!?」


「どうもこうも……任務放棄をする訳にもいかないしなぁ」


 いざとなれば放棄だろうが敵前逃亡だろうがするつもりだが、情勢が分からない内に逃亡はできない。指示があるまでは俺たちもここで医療行為を続けなければならないだろう。


(どうりで……撤退戦を始めてるのなら、怪我人を運んでる余裕なんかないだろうさ)


 今頃戦場ではゆっくり前線を下げて、町の方まで後退しているところだろう。もし逃げ方を誤れば、一気に町が陥落することも十分あり得る。


「佐瀬」


 俺は人差し指で耳を指すジェスチャーをする。【テレパス】を使って欲しいという合図だ。


『どうしたの?』


『名波、シグネ。ちょっと危険な事を頼めるか? 外壁に上がって外の状況を見てきて欲しい』


 外の状況が分からないまま此処に留まるのは危険だ。最悪、町に帝国兵が入り込まれているのにも気づかないまま戦闘という事態も考えられるからだ。


『いいよ! 任せて!』

『よーし! 頑張るぞぉ!』


 二人はやる気であったが、それに俺は待ったをかける。


『あくまで偵察だけだからな? 無理は絶対無しだぞ? それと念話の届く範囲でな』


『了解!』

『ラジャー!』


 俺と佐瀬は医療班の為、しばらくここに残る事にする。もし仮に前線を下げるのなら、これからますます医療現場は忙しくなりそうだ。今は嵐の前の静けさといったところか。


『外壁に到着したよ!』


 名波から第一報が念話で届いた。


 どうやら今は外にいた多くの冒険者や兵士たちがフランベールに駆け込んでいる状況らしい。味方の殿はまだまだ遠くで、帝国兵も現時点では迫っていないようだが、外の様子を聞く限り、連中がここまで押し上げてくるのは時間の問題なようだ。


『あ! タカヒロいたよ!』


 シグネが教えてくれる。


 どうやらタカヒロは無事な様だが、他の日本人冒険者の姿はまだ見えないらしい。撤退なので散り散りになっているだけなのか、それとも…………


『帝国の軍勢が来た! 凄い数!』


 どうやら本当の本当に前線がここまで下がって来たらしい。


『シグネ! 帝国兵のステータスを視れるか? なるべく豪華な鎧の強そうな奴が良い! 2、3人だけ頼む!』


『んー、もう視てるけど、あんまり強そうなのはいないよ? ほとんどの人が闘力千もない……あ、魔力千越えがいた!』


 その程度なのかと俺は少しほっとした。


 どこかでこの前遭遇した連中以上の奴らが押しかけて来ているのではないかと不安に思っていたからだ。


 参考値とはいえ、やはり相手の強さが分かる鑑定スキルは戦争でも有用だ。


『分かった、ありがとう。二人とも、無理をしないで戻ってこい!』


『うん、もうちょっと視てから戻るね』


『私も出来る限り撤退に協力してみるよ!』


 ん? 名波の奴、もしかして外壁の上から矢で帝国兵を射るつもりか?


 少し不安だが、名波には【感知】があるので下手は打たないだろう。


 名波たちとの念話を終えると、一人の兵士が医療施設へと駆けつけてきた。


「医療班の方々! 帝国兵が迫ってきております! この町はもう直ぐ籠城戦へと移行します。今ならまだ間に合いますので、希望者は付いて来て下さい! 後方に医療拠点を移します!」


 どうやら医療チームは外に出られるらしい。しかし、そうなると籠城中の治療はどうなるのだろうか? 前線に衛生隊はいるらしいが、それだけで足りるのだろうか?


「どうする!? 私たちも町を出るのなら、留美たちを呼び戻さないと……!」


「うーん……」


 このまま町を出たとして、その後どうなる?


 流石に第五駐屯地はもう役に立つまい。戦場から近すぎるので、浮いた兵站基地など格好の的だ。フランベールに前線を支えていた兵士たちが籠城するとなると、帝国軍はこの後どう打って出る?


 このまま素通りでブルターク攻めというのは考えにくい。後方に王国の要塞を残したまま前進なんてあり得ない。それは素人の俺でも分かる。


 だが、前線を支える兵士が籠城しているとなると、少数部隊なら幾らでも王国領内に侵入し放題だ。ここまでの事態になるとマルロース侯爵もいよいよ本気を出すだろう。


 現在戦場に出ている兵士は全て王国軍直轄の兵団だ。そこに領兵も加わる事になり、更には残りの冒険者や街の住人たちにも動員が掛かる恐れもある。


(街に逃げてもたいしてやる事変わらなそうだぞ?)


 寧ろ戦争が長引き、泥沼になりそうな気もする。ならば、この場で少しでも王国の力になって、戦争の早期解決を目指すのが得策なようにも思えた。


 籠城は一見逃げ場が無いように思えて、俺たちにはエアロカーという空の退路がある。寧ろ街に戻って侯爵家に顎で使われるよりかは、ここの方が自由な行動が出来るかもしれない。



 俺が考え込んでいる内に、佐瀬が念話で名波たちに事情を説明した。だが、帰ってきた返答は勇ましいものであった。


『私は残っても良いと思う。ここで少しでも帝国兵を倒せば、それだけ街は平和になるもんね!』


『私も残るに賛成! 視た感じ、強そうな人いないもん!』


 名波はともかく、シグネは少し戦争を甘く見ているようだが、とにかく二人はここに留まる意思を示した。


『イッシンは!?』


『悪い、佐瀬。俺も残る方に一票だわ』


『うーん、仕方ないわねぇ……』


 佐瀬は若干抵抗があるようだが、まるっきり反対ではないようだ。恐らく戦争行為そのものを忌避しているのだろう。


(俺も戦争は嫌だけど、今回は襲われている側だからな……)


 こんな嫌な事、さっさと終わらせてダンジョンにでも潜りたい気分だ。



「すみません。俺たちは残ります。皆さんは先に逃げてください」


「そ、そうか……。イッシン君、気を付けて!」


 短い間だが付き合いのあった医療チームのメンバーに別れを告げ、彼らは急いで町の東側へと向かった。


『よし! これで今の俺たちはフリーになるのかな? 誰かから指示があるまで思い思いに行動してみますか!』


『まずは合流しましょう。留美たちは今どこ?』


『北西の方の壁の上だよ!』


『ルミねえ、凄いよ! もう何人も足止めして味方を助けてる!』


 どうやら名波は矢で帝国兵の足を狙っているらしい。シグネは強そうな者を鑑定で探っては、名波に標的として伝えているそうだ。


『シグネ! もし矢が飛んで来たら風で守るんだぞ!』


『うん、大丈夫だよ!』


『名波! ゴーレムを投下しろ! まずは帝国兵がどの程度やるか見てみたい! 危険を感じたらすぐに離脱させるよう命令を与えてくれ!』


『了解だよ! ゴーレム君1号、出陣!』


 俺たちが北西の外壁近くに到着すると、重い物が地面に落下する音が壁の向こうから響いた。恐らくゴーレムが着地した音だろう。


 俺たちのゴーレムは色々外見をカスタマイズされており、パーティ名にあやかって白地に鹿のエンブレムが背中にペイントしてある。


 そして肩の部分には今回限りの仕様でエイルーン王国軍の模様も施されていた。青の下地に王冠と麦を模したエンブレムだ。これで少しでもフレンドリーファイアを防ごうという涙ぐましい努力の結果だ。



 俺と佐瀬がようやく外壁の上に昇ると、既にゴーレムは地上で大暴れをしていた。


「な、なんだアイツは!?」

「ゴーレム!? こんな所になんで!?」

「だが、王国軍のマークを付けているぞ!」

「味方……なのか!?」


 事情を知らない冒険者や兵士たちは困惑していたが、撤退してくる王国軍を避けて、単身帝国軍の方へ向かって行くと、それが自分たちの味方であるのだとようやく理解した。


「おおー!? なんだあのゴーレム!」

「手から火の魔法を放ったぞ!」

「矢が全く効かねえ!」

「水魔法も風魔法も効いてねえぞ!? あのゴーレム、一体何の加護持ちだぁ!?」


 ゴーレム君1号には特に何かの加護は持たせていない。どうやら製造過程で利用する魔石に加護が引っ張られるような旨が本に書いてあったので、色んな属性の高ランクな魔石を使用している。


 敢えて言うのなら若干水の加護寄りの配分だが、雷魔法の使い手など、そうそうおるまい? くくく……


 そう考えていたら、どこかからゴーレムに向かって雷の魔法が飛んで来た。


「な、なにぃ!?」

「あれって【ライトニング】よね!?」


 まさかのレア属性持ちが帝国兵にもいたようだ。


 しかも一人だけではない。火や風魔法に交じって雷魔法もあちこちからゴーレム君1号に放たれる。だがどれもこれも最下級魔法、稀に下級魔法が飛んでくるくらいなので、ゴーレム君1号の魔法耐性を突破する事は敵わない。


『イッシンにい! 帝国軍の中に地球人がいっぱいいるよ!』


「なに!?」


 シグネが気を遣って念話で話し掛けてくれたというのに、俺は思わず肉声で返してしまった。


 鑑定で視たら【自動翻訳】スキル持ちがいたらしく、しかもその数は数人というレベルではないらしい。王国側も自分たち含め何名かの地球人が参戦しているが、帝国側はその比ではないという。


 まさかの事態に俺は困惑するのであった。








◇◆◇◆ プチ情報(スキル紹介) ◇◆◇◆



スキル名:【察知】

タイプ:索敵型

系統:察知系

分類:適性スキル

レベル:1

主な所持者:名波


 自身の周辺にある危機や敵意を察知するスキル。適性スキルである為、自動で反応するが、意識するとより精度も増す。




スキル名:【感知】

タイプ:索敵型

系統:察知系

分類:適性スキル

レベル:2

主な所持者:名波


 察知が進化したスキル。基本的な効果は察知と同じだが範囲や精度が増している。




スキル名:【予知】

タイプ:索敵型

系統:察知系

分類:適性スキル

レベル:EX

主な所持者:不明


 察知系のユニークスキル。未来予知に近い。




スキル名:【探知】

タイプ:索敵型

系統:探知系

分類:適性スキル

レベル:1

主な所持者:イッシン


 自身の周辺にある危機や敵意を索敵するスキル。技能スキルである為、自動発動はしないが、意識して使用すれば察知系よりも効果が大きい。




スキル名:【探索】

タイプ:索敵型

系統:探知系

分類:適性スキル

レベル:2

主な所持者:不明


 探知が進化したスキル。基本的な効果は探知と同じだが範囲や精度が増している。




スキル名:【千里眼】

タイプ:索敵型

系統:探知系

分類:適性スキル

レベル:EX

主な所持者:不明


 探知系のユニークスキル。数キロ先の存在も索敵できる超広範囲スキル。

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