第103話 閉じられた門

 帝国領内にて地球人の存在が上層部に知れ渡ったのは、エイルーン王国よりも少し早く、半年以上も前のことである。


 初めは見慣れぬ異邦人が増えた事に、町の権力者や領主が気付いた。調査を進めたところ、その異邦人たちが帝国領内に幾つもの拠点を無許可で作り、生活し始めていると判明した。


 それを知った皇帝は激怒し、帝国内を隅々まで調査させ、不法移民たちを一人残さず捕らえるよう命じた。初めは何処かから流れ棲み着いた愚かな移民程度にしか考えていなかったのだが、調査を進めて行くうちに、その異常性に気付かされた。


 その一つが人数だ。かなりの数の異邦人が、何時の間にか帝国領内に踏み入れていたのだ。この規模の人数で何故今まで気付けなかったのか、国境警備や巡回兵の職務怠慢だと上層部は痛烈に批難した。


 更に彼ら移民たちの証言とステータスもおかしかった。驚いたことに彼らは異世界から来た転移者、地球人だと名乗り、しかもその全員が何らかのスキルを二つ以上も有していた。


 これもあり得ない現象だ。


 ここまで調査が進むと皇帝も、彼ら地球人の証言を信じざるを得ないと思い始めた。


 だが、かといってこのまま放置するのは愚の骨頂である。何を信奉し、どういった価値観を持つかが全く分からぬ多くの異世界人を国内に抱え込むなど、皇帝を絶対的存在とする帝国にとってはあり得ない選択肢であった。


 今はまだ転移者たちのステータスは低く、彼らを制圧することは容易い。帝国は軍事力に関しては高く、各方面に軍団を送り込んでもまだ国内への統制に余力があった。


 むしろ周辺国との小競り合いは、増えすぎた軍人の口減らしも兼ねている場合もある。有用で自分たちに忠実な兵士なら大歓迎だが、食うに困って志願した雑兵など、南部での属国による侵攻作戦を推し進めている今となっては必要なかったのだ。



 そんな状況下での、異世界人騒動である。



 最初は異世界人を皆殺しにしようという過激な意見も出たが、皇帝は少し考え方を変えた。


 帝国にいる数少ない鑑定士に指示を出し、有用なスキルを持つ地球人と、そうでない者とで分ける事にした。その上で反抗的な者は、口減らし要員として戦地に送り出すか、最悪始末すればいいと考えた。


 それ以外の使えなさそうなスキル所持者も、何らかの形で帝国に奉仕させようと、異世界人たちを殺さず、次々に捕まえて行った。


 才覚のある者は金や地位、女などを与え丁寧にもてなし、帝国の上流階級としてこちら側に引き込んだ。これが見事に功を奏し、何人かの有用な異世界人を味方に着ける事に成功する。


 好待遇の転移者たちはどれも協力的であった。主に科学力分野で異彩を放ち、帝都は近年稀に見ない発展ぶりを遂げていく。


 話を聞く限り、彼ら地球人の多くは非力だが、その知能はかなり高いようだ。


(やはり連中を放置するのは危険であった。すみやかに処分せねば……)


 テオドリクス・デ・ガラハンドラ皇帝は、自分の意にそぐわない異世界人に危機感を募らせていた。


 次代を担う皇太子などは、少しでも多くの異世界人を重宝したい考えのようだが、コントロールが出来ない中途半端に知恵と力を身に着けた民など、帝国にとっては害悪にしかならなかった。


 だからこそ初めは大多数を処分しようとも考えたのだ。


 だが自分も余命はそう残されておらず、近い内に皇帝の座を息子に譲るだろう。息子に少しでも、より良い状態で帝国を継いで欲しいとも願ってもいた。



 そこで折衷案として異世界人をふるいに掛ける事にした。



 戦闘向けのスキルを有する異世界人を適当な戦地に送り込み、そこで戦果を挙げた者を採用しようと考えたのだ。それ以外の職人型スキル持ちの異世界人は収容所で立場を分からせた上で、後々帝国に従順させる計画だ。


 一部収容所から逃げ出した愚かな異世界人もいるようだが、それ以外は概ね上手くいっていた。後は戦地の候補をどうするかだが、最近エイルーン王国内でも異世界人が次々と発見され、国で保護しようとする動きがある事を暗部が掴んでいた。


「丁度良い。王国に戦を仕掛け、口減らしをするとしよう。ついでに王国側の転移者どもの実力も図れるし、一石二鳥ではないか。急いで準備せよ!」


「は! 陛下の御心のままに……」




 こうした経緯で、例年とは少し違った思惑で帝国と王国との戦端が開かれた。








 フランベールへ向かってくる軍勢の中に、多くの地球人が紛れ込んでいるのを俺はシグネから知らされた。


 外壁上には既に多くの兵士たちが集まってきており、少しでも敗走する味方を助けようと援護射撃する者が増え始めた。


 周囲の目があるので、俺は佐瀬に【テレパス】を要求してからシグネに念話で尋ねた。


『シグネ! 出来る限り地球人の名前を読み上げて行ってくれないか? ファミリーネームだけでいい!』


『OK! えっとね。チャン、イ、ヤマウチ……』


 名前から察するに、ほとんどアジア系の人種で、稀に日本人やロシア系も含まれているようだ。


『……分かった。もう十分だ』


 俺はシグネに鑑定で視るのを止めさせると、これからどう動こうか頭を悩ませた。


『どうする? ゴーレム君1号は、まだまだ戦えそうだけど……』


 そろそろ敗走した味方全員が要塞町の中になだれ込む頃合いだ。そう経たない内に西門も閉じられるだろう。既に東と西以外の門は全て閉ざされている。あちこちで味方の怒号や鼓舞する声が木霊する中、俺は考えを纏めてから指示を出した。


『ゴーレム君1号を引かせよう。十分撤退の手助けはしたし、これ以上は的になって危ないかもしれない』


 ゴーレム君1号は念話で指示を送る事も可能だ。向こうは喋る事は当然できないが、こちらの指示は念話越しでもきちんと聞こえていた。ただし【テレパス】の射程範囲を超えると指示が送れないので、そうならないように命令をしている。


『分かったわ! 私たちは?』


 自分たちはどうするのかと佐瀬が尋ねてくる。


『帝国軍の中には無理やり戦地に送り出されている人もいるかもしれない。基本的には命を取らない方向で戦いたい』


『分かった。【ライトニング】や【パラライズ】で応戦するわ!』


『彩花はともかく、私はそこまで器用に手加減出来ないかもだよ?』


 名波は殺傷能力の高い武器しか持っていないので、遠距離で手加減というのは少し難しいかもしれない。


『万が一、帝国側に知り合いがいたら、俺が責任もって治療する! だから名波はとりあえず普通の矢で手足を狙ってくれ』


『私はどうする?』


『シグネは基本的に佐瀬や名波の守りだな。俺も外壁の上からじゃあ、やる事が限られるしな』


 一応俺にも【ライトニング】があるし、シグネにも風魔法があるが、全員で攻撃に専念すると足元を掬われかねない。俺とシグネは今回サポートに回る事にした。


『それとシグネは鑑定を継続していってくれ。地球人じゃない帝国兵相手なら遠慮はいらないだろう。強い奴がいたら遠くからバンバン狙って行こう!』


『分かったよ! あ、あそこの馬に乗ってる黒い鎧の人、闘力2千以上あるよ!』


『分かったわ! 【ライトニングアロー】!』


 佐瀬はいきなり切り札である【ライトニングアロー】を繰り出した。黒鎧の騎士は結構遠くにいるが、この魔法は追尾性能が有り、的を外すことはまず無い。


 相手はそれを知ってか防御を試みるも、魔力1万8千近い佐瀬の中級魔法を防御レジストできる者はそういないだろう。直撃した黒鎧はそのまま落馬し、ピクリとも動かなくなった。


 メンバー内でも人殺しを忌避する性格の佐瀬だが、相手は現在進行形で攻めてきている侵略者側、しかも生粋の帝国軍人だ。そんな相手には彼女も容赦しなかった。


「おっと! 反撃してきたな!」


 弓矢が何本かこっちに飛んで来たので俺は少し前に出ると剣で斬り落とした。前の世界ではそんな超人離れした動き、到底できないと思っていたが、闘力が7千を超えるとこんなのは朝飯前だ。


 シグネも風魔法で矢の勢いを止める。



 暫く外壁上で援護射撃を行っていると、とうとう西門が閉まり始めた。


「まだ大勢の仲間が残っているのに!?」


「あれほど大きな門だ。今から閉じ始めないと間に合わないのさ」


 俺は少しでも生還者を増やそうと、ゴーレムに新たな指示を出す。少々ゴーレム君1号の危険度が増すが、背に腹は代えられまい。


 ゴーレム君1号は王国軍の殿と追っ手との間に割り込むと、襲い掛かる帝国兵を次々となぎ倒していった。


(あいつ、本当に凄いな……)


『イッシンにい! ゴーレム君に闘力5千の人が近づいて来るよ! 斧を持った大柄な灰色鎧の人!』


『佐瀬! 名波! 優先的に狙ってくれ!』


『任せて! 【ショット】!』

『————【ライトニングアロー】!』


 名波は即座に斧使いを狙撃したが、なんとそれに気が付いたのか、兵士は身体を逸らし、ギリギリで矢を躱してみせた。


 だがその直後、今度は追尾性能持ちの雷の矢が男へと襲い掛かる。男は必死に跳躍して躱そうと試みた。しかし、ただでさえ速い雷属性の追尾弾に敢え無く被弾し地に伏す。


『倒せたかしら?』


『どうだろう? 魔力が高ければギリギリ生きてるかもしれないが……』


 しかしこの距離で名波の矢を躱すとは恐れ入った。二人掛かりでやらせて正解だった。


 斧持ちはパワータイプが多そうなので、戦技系スキル次第ではゴーレム君の装甲を突破しかねない。ああいった輩は要警戒だ。


「あ、門が閉まったよ!」


「よし! もう潮時だ! ゴーレム君にも改めて離脱命令を送ろう!」


 指示を出そうとしたら、閉じられた門を必死に叩く兵士が5名いる事に気が付いた。タッチの差で逃げ遅れた兵士や冒険者たちらしい。


「開けてくれー!!」

「た、助けて、お願い……!」


 可哀そうだが、この状況で門が開くことは無いだろう。殿を務めていた他の者たちはそれを理解していたのか、外壁を迂回して別の場所へ逃げて行ったが、彼らは判断を誤ってしまったのだ。


「イッシン!」


「分かってる! ゴーレム君!」


 俺は命令内容を変更し、ゴーレムに搭載された捕獲用ネットを射出するよう指示した。ただし相手は帝国兵でなく、逃げ遅れた者たちにだ。


「きゃああっ!?」

「な、何だ! こ、これは!?」


 必死に扉を叩いていた者たちは急に網で動きを封じられ、パニック状態に陥っている。それを意に介さずゴーレムは彼らを網に拘束したまま、バーニアの出力を全開にして空へと飛び上がった。


「そ、空を飛んでるの!?」

「た、助けてくれぇ!」


 ゴーレムは5人を持ち上げたまま外壁上まで上昇した。それを見た帝国兵が逃さんと矢を放つ。


「シグネ! 佐瀬も! 風魔法で矢を撃ち落とせ!」


「「了解!」」


 俺も含め、風魔法を使える者は救助者を守る様に風魔法を放った。見れば他の魔法使いも彼らを助けようと帝国兵に向けて威嚇射撃を行っていた。


「よし! このまま内側に着陸させよう」


 俺はゴーレムに、助けた彼らをゆっくり要塞内に下ろすよう指示を出した。網ごと5人を地面に下ろすと、その傍をゴーレムがゆっくり着陸した。


「た、助かったの……?」

「ここは……要塞町の中、なのか?」


 網の中に入った5人の救助者たちは、ようやく自分たちが助かったのだと認識すると、涙を流して喜び合っていた。近くに居た兵士たちは、得体のしれないゴーレムに近づいて良いものか遠巻きに様子を伺っていたので、俺はゴーレムに待機姿勢を取らせた。


 ゴーレムが片膝をついて動かなくなると、ようやく周囲の兵士たちが救助された5人の下へと向かった。


「だ、大丈夫か!?」

「今すぐ網を外すぞ!」

「これ、どうなってるんだ? 切っちゃまずいか?」


 拘束用の射出ネットは本来敵を捕らえる為の武装で、簡単に抜け出せないよう複雑に絡まる仕組みになっている。


「やべ! このままじゃあ網を切られちゃう!」


 俺は急いで外壁を飛び降り、彼らの下へと向かった。


「待ってくれ! それはちゃんと外れるから切らないで!」


「何だ、お前は!?」

「まさかこのゴーレムはお前の仕業か!?」


 今まで前線で戦っていた者は、ゴーレム使いの冒険者がいるという噂をまだ知らない。俺は銀の冒険者証を取り出して、自分の身分を明かした。


「B級冒険者≪白鹿の旅人≫のイッシンです。これは俺たちパーティの所有するゴーレムです」


「こんな子供が……っ!?」

「B級冒険者だと!?」

「まさか……冗談だろう?」


 ブルタークではそこそこ有名な俺たちだが、フランベールに駐屯している兵士にはそこまで認知されていない。どうやら信じて貰えていないようなので、俺は証明代わりにゴーレムへ指示を出した。


「ゴーレム1号君、左手でこっちに手を振って!」


 俺が指示を出すとゴーレムはその通りに動いて周囲を驚かせた。


「ほ、本当に言う通り動いた……!」

「こ、これが本当に人造のゴーレムなのか!?」

「こいつ、さっき戦場で見た! とんでもない強さだったぞ!?」


 兵士たちが集まり、ざわつき始めたが、そこへ一人の士官が現れた。


「貴様ら! まだ戦闘中だぞ! さっさと持ち場に着け! 前線帰りで無事な者は、至急それぞれの上官の下へ集まれ! そこのお前とお前は残れ!」


 男は大きな声で一喝し、兵士や冒険者たちに新たな指示を出すと、今度はこちらへと振り向いた。


「君が≪白鹿の旅人≫のリーダーだな? 話は”第五”の者から聞いている」


 ”第五”とは恐らく第五駐屯地の事だろう。


「あれは君らの所有するゴーレムで間違いないのだな?」


「はい。間違いありません」


 俺は位の高そうな男に頷いた。


 しかしこの男、どこかで見た憶えのある顔だ。


「よし! ならば網を外すのを手伝ってくれ。それとゴーレムは小型ポーチに収納できると聞いているが、一旦納める事は可能か?」


 俺たちの情報は一通り聞いていたのだろう。ポーチのことも御存じな様子だ。


「はい、出来ます。ただ、先に網を回収させてください。ゴーレムも完全に停止させなければ収納できませんので」


「よかろう」


 ゴーレム君は大破するか、俺たちの指示でしかOFF状態にはならない。それはマジックバッグによる盗難の防止策にも繋がっていた。これがただの物扱いなら敵のマジックバッグ所有者に触れられただけで回収されてしまう。


 武器や鎧のように相手が持っていれば不可能だが、ゴーレムは単独行動だからだ。


 ただし活動を続けている限り、ゴーレムといえども生物扱いとなり、バッグに収納することも不可能となるのだ。



 佐瀬たちも外壁から降りてきたようで、みんなで網を外して回収をする。きちんと手順通りに畳まないと、射出する際に絡まったり閉じたままになってしまうので、結構面倒な手作業なのだ。よって射出ネットは連射が出来ない。


 俺たちが網を外している間、謎の士官の下へ伝令がやって来た。


「外の様子はどうなっている?」


「は! 帝国軍は一部の騎兵が要塞内に入り損ねた味方を追走中。敵本隊は追撃を止め、フランベールから西へ離れつつあります」


「大方予想通りの動きだな。よし、下がれ」


「は! 失礼します!」


 どうやらこの士官は伝令が飛んで来るくらいには偉い人物のようだ。



 ようやく網が外れると、助けた人たちが俺たちに感謝を述べた。


「ありがとう! 貴方たちは命の恩人よ!」

「本当にありがとう! ありがとう!」


「いえ、そちらも撤退戦の殿、お疲れ様でした。あ、傷が……癒しておきますね」


 軽傷だったが、俺はサービスで負傷した兵士を治療した。そういえば医療施設ではそろそろ撤退してきた負傷兵で溢れ返っている頃合いだろう。


 俺たちは捕獲網を回収してゴーレムと共に小型ポーチへ納めると、士官らしき男に挨拶をした。


「それでは自分たちは治療の任がありますので、これで……」


「ああ、待ちたまえ。諸君らは私と一緒に来てくれ」


「……へ?」


 男はそう告げると、付いて来いと言わんばかりに一人で先に歩き出した。仕方なく俺たちもそれに続く。


『イッシン、この人ってキャメル村にいた人じゃない?』


 佐瀬が念話で教えてくれた。


『あ! この兵隊さん、オズマって人だよ! 闘力6千越えの人なんて、そういないから、私も憶えてるよ!』


 シグネも彼を鑑定して今思い出したらしい。


(確か西方軍の副団長、だったか? そりゃあ、ここがホームだし、いてもおかしくはない御仁か)


 向こうはこちらの事を覚えているのだろうか?


 確かあの時は名乗ってすらいなかったはずだ。なら、俺たちが今こうして呼ばれているのは、B級冒険者としてなのか、もしくはこのゴーレムの所有者だからだろう。



 俺たちは町の南西部にある要塞施設内へと踏み入れた。



 フランベールは要塞町と呼称されるだけあって、外壁内に軍事施設と町が混在している。その軍事施設の中でも司令塔になる屋内へと俺たちは招かれた。


「そういえば、まだ名乗ってもいなかったな。私はオズマ・フリード、フランベール西方軍の副団長を務めている」


 歩きながらオズマがこちらへ振り返り挨拶をする。


「こちらこそ、ご挨拶が遅れました。自分は≪白鹿の旅人≫のイッシンと言います」


 俺に続き、三人も順々に挨拶をする。


「確か君たちとはキャメル村で一度会っていたか……」


「覚えていらっしゃいましたか。我々は当時、まだD級冒険者でしたが……」


「その白髪は珍しいからな。それに若そうな冒険者だが、腕は立ちそうだと記憶していた。そうか、あの時はまだD級であったか……」


「正確には昇級試験の最中でした。あの時の護衛依頼でC級になることが叶いました」


「ふっ。どちらにせよ、その若さで大したものだ。おっと、着いたぞ」


 オズマが立ち止まった部屋の扉は、これまで通過してきた他のそれとは明らかに一線を画していた豪華な造りだ。恐らく応接室か指令室の類だろう。


 その扉の前には一人の衛兵が直立不動で立っていた。


「客人を連れてきた」


「は! お疲れ様です!」


 衛兵が扉を開けるとオズマは俺たちに付いて来るよう目で合図を送り、そのまま中に入って行った。


(武器とか預けなくても平気なのか?)


 そんな事を考えながら中に入ると、そこには何人かの兵士と士官らしき者たちが集っていた。


「団長、≪白鹿の旅人≫をお連れした」


「分かった。話し合いは一時中断だ」


 そう告げて人垣の中から一歩前に出てきたのは、鎧に煌びやかなマントを身に着けた壮年の男であった。年は30代後半、だろうか?


「よく来てくれた、白鹿の。私はクロード・ランニス。ここの総責任者だ」


 なんと現れたのは西方軍のトップだ。


 しかもクロード・ランニスという名は……確かケイヤの父君、つまり子爵家の当主であった。



 まさかの子爵様との面会に、俺は驚きを禁じ得ないでいた。








◇◆◇◆ プチ情報(スキル紹介) ◇◆◇◆



スキル名:鑑定

タイプ:情報型

系統:鑑定系

分類:技能スキル

レベル:1

主な所持者:シグネ、斎藤、長谷川


 様々なモノを、ある程度鑑定できる。名称などはハッキリ視れるが、説明が大雑把であったり、偽装系で誤魔化されたりもする。


 対象の全体像が目視出来ないと、鑑定に失敗したり時間が掛かる。それ故か、他人より自分のステータスの方が視にくいが、熟練度で鑑定速度も変化する。




スキル名:解析

タイプ:情報型

系統:鑑定系

分類:技能スキル

レベル:2

主な所持者:シグネ、アルテメ出張所の女鑑定士


 鑑定より物に関しての鑑定精度が上昇する。マジックアイテムや素材などの詳細な鑑定が可能になるが、生物に対しては【鑑定】とほぼ変化がない。




スキル名:看破

タイプ:情報型

系統:鑑定系

分類:技能スキル

レベル:3

主な所持者:不明


 生物に対しての鑑定精度が上昇する。対人、対魔物の鑑定結果が詳細になる。低レベルな偽装・阻害系スキルやアイテムの守りを突破する。




スキル名:神眼

タイプ:情報型

系統:鑑定系

分類:技能スキル

レベル:EX

主な所持者:不明


 あらゆるモノを更に詳しく鑑定する。スキルやアイテムでの妨害も無効となる。ただしユニークスキルや神級アイテムの場合は別となる。

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