第104話 籠城戦

 クロード・ランニスと名乗る西方軍の最高責任者から挨拶され、俺は少し動揺したがすぐに心を落ち着かせ、自分たちも名乗ることにした。


「お初にお目に掛かります、閣下。私はイッシンと申します」


 俺に倣い、佐瀬たちも丁寧な挨拶をする。


 シグネもなんとか失礼のない無難な挨拶を終えると、俺はどうしても確認したいことを尋ねることにした。


「失礼ですが、もしやランニス子爵様でいらっしゃいますか?」


「ほう? 私の爵位を知っていたか。若い冒険者は貴族の家名には疎いと思っていたが、意外に勉強熱心だな」


「あ、いえ……実は子爵様のご息女様と知己を得る機会に恵まれまして、ケイヤ様からお名前だけは伝え聞いておりました」


 俺が素直にそう答えると、クロードは少し表情を和らげた。


「そうか。あのお転婆はB級冒険者とも懇意にしていたか」


 クロードに続いてオズマも口を開いた。


「そういえばキャメル村で諸君らとケイヤ嬢は、何やら親し気に話していたな」


 どうやらオズマは、俺たちがケイヤと会話していたことも覚えていたようだ。


「ふむ、娘は貴族との付き合いは苦手だが、平民には昔から顔が広い。まぁ、そう畏まらないで、今後も仲良くしてやってくれ」


「は、はぁ……」


 それも貴族としてどうかとは思うが、三女ともなれば色々と自由が利く身なのだろうか?


「さて、時間も惜しいので私事はこれくらいにしておこう。君たちを呼びつけた理由の本題だが、あのゴーレムについて尋ねたい」


 やはりその件かと俺は少しだけ表情を引き締めた。


「ゴーレムの詳しい性能を知りたい。それと可能なら、あのゴーレムを子爵家で買い取りたいと思っている」


 これも大方予想通りだ。


 自画自賛になるが、あのゴーレムはかなりの傑作品だ。当然、貴族の中にも欲しがる者が出てくるだろうとは思っていた。だが……


(……まさか、その第一号がケイヤパパだとは思いも寄らなかったなぁ)


 だが相手が誰であれ、俺たちの答えは決まっていた。


「性能についてはお話しできますが、お売りすることは出来ません」


 俺がはっきりそう告げると、何人かがこちらを睨みつけてきた。


「貴様! 子爵様のお話を断るつもりか!」

「冒険者風情が……無礼であろう!」


 中には俺たちを罵る者もいたが————


「————静まれ!」


 ランニス子爵が声を上げて一喝した。


「私は可能なら・・・・と前置きしたはずだが? それを彼は断っただけだ。私は冒険者の持ち物を強制的に接収するような恥知らずではないぞ?」


「し、しかしクロード団長! あのゴーレムは危険です! 一介の冒険者が所持していい代物ではありませんよ!」


 そう異議を唱えたのは、一般兵より身なりの良さそうな兵士だ。隊長クラスの士官だろう。


「貴君の言も理解はできる。確かにあのゴーレムは凄まじい力を持っている。野放しにできないのも事実だ。ましてや現在は籠城中だ。だからイッシン、せめてゴーレムの能力についてだけは我々も把握しておきたい。分かるね?」


 それは仕方が無いと思っている。こんな戦時下で得体の知れない兵器を軍属から外れる者が所有しているのだ。軍の責任者としては妥当な判断だ。


 (てっきり押収されるかもと覚悟していたが……なるほど、本当に彼女の父親なようだ)


 ケイヤの性格上、そんな真似は絶対に許さないだろう。彼女が高潔な性格なのも、このクロード・ランニスの背中を見て育ったからだと思えた。


「承知しました、閣下。ゴーレムについてお話します」



 俺はゴーレム君1号の性能と安全性について、長々と説明をした。


 途中、製造方法などの質問も出てきたが、それについては今現時点ではどうにもならないのと、有事ということで割愛させてもらった。


 一応、生きたコアさえあれば新たなゴーレムの製造は可能だとは伝えておいた。



「そうか、人は殺さないよう命令しているのか……」

「あの空を飛んだのが【ファイア】だと!? まさか……」

「マジックバッグに収納出来るのは便利ですなぁ。併用すれば奇襲にも使える!」


 この場に集まっている者は西方軍の中枢にいる士官や文官のようで、その誰もがゴーレムの性能に驚き感心していた。中でも取り分け重要視されていたのが、装甲の硬さと飛行能力だ。


「空を飛べるゴーレムか……籠城戦には最適だな」


「ええ。逆に敵側にそんなものを使われたら、こちらは大混乱ですよ」


 この世界は魔法という力が有りながら、空を飛ぶ手段は非常に限られている。実はシグネが習得済みの空中に足場を作る【エアーステップ】でさえ、結構なレア魔法扱いなのだ。


 現在空を飛ぶ専用魔法は確認されていないそうだ。


 過去に風魔法などの勢いで空を飛ぼうと試みた者もいるそうだが、安定した長距離飛行にまでは至っていないらしい。


 対象を低空に浮かせる【フロート】という魔法は存在するが、飛べても高度はせいぜい1、2メートルくらいらしい。飛ぶというより、地面から“一定の距離を浮く”の方が正しい表現なようだ。


 攻城戦での肝となるのは、如何に相手の守りを突破して中に踏み込むか、選べる手段は外壁を登るか、壁や門を破壊するかの二択だろう。


 長期戦を視野に入れるなら町を囲んで兵糧攻めにしてもいいが、いずれブルタークや他の領地から応援が来る。帝国側がその手を打つかは微妙な線だ。


 そこで空を飛べて高い外壁を自由に行き来できる屈強なゴーレムは、軍上層部から見れば垂涎ものだろう。攻める側も守る側にも有用な兵器だ。


 だからランニス子爵が何を望んでいるのかは、当然俺にも分かっていた。


「≪白鹿の旅人≫には今後、医療班ではなく、迎撃班に組み込みたいと考えている」


「「……っ!」」


 やはりそう来たか。だが、それも当然の判断だと言えた。ゴーレム1体を投入するだけで、多くの兵士を無駄死にせずに済むのだから……


 だが、このまま大人しく戦争の駒として使われる訳にはいかなかった。


「幾つか条件がございます」


 俺がそう発言すると、何人かが凄い形相でこちらを睨んできた。


「貴様! 冒険者風情が黙って聞いていれば……っ!」

「子爵様に条件だと? 気でも狂ったか!」


 中には剣に手を掛けている者もいる。俺や名波が迎撃態勢に移ろうかと思った瞬間————


「————よさんか! 今は私が彼らと話をしている! 暫く口を出す事を禁ずる!」


 ランニス子爵は大声で周囲にいるお付きたちを叱りつけた。


「……条件とは、何だ?」


 俺は剣に伸ばそうとした手を戻すと、心を落ち着かせてから口を開いた。


「はい。まず我々は戦争自体を好みません。襲われれば立ち向かいますし、荒事にも多少の覚えはありますが、無暗に人を傷つける行為を良しとはしません」


「それは……戦闘行為には絶対参加しない、という訳ではないのだな?」


「はい。私たちは極力人を殺さない戦い方を取りたいと思います。まずはその事をお許し下さい」


 それは絶対条件だ。


 戦争は如何に相手の兵数を減らすかが重要で、一番手っ取り早いのが相手を殺す事だ。状況によっては俺だって相手を殺す。というか、実際にもう何人も殺めている。


 だがこれが戦争になると、相手も自分たちに大義があると信じで襲ってくる訳で、彼らは本来悪人という訳ではない。まぁ、こちらを害そうとしている時点で俺たちにとっては大悪人なのだが、中には強制的に戦争へ参加させられている地球人もいるかもしれない。


 そう思うと迂闊に相手を死なせるような真似はしたくなかった。


(ま、出来る範囲でだな。最優先は当然、自分たちの命だ)


「成程。君たちは元々、後方の物資運搬志望だったな。ゴーレムに人殺しを禁止している理由にも納得がいった。他に条件は?」


「なるべく4人纏まって行動したという点と、雇用期間を設けていただきたい」


 ランニス子爵がピクリと眉を顰める。


「その”期間”というのは?」


「例えば”この籠城戦が終わったら”とか、”味方の軍勢が到着したら”など、そこを明確にしていただければと思います。我々はあくまで冒険者ですので」


「ふむ、以上でいいかね?」


「はい。それさえお約束いただければ、出来る限りのご協力は致します」


「よし! 皆の者、聞いたな? ≪白鹿の旅人≫は今から私の直轄部隊として運用する。条件は先ほど聞いた通り、それを破る事は私が許さん!」


「「「はっ!」」」


 どうやらランニス子爵は大分話の分かる御仁らしい。


(ケイヤの名を出したのも、少しは効いたかな?)


 一時はどうなる事かと思ったが、上手く話が纏まりそうで助かった。


「期限の方は、そうだな……。とりあえず十日間毎の契約でどうだ? 恐らく援軍がここに到達するまで一週間ほどと私は見ている」


 確かに今から最寄りの街、ブルタークから応援が来るとしても、戦力の再編、準備に移動も含めると、そのくらいは掛かるのだろう。


「かしこまりました」


 佐瀬たちからは特に文句が出ていないので、俺は子爵の言葉に頷いた。


 こういう交渉事はリーダーである俺の役目だが、何か言いたい事があれば何時でも念話で伝えるようにと三人には言ってある。何も言わないという事は、彼女たちも同意したという事だ。


「直轄とは言ったが、私は軍の指揮で忙しい身だ。代わりに君たちへ指示を出す者を付けよう。そうだな、適任者は……リアン! 君に任せよう」


「はっ! ご拝命承りました!」


「何かあれば、このリアンに要望を伝えてくれ。彼の指示には極力従ってもらう。異存はないか?」


「はい、子爵閣下」



 そこで俺たちは指令室から退出し、指定された宿で待機するよう命じられた。待遇も上がり、今日から上級士官などが宿泊している部屋に泊まれるそうだ。簡易だが風呂やトイレが付いている豪華な部屋だ。



「やっとお風呂に入れるわ!」

「ここなら人目も付かないし、マジックバッグから料理も出し放題だね!」

「私、カレー食べたい!」


「あんまり臭いのきついものは駄目だよ。今日は魚料理にしよう」


「ちぇ~!」


 流石に今から籠城戦をするというのに、俺たちだけが美味しい物を食べていると知られたら、周囲からどんな反感を買うか想像もつかない。


 外部から物資の補給もままならない状況が、最低でも後一週間近くは続くのだ。間違いなく配給される食事の量は激減するだろう。


(水に関しては魔法があるから問題なさそうだが……それでも籠城戦はしんどそうだ)


 これから敵軍に囲まれながら要塞内で生活していくのだ。当然向こうも黙って見ているだけではない。これから過酷な日々が続くだろう。




 夕食を取った後、俺たちの部屋にリアンという名の若い士官が訪れた。


「私は西方軍守備隊の副隊長を務めているリアン・メイランという。宜しく頼むよ、≪白鹿の旅人≫」


 家名があるという事は、彼も貴族に名を連ねる者か名家の出なのだろう。


 大抵こういった戦場に駆り出される貴族の大半は、家督を継ぐ予定の無い三男以下というのが相場だ。万が一、嫡子やその予備となる次男の身に不幸があったら、後継者問題が勃発しかねないからだ。


 逆に団長のランニスや、副団長のオズマなど、前線に出ない指揮官は爵位持ちで構成されている。リアン副隊長の話によると、オズマも男爵家の当主だそうだ。


 彼らは自分たちの領地で既に家督を継ぐ後継者を用意しているのだろう。



 俺たちはリアンから現在の戦況と、これからの作戦行動について説明を受けた。


 現在帝国軍の主力は西側の要塞から離れた場所に陣を置き、その他複数の小隊が砦を包囲するように散開しているそうだ。各配置が定まり準備が整ったところで、散発的に攻撃を仕掛けて来るだろうと予想される。


 こちらの兵が疲労したところを本隊が一気に攻め立てる算段だろう。


「恐らく敵は夜と日中、交互に襲ってくるだろうな。ゴーレムの稼働時間は限界があるそうだが、昼夜どちらも出撃させる事は可能かな?」


「俺たちも二人ずつ、昼夜と分かれて出ればゴーレムを出し続けられます。ただ、定期的に魔力を補充しなければならないので、他の事に避ける労力が……」


 俺の化物染みた魔力量なら全く問題無いのだが、流石に精神の方が参ってしまう。俺は魔力量以外は人間を止めたつもりは無いのだ。


「大丈夫だ。医療班の人員は他で用意する。君たちはゴーレム運用に注力して欲しいと団長からも言われている」


 リアンは三男坊とはいえ貴族だが、俺たち平民の冒険者にも気楽に話し掛けてくれていた。


 こちらが平民と言うだけで頭ごなしに押さえつけるような輩では、お話にもならなかっただろう。軍上層部との関係が拗れるようなら、最悪俺たちだけエアロカーでサヨラナするつもりであった。


(子爵様が彼を”適任”だと推す訳だ)


 お陰で話し合いもスムーズに済んだ。



 それから俺たちはリアンも含めて相談し、夜襲があった際は佐瀬と名波が、日中は俺とシグネがメインで動く事となった。リアンは臨機応変に俺たちに同行する形だ。


(視界の悪い夜間は名波の【感知】が活きる。逆に日中は見えやすいから、シグネの【解析】が使える)


 俺がシグネの方に付くのは、前衛を張れる俺と名波を分散したかったからだ。シグネも前で戦える力を持っているが、武器を刀に変えてからまだ日が浅い。それに刀では殺傷能力が高く、人相手にはシグネも遠慮して力を発揮しづらいだろう。



 今夜は特に襲撃もなく、俺たちは宿でぐっすり眠る事が出来た。








 翌日、遂に帝国軍が動きを見せた。


 と言っても初日は様子見のつもりなのか、まずは離れた位置から魔法や矢を外壁やその上にいる兵士に放ってきた。


 初日は夜間組の佐瀬と名波も序盤だけ参戦すると言って付いてきた。いきなりの夜戦を避けたかったのだろう。まだ日が明るい内に戦場を肌で体験したかったようだ。



 外壁を盾にし幾つか設けられている狭間さまから外の様子を観察する。


「ここの門や外壁は魔法の攻撃に耐えられるんですか?」


 俺は同行していたリアン副隊長に尋ねた。


「余程の攻撃でなければ破られない。流石に中級レベルになると壊されかねないけどな」


 外壁は相当分厚い上に、開閉する扉も厚みのある鉄製に魔法耐性が付与されている。一種の巨大なマジックアイテムのような門だ。


「帝国の大魔導士レベルや闘力の高い者が張り付いてきたら危険だろう。そういった連中に火力を集中させ、仕事をさせないのが我々守備隊の主な任務だ」


 恐らくそのレベルの兵士はそう簡単に姿を現さないだろうと、リアンは付け加えて説明してくれた。


 頻繁に行われる帝国との小競り合い時には、要塞を破壊できる程の実力者が姿を見せることは殆どないらしい。それというのも、帝国が攻めて来る理由の一つに兵士の人減らしがあるそうだ。


 帝国は領土や人口の割に農作物に適した土地が少なく、慢性的に食料が不足しがちになるそうだ。食うに困った者の多くは冒険者や兵士になる若者が多い。


 だが、それも多すぎると害悪になる。軍も兵を維持するのに当然物資を必要とするからだ。


 帝国軍はそういった過剰な戦闘員を定期的に口減らしするかのような作戦行動を仕掛けてくる傾向があるそうだ。


 今回も恐らくそういった裏事情の一環だと思いきや、予想以上に兵数が多くて王国軍も困惑している状況らしい。



 その話を聞いた時、俺は地球人が原因ではないかと察してしまった。


(帝国は地球人の存在に気が付いている。それはエットレー収容所の一件でも明らかだ。連中はスキル持ちの厄介な地球人を戦争で減らすつもりか!?)


 だとしたら俺たちが帝国側の地球人を殺して回るのは、まんまと帝国の思惑に乗せられる事にも繋がりかねない。


(そんなのは御免だ!)


 俺は佐瀬たちにその事を伝えるか迷ったが、今は黙っておくことにした。殺す気は端からないとはいえ、今から戦う相手に同情してしまいかねない情報は伏せておくべきだ。教えれば、それが枷になりかねない。


 もっとも佐瀬と名波辺りは俺と同じように察していそうではあった。



「ゴーレムの運用は基本任せるが、最初は様子見で敵兵の少ない場所を狙ってみてくれ」


 リアンは慎重な性格の様で、いきなり帝国軍本体の方角は狙わない方が良いと助言した。


 昨日のゴーレムについては当然帝国側も把握しているだろうし、どんな罠を用意しているか分かったものではないからだ。


(こんな所で貴重なゴーレムを失いたくはない!)


 俺たちは外壁の北側へと回り、遠くから壁を攻撃している小隊にゴーレムを突撃させた。ゴーレム君1号は小型ポーチから出撃すると、外壁から飛び降りてそのまま敵小隊の下へと駆けて行った。


「あ、あいつは!?」

「昨日のゴーレムか!?」

「に、逃げろー!」


 やはり帝国側にもゴーレムの噂は行き届いているのか、多くの者は散り散りに逃げ出した。


 稀に無謀にも立ち向かおうとする兵士や冒険者もいたが、全員力不足で返り討ちにあった。殺してはいない筈だが、骨の何本かは折れただろう。それに俺たちが殺さなくとも、後から王国軍の弓兵たちが倒れた者を狙い撃ちにする。


(まぁ、当然そうなるわな……)


 あまりいい気分ではなかったので、ゴーレムにはなるべく弓の届かない遠くへ吹き飛ばすよう念話で指示を送っておいた。


 それと逃げる素振りを見せた地球人には深追いをさせなかった。これはゴーレムでは区別しようもないので、シグネが見た情報を念話でゴーレムに随時送っている。殺してはいけない者の姿形を伝えれば、後はゴーレム君が上手くやってくれる。


(本当に頭のいい奴だ)


 折角だから俺たちも戦闘に参加した。


 念話越しでシグネ指示の下、地球人ではない者を優先的に狙い撃ちにした。特に指揮官らしき者は優先的に戦闘不能へと追い込んだ。そうする事で嫌々戦争に参加させられた者を降伏させやすくする為だ。


「そういえば、捕虜の扱いはどうなっているんです?」


「ん? ああ、まずは専用の収容所に送られるな。そこで審査され、それぞれ刑罰が科せられるんだ」


 エイルーン王国には奴隷制があるが、奴隷身分になるには本人の合意が絶対条件となっている。だから捕まっていきなり奴隷落ちとなる事は無い。


 ただし科せられた刑罰が重すぎて、奴隷の方がマシだと本人が思ったら主従契約を結ぶ事もあるそうだ。契約にはファンタジー物でお馴染みの、魔法やアイテムでの契約などは基本無いそうだが、奴隷がそれを破れば死罪より重い罪となる。


 それに奴隷への虐待は法で禁止されている為、余程の事がない限り主に背く事はないとされている。


 王国内だけで言えば、奴隷制度というのは有りなのかもしれない。


(俺は奴隷を使役するのも、なるのも御免だけどな)




 籠城初日の日中は、三時間ほどの遠距離攻撃が二度に渡り行われた。夜間組の佐瀬と名波は途中で抜けて、後半は俺とシグネで敵戦力を削っていった。




 日はすっかり暮れ、夜食を済ませた俺とシグネは、夜間組である佐瀬と名波にバトンタッチして寝る時間となった。


 寝泊り用に与えられた部屋で目をつぶり横になっていると、喧しい鐘の音が鳴り響いた。予想していた通り、帝国軍が夜襲を仕掛けてきたらしい。


(うーん、気になって眠れん……)


 シグネの方を見ると、彼女は耳栓をしながらぐっすり眠っていた。驚くべき程に鈍感なのか、肝が据わっているというべきか、少し判断に迷うところだ。


 万が一緊急事態があれば佐瀬が念話で教えてくれる手筈になっているが、それでも襲撃警戒の鐘と戦闘音が鳴り響くこの状況下で熟睡できる程、俺の神経は図太くできていないようだ。



 明日の任務に差し支えないよう、俺は無理にでも寝ようとひたすら努力をするのであった。








◇◆◇◆ プチ情報(スキル紹介) ◇◆◇◆



スキル名:【翻訳】

タイプ:恩恵型

系統:補助系

分類:適性スキル

レベル:1

主な所持者:不明


 相手の話す言葉を理解できるようになる。ただし、自分の知らない単語や知識などが理解できる訳ではない。




スキル名:【自動翻訳】

タイプ:恩恵型

系統:補助系

分類:適性スキル

レベル:2

主な所持者:地球人全員


 翻訳スキルの進化版で、相手の言葉だけでなく、自分の言葉も自動的に翻訳されて伝える事ができる。ただし、自分や相手の知らない単語や知識などが理解できる訳ではない。


 また、暗号や古代語、少数民族の言語など、使用者の少ない言語は翻訳不可。




スキル名:【言語理解】

タイプ:恩恵型

系統:補助系

分類:適性スキル

レベル:EX

主な所持者:不明


 あらゆる言語を一瞬にしてマスターできる。翻訳だけでなく超スピード学習もでき、ある程度会話をするか文章を読むと、例え自身の知らない言語や複雑な暗号でも理解し、使役できるようになる。

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