第70話 迷宮内の山登り

 久しぶりにオルクルダンジョンへとやって来た。


 1階の転移陣から一気に50階層まで飛び、一応ボス部屋の中を確認する。


「……いないみたい」


 どうやら50階層のボスは留守のようだ。


 仕方なく俺たちは51階層への下り階段を降りていく。


 降りた先はごつごつとした岩が点在していた。41階層からは森林エリアだったが、ここから先は山岳エリアとなる。木や草花も若干生えてはいるが、土や岩場の方が多かったりする。それと山岳エリアなだけあって所々に傾斜がある。


「なんで降りた先に山があるのよ……」


「諦めろ。ここはファンタジー世界だ」


 意味不明な現象に佐瀬が答えを見出そうとするが、これに関しては考えるだけ時間の無駄な気もする。ダンジョンとはこういうものだと、俺は割り切る事にした。



 少し歩くと早速魔物が現れた。


「ロックスコーピオンか!?」


 全身岩の塊のようなサソリの魔物だ。尻尾の針に毒はないが、その分装甲が固く、群れで襲ってくるので厄介な相手だが、討伐難易度はCなので、囲まれなければ楽に倒せる相手だ。


「ロックってことは土属性かな? 弱点は風だね!」


 シグネが風属性の下級魔法【ゲイル】を放つ。魔法の突風を受けたロックスコーピオンは面白いくらいに吹き飛ばされ、仰向けになって隙だらけな個体から順々にトドメを刺していく。


「んー、私の雷は効き辛いわね」


 佐瀬は水属性下級魔法の【ウォーターバレット】に切り替えてロックスコーピオンを攻撃した。


 いくら相性が悪いとはいえ、威力的には中級魔法の【サンダーボルト】の方が若干上だろうが、その分消費魔力も大きいので、コスパ的には水魔法で正解だ。


「——とっ! 足場が傾いていると、戦い辛いなぁ」


 稀に小石に躓いてしまいそうになる。森林エリアよりは視界が広く射線も通りやすいが、山岳エリアならではの注意するべき点がまだまだありそうだ。


「このエリアってどこに向かえばいいのかな?」


 ロックスコーピオンを倒し終わった名波が俺に尋ねた。


「ここは基本的に頂上に行けば下り階段があるそうだぞ」


「山の頂上に下り階段があって先に進むって……なんだか頭が可笑しくなりそうね」


 うん、俺も自分で言ってて違和感だらけだ。




 それから俺たちは山の頂上を目指して進み続けた。だが、山道なのと魔物のエンカウント率が高くて思うように進めない。どうやら広大な森林エリアと違って、山岳エリアは若干狭い分、魔物の分布も密集しているようだ。


「あついぃ……あの太陽も偽物なんだよね? 紫外線まで真似ないでもいいのにぃ……!」


 珍しく名波が愚痴を零す。どうやら暑いのが苦手なようだ。


「山岳エリアも日照時間が現実世界とリンクしているそうだ。これから更に暑くなってくると思うぞ?」


「うわぁ……」


 このダンジョンのフィールド層は、確認出来ている限りでは全て時間経過で朝・昼・夜と変化するらしい。ただし季節や天気に変化はなく、雪山になったり、雨が降ったりする心配はないそうだ。


 尤も最高到達階層の62階より下は定かではないが……


 山を登り始めて5時間が経過したが、その間に何度も魔物と交戦した。51階層から60階層は、情報通りだと討伐難易度B、Cランクの魔物しか出ないそうだ。


 ふと思ったが、人間が魔物の強さを勝手にランク付けしているのを、ダンジョン側も認識して区分しているのだろうか? それともダンジョンが区分けしている魔物を参考に、人間側がランク付けしているのだろうか? ……どっちもありそうだ。


「あ、上から誰か降りてくる。人数は六人」


 どうやら同業者がこちらへ向かってきているようだ。山岳エリアは通り易そうな道が限定されている為、すれ違う機会も多いのかもしれない。


(……いや、そもそも51階層より上となると、攻略できる人間も限られてくるか……)


 六人という人数に引っ掛かりを覚えていると、案の定こちらへ向かって歩いてくるのはC級冒険者パーティ、≪千古の頂≫のメンバーだ。


「やあ、君たち。久しぶりだね」


「お久しぶりです、ヘルマンさん」


 俺は≪千古の頂≫のリーダーであるヘルマンに挨拶をした。


「頂上はもう直ぐそこだよ。下り階段もそこにある」


「ヘルマンさんたちは引き上げですか?」


「ああ、55階層まで探索して、今は引き返してダンジョンを上がっている最中さ。いや、今は下りかな?」


 階層的には確かに上っているのだが、今は山を下りているのでややこしい。


 俺はヘルマンに苦笑いを浮かべながら答えた。


「ヘルマンさんたちでも60階層から転移、ってのは難しいんですか?」


「……ああ。過去何度もボス部屋を覗いたが、我々の手に負えそうな魔物は一度も見た記憶がない。依頼された素材も手に入れたし、今回も大人しく引き返すよ」


 この先60階層のボス部屋は、討伐難易度Aランクの魔物がランダムで出現するそうだ。


 本当かどうかは定かではないが、竜種が出たという噂もあるらしい。今の俺たちではかなり難しい相手だろう。


(60階層まで行ってボスを倒して転移出来れば一番楽なんだけど……途中で引き返す事も視野に入れるべきか?)


「一応警告しておくけど、前に俺たちが見た時は、60階層のボスはアーススパイダーだった。もう半年以上前の話だから、俺たちの知らない間に誰かが討伐しているかもしれないがね」


 ここの迷宮はボスを討伐する度に変化する珍しいダンジョンだが、当然誰かがボスを討伐しない限りはずっと同じ守護者が居座っている。Aランクの魔物となると、半年以上居続けてもおかしくはない。


(アーススパイダー……アースって事は……もしかして土属性か!?)


 佐瀬にとっては相性最悪な相手だ。俺は思わず顔を顰めた。


「そういう事だ。あまり無理はするなよ? それじゃあ!」


 俺の表情から難敵だと読み取ったのだろう。ヘルマンが遠回しにボス部屋を避けるよう警告をする。


 さて、どうしたものかね……




 ヘルマンたちと別れてから数分後には頂上付近にある下り階段を見つけた。大きな岩に横穴が開いており、そこから降りるとあら不思議、再び別の山の麓に出現していた。


「これだから、ファンタジーってやつは……」


「うぇー! また山登りかぁ」


 さっきまでは楽しそうにハイキングしていたシグネも、また一から昇り直しとなるとテンションを下げたようだ。


「ねぇ、矢野君。今回の探索はどこまで進むの?」


「んー……」


 確かに漠然と登るよりかは、しっかり目標を立てて進んだ方が精神的にも大分楽だろう。


「はい、はーい! 私、Aランクの魔物が見たいから、60階層まで行こうよ!」


 さっきまで萎んでいたシグネが急に元気な声を上げた。


「アンタ、さっきまで登るの嫌そうにしていたじゃない」


「それはそれ、これはこれという事で」


 ふむ、確かにここいらで一度、パーティメンバーにもAランクの魔物が放つ威圧感というものを肌で体験して貰った方がいいのかもしれない。


 どうせ相手はボス部屋からは出られないのだ。場合によっては一当てしてもいいとまで考えている。無理そうなら逃げればいいし、怪我ならヒールで治せるしね。


 佐瀬だけはAランクのエンペラーエントと対峙しているが、あれは植物系という事もあって気配が希薄と言うべきか、そこまでの威圧感は感じられなかった。


 俺は恐竜タイプの魔物、デストラムで一度恐怖を体験しているので、パーティメンバーにも危機意識を共有したかった。


「よし、それじゃあ60階層まで行こう! 討伐が無理そうなら、そこから50階層に戻る」


「OK!」

「分かったよ!」

「よーし、60階層に着くまでに強くなるぞぉ!」


 俺たち≪白鹿の旅人≫は60階層を目指す事にした。






 目標を60階層に定めてから、俺たちは何日も掛けて山を登り続けた。最初はなかなか進まなかったが、森林エリアよりも道筋が分かり易かったのと、各々の力量がメキメキと上達していき、魔物を倒すスピードも短くなってきた。


 今では一人一人がBランクの魔物相手にタイマンを張れるほどだ。


 ダンジョン探索を始めて7日目、俺たちはいよいよ60階層ボス部屋の手前までやって来た。


「シグネ、鑑定を宜しく」


「ほいさー!」


 毎回恒例、ボス戦前の戦力把握である。




 名前:矢野 一心 ※偽装 ()内が本当のステータス


 種族:人族

 年齢:30才


 闘力:2,550 (4,923)

 魔力:5,510 (99,999)

 所持スキル 【木工】【回復魔法】UP【剣使い】【スラッシュ】 (【自動翻訳】【偽装Ⅰ】NEW【腕力】)


 以下、未鑑定自己申告

 習得魔法 【ヒール】【キュア】【リザレクション】【ライト】【レイ】【ファイア】【ウォーター】【ライトニング】【ストーンバレット】【ウインドー】【セイントガード】NEW【クリーニング】




 名前:佐瀬 彩花


 種族:人族

 年齢:20才


 闘力:1,085

 魔力:13,316


 所持スキル 【自動翻訳】【雷魔法】【放出魔法】NEW【魔法強化】


 以下、未鑑定自己申告

 習得魔法 【ライトニング】【サンダー】【パラライズ】【テレパス】【サンダーボルト】【ライトニングエンチャント】【ウォーター】【サンダーバリアー】【コミュナス】【ウォーターバレット】NEW【ウォーターヒール】NEW【ウインドー】 NEW【ゲイル】NEW【ライトニングアロー】NEW【マナウェーブ】NEW【アイスバリアー】




 名前:名波 留美


 種族:人族

 年齢:20才


 闘力:4,605

 魔力:734


 所持スキル 【自動翻訳】【感知】【短剣使い】【双剣使い】【走力】【弓】【命中】【スラッシュ】NEW【探知】NEW【隠密】




 名前:シグネ リンクス


 種族:人族

 年齢:15才


 闘力:3,062

 魔力:4,397


 所持スキル 【自動翻訳】【解析】【風魔法】【短剣】【スラスト】【剣】【魔法付与】NEW【カリスマ】


 以下、未鑑定自己申告

 習得魔法 【ウインドー】【ゲイル】【ウインドーバリアー】【サイレント】

NEW【エアーステップ】NEW【ウォーター】




 以上が現在のステータスだ。




 まず俺のステータスだが、闘力がかなりの勢いで上昇していった。今回の探索ではかなりの数の魔物を倒して進んだので、経験値的なものも大分手に入れたのだろう。


 スキルも【剣】が【剣使い】に進化したのと、新たに【腕力】という適性スキルを手に入れた。その相乗効果なのか、魔物が面白いように斬れる。最早Cランク以下はほぼ一撃で仕留められるし、Bランク相手でも全く負ける気がしない。


 最初はヒーラーだった筈なのに、気が付いたらバリバリの前衛職になってしまった。


 攻撃魔法は相変わらず覚えが悪いが、新たに光属性の【クリーニング】という魔法を手に入れた。


 これはどうやら異世界物あるあるの、対象を身綺麗にする魔法のようだ。汗をかいたり汚れが付着した時にこの魔法を使うと、不思議な事に一瞬で綺麗になるのだ。


 しかも臭いまでクリーンにする優れものだ。


 この効果を知った女性陣がとても羨ましそうにしていた。今では事ある毎に【クリーニング】を要求してくる。


 さっきもシグネがチラリと佐瀬の方を見た後、【クリーニング】を要求してきたので、恐らく念話で彼女に指示をしたのだろう。


 そりゃあ年頃の女性が男相手に“体臭が気になるから【クリーニング】して”なんて正面切って言うのはどうかと思うけどね。俺はシグネに掛けるついでに佐瀬と名波にも【クリーニング】を施す。


 シグネは異性相手にも特に気にしないのか、遠慮なく俺に要求してくる。



 少し話が脱線したが、お次は佐瀬のステータスだ。


 闘力は相変わらず伸びが悪いが、やっと1,000の大台に乗る事ができた。これでパーティの全員が闘力1,000以上となる。そこらの暴漢如きでは肉弾戦でも相手にならないだろう。


 それと魔力も遂に1万を超えて、現在は1万3千越えだ。俺の偽装した魔力数値も佐瀬に合わせて上げてはいたが、これ以上は前衛としておかしい数値になるので、これ以上張り合う事を止めた。


 実際の数値上は俺の魔力の方が上だが、佐瀬の魔法は更に威力が激増した。


 というのも、新たに【魔法強化】のスキルを手に入れたからだ。これは既に彼女が持っている【放出魔法】と似た効果の適性スキルだ。


 ただし、放出する攻撃魔法しか強化しない【放出魔法】とは違い、【魔法強化】は攻撃・防御・回復・補助とあらゆる魔法の効果を強化する適性魔法だ。しかも【放出魔法】と効果が重複するという破格の性能だ。


【放出魔法】程の上昇は無さそうだが、魔法の威力が全体的に向上しているのが確認できた。


 これだけでも凄いのに、なんと新たな魔法を合計6つも習得した。


【ウォーターヒール】

 水属性の回復魔法という変わり種の魔法である。下級魔法なので効果は【ヒール】よりも少し高めだそうだが、流石に俺のチート【ヒール】程ではない。


【ウインドー】と【ゲイル】

 シグネも既に習得している風属性の最下級と下級の攻撃魔法だ。山岳エリアは雷に耐性を持つ魔物が多かったので、この魔法が大いに役に立った。


【ライトニングアロー】

 遂に新たな雷攻撃魔法を手に入れた。階級は不明だが、どうやら追尾性能がある雷の矢を放つ魔法らしい。


【マナウェーブ】

 名前の通り、不可視の魔力を波のように飛ばす魔法らしい。恐らく新日本政府が電波を飛ばして見せた技術がこの魔法ではないかと睨んでいるが、現在検証中だ。


【アイスバリアー】

 耐水魔法のバリアーを展開する魔法だ。これで水魔法の加護持ちに対して手札が一つ増えた。


 佐瀬は他の属性魔法も着実に習得し続けている。俺の暴走気味な魔法より、確実に彼女の方が魔法使いとして格上だ。


 一方、未だに一つも魔法を習得できない名波が「魔法……魔法……」とぶつぶつ呟いていた。


(女神様! どうか名波にも魔法を授けてあげてー!!)



 その名波だが闘力は4,605と、今回の探索だけで何と倍以上に数値を伸ばした。探索の前半は佐瀬の魔法が相性差で活躍できなかった代わりに、彼女が一番戦果を挙げ続けていたからだ。


 俺の闘力は4,923なので、もう少しで追いつかれてしまいそうだ。


 そんな彼女の新スキルだが【探知】と【隠密】の二つを習得した。


「【感知】と被ってるじゃーん!?」


【探知】を習得した際、名波は目に涙を浮かべて絶叫していた。


 正確には【探知】は技能スキルなので自動ではなく、使用しないと効果がない。その分同じ索敵型の【察知】よりかは性能が上だ。


 だが名波は既に【察知】の上位互換【感知】を習得していて、しかもその効果は常時発動型の適性スキルだ。現時点では完全に死にスキルなのだ。


 まぁ、将来的に【感知】が何かのスキルに進化すれば活躍の目があるのだろうが、なんとも微妙なスキルを手に入れてしまった。


 更にもう一つの【隠密】だが、恐らくこのスキルは気配を消したり、索敵型スキルを妨害するスキルではないかと予想される。


 ちなみにシグネの【解析】を弾くような効果は見られなかった。


「もう≪隠れ身の外套≫でいいじゃん。【隠密】いらないじゃん……」


 名波の目から光が消えていった。


(このままでは名波が闇落ちしてしまう! 誰か、なんとかしてあげてぇ!!)


 闘力以外は残念な結果となってしまった。




 最後にシグネだが、彼女も闘力・魔力共にメキメキ成長して見せた。


「私、成長期だから!」


 体つきの方は相変わらず小柄だが、闘力3千以上、魔力4千以上は素晴らしいステータスだ。


 まず魔法だが【エアーステップ】という面白い魔法を手に入れた。


 これは風属性の魔法で、空中に不可視の足場を短時間だけだが展開する事ができる。階級は不明の魔法だが、これによりゲームでお馴染みの二段ジャンプができるのだ。


 しかも複数作成できるので、三段でも四段でもジャンプが可能だが、展開できる時間はかなり短いので注意が必要だ。


 風で出来ている為か、多少は弾力性があるので、ジャンプ力も上昇するし、高い所から落下した際にはクッションにもなる。使い方のセンスが問われる魔法だ。


 それと水属性最下級魔法の【ウォーター】も習得した。いや、習得してしまった。


「ええー!? もっと早くに出てよぉ!」


 シグネはついこの前、【ウォーター】を出せるマジックアイテム、≪流水の腕輪≫を金貨11枚で購入したばかりだ。まさかこんなに早くお払い箱になるとは夢にも思わなかったのだろう。


 あまった≪流水の腕輪≫はとりあえずマジックバッグに保管しておくことにした。


 それとスキルの方は【カリスマ】という、また変なモノを習得してしまった。


「どう? 私、カリスマ、ある?」


「うーん」

「どうだろう?」

「そこはかとなく……」


 今後の検証に期待だ。


「私、【カリスマ】スキルで聖女になる!」


 シグネちゃんの夢がまた変わってしまった。変な宗教広めて断罪されないように気を付けてね!




 以上が現時点での戦力だ。


 それと魔物を多く倒した事により、様々なドロップ品とマジックアイテムを手に入れた。




 以下が新たに手に入れたマジックアイテムだ。




名称:身代わりの指輪


マジックアイテム:一等アンコモン


効果:着用者の身代わりになる

致命傷だと判断した際、指輪が自動的に肩代わりしてくれるが、限界に到達すると壊れてしまう




名称:精霊の矢筒


マジックアイテム:希少レア


効果:魔法の矢筒

矢筒に魔力を込めると自動的に矢が6本補充される。矢自身にも魔力を込めると威力が更に増す




名称:不変のゴーグル


マジックアイテム:一等アンコモン


効果:視界を一定に保つゴーグル

常に明るさを自動調整し、暗所や眩しい場所でもしっかり見る事ができる




 どれも戦闘で役に立つ素晴らしいアイテムだ。



 ≪身代わりの指輪≫

 闘力が一番低い佐瀬に持って置いて欲しかったが、三人とも“回復・蘇生魔法持ちの俺が持つべきだ”という意見で一致し、お言葉に甘えてそうさせて貰った。


「今度、もっとちゃんとした指輪を頂戴」と佐瀬には冗談めかして催促された。


 ……もっとお金を稼がねば!



 ≪精霊の矢筒≫

 これは満場一致で名波の所有物と決まった。


 現状、名波はあまり矢を使う機会がなかった。というのも、Bランクレベルになると、ただの矢では攻撃が通らないのだ。


 しかしこの矢筒は魔力で自動生成する上、矢自身に魔力を込めると、その分威力を増す仕組みだ。


 試しに俺と佐瀬で魔力を込めてみると、何故か俺の矢だけ壊れてしまった。どうやら魔力を込めすぎると折れてしまうようだ。矢筒に魔力を込めるとまた矢は復活したので助かった。危うく壊すところだった。


 加減を覚えた俺が限界ギリギリまで魔力を込めると、矢の威力がとんでもない事になった。


 これで名波の遠距離攻撃手段が強化された。



 ≪不変のゴーグル≫

 これは色々な意見が出たが、とりあえずシグネに装着して貰う。射手でもある名波にとも考えたが、彼女には【感知】があるので、ある程度の位置は目を閉じても分かるらしい。


 それより暗い場所でもシグネの【解析】が直ぐ通るようにと考えて、彼女の所有物となった。


「へへ、似合う?」


「なんか少しカリスマが上がったような気がしないでもない」


 そんな適当な返しをしつつ、俺たちはいよいよ60階層のボス部屋の扉を開ける。


 まずは相手の様子見だ。果たして60階層の守護者は————






――女神アリスと地球の代表者たちによるQ&A情報――


Q:共産主義はありますか?

A:あります。以降、国の統治に関する質問を打ち切ります

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