第110話 王都、再来訪

 今回俺が受けた依頼内容は新型ゴーレムの技術提供であり、そこに侯爵や子爵の護衛任務は含まれていない。つまり俺はお客様的な立ち位置らしく、護衛は当然の事ながら、キャンプ地の設営準備や食事の用意、夜警当番なども一切手伝う必要が無かった。


 流石は貴族当主の野営キャンプと言うべきか、幾つもの大きなテントが設営され、俺専用の寝泊りする場所も用意された。身体を拭いたりする専用のテントまである始末で、食事も当然テーブルや椅子が設けられている。


 物資の量から察するに、間違いなくマジックバッグ系のアイテムを所持しているのだろう。


 初日は殆どマルムロース侯爵につきっきりで、俺は≪白鹿の旅人≫の冒険譚について色々と尋ねられた。




 二日目になると、今度はランニス子爵の馬車に相席し、やはり普段の冒険活動についてあれこれと尋ねられる。


 子爵がもっとも興味深げに聞いていた話は、ダンジョン探索についてであった。


「ほぉ、ブルタークダンジョンも70階層を攻略したか。流石はオルクルダンジョン60階層最短攻略記録の保持者だな。これなら最高到達階層記録の方も更新出来るのではないか?」


「どうでしょう。どちらのダンジョンも深部は討伐難易度Aランクが当たり前のように出てきますから、流石に容易では……」


 一応謙遜してみるも、ゴーレム君を稼働させて共に進めば可能なのでは、俺は内心そんな事を思っていた。




 そして遂に三日目、一団はほぼ定刻通りに王都ハイペリオンへ到着した。


 俺は二日目以降からずっとランニス子爵と同じ馬車に乗っていた。窓から王都の巨大な外壁と白亜の古城を眺めた。


 王都は王城や貴族の居住区を第一区、富裕層や下級貴族居住区を第二区、平民居住区を第三区と分けられており、更にその外側にも多くの居住地や商店街が広がっている巨大な都市だ。


 それぞれの区画は高い外壁で区切られており、第三区に入るには許可証か王都民の同伴が必要となる。


 第三区は平民居住区と言っても、そこそこ収入のある平民や商家が生活を営んでおり、そこに住んでいる時点で十分金持ちの部類と呼べた。いわゆる城下町に該当する。


 俺はB級冒険者なので第二区までなら自力で入れる資格を有しているが、今回の依頼者はエイルーン王家で第一区まで行く必要がある。


 正確には王家承認の下、王政府が直々に依頼を出しており、指定された出向場所はハイペリオン城周辺にある行政エリア施設なので、当然そこも第一区となる。


 依頼票と共に第一区への一時的な入場許可証を受け取っていた俺だが、そんなものを使う必要もなく、一行の馬車は第三区、第二区、そして最後の関所すらも顔パスで通過してしまった。


(流石は大貴族、マルムロース侯爵家のご当主だ)


 碌な確認もされないまま第一区へと踏み入れた俺は、少々肩透かしを食らった気分だ。




 一行の馬車は三階建ての大きな建物がある敷地内に入ると、そこで停止した。


「着いたぞ。まずは依頼主との面通しとなる」


 一足先に馬車を降りた子爵が教えてくれた。


「依頼主と言いますと、研究員かお役人の方でしょうか?」


 彼に続いて馬車を降りた俺が質問を投げかけると、ランニス子爵は少しだけ顔を顰めた。


「通常の依頼なら、よくても長官か上級文官クラスでの応対だろうが、王家の名もあることが気に掛かる。もしかしたら大臣クラスか王族の方もお見えになるかもしれないな」


「ええ!? まさか、そんな……!」


 俺が驚いて声を上げると、横からマルムロース侯爵が近づいてきた。


「いや、十分あり得るだろうな。むしろ今は大臣たちも戦後処理で忙しいだろうから、第三王子様や第三王女様なら、自ら志願して請け負う事もあるやもしれぬ。もしかしたら国王自ら参られる事もあるだろうから覚悟するのだな」


 マルムロースはニヤリと意地の悪い笑みを浮かべていた。


 初日に長々と言葉を交わしたこのご老人は、思った以上に気安く話の分かる御仁である事は理解できた。こういったお茶目な物言いで、人を驚かすのが好きな性分のようだ。


(いやいや。流石に王族は来ないだろうさ……)



 上級貴族ジョークだと受け取った俺は完全に聞き流していた。








 新型ゴーレムに関する一切を任された第三王女、フローリア・ロイ・エイルーンは、本日会う予定であった冒険者と、同行者である侯爵・子爵両家の人員が到着した事を、侯爵家の先触れから従者を経由して伝えられた。


「……そうですか。≪白鹿の旅人≫は、イッシンという新型ゴーレム開発者一名だけしか来られていないのですね」


 それをフローリアは少し残念に思う。


 ランド・マルムロース侯爵の孫娘、アーネット・マルムロースはフローリアの大切な友人の一人で、普段は妹のように接している間柄だ。そんな妹分のアーネットから≪白鹿の旅人≫については、以前からそれとなく話を聞かされていた。


 なんでも自分とそう変わらない歳の少女もメンバーらしく、討伐難易度Aランクの魔物すら倒した実績もある優秀な冒険者パーティだそうだ。


(アンの話していたシグネという娘に会えないのは残念だけど、新型ゴーレムの発明者もまだ若いらしいし、面白い話でも聞けるかな?)


 イッシンという冒険者は≪ゴーレム使い≫の異名を持ち、フランベール籠城戦においては自身の力でも武勲を上げた剣士だそうだ。


 どちらかというとフローリアは武術より魔法を好んだが、王都にある闘技場の御前試合にも立場上、父の同伴で何度か観戦した経験もある。まだ若い凄腕剣士にも多少の興味が沸いていた。


 だが今回はあくまで新型ゴーレムの技術を学ぶ事が最優先で、冒険者としての品定めなど二の次であった。


 今は研究所で愛用している作業着姿であったが、別に社交の場でもないし、相手は冒険者と研究員だけなので、このままでいいかとフローリアは応対の準備をする。


「それで、侯爵家と子爵家からは、どれくらいの研究員が参加を?」


「はっ! 研究者は両家、共に2名ずつ同伴しております。ですが……」


「……? どうしました? 何か問題でもありましたか?」


 言い淀む護衛にフローリアは質問を投げかけた。


「それが、どうやらマルムロース侯爵様とランニス子爵様、両名のご当主も同伴されていらっしゃるとか……」


「…………は?」


 てっきり冒険者と研究者だけが来訪するものだと考えていたフローリアの思考は一瞬停止した。








 俺たちは今、王都第一区の行政エリアにある魔導研究所という施設内にいた。そこには迎賓用の個室が設けられており、一同はまずそこに案内された。


 室内には大きなソファーがあり、侯爵、子爵は当然の事、俺もその席へ着席することを許された。それ以外の研究者や補佐をする者、護衛たちは直立したままだ。


「侯爵様、子爵様、イッシン殿。大変恐縮ではございますが、もうしばらくお待ちいただけないでしょうか?」


「……ふむ。相分かった」


 この中で一番位の高い侯爵が返事をすると、子爵と俺も黙ってそれに頷いた。それを聞いた案内の者は冷や汗を流しながら、何度も頭を下げてすぐに退出した。


「これは……もしかするとフローリア様が直接お見えになるかもしれぬな」


「え!? その方は確か……第三王女様、でしたっけ?」


 王族が来るという事実にも驚いたが、何故そう判断したのかも疑問に思った。


 顔に出ていたのか、侯爵は笑みを浮かべながら俺の疑問に答えてくれた。


「こう見えても儂は侯爵だぞ? 先触れを出したというのに所長クラスが待たせるとは思えんし、王子殿下なら直ぐに来て下さるだろう。それ以外となると、恐らく今回の責任者はフローリア王女様だ」


 侯爵に続き子爵も説明に補足をしてくれた。


「我ら当主自らが来るとは知らず、きっとお召し物を変えられているのだろう。もっと早くお伝えすれば良かったか……」


 二人の推察に俺は成程なと思った。


 確かにこの二人を待たせる人物となると、相当位の高い者しかいない。王女様は冒険者や研究者のみしか来ないものだと思っていたが、今頃は慌てて正装にでも着替えているのだろう。




 どうやら二人の推察は正しかったらしく、数分後には綺麗な衣装を纏った若い娘が息を切らせながら入室した。すると侯爵たちが全員起立をしたので俺もそれに倣う。


「お、お待たせしましたね。マルムロース侯爵、ランニス子爵、それにイッシン殿…………」


「いえ、こちらこそ急な来訪でご迷惑をお掛けしたようで……どうか息を整えてくだされ」


「そ、そうさせて頂きます…………」


 ここまで走って来たのか、彼女は給仕から水を受け取ると、それを飲み深呼吸をしてから姿勢を正した。


「お心遣い感謝致します。改めましてイッシン殿。今回の依頼人……の責任者になります、フローリア・ロイ・エイルーンと申します。どうぞお見知りおきを……」


 見事なカーテシーの挨拶に、一瞬見惚れてしまうも、惚けたままではいられない。


「お会いできて光栄です、王女殿下。私はB級冒険者のイッシンと申します」


 負けじと俺の方も、深々とお辞儀で返した。


(王族相手に跪かなくていいのか? といっても、ソファー邪魔だし……どう対応していいか分かんねぇよ!?)


 俺の心配は無用だったのか、王女は笑みを浮かべながら席に着くよう声を掛けてきた。ここでようやく俺たちは全員着席をする。


(やっぱり侯爵よりも王女様の方が偉いのか? でも、向こうも急いで来たようだし、お互い無碍には出来ない相手、といったところか?)


 王女に続いて入室してきた者たちは、この研究所の職員や護衛の兵士だろうか。その中の一人が一歩前に出て口を開いた。


「私はこの魔道具研究所の所長を務めておりますタムンと申します。総責任者はフローリア王女殿下ですが、私はその補佐役を務めさせて頂きます。どうぞ宜しくお願い致します」


 各々が挨拶を済ませ、いよいよ話し合いが開始となる。



 まずは合同研究へと至った経緯をタムン所長が説明してくれた。


 俺も軽く聞いてはいたが、どうやら子爵と侯爵がそれぞれゴーレム君に興味を持ち、新型ゴーレムを作れないか俺に依頼しようと考えたらしい。


 だが流石に王都に一報も入れないまま新型ゴーレムの開発に着手をすると、最悪謀反を疑われる可能性が出てくる。そこで予め王政府に根回ししたところ、国王もゴーレムに興味を抱いたのが始まりだそうだ。


 だが先に目を付けた子爵・侯爵を差し置いて、王政府だけが新型ゴーレム技術を独占するのは、要らぬ醜聞が広まってしまう恐れもある。そこで今回は効率も考え、王都で合同研究という形をとった。



 ざっくり要約すると、こんな経緯のようだ。




 所長からの説明が一通り終わると、今度は王女から提案があった。


「まずはその新型ゴーレムを実際に見てみたいのですが、如何でしょう?」


 全員の視線がゴーレムの所有者である俺に集まる。


「はい。勿論構いません。しかし、ここは少々手狭かと……」


 ゴーレム君は巨体なだけに、流石に室内で動かすのは躊躇われた。


「そう思って事前に軍部には根回しを済ませてあります。訓練場に向かいましょう」



 フローリア王女の発案で、俺たちは第一区内にある訓練場へと向かった。








 王都には幾つかの軍事施設や訓練場が存在するが、その中でも第一区にある第一修練場は一番狭い敷地だ。


 ただ、狭いと言っても中級魔法を気兼ねなく放てるくらいの広さと頑丈さが有り、近衛騎士や聖騎士など、王城務めの精鋭部隊が修練する場にもなっていた。


 そんな場所へ俺たち一行は馬車で向かう。ただでさえ侯爵の護衛も多かったことに加え、王女殿下の御成りとなれば、その人数は凄まじい規模となる。その物々しい一行は第一区内にいる人たちにも珍しいらしく、道行く人々が一体何事かとこちらを見物していた。


(……なんか凄い所に来ちゃったなぁ)


 一人だけ場違い感が半端ない。



 第一修練場に到着すると、そこには何人かの兵士たちが訓練で汗を流していた。てっきり訓練場を丸ごと貸し切りかと思っていたが、どうやらその一角だけを使用するようで、俺たちは馬車から降りると、空いたスペースへと向かった。


(あっ! あれってケイヤじゃね!?)


 こちらとは反対側の隅で剣を振るっている少女に目が移った。


 あの青くて長い髪の女騎士は間違いなくケイヤ・ランニンスであった。向こうも俺と自分の父であるランニス子爵に気が付いたのか、目を見開いたまま固まっていた。


(そりゃあ、いきなり父ちゃんとお姫様と一緒に出てきたらビックリするだろうさ)


 ケイヤだけでなく、他の兵士や騎士たちも驚いていた。


 こんな所に普段顔を見せない王女様や侯爵、子爵などの顔ぶれを一度に見れば、疑問に思うのも当然だろう。


 周囲はざわつき始めた。


「では、早速ですがゴーレムを出してください」


 フローリアはウキウキとした表情でこちらを見つめていた。勿論安全の為、周囲には護衛の兵士たちが彼女を守護していた。


「それではいきます」


 そう告げて小型ポーチからゴーレム君を取り出すと、ギャラリーは一層沸き立った。


「な、何だありゃあ!?」

「これが……新型ゴーレム!」

「思っていた以上に大きい……!」

「あの少年が噂の≪ゴーレム使い≫か!?」


 どうやら王都にも俺の噂が徐々に広まり始めていたようで、今回同行した者だけでなく、偶々居合わせや見物人も驚きの声を上げていた。


 ケイヤもビックリしていた。


「い、イッシン君。このゴーレムは本当に安全なのかい?」


 子爵の連れてきた研究員の一人が俺に尋ねた。


「はい。俺の命令には必ず従いますし、セーフティーロックとして、人を殺さないよう事前に命令を刷り込ませてあります」


 正確には、無暗に人を殺さないよう命令してあるだけで、うっかり殴って死んでしまうケースも十分にある。ゴーレム君は頭がよく、相手の力量を考慮して加減するのが上手だが、それでも事故は起こるものだ。


 その事も説明すると研究者たちは感心していた。本来、人造のゴーレムはそこまでの学習能力など皆無に等しい。


「しかし、全く動かないようですが……?」


 フローリアの疑問に俺は答えた。


「今はオフモードにしてあります。この状態なら生物扱いではないので、マジックバッグなどで収納可能なのです。今、起動させますね。ゴーレム君、起動だ! 立て!」


 俺が命令を出すと、ゴーレムの目が光り、ゆっくりと立ち上がって見せた。


 これが緊急時ならもっと素早く動くのだが、ゴーレム君自らがそう判断したのか、周囲に”自分は危険な存在ではない”とアピールするかのように、ゆっくり動作して立ち上がってみせた。


(本当に君は賢いなぁ……)


「おお!? 動いた!」

「本当に命令に従っているのか!?」

「なんで目が光ったんだ?」


(目が光るのはただの演出です)


 ゴーレムの事を聞きつけたのか、訓練場へ見学しに駆けつける者も出始め、徐々にギャラリーが増えていった。


「イッシン殿。このゴーレムは戦場で大活躍したと耳にしております。なにか素早い動きを見せてはくれませんか?」


 王女殿下直々のオファーで、俺はゴーレム君を全力疾走させることにした。


「ゴーレム君! あそこの端まで走って戻って来い!」


 俺の指差した方向にゴーレムが走り出すと、周囲からどよめきが起こった。


「は、速い!?」

「あれがゴーレムの速さか!?」

「ゴーレムは足が遅い種族じゃなかったのか!?」

「Uターンして戻ってくるぞ!?」


 ゴーレムは再び元の所へ駆け寄ってくると、徐々に速度を落とした。それでも一部の者は近づいてくるゴーレムに恐れたのか、若干身を引いていた。


「す、凄い……! これは凄いゴーレムです、イッシン殿!」


 王女様は大興奮でこちらに近づこうとしていたが、想像以上なゴーレムの性能に危機感を募らせたのか、護衛の女騎士が必死に引き留めた。


「き、危険です、殿下! これ以上は近寄らないで下さい!」


「大丈夫よ、ノエル! この子、本当に凄い知能だわ! あんな命令だけで、止まる際にはちゃんとスピードも緩めて……! きっと私たちを怖がらせないように配慮していたのよ!」


 王女の言葉に俺は感心した。まさかこの短時間でゴーレム君の賢さに気が付くとは思わなかったのだ。


(お飾りの王姫様じゃないのか? 今回の件を任せられるくらいには知識があるのかな?)


 先程所長が説明してくれたが、フローリア王女殿下は魔道具研究所の副所長という肩書もお持ちのようだ。


 どうやら想像以上のやり手らしい。


「イッシン殿! この子は貴方以外の命令も聞くのかしら?」


「自分以外にパーティメンバーの命令も聞きますが、新たに命令をすれば他人の指示にもある程度は聞いてくれます」


 例えば他人に命令権を譲渡して、俺たちに危害を加えたり、所有権を移させるような行為はNGにしてある。過去のテスト段階ではやらかしてしまったので、その辺りは佐瀬たちとも相談してバッチリと対策済みだ。


「でしたら! 少しだけ私に命令権をお与え下さるかしら?」


「で、殿下!? ご自重下さい!」


 見たことも無いゴーレムに夢中な王女を女騎士が必死に諫めるも、お姫様は聞く耳持たずのようだ。遂には女騎士が折れ、王女はニコニコしながらこちらへと近づいてきた。


「えーと、それでは仰せのままに」


 困った顔の女騎士が渋々了承したのを確認すると、俺はフローリア王女にゴーレム君の命令権を30分間だけ譲渡した。


「ええと、ゴーレム君、だったかしら? 片足で立って!」


 ゴーレム君は言われた通りに片足立ちをした。


「おお!? 王女殿下の命令通りに動いたぞ!?」

「バランス感覚も実に素晴らしい!」


 がやがやと研究者一同が騒ぎ出す。


「ゴーレム君、ジャンプして!」


 これまた命令通りに大きなジャンプ力を見せつけると、今度は騎士たちが沸いた。


「王女殿下。噂ではこのゴーレム、空を飛び、魔法も放つそうですぞ?」


 何時の間にか王女の傍にいたマルムロース侯爵が口添えをした。


(おい、こらジジイ!? なんて事を教えるんだ!?)


 既に周知の情報なので後で説明する気だったが、「今ではないだろう、今では!?」と、俺は心の中で激しくツッコミをした。


 案の定、目を輝かせた王女殿下は躊躇うことなくゴーレム君に命令を下した。


「ゴーレム君! 空を飛んで、あの的を魔法で攻撃しなさい!」


 するとゴーレム君はサービス精神旺盛なのか、やけに格好いいポーズを決めてからバーニアを噴射させて一気に飛び上がると、上空を華麗に旋回してから訓練用の的に【ファイア】を発射した。


「と、飛んだぁ!?」

「魔法まで!?」

「嘘だろ……」

「一体何なのだ、あれは……っ!」


 流石にこれには誰しもが度肝を抜かされた様子で、遠目で見守っていた騎士たちも騒いだり唖然としていた。


(ま、不味い……かなりの大事になってきているぞ……)


 俺の気も知らず、王女様は随分とご機嫌だ。


「きゃあああ! 凄い! 格好いい! あれ、欲しい!!」


「いや、無理です」


 思わず声に出して即答してしまったが、周囲が騒がしいお陰で俺の不敬な呟きは誰にも聞かれていなかった。




 この大騒ぎは勤務中の近衛兵団が城から駆けつけるまで続くのであった。








◇◆◇◆ プチ情報(スキル紹介) ◇◆◇◆



スキル名:【属性耐性( )】 ※(光・闇・火・水・雷・土・風・)共通

タイプ:魔法型

系統:防御系

分類:適性スキル

レベル:1

主な所持者:イッシン(雷)


 各対応した属性の耐性を得る。ただしあくまで魔法から生み出された属性のみなので、普通の炎や自然の雷に対しては効果が薄い。


 普段から属性魔法を受けているほど習得もし易いが、個人差がある。




スキル名:【魔法耐性】

タイプ:魔法型

系統:防御系

分類:適性スキル

レベル:1

主な所持者:ハワード


 魔法全般に耐性を持ち、特に状態異常に強くなる。麻痺や氷結、呪いなどの耐性は高いが、【属性耐性】ほどの対魔法防御力は得られない。


 例えば火魔法の副次的効果である火傷は【魔法耐性】で防げるが、魔法の威力そのものは【属性耐性(火)】ほどダメージ軽減されない。




スキル名:【全属性耐性】

タイプ:魔法型

系統:防御系

分類:適性スキル

レベル:2

主な所持者:不明


 非常に希少なスキルで、全属性の耐性を得る。


 ただし、状態異常にはそこまでの耐性が無い。




スキル名:【魔法無効】

タイプ:魔法型

系統:防御系

分類:適性スキル

レベル:EX

主な所持者:不明


 あらゆる魔法を無効化するユニークスキル。攻撃魔法も魔法による状態異常も一切受け付けないが、回復や支援魔法だけは通るチートスキル。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る