第23話 後悔と覚悟

 ギルドで余計な時間を食ってしまったが、気を取り直して俺たち三人は、町中の商店を幾つか回った。地球ではお目に掛かれない品々を前に、二人はあれこれと目移りしていた。


(最初に町へ出た時は、俺もあんな感じだったなぁ)


 佐瀬と名波から道中あれこれと質問をされ、分かる範囲でそれに応えながらも、拠点に必要な物資を買い込んでいく。荷物が多くなると一旦人目を避けてマジックバッグに収納していくのだが、如何せん相変わらず二人は周囲の視線を集めていたので隠すのにも一苦労だ。


(まぁ、さっきよりかは少しマシになったか?)


 心なしか野郎どものギラついた視線が朝より減っているように見受けられる。もしかしたらあの三馬鹿との一件がカプレットの町中に広まりつつあるのかもしれない。野外修練場での出来事なのと狭い町なので、冒険者間の情報などあっという間に広がるのだ。


 それでも二人に声を掛けてくる男たちもいたのだが、さっきの件が自信になったのか、二人は堂々とお断りをしていった。ナンパに失敗した男たちは例外なく俺の方を恨めしそうに睨みつけるも、すごすごとその場を去っていった。


 いくら荒くれ者が多いと言えど、昼間から暴力行為に及べば流石に領兵も黙ってはいない。治安は悪いがこの町にも女子供は普通に生活しているし、決して無法な町ではないのだ。



 買い物を終えた俺たちは一旦町の外へと出た。昨日討伐した魔物を解体してギルドに売り払う為だ。


 マジックバッグに収納していた死骸を出して、皮や肉、それと素材になる部位を剥ぎ取っていく。


「毛皮はそこそこの金になるが、当然傷を付けると減額されるぞ」


「うへぇ、気持ち悪い……」


 そう文句を言いながらも彼女たちは俺を習って魔物の毛皮を剥いでいく。どうやらその手の作業は拠点で既に経験済みのようだ。ここで躓いているようじゃあ冒険者稼業は務まらない。


「F級にはどのくらいで昇格できるの?」


「町の清掃などの雑用クエストをこなすか、魔物の魔石をちょいちょい売り払えばあっという間だ。授業の単位を取るより簡単な作業さ」


 佐瀬の質問に俺は手を動かしながら答えた。どうやら名波だけでなく、佐瀬も冒険者に興味を持ったらしい。


「結局、周辺の地図は手に入れられなかったね。あんな地図で銀貨10枚は高すぎだよ!」


 名波の愚痴に俺は頷いた。この世界の地図はかなりいい加減に作られているくせに結構な値段なのだ。まぁ、一枚一枚手書きだと考えれば、あの価格なのも納得だ。


「この世界の文明レベルでの測量じゃあ、大雑把なのも仕方ない。もしかすると詳細な地図は国が管理していたりするのかもな」


「……それって軍事機密って事?」


 魔法文明がどのレベルで国を統制できているのかは知らないが、半年間も自国の領土の森の中で生活している地球人にすら気が付かないお粗末さだ。他国との国境だって碌に監視もできていないのだろう。


 もし仮に敵対国が侵入した際、詳細な地図を入手されれば命取りにもなりかねない。それを避ける為に地図を売るのにも、許可が必要なのではないだろうか?


 それを裏付ける証拠として、地図には何かしらの印がされていた。きっとあれが国や貴族からの許可印だろう。地図の値段が高いのも、それらを製作・販売するのに上納金として貴族から幾らか持って行かれているのではないだろうか?


「けど、それじゃあ新しい移住先はそう簡単に見つからないかもね……」


 佐瀬は解体に使用したナイフを俺の【ウォーター】で洗いながらそのように呟いた。


 俺たちが地図を欲している理由は、森の拠点からの引っ越し先を決めかねていたからだ。


 現在俺が正確に把握できている町の場所は二つだけ。ただし、その二つともコミュニティの学生全員を移住させるには無理があった。


「もっと大きな街か、あるいは……」


 別の未開拓地で新たに拠点を作るか、だ。どちらにしろ、実際に見てみないと判断できそうにもない。明日の朝には町を立ち、再び拠点へと戻るつもりなのだ。兎に角、今日一日で出来るだけ情報を――――


「――――二人とも、誰かこっちに近づいてくる!」


 名波の警告に俺と佐瀬はすぐに戦闘態勢へ移行した。だが見える範囲にはまだ誰もいないようだ。


「魔物か?」


「ううん、多分人だよ。それも六人、真っ直ぐこっちへ近づいてくる」


 名波の言葉に俺は違和感を覚えた。


 この場所は町から少し離れた丘の麓となる。なるべく人目に付かない場所で、気兼ねなく解体作業をしたかったからだ。今回こちらに向かってくる者も、他の冒険者が俺たちと同じ目的でここに向かっているだけと思いたいが…………


(解体目的ならどうして町の方角からやってくる? 普通は逆で森の方角からじゃないのか? 俺たちのようにマジックバッグに収納していたとか、何か特別な事情があるのか、もしくは…………)


 ここにいる俺たちに用があるかだ。


「あ、三人の気配が突然消えた!? 残り三人はそのままこっちに進んで来てるけど……全員、敵意を感じる!」


「「――っ!?」」


 名波の【察知】スキルは相手の敵意も判別する。これは間違いなく俺たちを襲う気のようだ。しかも半数の気配が消えたのも非常に気になる。


「ここは場所が悪い! もう少し後ろに下がるぞ!」


 隠れるには絶好の場所だが、どういう訳か相手はこちらの位置を把握している節がある。ならば高い位置を取った方が有利だろう。俺たちはすぐ背後にある緩やかな丘を登り始めた。


「やっぱり! こっちの正確な位置が分かるみたい! そろそろ姿が見えるよ!」


 相手も名波のように索敵型のスキルを所有しているのか、しっかりこちらに向かってきているようだ。これは森の中に逃げるのもリスクが高そうだ。


「――――ここで迎え撃つ! 恐らく相手は六人、内三人が隠密系のスキルで隠れている! 二人は固まって周囲を警戒していろ! 俺が前に出て迎え撃つ!」


「りょ、了解!」

「気を付けて!」


 短い時間で最低限の準備を終えた俺たちは望まぬ来訪者たちを待ち構えた。すると、前方に見覚えのある三人組が姿を現した。


「よぉ、お前たち! こんな所で会うとは奇遇だなぁ」

「へへ、俺たちどうしてもお前らに一言詫びを入れたくてなぁ」


「……っ!」

「あいつら、性懲りもなく……っ!」


 半分予想してはいたが、午前中に絡んできたD級冒険者三人組であった。


 あの連中にはそこそこ怪我を負わせたはずだが、見る限り今は元気そうだ。多分治療院を利用したかポーションを使って治したのだろう。どちらにせよ冒険者にとっては手痛い出費なのは間違いがない。


(そんな相手がわざわざこんな所で俺たちに詫び? はっ、ありえないだろ!)


 見え透いた嘘だと判断すると、俺は即座に魔法をぶっ放した。


「【ストーンバレット】!」


「――――っ!?」

「なぁっ!?」

「うぎゃああああっ!?」


 命中したのは投げナイフ野郎であった。あいつの遠距離攻撃は厄介だったので早めに潰しておきたかったのだ。


「て、テメエ! いきなり何しやがる!?」

「畜生がぁっ!」


 慌てて戦闘態勢を取る二人に俺は畳みかけるように魔法を放った。


「【ストーンバレット】!」


「ぐっ!?」

「ひぎっ!?」


 慌てて回避しようとするも、斧使いの左腕に被弾した。ショートソードの剣士は無傷で、こちらを鬼の形相で睨みつけていた。


「――っ!? 矢野君、左右から二人!!」


 背後から飛び込んだ名波の警告に、俺は咄嗟に前方へ転がるよう回避行動を取った。その直後、後ろに風切り音と僅かな風圧を感じた。


「――ちぃっ!」

「何故気が付いた!?」


 俺のすぐ背後で見知らぬ男二人分の声が漏れた。恐らくこれが名波の言っていた“気配の消えた三人組”なのだろう。


(最悪だ! 気配遮断とかじゃなくて透明化かよ!?)


 本当に魔法やスキルというのは何でもアリだなと、俺は心の中で悪態をついた。


(大体の居場所が割れた今、ここで逃すわけにはいかない!)


 間抜けにも透明人間はわざわざ声を上げてくれたのだ。この機を逃してはならない。素早くそう決断した俺は、前方から向かってくる剣士を無視して、先程俺へ不可視の攻撃を行ったであろう男たちへ魔法を撃ち込んだ。相手の位置が分からないので範囲を広げる為、普段の魔力消費量を5倍くらいにして近くの地面へと放った。


「——【ファイア】!」


 魔力を注ぎ過ぎると俺の制御力ではコントロールが効かないが、どうせ場所など分からないから狙いを定める事など出来ないのだ。ならば自分も巻き込む事を想定し、且つ確実に相手が被弾するよう高威力で地面に魔法を叩きつけた。


「ぐわぁ!?」

「む、無茶苦茶な奴だ!」


 俺自身、熱風で激痛に耐えている中、炎を必死で払おうとした男二人の姿が露見する。男たちはお揃いの外套を身に纏っており、それに火が付くことを嫌ってか慌て始めた。


 そこへ――――


「――――【サンダー】!」


「うがぁっ!?」


 佐瀬の魔法が男に炸裂した。俺は自身の治療は後回しにしてもう片方の男へ肉薄し、躊躇わずその首を撥ねた。


「ひっ!?」

「うっ!?」


 俺の思い切りの良さに佐瀬と名波は思わず視線を逸らした。


「ぐぅ……う、【ウォーター】」


 なんとか火傷の痛みに耐えながらも、俺は魔法で生成した水を自身にぶっかけた。不思議な事に魔法の水だと普通の水より簡単に消火ができる。これも属性の相性効果だろうか?


「く、まさか二人がこんな簡単に……!」


 炎で近づけなかった剣士が忌々し気にこちらを睨む。俺は息を整えながらも【ヒール】で火傷を癒していった。


(これで、後はステルス人間が1人、剣士1と片腕負傷の斧1か…………)


 これならいける! そう思っていた矢先――――


「――――動くな!」


 それは彼女たち二人がいる後方からであった。


 思わず振り返ると、佐瀬の背に男が剣の切っ先を向けていた。あれでは少しでも動けば心臓か、少なくとも内蔵のどこかは一突きされるであろう。


「彩花!?」

「佐瀬!?」


「動くなと言っている! さぁ、武器を捨てろ! さもなくば、この女を突き殺すぞ!」


 その男は恐らく隠れていたもう一人の襲撃者だろう。顔を隠すような格好で、先程倒した透明人間二人と同じマントを羽織っていた。


「へ、へへっ! これで形勢逆転だ! よくもやってくれたなぁ!」

「くそぉ、いてえよぉ……畜生が!」


 人質を取って有利を悟ったのか、剣士はこちらに嫌らしい笑みを浮かべ、片腕を被弾した斧使いは血走った目で俺を睨みつけていた。


「このクソガキがぁ! ぶっ殺してやる!」

「へへ、魔法は使うなよぉ? お嬢ちゃんたちも大人しくしていれば、傷つけずに可愛がってやるからよぉ!」


「くぅ……卑怯者っ!」

「ごめん、彩花、矢野君……」


 人質に取られた佐瀬は悔しそうに男たちを睨み、隠れていた男をスキルで察知しきれなかった名波は今にも泣きそうな表情であった。


「まずは小僧を血祭りにあげてやる!」

「くく、その後は二人の身体で責任取って貰うとするかなぁ。見ろよ、この惨状! くそっ! 三人も殺しやがって!」


 ゆっくり距離を詰めてくる男たちに俺は手を打てないでいた。名波も親友が人質に取られ迂闊に動けないでいる。


 佐瀬の背後にいる男は片手で剣を突き付けながら、もう片方の手で佐瀬の服に手を掛け始めた。まさかこの場で脱がす気だろうか。


(ちぃ、どうしようもないか!? このままでは、どちらにしろ……っ!)


 最悪の未来を想像した俺は佐瀬を見た。すると彼女はこんな土壇場でも不敵な笑みを浮かべて気を吐いた。


「……悪いけど私、そんな安っぽくないの。アンタたちの好きにさせるくらいなら…………死を選ぶわ! 【サンダー】!」


 佐瀬は躊躇うことなく雷の魔法を直ぐ近くにいる男へと発動させた。


「この女ァ!?」


 佐瀬の背後にいた男は八つ当たり気味に彼女の胴を一刺しすると、すぐにバックステップで身をかわした。直後、男のいた場所に魔法が落雷する。至近距離な為、男も軽くダメージを負ったが、佐瀬はそれ以上だ。


「うぐっ!?」

「――――さ、彩花ァ!!」


 背中を刺された上に自らの魔法も多少被弾し、佐瀬は呻き声を上げてそのまま倒れた。刺された場所が悪かったのか、かなり出血しているようだ。


「この、野郎っ!」


 俺はあいつだけは逃がすまいと駆けつけるも、ステルス男とはだいぶ距離がある。魔法で足止めするか思案すると、俺より先に動く者がいた。彼女の近くにいた名波だ。


「よくも、彩花を……っ!」


 右手には包丁、左手に果物ナイフで彼女は男に特攻した。鬼気迫る彼女の表情にギョッとした男は咄嗟にマントへ手を掛けると、自信を薄っすらと透明に変えていく。


(もしかして、あのマントが透明にしているのか!?)


 完全に見えなくなった男だが油断したのだろう。【察知】を所有する名波は親友の敵を討たんと集中力を高めに高め、即座に相手の位置を割り出して果物ナイフを閃かせた。


「そこっ!」


「な、にぃいい!?」


 どこかを斬られたのか、何もない空間から血飛沫が舞う。血生臭いその光景にも臆さず、名波は残った包丁を更に振るった。


「ぐきょっ!?」


 痛ましい悲鳴と凄まじい量の血が飛び出る。恐らく致命傷を与えたのだろう。やがて男は痛ましい姿を完全に見せると、そのまま前へと倒れ込んだ。どうやら上手い具合に喉元を掻っ捌いたようだ。


「ち、役立たずが……っ!」

「ぐおおおおおっ!」


 安堵した俺は背後を振り返ると、剣士と斧使いが死に物狂いで立ち向かってきた。向こうも後がなく決死の覚悟のようだ。このまま領兵に付き出されては死罪は確定だろう。


 だが人質という枷が外れた今の俺の敵ではなかった。


「よぉ、お前ら! よく逃げずに残っていたなぁ」


「このガキがぁ! 舐めるなぁ!」

「殺す! 殺す! 殺すぅ!」


 今まで生きてきた人生の中で、他人からこれほどの殺意を向けられた経験はなかったが、それ以上に相手への殺意を芽生えた記憶もなかった。


「それは……こっちの台詞だぁ!!」


 己の感情に身を委ね、そのまま魔法を放った。【ストーンバレット】による石の弾丸は剣士の頭蓋骨を捉え即死させた。それを間近で見て攻撃を躊躇した斧使いを、俺はすかさず剣で突き刺した。


「ぐぅっ! ちく、しょう…………」


 そのまま斧使いは息を引き取った。




 俺はすぐに佐瀬の元へ向かうと、その傍で名波が座り込みながら泣きじゃくっていた。


「う、うぅ、さやかぁ……」


 彼女はどう見ても死んでいた。開いた目に光はなく、刺された箇所からは今も血が流れ続けている。それと最後に放った自らの一撃も原因なのだろう。彼女の身体は若干焼き焦げていた。


「わ、私がぁ! 敵を、ぐすっ、 早く見つけ……うわああああん!」


【察知】というスキルを持ちながら友人の背後に隠れていた相手を見つけられなかった事を心底悔やんでいるのだろう。彼女は佐瀬に詫び続けながら泣いていた。


 そんな彼女に俺は優しく声を掛けた。


「皆一生懸命戦った。誰も悪くないし、佐瀬もきっとそう思っている」


「ぐすっ、で、でもぉ! でもぉ!!」


 涙で顔がぐしゃぐしゃな彼女に、俺は決意を込めて口にした。


「だから俺も出来る事をやってみる! 大丈夫、これが二度目・・・だけど、多分どうにかなる!」


「…………ぇ?」


 ぽかんと呆ける彼女を無視して、俺は佐瀬の死体を見つめた。


「……本当に強気な奴だ。剣を突き付けられたあんな状況下で……。だけど、今回はその勇敢さに助けられた」


 俺は彼女の傷口に手をかざすと、まずは【ヒール】を試みた。死んだ直後ならヒールで傷口だけなら塞ぐ事が出来た。ただし失った血液はそう簡単には戻らないし、ましてや死者はヒールでは生き返らない。


 だが、あの魔法なら話は別だ!


「だから、今度俺が助ける!」


 俺は惜しみなく全魔力を注いで、人に対しては二度目となる【リザレクション】を発動させた。






 私はあの時の事を思い浮かべていた。


 この世界に転移する直前、私は命の危機に晒されていた。突然現れた通り魔に標的とされたからだ。


 悔しかった!


 何故、あの時私は震えながら逃げているだけだったのか。普段の私なら、生まれついての負けん気で反撃の一つでもして当然だと思っていたからだ。けれど生まれて初めての死の恐怖には抗えず、私は悲鳴を上げながら逃げを選択してしまった。


 悲しかった!


 助けてくれた男の人が、私の身代わりで死んでしまった事に。あの人は他人の私なんかの為に命がけで守ってくれた。本当に勇敢な人であった。


 後悔した!


 どうして私は戦う事を選ばなかったのか。それと最後まで私の事を命がけで助けてくれた彼に寄り添ってあげられなかったのか。今でも何かしてあげられたのではないかと時々夢にまで見る。


 怖かった!


 何も知らない土地で、命の恩人とは言え、見ず知らずの人と、それも瀕死の状態で二人取り残されてしまう状況が、私は怖かったのだ。


 だから死を間近にした彼から“行って”と気遣って貰った時には、その言葉に縋ってしまった。私は口では謝り続けながらも、心のどこかでは安堵して瑠璃たちの元へ戻っていった。


 取り残された彼は一人寂しく死んでしまう運命だというのに、私はそれを見捨てたのだ。



 そんな最低な私は、彼のように頑張れただろうか……?


 卑劣な男たちに人質にされ、仲間が窮地に陥った。このままではイッシンが殺され、私と留美は慰み者とされるのだろう。そう考えたら選択肢は一つしか思い浮かばなかった。


 今度は逃げなかった。私の行動が二人を助けるものだと信じると、自然と勇気も沸いてきた。だから自分でも思ったより早く決断ができた。



 周囲はどこまでも遠く深く、そして暗い。これが死後の世界なのだろうか? だとしたら何て恐ろしいのかと、私は今更ながらに震えが止まらなかった。


 だから暫くして遠くに光が見えると、私は死に物狂いでそれに手を伸ばした。


 こんな所に独りぼっちは嫌だ! 元の場所に還りたい!!




 私の願いは果たして叶ったのか、眩しい光に漸く重たい瞼を開けると――――親友の酷い泣き顔が目に映った。


「さ、さやかぁ!? うわああああああん!」


 瑠璃の見たこともない取り乱しように、私は横で苦笑いを浮かべている彼に視線で助けを求めた。






――女神アリスと地球の代表者たちによるQ&A情報――


Q:魔法やスキルを練習すれば、我々地球人も魔物と戦う事ができるのでしょうか?

A:可能です。ただし魔物の強さはピンキリなので、相手はしっかりと選ぶことです

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