第67話 帰郷

 ブルタークの街を出て5時間が過ぎようとした頃、地上には大きな森が広がって見えた。


「あれが東の森じゃない?」


「そうだろうな。鹿江町はどの辺りだ? 何か目印でもあれば分かり易いんだが……」


 魔物の心配もあるが少しだけ速度と高度を落として、俺たちは地上を観察した。


「あー、アレ!」


 シグネが指す方角に目を向けると、何やら大きな木造家屋が目に付いた。その建物の煙突のようなものから煙が立ち上がっているのが確認できた。


「あれは……鹿江モーターズのコミュニティか!?」


 以前訪れた際、無駄に大きな工場があった事を思い出した。中までは見せて貰えなかったが、鉄を打つような音が響いていたので、恐らく何かの工場だと当たりを付けていたのだ。


「鹿江モーターズコミュがあそこって事は……」


 俺たちは南の方角に進路を変更すると、すぐに家屋の並んだ集落を発見した。


「あった! 鹿江町だ!」


 久しぶりの帰郷にシグネがはしゃいでいた。そのすぐ後ろの座席で佐瀬はカメラを取り出すと、上空から拠点の様子を空撮していた。健太郎も記事にでも使うのか、同じくカメラで町を撮っていた。


「どこか人目のない場所で降りよう」


 鹿江町の住人にはエアロカーの存在を知られても構わないと思っているが、コミュニティを訪れている部外者たちにはあまり見られたくなかった。


 特に鹿江モーターズ辺りの人間に見られたら、あのいけ好かない自称市長の事だ。あれこれ詰問されそうだと思ったからだ。



 拠点から少し離れた場所で着陸を試みるも、その際ちょっとだけ振動がお尻に響く。着陸用の車輪やサスペンションは取り付けていなかったからだ。


 今後は接地ギリギリで浮かしたまま降りて貰い、その後に車体を着地させたほうが良さそうだ。


 しかし、途中で休憩を挟んで飛んだ割には、かなり早く到着してしまった。やはり空路というものは侮れない。


 しかも今回は位置を確認しながらのテスト飛行で、所々ホバーリングもして時間をロスしていた。これなら休み無しの最速最短距離で飛行すれば、ブルタークから2時間くらいで辿り着けるのではないだろうか?


(おいおい、簡単に日帰りできちゃうぞ!?)


 我ながら素晴らしいモノを作り出してしまった。



 俺たちは逸るシグネを先頭に、そのまま徒歩で鹿江町コミュニティへ向かった。



 拠点に到着すると、早速町の人たちがシグネに気が付いた。


「まぁシグネちゃん!? 戻ってきたんだね!」

「久しぶりね、元気だった?」

「少し大きくなったかのう?」


「ただいま、皆!! 私は元気だよー!」


 容姿の目立つ彼女は一気にお年寄りに囲まれてしまった。


(こりゃあ、しばらく抜け出すのに時間が掛かるぞぉ……)


 俺が内心溜息をついていると、一人のご老人が声を上げた。


「ほら、お前さんら! シグネ嬢ちゃんも久しぶりにご両親に会いたいだろうに、程々で開放してやらんか」


 周囲を嗜めるように口を開いたご老人は、確かゲン爺と呼ばれていた人物だ。俺たちが初めてこのコミュを訪れた際、シグネと一緒に狩りをしていたご老体の一人である。


「ああ、すまん、すまん」

「そうね。また後でお話聞かせてねぇ」


「ありがとう、ゲン爺!」


「おう。儂も色々話したいから、また後でな!」


 老人らに一旦別れを告げ、一行はリンクス家の住まいを目指した。もう直ぐそこだ。


「ただいまー!」


 シグネは自宅に入ると元気な声を上げた。中には母親のジーナさんだけがいるようで、こちらを向くととても驚いていた。


「シグネ!? もう帰ってきたのね!」


「お母さん、久しぶり! 逢いたかったよぉ!」


 二人は抱き着くと、目に少し涙を浮かべながら感動の再開を果たしていた。


「シグネが戻ってきたって!?」


 そのすぐ後に、外で騒ぎを聞きつけたのか、父ダリウスもシグネの元へ一直線であった。


 俺たちは少しの間、家族の団欒を邪魔しないよう、一旦リンクス家を出るのであった。






「イッシン君たちも久しぶりだね!」

「まさか空を飛んで帰ってくるなんて……ビックリね」


 俺たちは改めてダリウスとジーナに挨拶をし、これまでの経緯を簡単に説明した。ダリウスさんは興味深そうに話を聞いていたが、鹿江町の来訪理由を話すと少しだけ落ち込んでいた。


「ううむ、シグネが冒険者を辞めて戻ってきた訳ではないのか……」


「私たちの冒険は、まだまだこれからだよ!」


 なんか打ち切り漫画のような台詞だが、シグネの言葉に俺も頷いた。


「今後も危険な冒険者稼業は続けるでしょうけど、娘さんは全力で守ります!」


「イッシン君の事は信頼している。ただ、この子はこんな性格だから心配でね……」


 昔からファンタジー物が大好きだったシグネはこの世界に来ると、まるで水を得た魚のように活動的になった。ただ父親のダリウスからしたら、そんな娘の事は気が気でない様子だ。


「イッシン君。その空飛ぶ乗り物は私たちでも乗れるのかしら?」


 ジーナの問いに俺は笑顔で頷いた。


「ええ、構いませんよ。何でしたら、今俺たちが活動している街を一度見てみませんか?」


 俺の提案にリンクス夫妻とシグネは嬉しそうに頷いた。


 今回は宮内一家もいるし定員オーバーなので、また次回のお楽しみという事になった。



 佐瀬たちは子供たちと一緒にリンクス家にお邪魔し、俺と宮内夫妻、それとダリウスさんの四人で鹿江町の町会長である野村五郎氏のお宅を訪ねた。


 俺たちが帰ってきたことは既に耳に入っていたらしく、町会長と偶々同席していたゲン爺こと田中源次郎氏にもエアロカーを含め、簡単な経緯を説明した。


「まさか、そんなモノを作ってしまうとは……」

「こりゃあ魂消たなぁ……」


 二人はとても驚いていた。


「それで、もし可能でしたら鹿江町に宮内一家の移住を許可頂きたいのですが……」


「「よろしくお願いします」」


 宮内夫妻はこのコミュの雰囲気を一目で気に入り、二人揃って頭を下げてお願いをした。


「ああ、構わないよ。うちは基本“来るもの拒まず”なスタンスだから」


 町会長の五郎は相変わらず人の好さげな笑顔で、宮内一家の移住を許可した。


「しかし五郎会長よぉ。来るのも拒まずって言うが、あの連中だけは勘弁だぜ?」


 横でゲン爺が何やら意味深な言葉を口にした。


「何かトラブルですか?」


 俺の問いに尋ねたのは、隣にいたダリウスだ。


「最近若者が鹿江町に顔を出すようになったんだよ。ただ些か乱暴な連中でね」


 どうやら俺たちがいない間、日本人転移者の来訪者数が更に増えたようだ。


「まさか、暴力行為を働いているんですか?」


「いや、流石にそこまではしていないよ。せいぜい悪態をつくとか、住民と口論になるとかだね」


「あの若造共、手を上げやがったらすぐに叩き出してやる!」


 苦笑いを浮かべるダリウスの横でゲン爺が腹を立てていた。こう見えてこのご老人、鹿江町では三本指に入る実力者だ。ちなみにトップワン、ツーはダリウスとジーナだそうだ。リンクス家の好戦的な性格は最早血筋だな。


 しかし、若者と聞いて俺は一つ不安が過った。


「まさかとは思いますが、鹿江大学の生徒ではないですよね?」


 俺が尋ねると、事情を知っている三人は顔を顰めた。


(おいおい、マジかよ……)


 彼らにここのコミュニティを紹介した手前、俺としてもケジメをつける必要があるだろうか?


 俺の目付きが鋭くなったのを見ると、五郎さんが慌てて弁明した。


「いや、多分矢野君が考えているような事態じゃない。どうも問題の連中は、君が紹介してくれた鹿江大学コミュニティとは別の所属なようなんだ!」


「……どういう事です?」


 そこで俺は改めてその連中の素性を知る事になった。



 どうやらその若者連中は鹿江大学サークルのコミュニティでも、佐瀬たちが参加していた文化系サークルを中心とした集まりではなく、運動系サークルが主体の集団なのだそうだ。


(そういえば、そんなような事言ってたなぁ……)


 確か鹿江大学サークルコミュニティは、体育会系と文化系で大まかに二分されていると聞いた事がある。転移前に佐瀬たちが近所の公園で集まっていた当時、彼ら体育会系コミュは大学のグラウンドで仲間を集い、揃ってこの辺りの場所に飛ばされたそうだ。


 その団体が最近ここ鹿江町周辺に出入りするようになったそうだ。



「彼らも全員が悪い訳ではないんだけどね。文化系コミュの彼らと比較すると、どうにもヤンチャが過ぎるというか……」


 どうやら俺は勘違いをしていたようだ。


 寧ろ俺が紹介した学生たちの方は、定期的に町を訪れると、態度の悪い学生たちを見つけては注意を促すような真似もしてくれているそうだ。


(疑って、本当ごめんなさい! )


 

 こうした小さな問題はあるものの、異世界の街よりこちらの方が安心できるのか、宮内一家は鹿江町に移住する事を決意した。


 ただし、健太郎の希望で最後にもう一度だけ大芝森プラザのコミュに挨拶をしたいのと、できれば冒険者ランクをFに昇格させてからブルタークを離れたいらしい。


 俺としても、もう一度大芝森プラザを尋ねる際には健太郎に同行を願い出るつもりだったし、F級昇格も多分あっという間だろう。


 シグネに鑑定して貰った所、今の健太郎は闘力が80以上になっていた。まだ少し物足りない数字だが、少なくともE級のゴブリンクラスなら二匹までなら後れを取る心配も無いだろう。


 後はここから近くの町、ムイーニかカプレットの冒険者ギルドに訪れて定期的に依頼を熟せばE級昇格までなら彼一人でも成せる筈だ。



 俺たちは五郎に挨拶をして彼の家から出ると、再びリンクス家に向かった。その道中、見知った顔を見かけた。あちらも俺に気が付いた。


「乃木か!?」

「矢野氏! 久しぶりだな!」


 噂をすればで、鹿江大学サークルコミュ所属の乃木と再会した。


 相も変わらず大柄で筋肉質な彼は、こう見えても文化系サークル側だ。


(サバイバル研究部って、文化系……なのか?)


 あまり細かい事は気にしないようにした。彼は文化系コミュの中でも最高戦力で、当時は俺たちと共同戦線を張れるほどの逸材だ。


 彼がいるからこそ、佐瀬たちも安心して旅立つ事ができたのだ。


「あれぇ? 矢野君だぁ!」

「ええ、久しぶり!」


 他にも見知った顔がいた。


 佐瀬たちが所属していた写真部の部長を務めていた会沢や、乃木たちと同じ警備班所属の学生など、男女合わせて八人程でこの町を訪れていたらしい。


「俺たちは買い物できたんだ。矢野氏たちは確か、西の大きな街に行ったんじゃなかったのか?」


「一区切りついたから一度戻ってきたんだ。詳細はここでは……明日そっちの拠点に行く予定だったけど、乃木たちはいるか?」


「ああ、俺たちも今日中に戻るよ。それじゃあ明日、改めて話を聞かせて欲しい」


 どうやら時間があまり無いようで、乃木や会沢は少し残念そうな顔をしていたが、俺が明日顔を出すと告げると嬉しそうにしていた。


 その場で別れて俺たちは改めてリンクス家へお邪魔した。



 夜になり、宮内家は町会長五郎のご厚意で、移住希望者用の空いている家屋で一泊することになった。お試しという奴だ。


 一方俺たちは以前と同じようにリンクス家にお邪魔した。色々積もる話もあったが、シグネの武勇伝? を話すとダリウスたちは微妙そうな表情を浮かべていた。もう少しシグネの手綱を締めた方が良かったのだろうか?




 翌日、宮内一家は鹿江町の散策と住民たちとの交流に時間を当てたいと話していた。


 健太郎自身はジャーナリストの性分か、大学生だけのコミュニティという環境にとても興味を抱いていた。ただ、それはこちらに移住してからでも取材できると思い直したのか、まずは家族を優先してこの町を一家で見て回るようだ。



 一方俺たちは鹿江大学コミュに顔を出す事にしたのだが、今回宮内家の代わりにダリウスとジーナ、それとなんとゲン爺がエアロカーに乗りたいと言い出したのだ。


「おお!? こりゃあ凄い! 長生きするもんじゃなぁ」


「あ、危ないよ! ゲン爺!」


 シグネが燥いでいる者を諫めるという非常にレアな光景が見られた。どうやら以前のこの二人はよく狩りで無茶をしては、互いに小言を言い合う似た者同士だったようだ。本当の祖父と孫のように仲良しで、見ていて微笑ましい。


 飛行してからものの数分で、鹿江大学の拠点がある海沿いの開けた平野が見えた。


「どこか丁度良い場所は……あそこにするか」


 敢えて平野には降りず、森の中にある小さな空き地で着陸を試みる。飛行機と違い、長い滑走路がなくても離着陸できるのがエアロカーの利点だ。


 今回は地面すれすれの位置でホバーリングさせながら全員に降りてもらう。マジックバッグに収納する前に風防護用の魔石に魔力を補充しておくが、動力源の黒球には最低限の魔力を込めるだけに留めておく。


(今後の課題は俺以外の操縦者だな)


 佐瀬の魔力量をもってしても、飛べて僅か数分がいいところだ。エアロカーで数分の飛行ならその場を離脱するのには十分かもしれないが、動力源の≪魔法の黒球≫は一番魔力を込めた者の操縦を優先とするので、仮に俺が全力で魔力を込めてしまうと、他の者はそれ以上の魔力を籠め直さなければ使えなくなってしまうのだ。


 ある意味ロック状態になって防犯には便利そうだが、俺がぽっくり死んでしまった場合は一体どうなってしまうのだろうか?


 長時間掛けて何度も魔力を籠め続けなければ、黒球はその間、ただのボウリング球と化してしまう。そこがエアロカー最大のネックだ。


(ううむ、魔力のやり取りがもう少し簡単ならなぁ……魔力を……送る?)


 ふと、この前佐瀬が習得した【コミュナス】という魔力を他人に送る魔法を思い浮かべたが、確かあれは術者からの一歩通行限定で、俺から佐瀬へという逆の送り方は不可能であった筈だ。


 なんとかならないだろうか……



 そんな事を考えていたら、あっという間に鹿江大学のコミュに辿り着いた。


「おお! 佐瀬さん! 名波さん! おかえり!」

「おーい! 佐瀬さんたちが帰ったぞぉ!」

「本当だ! 相変わらず綺麗だなぁ!」

「名波ちゃん、可愛い!」

「矢野、爆発しろ!」


 一部不穏な台詞も聞こえてくるが、俺たちは大歓迎されていた。


「おお!? ダリウスさんたちも一緒だぞ!」

「ジーナさん、お美しい……」

「ゲン爺さんも居るぞ!?」

「あの子は……もしかして噂のシグネちゃんか!?」

「一度チラッと見たけど、天使みたいに可愛いよなぁ」

「矢野は爆発しろ!」


 なんかここに来て、既に二回も爆破予告があったのだが……本当に爆発するぞ? マジで魔力全開【ファイア】で自爆すんぞ、コラァ!!



 騒ぎを聞きつけたのか、コミュニティの主要メンバーも登場した。


「矢野さん、お久しぶりですね」


 ここの代表を務める花木と、それを補佐する浜岡に中野も姿を見せた。


「矢野君! 貴方たちを待っていたのよ! 食材が余っていたら融通して欲しいの! 主に香辛料!!」


「おい、中野。会って早々……」


 中野は相変わらずなようで、それを浜岡が窘めた。


「そう言うと思って、色々お土産仕入れてきたから、後で倉庫に直接運んでおくよ」


「マジで!?」

「マジか!?」


 彼ら上層部は俺のマジックバッグの存在を知っている所為か、どうやらかなり期待していたようだ。


 ただ他の学生たちの視線もある手前、この場では遠慮したいので、後でこっそり運び入れるとしよう。


「その代わり、日本の料理とか海産物があったら欲しい。俺たちがいる街は、川魚はあっても海は遠いからな」


「了解よ! しばらく居るんでしょう? 用意しておくから後で声を掛けるわ!」


 料理班の責任者でもある中野は用件を話すと、すぐに離れていった。どうやら仕事の最中だったようだ。


「矢野さん、少し話したい事があるのだが、時間は空いているだろうか?」


 やけに畏まった物言いだが、花木はこれがデフォルトなので気にしない事にした。最初の出会いこそ色々あったが、今では俺も信用している青年だ。


 佐瀬と名波は久しぶりに会った先輩の会沢や、他の学生たちとお喋りがしたいようで、ここで一旦別れる事にした。リンクス一家とゲン爺も別行動だ。鹿江町の住人とは何度も交流しているらしく、割とフレンドリーなようだ。



 俺と花木、それと浜岡の三人だけが新たに建てられた小屋に入る。どうやらここが花木の自宅らしい。


「こんな事を相談するのは筋違いかもしれないが、実は最近鹿江町の方で——」


「——もしかして、体育会系サークル連中の件か?」


「知っていたんですか!?」


「ああ、軽く話を聞いただけだけどな」


 俺は改めて花木たちからも事情を聴いたが、概ねダリウスから聞いた通りの内容だ。


 ただ意外だったのは、彼らはこっちの拠点にも顔を出しているそうだ。特に何か明確な悪さをする訳ではないらしいのだが、簡潔に言うと態度が厚かましいらしい。


 確かに彼らは日本時代では顔馴染みで、同じ大学の学友ではあったが、それを理由に食材や資源を融通して欲しいと一方的に要求してくるのだ。


 勿論対価も無しにそんな話は呑めないので断っているのだが、それなら自分たちがこの拠点の警備や町への買い物の際、護衛に付いてやると交渉を持ち掛けたらしい。


「連中の実力は高いのか?」


「ピンキリだそうだ。乃木より強い奴はいないらしいが、数は向こうの方が上だな」


 俺の問いに答えたのは浜岡だ。


 この場合の数というのは、戦える人数という意味だ。


 文化系サークルがメインのコミュニティは争いごとが苦手な者が多く、戦いを得意とする学生の数は限られている。


 一方体育会系はやはり運動が得意な者が多いそうで、ステータスも軒並み高いらしい。


 ただし乃木だけは突出しているらしく、彼の目の前では連中も大人しくなるそうだ。


(乃木ぃ、どんだけ強くなってるんだ?)


 現在鑑定持ちはこの拠点内に存在しない。唯一の鑑定持ちだった斎藤がやらかして追放となったからだ。


 ……俺、追放した斎藤に「ざまぁ」されないよな?


 ただ鹿江町にはシグネ以外にも鑑定持ちはいたので、町に出向いた際には、その都度鑑定してもらっていたらしい。


 その鑑定士も体育会系コミュの存在は気になるのか、町に来た際にステータスを盗み見ては、こっそり乃木たちに教えていたのだそうだ。


「……成程。状況は分かったけど、俺にどうして欲しいんだ?」


「一度彼らと話し合いたい。その場に矢野さんたちも同席して欲しいんだ」


 戻って早々、厄介事の匂いがした。






――女神アリスと地球の代表者たちによるQ&A情報――


Q:これはお勧めという異世界の観光地を教えてください!

A:……カノーム大陸の無限断崖

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