第161話 新たなA級冒険者

 王都に行くのは明日となり、本日はブルタークでの休養日となった。


 俺は暫く留守にしていたギルド支部へ顔を見せに行くと、そこで懐かしい者たちと出会った。


「あ、teamコココ」

「「「雷名の炎!!」」」


 相変わらず息ピッタリな、マルコ、コランコ、ココナの三人組が勢ぞろいだ。


 ただ、今日はその三人だけでなく、他に二名ほど知らない冒険者が一緒にいた。


「ん? 何か取り込み中だったか?」

「ああ、こいつらか。紹介するぜ! この二人は新たにパーティに加わった新メンバーだ!」

「宜しくお願いします!」

「どうも、はじめまして~」


 ご丁寧に頭を下げたのは佐瀬たちと同じくらいの年齢である男女の若者であった。


「え? あ、はい。これはご丁寧に……宜しく」


 なんと言う事だろうか!? 新たにメンバーが増えるという事は、もうコココがコココじゃなくなるという事か!?


 しかも、女の子の方は髪を染めているようだが、男の方は黒髪で、恐らく二人とも日本人だと思われる。


(だって、明らかにそれっぽい装いだし……)


 一見は冒険者っぽい格好だが、靴は地球産のスニーカーっぽいし、インナーもこの世界の生地ではない上品質なもののように思えた。


「俺はイッシン。パーティ“白鹿の旅人”のリーダーをしている」

「はい。聞いてます! B級冒険者なんですよね?」

「私たちより若そうなのに……凄いです!」


 見た目は高校生くらいに見えてしまう俺だが、ランクが上という事で二人は敬語を使ってくれている。そこら辺もなんだか日本人っぽいな。


「君たちはココ……じゃない、“雷名の炎”に入ったという事は、ランクはC辺りかな?」


 コココと言いかけたら、三人の目が怖かったので俺は言い直した。


 確かマルコたちはまだC級だったはずだ。あまり離れたランク同士でパーティを組むのは稀なのだ。


「まだDに成り立てですけど……先輩方にはお世話になってます!」

「ココナ先輩たちはもうすぐB級に昇級するみたいなので、足を引っ張らないよう頑張ってます!」


 なんとも初々しい二人だろうか。


「イッシン、この二人は逸材だぜ? まだ経験不足だが、戦力的にはBに近い」

「ええ。魔法にスキルも優秀で、将来楽しみですね」

「誰かさんと違って、中級魔法もすぐ覚えちゃったしね!」


「へぇ……」


 どうやらかなりの大型新人をゲットできたようだ。マルコたちもいよいよB級が見えてきたようだし、これで一層このパーティは強くなる事だろう。


「しかし、そうか……。もうコココだなんて馬鹿には出来ないなぁ」

「お、おうよ……!」


 ん? どうもマルコの様子がおかしい。てっきりまた怒られると思ったのだが……


「コココって何です?」


 さっきから気になっていたのか、女の子の方が尋ねてきた。マルコたちは答えにくそうにしていたので、俺から説明した。


「ああ。マルコ、コランコ、ココナと三人とも“コ”が多いだろう? だからteamコココ」

「あー! 確かにそうですね! 私たちも“コ”が付くし、言われてみたらその通りかも!」


 得心がいったのか、女の子は感心していた。


「んん? ちなみに、二人の名前は……?」

「あ! こりゃあ失礼しました! 私の名前は近藤心海こんどうここみです!」

「僕は九重浩太ここのえこうたです。もしかして先輩方……僕らの名前に“コ”が付いてるから誘ったんですか?」


 まさかの衝撃的事実!


(コがめっちゃ増えてるやん!?)


 まさかの倍になっていた。人数的割合で考えると、寧ろ余計にコが侵食していた。


「ば、馬鹿野郎! そんな訳あるか!?」

「た、偶々ですよ! 本当に偶然なんです!!」

「アンタがteamコココなんて言うから、なんか変な呪いでも掛かったのよ!」


「え? 俺の所為!? 冤罪だ、teamコココココ」

「「「誰がコココココじゃ!?」」」


 相変わらず愉快な三人であった。




「おう! 何騒いでんだ、お前ら?」

「あ、ギルド長」

「お久しぶりです」


 ギルド内で騒いでいたらハワードギルド長がやってきた。


「マルコ! もう次くらいの依頼達成でお前らもB級だ。さっさと上がっちまえよ!」

「おうよ! ハワードさん!」


 本当に昇級間近だったらしい。これでまた一つ、上級冒険者パーティが誕生することになる。


「それとイッシン。お前ら“白鹿の旅人”はA級昇級だ! おめでとさん!」

「え? ……あ! そうか!」


 そういえば、俺たちの昇級はほぼ確定であったとサンクトランドのギルド長が言っていたのを失念していた。盗賊騒動の後、面倒事は御免だったので、報酬を受け取り次第、さっさと島を抜け出してきたのだ。


「マジか!? やったなぁ!!」

「イッシンさんも遂にA級ですか。おめでとうございます!」

「随分先を行かれたけど……アンタなら納得よね。おめでと!」


 突然の昇級に、マルコたちだけでなく、その場に居合わせた冒険者たちから祝福された。


(あー、皆でギルドに来るんだったなぁ……)


 久しぶりのA級冒険者誕生に、ギルドは大騒ぎであった。ただ、俺一人だけが讃えられ、この場に居ない三人に対して少しだけ申し訳ない気持ちになってしまう。


「イッシン、冒険者証を渡せ。A級仕様に切り替えておく」

「あ、そっか。ちょっと待っててください」


 それがあったか。


 という事で、スマホで三人に声を掛けて呼んでみた。やはり、この記念すべき日は四人揃って迎えたい。


 佐瀬たちがギルドに姿を見せると、冒険者たちは一層盛り上がりを見せた。


「姉御ー! A級昇級おめでとうございます!」

「姉御って言うな!」


「ルミちゃんにシグネちゃんもおめでとう!」

「えへへぇ、どうもどうも」

「いやいやぁ!」


「王国の新たなA級冒険者に乾杯!」

「“白鹿の旅人”に乾杯だー!」


 二階に併設されている酒場では主役の俺たちを差し置いて勝手に酒盛りを始めてしまった。


 冒険者証が更新されるまで、俺たちはギルド内で知人たちと話し込んでいた。


「師匠! おめでとっす!」

「おう! タカヒロたちもありがとな」


 以前、ちょっとだけ面倒を見た日本人冒険者たちも祝福してくれた。


「最近姿を見なかったっすけど、どこ行ってたんすか?」

「ちょっとな。半島の外に行ってたんだ」

「すげー!!」

「半島の外って……例の空飛ぶ乗り物っすか?」

「だな」


 俺たちがエアロカーを使っている事実は、この街の親しい者らや情報に詳しい者には既に知られてしまっている。偶に勘違い野郎もいて、俺たちをタクシー代わりに利用しようとする商人や冒険者なんかが寄ってくるが、そんな連中は適当にあしらっていた。


「もしかして、例のSSランクの魔物を倒したパーティってイッシン師匠たちの事っすか!?」

「……何の事だ?」


 え? もうここまで知れ渡ってんの?


 タカヒロに詳しく尋ねてみると、どうやら魔導電波を利用したネット掲示板に半島外の情報も入ってきているらしい。最近、魔導電波の出力も上がり、日本コミュニティだけでなく、半島付近に転移してきた外国人コミュにも利用され始めているみたいだ。


 ただ、新東京以外のコミュニティで未だにスマホなどのデバイスを利用できる者は極少数だったりする。大抵は既にバッテリー切れになっているからだ。


 それでも何人かの者らがネット環境を使える事に気付き始め、外との情報交換もされ始めている。俺たちがヒュドラを倒したダンジョンのある国、ロラード王国にも、アジア圏の転移者がいたらしい。


 その現地にいる者たちからのリークで、ヒュドラ討伐の際、SS級冒険者二名とB級冒険者四名が共闘したという情報をタカヒロは入手していた。大半の者はフェイク情報か、B級冒険者はサポートないしは荷物持ちだという認識であったが、俺たちの知人だけはそう思わなかったようだ。


 タカヒロは少なくとも俺たちの実力がA級並であることを知っているので、すぐにピンときたそうだ。


(ふむ、それくらいの流出なら今更問題ないな)


 そっちより気になるのは、海王リヴァイアサンがクレイヤードダンジョンにいるという情報の方である。これは完全にシグネのやらかしではあるが、公式発表はされていないので、ネット上ではフェイクだという意見が大勢を占めていた。


 それに万が一露見したところで、あのヒュドラを突破してまで悪さをするような連中が出る可能性は限りなく低い。仮に何処かのテロリストが9階層まで行ってダンジョンに不正を働かせたとしても、まっさきに死ぬのはその連中なのだ。


 SSランクを討伐できるような人材を捨て駒にするとは思えない。よって凄腕の破滅願望者でも現れない限りは、その危険性は排除してもいいだろう。


 だが、それはそれとして、シグネにはきつく言い含めておいた。



「よお! 将来のドラゴンスレイヤー! 更新、終わったぜ!」

「ハワードギルド長!」


 ここにも事情を知っている者がいた。


 俺たちはクレイム支部からの推薦もあってA級に昇級している。その実績内容も既に共有されている筈で、当然ギルド長という立場のハワードも、俺たちがSSランクのヒュドラを倒した事は知っていよう。


「こいつの更新作業なんて、少なくとも俺は初めてだな」


 ハワードは嬉しそうにそう呟くと、俺たち四人に黄金の冒険者証を手渡した。純金ではないようだが、多少は金も含まれているそうで派手なデザインだ。これがA級の証である。


「おお! 遂に……!」

「他人のなら何度か見たけれど……自分たちの証って思うと感慨深いわねぇ」


 何時もならデザインに文句を言う佐瀬であったが、やはりA級の証は特別に感じられるのであろう。


「あんまり重くないんだね。金はどのくらい含まれてるんだろう?」

「これ、売ったら幾らになるかな?」


 名波とシグネの発言にハワードは慌てた。


「ば、馬鹿野郎! 売ったら二度と再発行しねえからな! それと、金の含有量は微々たるもんだ。紛失時の再発行の場合、手数料の方が高くつくから、馬鹿な真似はよせよ!」

「あはは……冗談だって!」

「ジョーク、リトアニアジョーク」


 なんでも昔は金の含有量も多かったらしく、その欲に負けた冒険者が紛失と偽って金を売り、再発行を繰り返した事があったそうだ。


 それが発覚した男は冒険者資格をはく奪、更には詐欺罪で牢獄送りになったそうだ。それ以来、A級冒険者証に使用される金の量は随分と減らされたらしい。



「よーし! 今度はS級目指して頑張るぞー!」

「おおー!!」


 シグネと名波はやる気だが、俺は……どうだろう?


(正直、S級には魅力を感じないんだよなぁ……)


 ディオーナ婆さん曰く、S級にはギルドからの特別な計らいがある一方で、色々としがらみもあるらしい。例えばギルド総本部からの要請には極力従う必要がある。当然それを辞退する権利もあるのだが、依頼を断わり続けるとA級に戻されるそうだ。だったら初めからA級のままでもいいような気もする。


「ハワードさん。S級の昇級条件って何だ?」

「あー、S級も各支部からの推薦だな。ただ、A級とは違って何名以上って決まりはねえ。推薦された場合、ギルド総会議の議題に上がり、S級に相応しいかを議論する。大体が多数決だが、最終決定権はギルドマスターに委ねられているな」


 ギルドマスター……各支部のギルド長を束ねる冒険者ギルドのトップである。確か冒険者ギルドの総本山は、ここメルキア大陸ではなく、西にあるルルノア大陸に存在する筈だ。


「なんだ? 推薦して欲しいのか?」

「して欲しい!」

「いや、遠慮する」


 シグネと俺の台詞が重なった。


「ええ!? 推薦してもらえればいいのに……」

「うーん、どうも面倒そうなんだよなぁ……」


 シグネはSランクになりたいみたいだが、俺は気乗りしない。名波はシグネ派で佐瀬はどっちでもいいそうだ。


「ま、俺が推薦しなくても、他のギルド長が勝手にするんじゃねえのか?」

「げ!? そうくるかぁ……」


 ハワードの言う通り、下手をするとクレイム支部かサンクトランド支部のギルド長が動きかねない。だったら、ここはいつもお世話になっているハワードギルド長に手柄を立てさせるのもありなのか?



 結局、俺は折れて「好きにしてくれ」とだけ伝えておいた。


 ちなみにハワードギルド長は、レッカラ女史に怒られながらギルドの奥まで連れていかれた。どうやら先程のS級云々の詳細は機密事項だったらしい。冒険者の間では割と知られている話らしいが、ハワードはレッカラさんに説教されていた。


 ここのギルドは相変わらずであった。








 翌朝、遂に約束の日となったので、俺たちはエアロカーで王都まで飛んで来た。さすがに直接王都に着陸するのは問題があるので、王都近郊で降りて徒歩で第一区を目指した。


 その際、第三区と第二区の検問所で冒険者証を見せるとちょっとした騒ぎになった。


「な!? そ、その証は……!」

「A級冒険者なのか!?」


 黄金の冒険者証に兵士たちは驚いていた。


「なあ。これ……偽物なんじゃあ……」

「だな。さすがに若すぎるし……あんな連中見たこともない」


 俺たちは王都であまり活動した事がなく、知名度としては俺たちよりも“東方英傑”の四人の方が上だ。


 だが、それでも幾人かの兵士たちは俺の事を知っていた。


「馬鹿者ども! 彼はあの“ゴーレム使い”だぞ!」

「え? この少年が!? じゃあ、他の三人は……」

「“雷帝”に“暗弓”、“天駆”ですか!?」


 どうやら見た目やパーティ名は知らずとも、二つ名の方だけは彼らも知っていたようだ。


 王都では俺の“ゴーレム使い”の二つ名が最も有名らしく、佐瀬たちはそのおまけで知られていた。


「しかし、何時の間にA級に?」


 俺の素性を知っていたベテラン兵士が尋ねてきた。


「昨日昇級したばかりですね」

「ああ、どうりで……。我が王国から久方ぶりのA級誕生とは喜ばしい。正直言うと、私は“東方英傑”のファンなのだが、君たちの事も応援させてもらうよ」

「はは。俺も彼らには一目置いているので、切磋琢磨できたらと思います」


 リクたちならA級になるのは時間の問題だろう。彼らは現在、俺たちと同じように王国以外の支部で推薦を取れるよう武者修行しているようだ。なんでも一度、新東京にも訪れた事があるらしく、その時はネットやマスコミが大盛り上がりしたそうだ。



 そんな感じの騒ぎを検問所で起こしながらも、俺たちはようやく第一区の正門まで辿り着いた。ここから先は、例えA級冒険者証でも勝手に入る事は許可されていない。冒険者証とは全く別の許可証が必要なのだ。


 だが今回、俺はその許可証を持っていた。それは聖騎士団長ニコライから預かっていた特別な許可証である。これも数日間の制限はあるものの、それを門番に見せると彼らは顔色を変えた。


「“白鹿の旅人”の皆様ですね! 陛下から伺っております。どうぞお通り下さい!」

「ん? 陛下……?」


 待て、どういう事だ? 俺は一体何を渡された?


 改めて許可証を見ても、そこには聖騎士団長ニコライ・シューゲルの名において、数日間通行許可を……云々の件しか書かれていない。


「あのぉ……陛下とは?」

「自分には詳しい事は……。間もなく迎えの者と馬車が来ますので、詳細はその者に」

「あ、はい」


 駄目だ。もう逃げられそうにない。


『ちょっとイッシン! これ、どういうことなの!?』


 すかさず佐瀬が念話で尋ねてきた。


『あー、多分だけど、火竜退治の件が王様にも知られてんな。俺たちが来たら連れて来るように言われてたんだろう』


 当然と言えば当然か。


 今回、火竜討伐に際して俺は聖騎士団から人員を借り受ける立場なのだ。正確には共闘関係であり、対等な立場なのだが、やはり王国の精鋭を一時的に国外へ連れて行くには色々な許可が必要であるそうだ。


 例え聖騎士団長と言えども……いや、寧ろ団長という立場だからこそ、団員を外国へ派遣する際には王政府への裁可が必要らしいのだ。


 多分、その過程で王様の耳にも入ったのだろう。



 兵士の言葉通り、やたら豪華な馬車が迎えにやって来た。その馬車の中には見知った顔が乗っていた。


「一カ月ぶりだな、イッシン。サヤカにルミ、シグネとは随分久しぶりだ」

「ケイヤか!? なあ、陛下がどうって一体……」


 会って早々問い質した俺にケイヤは困った表情を浮かべていた。


「あー、すまない。色々尋ねたい事はあるだろうが、まずは馬車に乗ってくれ。あまりお待たせする訳にもいかないのでな」

「今、すごく不穏な言葉を聞いてしまったが……まぁ、分かった」


 はい、謁見確定でーす!


 俺たちは言われた通りに車内に乗り、馬車は王城を目指して進み始めた。


 馬車の中は広い六人乗り仕様で、その中にはケイヤだけでなく、もう一人女性が乗っていた。


「貴女は確か……」

「イザイラ・レイダースです。聖騎士団の団長付き副官を務めております」


 そう、確かニコライ団長の傍に居た女性士官だ。名前を聞いたのは今回が初めてである。


「時間も惜しいので、簡単にご説明致します。あなた方“白鹿の旅人”の四名には、これから国王陛下に拝謁して頂きます。その際、幾つか注意事項がございますので、それらを今から頭に叩き込んでください」

「ちょ、ちょっと待って下さい! 拝謁って……まずはその理由をお伺いしてもいいでしょうか?」


 さすがに理由も分からずに王様と会うなど、どこで地雷を踏むか分かったものではない。


 俺がそう尋ねると、イザイラさんとケイヤは二人揃って困った顔をしていた。


「正直申し上げまして……明確な理由は分からないのです。本日は元々、そのような予定はなかったのですが、今朝方から急にそのような動きに転じまして……」


 どうりで二人がそんな顔をする筈だ。彼女らも突然の事態に巻き込まれた被害者なようだ。


「ただ、あなた方四人に加え、聖騎士団幹部と今回火竜討伐に選抜された三名には謁見の場に居合わせるようにとの勅命が下されております。私もその一人ですね」

「なるほど。火竜絡みなのは間違いない訳ですね?」

「恐らく……」


 ふむ、全く想像つかないが……激励の言葉でも頂けるのかな?


 いや、それだと急に謁見の場が設けられた理由にはならないか。


「ねえ、イッシン。多分、A級の件じゃないの?」

「むぅ……。そういうこと、か?」

「イッシン。A級とは何の事だ?」


 佐瀬の言葉が気になったケイヤが尋ねてきた。


「俺たち、昨日付けでA級に昇級したんだよ」

「本当か!? それはめでたいな!」

「驚きました……!」


 昇級の話をすると、ケイヤは自分の事の様に喜び祝福してくれた。イザイラさんも久方ぶりのA級誕生にビックリしていた。


「なるほど。間違いなくそれが原因でしょうね」

「けど、俺たちが昇級したのは昨日の事なんだけど、さすがに伝わるのが早過ぎないか?」

「一国の王ともなれば耳も良いのだ。イッシンたちの偉業をお聞きになられた陛下が興味を示されたのだろう」


 忘れていた。この世界にはスマホといった文明の利器ではなく、魔法やスキル、マジックアイテムによる超常的な力があるのだ。


 冒険者ギルドは何らかの手段を用いて各支部と連絡し合っていると噂されている。今回俺たちがA級に推薦されたスピードを省みても、長距離の伝達手段があるのは確実なのだ。


 それを一国の王が持っていない筈がない。



 このあと俺たちは、馬車の中でみっちり謁見の作法を叩き込まれた。

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