第158話 矢野一心の新魔法
クリスタルダンジョンに籠ってからの序盤は、速度重視で低階層を突破していき、中盤以降はポジションを変えて苦手分野を克服しようと努めた。
そして、改めて各々得意な戦闘スタイルに戻ってから一週間、ダンジョンに籠って計三週間が経過した俺たち“白鹿の旅人”は、遂にここの到達階層記録タイ、114階層を攻略し終えた。
「思ったより早かったね!」
「ああ、正直一カ月だと無理じゃないかと思っていたんだが……」
今、俺たちの目の前には115階層にあるボス部屋の扉があった。推定討伐難易度SSランクとされているここの守護者を倒せれば、クリスタルダンジョンの到達階層記録更新となる。
ここ最近の俺たちの成長速度は飛躍的に上がっていた。なにせ、この辺りはAランクどころか、Sランクの魔物も普通に徘徊しているヤバい階層だ。生き残る為には強くなるしかなかったのだ。
クラーケンが再び出てきた時には驚いたものだ。野生のそれよりかは随分と小ぶりだったが……タコ焼きの具がまた増えてしまった。
「みんな、準備はいいか?」
俺が尋ねると三人は無言で頷いた。
もうこちらがいちいち指示しなくても、やるべきことを各自が行っていた。既に補助魔法も掛けるだけ掛けてあるし、ゴーレム君もここ最近はずっと出しっぱなし状態だ。
「よし、行こう!」
守護部屋はかなりの広さがあり、その中央部分には地底湖が存在した。そこから一匹の大きなクラゲが姿を見せる。
その大クラゲは水面から顔を覗かせたと思うと、不思議な事に宙を泳ぎ始めた。
「出たな、カリブディス!」
それが奴の名だ。水の加護を持つSSランクの恐ろしい魔物である。
「開幕から行くわよ!」
相手が水なら佐瀬の出番だ。上級魔法【サンダーストーム】を初手から発動させた。
それと同時に向こうも魔法を使ってきた。水面がとてつもない勢いで溢れだし、大きな波が渦を巻きながら襲い掛かってきたのだ。
だが、一足早く佐瀬の【サンダーストーム】がカリブディスに直撃し、合計10発の落雷が奴の周辺もろとも蹂躙する。
「うわっ!? 波が向かって来るよ!」
相手の魔法も規模が大きく、相殺しきれなかった分がこちらに押し寄せてきた。
シグネは咄嗟に【エアーステップ】で身を躱し、俺と名波も敵の両側面へと離脱していた。
「佐瀬!? 大丈夫か!?」
「平気よ! ゴーレム君の上に飛び移ったから!」
ゴーレム君が飛行モードになっており、その上に彼女の姿があった。佐瀬は闘力も上げており、これくらいの回避行動は余裕で行えるようになったのだ。
「イッシン
「後衛タイプの魔物か! なら、近接戦闘の出番だな!」
「了解だよ!」
信じがたいことに、佐瀬の【サンダーストーム】を受けてもカリブディスは未だ健在であった。シグネの情報が正しければ、奴は魔力に自信があるらしく、恐らく魔法耐性もそれなりに高いのだろう。
「お先に行くよ! 【シャドーステップ】!」
名波は新たに覚えた闇魔法【シャドーステップ】を利用して大クラゲの真下に瞬間移動した。
正確に述べると【シャドーステップ】は瞬間移動ではなく、影から影へとショートワープ出来る珍しい魔法だ。水面に浮かんだ奴の影に移動した名波は【シャドーエッジ】を何本も投擲して大クラゲの能力を低下させた。
――――っ!?
真下に潜んでいる名波に気が付いたカリブディスはすかさず大渦を発生させるも、その時には既に名波はゴーレム君の影へと移動し終えていた。移動には若干のタイムラグが生じるが、初見ではまず見切られようもない一撃離脱戦法が取れるのだ。
相手の注意が下にいっている隙に、俺とシグネが大クラゲに斬りかかった。うにょうにょ生えている触手をシグネは次々と斬り落としていく。
「やっぱり脆いね!」
「ああ、これなら剣でも倒せそうだ!」
しかし、シグネは【エアーステップ】で足場があるから良いのだが、俺の方は大クラゲの頭部に飛び移って戦っていた。頭上にいる俺が煩わしかったのか、大クラゲは一度地底湖の中へ潜ってしまった。
「あ、やべ!?」
離脱しようとした俺だったが、奴の触手に足を掴まれてしまった。当然俺も奴と一緒に水の中へと引きずり込まれる。
『イッシン!?』
すかさず佐瀬が【テレパス】による念話で声を掛けてきた。
『大丈夫だ! 例の新魔法もある! 俺ごと撃て!』
『くっ! 相変わらず無茶するんだから……!』
それでも佐瀬は俺の言われた通りに容赦なく魔法を放った。というより、元々そのつもりだったのか、事前に準備していたようだ。
水中にいる大クラゲと俺の更に底から、青白い放電現象が起こり始めていた。
――――っ!?
まさか下から攻撃が来るとは思っていなかったのか、大クラゲは慌てて急浮上する。だがもう遅い。
放電現象が一際強くなった直後、雷撃が上へと放たれた。まるで地面から天に向かって逆さまに落雷したかのような現象だ。
これが佐瀬の新魔法、【リバースサンダー】である。
敵の真下から上に雷を放出するという、佐瀬の二つ目の上級魔法だ。
俺ごと大クラゲに魔法が直撃し、二人揃って地底湖の外へと放り出された。
「がはっ! いてて……初めて食らったけど、とんでもない威力だな……」
「イッシン!? アンタ、本当に大丈夫!?」
「ああ、大丈夫だ。もう治ってる」
いや、一瞬気を失いかけたかもしれないが、俺は予めチートヒールを
俺は自分のチート級回復能力をどうにか活かせないかと常々考えていた。傷を負う度に即座に癒していけば良いのだが、こんな無茶な戦い方をすれば何時かは身を亡ぼす日も近い。
そう考えた俺は、常に自分の身体にヒールをし続けられないかと挑んだのだ。
結論から言うと、それは不可能であった。俺が気を失うと魔法も維持できなくなるからだ。
そこで考え方を変えてみた。魔法の維持ではなくて予約、ストックできないかと思ったのだ。
性質は【セイントガード】に近い。あの防御魔法は俺が攻撃を受けた瞬間に自動で肩代わりしてくれるのだ。そこに俺の意識の有無は関係なかった。つまり、何かの条件と共に回復魔法を自動で発動できないかと考えたのだ。
そこでようやく編み出した新魔法が【リザーブヒール】だ。
俺が気を失うか致命的ダメージを受けた瞬間、オートでチートヒールが発動される。これで死にはしない限り、俺はほぼ無敵状態となった。
だが、その過程で俺は更にとんでもない魔法を生み出してしまった。
【リザーブリザレクション】【リザーブキュア】
…………名前から御察しの通り、蘇生魔法と状態回復魔法もストック出来てしまったのだ。
つまり、俺は死んでも自動で自身を蘇生出来てしまうのだ。
(怖すぎて、まだ一度も試していないけれど……)
しかし【リザーブヒール】と【リザーブキュア】は既に実証済みだ。しかもきちんと三種類とも魔法書に新魔法として記載されていた。
No.111 リザーブヒール 習得者:1名
No.112 リザーブリザレクション 習得者:1名
No.113 リザーブキュア 習得者:1名
(うん、もうこの魔法はあんまり迂闊に使えないな)
だが、この魔法は決して無敵ではない。その最大の欠点は、維持できる時間が限られている事にあった。
この新魔法はかなりの魔力量を要する上に、維持にも相当量の魔力が消費され続けている。俺の膨大な魔力量と魔力回復速度を以てしても、【リザーブリザレクション】単体だけなら維持できるのは半日が限界だ。
まぁ、これだけなら就寝中の間は持つので、寝込みを襲われても蘇生可能だ。
ちなみにヒールとキュアの方は何時間でもストック状態を維持できた。
それと、この予約魔法は自分にしか行えず、他人にはストックできない。これは恐らく、魔法を掛けた相手が何時気絶したのか、または致命傷を負ったのかなど、他人である俺にはその正確な判断ができない為、条件付け出来なかったのだと思われる。
あくまで自分専用の魔法なのだ。
そして、この魔法最大の欠点は……殺され方だ。
俺の蘇生魔法は遺体の状態が良好でないと相変わらず無効なので、例えば首を切断されたまま蘇生魔法が自動発動しても、首が外れたままなので再び即死してしまう。その為の【リザーブヒール】併用である。俺が死んだら先にチートヒールが発動して遺体を自動修復し、その後に蘇生魔法が行われるよう設定してある。
ただし、どうしようもない場合もある。例えば火竜のブレスのように一撃で灰にされてしまったら、回復も蘇生も不可能なのだ。
他にも水中や地中に閉じ込められるとか、ストックする暇もなく二度目も即死するなど、色々なケースが想定される。
【リザーブリザレクション】は決して無敵ではないのだ。
(それでも、だいぶ化物染みてるけどね……)
あのヒュドラ君よりも質が悪い存在となってしまった。
「あー! ドロップ品が沈んじゃう!」
宝箱はキチンと地底湖近くの地面に出現してくれたが、カリブディスの消えた場所に出現した魔石とドロップ品がどうやら地底湖の中に沈んで行ってしまったようだ。
慌ててシグネが飛び込む。あの子には【水泳】スキルがあるし、予め水中活動も可能なように【アクアプロテクション】も全員に掛かった状態だから問題ないだろう。
「さてさて、お宝は……これ、なんだろう?」
「マジックアイテムかしら?」
宝箱の中を覗くと、そこには小さなアクセサリーが入っていた。一見、両耳に着けるイヤリングの様にも見える。その一対の装飾品はそれぞれ小さな鎖のような先に、まるで鏃のような物が取り付けられていた。しかもその鏃同士が磁石のようにくっついていたのだ。
「あれ? 磁石じゃないのかな? 簡単に外れたよ」
「でも、お互い引き合ってるように見えるわね」
名波がその二つの装飾品を引き離すと、鏃は重力を無視して互いの方へ引き寄せ合うかのように真横に浮かび上がった。そこはまるで磁石のようだが、鉄などには一切反応を見せず、ただお互いの鏃のある方向を指し示すだけのようだ。磁力の様に引き合う力は無いようだが、どれだけ距離を離しても互いの方向を正確に指してくるのだ。
「不思議ねぇ……」
「あ、丁度良い所にシグネちゃんが戻って来たよ。鑑定してもらおう!」
無事、水中からドロップ品を回収してきたびしょ濡れのシグネが近づいて来た。
「あー! 私を差し置いて、もう宝箱開けてるしー!!」
「あはは、ごめん、ごめん。それよりコレ、鑑定して!」
「もう! ルミ
文句を言いつつもシグネはその不思議な一対の装飾品を鑑定した。
「“相愛の鎖”だって! お互いどんなに離れた場所でも、何処にいるのか教えてくれるマジックアイテムみたい」
「へぇ、なんかロマンチックねぇ」
「そう? なんか……重くね?」
常にパートナーに見張られているようで落ち着かないアイテムだと思うのは、男側だからだろうか?
「しかし……これ、使えるかもな」
「んん? 矢野君には誰かにあげる予定があるのかなぁ?」
「くしし!」
名波とシグネが何やら意味深な笑みを浮かべているが、生憎そういった用途ではない。
「これ、方位磁石代わりに使えないかな? 例えばブルタークの何処かに片方を保管しておけば、エアロカーで海洋上を彷徨っても必ず戻れるだろう?」
「「あ!」」
「なるほどー!」
更にもう一組あれば、他の大陸に渡れた後に、その片割れを置いておけばいいのだ。次回からはスムーズに大陸間を行き来できる筈だ。
「これ、もっと欲しいな。何処かで売ってないかな……」
「そういえば、ブルタークでは年に数回オークションが行われるそうよ」
「何それ? 初耳なんだけど!?」
どうやら佐瀬はブルタークの装飾店などの常連らしく、そこのオーナーから世間話でそんな話を聞いていたようだ。
「オークションかぁ。マジックアイテムなんかもあるのかな?」
「そうみたい。他にも名画とか骨董品なんかも出品されるみたいだけど……」
正直、芸術方面にはあんまり興味ないな。飾る家も無いし……
「そろそろ約束の一カ月だし、王都に戻るんでしょう? その時ついでにオークションも調べてみましょうよ!」
「……だな。よし! 久しぶりに地上へ戻るか!」
「その前にステータスチェックしようよ! 私、今回の戦闘で新しい魔法覚えたんだよ!」
「え? マジ!?」
俺たちはボス部屋を後にすると、転移陣で地上に戻る前にシグネの鑑定でステータスを確認してもらった。
名前:矢野 一心 ※( )内がスキルで偽装中
種族:人族
年齢:30才
闘力:64,721
魔力:999,999
所持スキル 【木工】【回復魔法】【剣使い】【スラッシュ】UP【捜索】【怪力】UP【限界突破】【アーマー】【タフネス】 (【自動翻訳】【偽装Ⅱ】【属性耐性(雷)】【属性耐性(闇)】【毒耐性】NEW【属性耐性(火)】NEW【麻痺耐性】)
以下、自己申告
習得魔法 【ヒール】【キュア】【リザレクション】【ライト】【レイ】【ファイア】【ウォーター】【ライトニング】【ストーンバレット】【ウインドー】【セイントガード】【クリーニング】【ルイン】NEW【リザーブヒール】NEW【リザーブリザレクション】NEW【リザーブキュア】
名前:佐瀬 彩花 ※( )内がスキルで偽装中
種族:人族
年齢:20才
闘力:12,038
魔力:63,694
所持スキル 【雷魔法】【放出魔法】【魔法強化】【装飾】(【自動翻訳】【偽装Ⅱ】【魔法耐性】【属性耐性(闇)】【属性耐性(火)】NEW【属性耐性(水)】)
以下、自己申告
習得魔法 【ライトニング】【サンダー】【パラライズ】【テレパス】【サンダーボルト】【ライトニングエンチャント】【ウォーター】【サンダーバリアー】【コミュナス】【ウォーターバレット】【ウォーターヒール】【ウインドー】【ゲイル】【ライトニングアロー】【マナウェーブ】【アイスバリアー】【ストーム】【ヒール】【アクアプロテクション】【ウォーターキュア】【サイレント】【アイスニードル】【フォギー】【クリーニング】【ミドルヒール】【キュア】【サンダーストーム】NEW【アイスウォール】NEW【リバースサンダー】
名前:名波 留美 ※( )内がスキルで偽装中
種族:人族
年齢:21才
闘力:54,122
魔力:6,848
所持スキル 【感知】【短剣使い】【双剣使い】【俊足】【弓使い】【的中】【スラッシュ】【捜索】【ショット】UP【パリィ】【限界突破】【闇魔法】【シールド】(【自動翻訳】【気配遮断】【偽装Ⅱ】【属性耐性(闇)】【魔法耐性】【五感強化】NEW【属性耐性(火)】)
以下、自己申告
習得魔法 【ルイン】NEW【シャドーエッジ】NEW【ダークアイ】NEW【ブラインド】NEW【シャドーステップ】
名前:シグネ リンクス ※( )内がスキルで偽装中
種族:人族
年齢:15才
闘力:39,785
魔力:33,005
所持スキル 【解析】(UP【看破】に偽装)【風魔法】【短剣】【スラスト】【剣】【魔法付与】【カリスマ】【ブリーダー】【自然】【スラッシュ】【農耕】【俊足】【水泳】NEW【採掘】(【自動翻訳】【偽装Ⅱ】【属性耐性(闇)】【属性耐性(雷)】NEW【属性耐性(火)】)
以下、自己申告
習得魔法 【ウインドー】【ゲイル】【ウインドーバリアー】【サイレント】【エアーステップ】【ウォーター】【ウインドーカッター】【ストーム】【シルフィーム】【ウインドープロテクション】【ゲイルアロー】【ファイア】【ブレイズ】NEW【ファイアーアロー】NEW【ファイアーソード】NEW【フレイムバリアー】NEW【フロート】
以上だ。
全体的に闘力・魔力が倍増していた。散々Sランクの魔物と戦闘してきた所為だろう。
俺は新回復魔法を三種覚えただけでなく、スキル【麻痺耐性】を修得した。佐瀬の魔法【パラライズ】もほとんど効かなくなったが、無効ではないらしい。すぐにキュアで回復するから、俺にとっては無効みたいなものだが……
それとスキル【身体強化】を【限界突破】に、【探査】を【捜索】に進化させた。
これにより身体能力が更に向上し、索敵能力もだいぶ上がった。探索序盤は全く成長の無かった俺も一安心である。
佐瀬はスキルに関しては【属性耐性(水)】を得たのみだ。ダンジョン攻略序盤、彼女は前衛として俺たちの盾となっていた。ここは水棲の魔物が多いので、自然と耐性スキルを身に着けたのだろう。
あとは水の中級魔法【アイスウォール】と雷の上級魔法【リバースサンダー】を修得している。二つ目の上級魔法もかなりの破壊力だが、地味に水属性の防御魔法を手に入れたのは大きい。【アイスウォール】は氷の壁を出現できるので、火竜相手には有効な防御魔法だろう。
名波は闘力こそ俺に後れを取ったが、その分魔力が凄まじい成長を見せていた。それと闇魔法も新たに四つも修得している。
更に【カウンター】スキルを【パリィ】に変化させていた。相手の攻撃時に、瞬間的に反応速度が上昇する防御系スキルらしいが、どうも自動発動の適性スキルではなく、任意発動の技能スキルらしいので、使用するタイミングがかなり難しいそうだ。
最後にシグネだが、今回一番の功労者と言ってもいい。彼女が火魔法を味方に撃ち続けたり、多用したことによって、火竜戦で重要な【属性耐性(火)】スキルを全員身に着けられたからだ。
更に耐火能力を一時的に上昇させる魔法【フレイムバリアー】も修得している。この二つだけでも、火竜戦における俺たちの生存率はかなり上がっただろう。
【フレイムバリアー】習得を目指している過程で【ファイアーアロー】と【ファイアーソード】も覚えている。シグネ的には炎の剣を生み出す【ファイアーソード】がお気に入りらしいが、単純な威力なら彼女の愛刀“鹿角“の方が上だ。
それと、シグネの鑑定スキルが遂に第三段階に進化した。
【解析】スキルが【看破】になっていたのだ。スキルが第三段階までに進化したのは俺たちの中ではシグネが初となる。というか、そこまでスキルを進化させたという話を俺は、噂話や伝説くらいでしか聞いた事がない。
(これ、結構ヤバいスキルなんじゃぁ……)
スキルが【看破】になり、何が変わったかというと、まず【偽装Ⅱ】スキルによる偽装が効かなくなった。俺たちのスキルも丸見え状態らしい。
それと名前や年齢、種族以外にも、生年月日や血液型、性別に持病なんかも見抜けてしまうそうだ。
「それ、個人情報が筒抜けじゃない!?」
「ふむふむ、サヤカ
「――――っ!?」
「あわわ! じょ、冗談だよ! そこまでは視えないから、雷を出さないでぇ!」
さすがにスリーサイズは視れないらしい。
だが驚いた事に、人だけでなく魔物のステータスも詳細が視えるようになったそうだ。
魔物の闘力に魔力、それとどんな加護を持つかも分かるらしい。先の戦闘もそのお陰でカリュブディスの戦闘スタイルをいち早く見抜けたのだ。
闘力・魔力の数値も最大6桁まで視れるようになったのだが……
「イッシンの魔力……どんだけなのよ……」
「ううむ、まだ底が見えないとは……」
俺の数値は相変わらずのカンスト状態、魔力999,999であった。
(しかし【看破】でもカンストということは……鑑定スキルはもしかして、更に先が存在するのか?)
そんな話は噂話ですらも聞いた事がないのだが……
それとシグネはまた妙なスキルを入手していた。
「何故に【採掘】?」
「なんでだろう? ダンジョン内にあるクリスタルを引っこ抜こうとしたからかなぁ?」
残念ながらダンジョン内では壁破壊が出来ないので、【採掘】スキルは全くの無意味なのだ。ガチの鉱山にでも行くしかあるまい。
「私、鉱山奴隷から成り上がるよ!!」
最近、奴隷スタートの成り上がり物は廃れているような気もする。
「そういえば、新たに魔法覚えたって言ってたけど、どういう魔法?」
「んとね。【フロート】って魔法だよ。ほら!」
名波の問いに答えたシグネは、突如自身の身体を宙に浮かせた。
「え? これ、本当に飛んでるの? エアーステップじゃなくて?」
「うん! でも、飛んでるんじゃなくて、浮いてるだけだね」
「どのくらいの高さまで浮けるの?」
「んー、これが限界かなぁ……」
俺の頭より高い位置までは浮けるらしいが、それ以上は無理なようだ。
「これじゃあ街の外壁を飛び越えたりとかは無理なのね」
「駄目っぽいね」
「……というか、私たちの闘力なら普通に飛び越えられるんじゃない?」
佐瀬の言う通り、多分できると思う……
それにしても俺たちもだいぶ人間離れしてきた気がする。
しかも、この世界に来てまだ二年も経過していないのだ。他の者と比べると明らかに異常な成長スピードだ。
最初は地球人だけの特典かとも思ったが、どうやらそういう訳ではなさそうだ。恐らくだが、俺たちの探索や戦闘スタイルが要因だと思われる。
他の冒険者たちは、そもそもダンジョン内では寝泊りをしない。仕方なく野営する場面もあるが、ここのダンジョンのように近くに転移陣があれば一度町に帰るのが基本だ。
俺たちはマジックバッグの恩恵で食事に寝具、風呂、トイレなど、諸々の問題が解消されている。しかも、ゴーレム君というガードマンもいるのでダンジョン内でもスヤスヤ寝ていられるのだ。
その時点でも探索に当てられる時間がだいぶ違ってくる。
そして、最大の理由は俺のチートヒールや蘇生魔法の所為だろう。
普通の冒険者たちはしっかり安全マージンを取ってゆっくり探索し、徐々に戦う魔物の強さを上げていく。万が一強敵と当たったら撤退も視野に入れて行動しているだろう。
だが、俺たちは結構無茶をする。
いや、俺たちにとっては無茶ではないのだが、どんな怪我も治せて最悪死人までも生き返らせられる魔法がある事を知らない同業者から見れば、俺たちの探索は相当無謀なものに見えるのだろう。
結果、俺たちは他の冒険者たちよりも量と質、両方の面で高水準な探索を行っているのだ。そりゃあ、この短期間で強くもなるわけだ。
結局、俺の魔法は回復特化という結論に至ってしまったが、それこそが矢野一心最大の強みなのだから、今後もそっち方面で伸ばしていけばいい。
ただ、俺の回復魔法……おおっぴらに公表できないのだけが玉に瑕だ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
別作品
「ハードモードな異世界を征け!」
https://kakuyomu.jp/works/16818093072862247555
鉱山奴隷スタートの成り上がりストーリーです!
今夜21:00に更新予定で、本日から第四章に突入!
ぜひ一度お読みください!
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