第154話 上級魔法

 冒険者総出での祝賀会翌日は、丸一日休養日に当てた。二日酔い自体は【キュア】で改善できても、気持ちというのか多少の精神的怠さは残ったままだ。まさに場の雰囲気に酔うという言葉を実感できた気分だ。



 そして次の日、俺たちはカーター兄妹と別れた。二人は8階層攻略と9階層守護者の件で王都まで報告に行くそうだ。


「じゃあな四人共!」

「シグネちゃん、魔法を教えてくれてありがとね」


 あっさりしたお別れだったが、冒険者なんてそんなものだ。


 リンネもこの短期間でシグネから教わった【エアーステップ】を習得していた。恐らく習得の条件はほぼ達していたのだろう。あとはその魔法を実際に生で見続けた事によってすぐに覚えたのだと思われる。


 俺も最下級の基本魔法は全て習得していた。リンネと同じように誰かの魔法を実際に見た後で習得できた場面が多かったのだ。その辺りにも魔法習得を早める秘訣があるのかもしれない。


 そして、その恩恵はリンネだけでなく、佐瀬にも与えられていた。




「え? 上級魔法が使えるようになった?」

「うん、多分できると思う……」


 今なら雷属性の上級魔法を撃てそうだと佐瀬が申告してきたのだ。ただ、いくら何でも町中でぶっ放す訳にはいかないので、彼女もまだ試していないらしい。


「それじゃあ、どこか人気のない場所見つけて魔法を試そうよ!」


 そう提案したのは、念願の魔法を習得した名波だ。彼女も魔法を撃ちたくてうずうずしていたようだ。



 そこで俺たちはカーター兄妹と別れた後、エアロカーで少し東に進み、誰もいない場所を見つけて試し撃ちをすることになった。




「じゃあ、まずは私からいくね! ……【ルイン】!」


 名波の放った闇属性の最下級魔法ルインは、黒い魔弾を飛ばす魔法だ。速度は中々だが、威力はそんなにない。それ故俺も滅多にルインは使わなかった。


(光の加護持ち相手には効きそうだけど……いないんだよなぁ)


 多分今まで遭遇した魔物の中だと、光の加護持ちはペガサスとアラクネくらいだと思う。


「うーん、弱そうだね……」


 シグネが火の玉直球な感想を述べた。


「えー!? そうかなぁ……」

「ねえ、ルミねえ! 私に撃ってみてよ!」

「大丈夫? 私の魔法で死んじゃわない?」


 うん、それは絶対にないと思う。


「じゃあ行くよ……【ルイン】!」


 シグネに放たれた黒の魔弾は彼女に直撃してすぐに霧散した。


「ええ!? そんなに威力低いの? この魔法……」

「だって最下級魔法だし魔力量も低いからじゃないかな?」

「その内きっと強い魔法も覚えるわよ!」


 名波は四人の中で一番魔力が低い。しかも、俺たち全員が【属性耐性(闇)】スキルを所持しているので効かなくて当然なのだ。基本的に魔力量が多い相手には魔法が利き辛くなる。


 その点でいうと俺の膨大な魔力量を計算すると、もっと魔法攻撃を防げても良いような気がするのだが、魔法をレジストするのは魔力量以外に別の要素も必要なのかもしれない。


「うー、みんな闇の耐性あるから、実験にならないよぉ」


 名波も同じ考えに至ったようだが、何か物騒な発言をしている気もする。


 すると、そこへタイミングよく実験体が現れた。


「あー! あそこ、ゴブリンがいるよ!」


 シグネが指差した直後、名波が恐ろしい速度でゴブリンに迫ると、ターゲットの頭部に掌をかざした。


「――【ルイン】!」


 ―――っ!?


 通りかかったゴブリンは悲鳴を上げる間もなく頭部を吹き飛ばされた。


(憐れゴブリン……)


 初めて魔物相手に魔法を放った名波は満足げな顔をしていた。


「うん、雑魚相手には十分通用するね!」


 そりゃあそうだ。いくら俺たち四人の中で一番魔力が低いと言っても、彼女の魔力量は1,000を軽く超えているのだ。一般的な魔法使いが大体100スタートなので、彼女は駆け出し魔法使いよりも魔力量が十倍優れているのだ。


「魔法を使う頻度を増やせば、その分魔力量も増えると思うぞ」

「分かった! 今度から魔法のみ使うね!」


 雑魚相手なら構わないけれど、強敵相手でそれをされると戦力外通告を出さざるを得ない。


 まぁ、今は本人も魔法を使いたくて堪らないようだし、当分の間は好きにさせてみるか。




 気を取り直して、今度はいよいよ佐瀬の上級魔法を試す番である。


「どんな魔法を覚えたんだ?」

「ううん、まだ覚えていないというか……何となく撃てそうって感覚だけあるのよ」


 どうやらまだ習得には至っていない様で、言っている本人も少し困惑気味である。


 とにかく実際にチャレンジしてもらうことにした。


「…………ええと……こうかしら?」


 何もない更地に手を向けて佐瀬は魔法を発動させた。その瞬間、激しい光が何度も周囲を照らし、遅れて複数回の轟音を響かせた。


「うわっ! まぶしっ!」

「目がー! 目がー!」

「鼓膜が破けるぅ!?」


 俺は咄嗟に顔を腕で隠して助かったが、ガン見していたシグネは転げまわり、人一倍五感の強い名波は悶え苦しんんでいた。


 俺は急いで二人にヒールを施し、その後ようやく魔法の着弾地点を観測した。


「うわっ、地面が真っ黒じゃん!?」

「これ、火属性の魔法じゃないの?」

「ううん、雷の魔法の筈だけど……」

「急いで消火しないと……!」


 付近に生えていた草が燃えていた。慌てて【ウォーター】で消火を試みるも、思ったより火が消えてくれない。


「え? これまさか、雷属性で発生した火だから消えづらいのか!?」


 驚きの新事実、水属性は火属性に対して有利だが雷属性には弱い。つまり雷の魔法で発生した火は雷属性扱いなのだ。


(ええい、まどろっこしい!)


 仕方がないのでマジックバッグに収納していた水で消火する。


「今の魔法は一体何だ?」

「……まだ魔法名が分からないの」


 さっきの魔法は広範囲に落雷を発生させる魔法だと思われるが、俺も目を隠してしまったので詳細が分からない。


 それは佐瀬自身も同じようで、しかも未だに完全な習得には至っていない様子だ。



 そこで俺たちは秘密兵器を装着し、再度魔法の試射を行う事になった。


「……それじゃあ、行くわよ?」


 サングラスを掛けた佐瀬が尋ねる。


「いいか? 今度はもっと遠くにだぞ?」

「耳を塞いだから大丈夫!」

「消火の準備もOK!」


 俺たち三人もサングラスを掛けて耳を塞ぎ準備万端だ。


「…………ハアッ!」


 気合を込めて佐瀬が魔法を放つと、かなり遠くの場所に複数の雷が何度も襲い掛かった。合計10回ほどの落雷に俺たちは唖然としていた。


「うわぁ、さっきのはあれを至近距離で見ていたのか……」

「範囲も凄いけど距離!?」

「あんな遠くに魔法って放てるんだねぇ……」


 射出系の魔法でも、あそこまではなかなか威力を維持できないと思う。威力・射程・範囲・速度と、どれをとっても一級品の魔法だ。


 欠点を上げるとしたら、至近距離で放つと味方を巻き込む恐れがあることだろうか。



 見事魔法を放ち終えた佐瀬が満面の笑みを浮かべながら戻って来た。


「今ので完璧に習得できたわ! 【サンダーストーム】って言うらしいの」

「やっぱりそれか……」

「その魔法って確か六人くらいしか習得していない魔法だったよね?」


 名波の言葉を聞いた俺は慌ててマジックバッグから魔法書を取り出して確認した。


「……あ、習得人数が七名に増えてる」

「すごーい!」


 この世で六人しかいない魔法を習得した佐瀬に驚くべきか、こんなおっかない魔法をあと六人も使える者がいるという事実の方に驚くべきか……



 ただこの魔法、かなりの魔力量を消費する様で、MAX状態でも三発が限界と言っていた。佐瀬の魔力回復量もそこそこある方なので、少し休めば問題ないだろう。




 良い機会なので、改めてシグネにメンバー全員の鑑定をして貰った。






名前:矢野 一心 ※( )内がスキルで偽装中


種族:人族

年齢:30才


闘力:24,098

魔力:99,999


所持スキル 【木工】【回復魔法】【剣使い】【スラッシュ】【探知】【怪力】【身体強化】UP【アーマー】UP【タフネス】 (【自動翻訳】【偽装Ⅱ】【属性耐性(雷)】【属性耐性(闇)】NEW【毒耐性】)


以下、自己申告

習得魔法 【ヒール】【キュア】【リザレクション】【ライト】【レイ】【ファイア】【ウォーター】【ライトニング】【ストーンバレット】【ウインドー】【セイントガード】【クリーニング】【ルイン】






名前:佐瀬 彩花 ※( )内がスキルで偽装中


種族:人族

年齢:20才


闘力:5,818

魔力:39,590


所持スキル 【雷魔法】【放出魔法】【魔法強化】NEW【装飾】(【自動翻訳】UP【偽装Ⅱ】【魔法耐性】【属性耐性(闇)】NEW【属性耐性(火)】)


以下、自己申告

習得魔法 【ライトニング】【サンダー】【パラライズ】【テレパス】【サンダーボルト】【ライトニングエンチャント】【ウォーター】【サンダーバリアー】【コミュナス】【ウォーターバレット】【ウォーターヒール】【ウインドー】【ゲイル】【ライトニングアロー】【マナウェーブ】【アイスバリアー】【ストーム】【ヒール】【アクアプロテクション】【ウォーターキュア】【サイレント】【アイスニードル】【フォギー】【クリーニング】NEW【ミドルヒール】NEW【キュア】NEW【サンダーストーム】






名前:名波 留美 ※( )内がスキルで偽装中


種族:人族

年齢:20才


闘力:25,305

魔力:1,724


所持スキル 【自動翻訳】【感知】【短剣使い】【双剣使い】【俊足】【弓使い】【的中】【スラッシュ】【捜索】【ショット】【カウンター】【限界突破】NEW【闇魔法】NEW【シールド】(【気配遮断】【偽装Ⅱ】【属性耐性(闇)】【魔法耐性】【五感強化】)


以下、自己申告

習得魔法 NEW【ルイン】






名前:シグネ リンクス ※( )内がスキルで偽装中


種族:人族

年齢:15才


闘力:17,007

魔力:15,443


所持スキル 【解析】【風魔法】【短剣】【スラスト】【剣】【魔法付与】【カリスマ】【ブリーダー】【自然】【スラッシュ】【農耕】UP【俊足】NEW【水泳】(【自動翻訳】UP【偽装Ⅱ】【属性耐性(闇)】【属性耐性(雷)】)


以下、自己申告

習得魔法 【ウインドー】【ゲイル】【ウインドーバリアー】【サイレント】【エアーステップ】【ウォーター】【ウインドーカッター】【ストーム】【シルフィーム】【ウインドープロテクション】【ゲイルアロー】【ファイア】NEW【ブレイズ】




 以上の鑑定結果となった。




 まず俺のスキルが二つ進化し、新たなスキルも取得した。


【シールド】スキルが【アーマー】になり、展開できる防御シールドが全身を覆う形になったのだ。【セイントガード】とほぼ同じ効果だが、【アーマー】の方が外側の防御壁で、【セイントガード】の方が内側の防御膜といったイメージだ。


 あと【体力】スキルが【タフネス】に進化していた。多分、聖女ノーヤの時に四六時中働きっぱなしだったのが功を奏したと思われる。


 新たなスキルは【毒耐性】を得たが、これは完全にヒュドラ戦が影響していると思われる。まぁ、俺にはどんな状態異常も治してしまうチート【キュア】があるので無意味かもしれないが……今まで魔物の毒攻撃を無視し続けた結果だろう。


 なんか防御系のスキルばかりを習得してしまったが、高火力の火竜戦においては非常に助かる。


 ちなみに新たな魔法の習得は無かった。




 佐瀬はなんといっても上級魔法【サンダーストーム】を習得できたのが大きい。俺たちメンバーの中では神級の【リザレクション】を除くと、初の上級以上の魔法習得である。


 その威力は先の試し打ちで実証済みで、これも火竜戦において強い武器となる。


 佐瀬は他にも【ミドルヒール】と【キュア】の回復魔法を覚えていた。どうやら俺が長期不在中は彼女がヒーラーとして動いていたらしく、気が付いたら覚えていたそうだ。


 実は俺、未だ【ミドルヒール】を習得していなかったので、佐瀬に先を越された形となってしまった。まあ、回復性能はこちらが圧倒的に上なので、不要と言ってしまえばそれまでなのだが……



 更に佐瀬はスキルも複数習得していた。


【装飾】と【属性耐性(火)】である。


【装飾】は完全に職人型スキルだろうが、【属性耐性(火)】は火竜戦において絶対欲しいスキルだ。


(火属性の魔法に当たり続けていれば耐性付くかな?)


 時間が許すのなら挑戦してみたい。


 あとは【偽装Ⅰ】スキルを【偽装Ⅱ】に進化させていた。それはシグネも同様で、これでメンバー全員がマジックアイテム無しでステータスの偽造可能となった。




 名波は遂に念願の魔法を習得した。


 まだ闇属性最下級魔法の【ルイン】のみだが、メンバーで【闇魔法】の適性スキルを持つ者は名波だけだ。闇魔法は物騒な魔法も多いが、補助系の魔法もあると聞く。今後の活躍に期待だ。


 それと名波は【シールド】も習得していた。名波の戦闘スタイルはスピード型で基本的に相手の攻撃は避けるが、ヒュドラや火竜といった強敵相手だとそれも難しいだろう。そこでこの【シールド】スキルがあれば、一応の保険にはなる。即死さえ免れれば俺が回復するので問題ない。




 そして最後にシグネだが、彼女は偽装スキルの他に【走力】を【俊足】に進化させていた。あとは火属性下級魔法【ブレイズ】を習得したのと、何故か【水泳】スキルを身に着けていた。


「水泳? どっかでまた川にでも飛び込んでいたっけ?」

「多分、鹿江の海で泳いでいたからだよ!」


 温暖地域とはいえ冬だよ!?


 詳しく聞けば、俺が聖女ノーヤとして活動中に、シグネは乃木たちと一緒に素潜りで漁を楽しんでいたらしい。港町といっても漁業などはまだまだ原始的な部分が多いようだ。




 以上が俺たちの現戦力である。


 今回のダンジョンは激戦続きだったが、あまり長期間ダンジョンに籠っていた訳でもないし、こんなものだろう。


 寄り道とはなったがカーター兄妹とも知己を得て、レアな素材や魔石も手に入ったし上々の成果だ。



 ここからは本格的に対火竜戦に向けての強化合宿となる。


 一カ月後にはケイヤたち若手聖騎士団から選抜された火竜討伐メンバーも加わる予定だ。


 火竜退治は三カ月後を予定しているので、残り二カ月間でそのメンバーたちとも連携を強化して挑むつもりだ。ケイヤ並みの猛者が参加するとなると、こちらも負けてはいられない。




 鑑定で一通りの確認を終えた俺たちは、再びエアロカーで東進した。








 メルキア大陸には三大王国と称される巨大国家がある。


 その中でも一番と目される東部のバハームト王国には、魔法局と呼ばれる魔法の研究を専門とする部署が存在した。その研究施設の中でも一番厳重な部屋の中には、この世のあらゆる魔法が網羅されている超越エピック級マジックアイテム“魔法書”が保管されていた。


 その魔法書には、今まで世に出た魔法名だけでなく、現在の習得者人数も記載されており、その数は日々変動し続けている。その数を毎日決まった時間内にチェックして記録し続けるのも魔法局の仕事であった。


 本日も日課であるその作業をしていた文官が、ある変化に気が付いた。


「ん? これは…………」

「どうしたのだ?」


 何かあったのを察した上司が彼に尋ねた。


「はい。上級魔法【サンダーストーム】の人数が、一名増えているのです」


 昨日まで六名だった箇所が七名に増えていたのだ。


「ほお? 雷の上級魔法は使い手が少ないからなぁ。減ることはあっても増えるのは珍しい」

「特記事項として残しておきます」

「うむ。そうだな」


 六名しか習得していない魔法の使い手は大変貴重な存在だ。その使い手が増える事など、数年に一度あるかないかの出来事だ。


 そういった珍しい変化に関しては別枠で記録する事が定められていた。



 文官はキッチリその役目を果たし、雷の使い手が増えた事を書き記した。








 西バーニメル通商連合国のニューレ港に、ルルノア大陸からの大型定期船が入港した。凡そ三週間ぶりの陸地に、乗船客たちは腕を伸ばしながら降りて来た。


 そんな乗船客たちの中には奇妙な三人の姿があった。




「ここがメルキア大陸か」

「田舎だと聞いていたけれど、思ったより栄えているじゃない」


 まず、そう感想を述べたのは二人組の男女である。男の名前はマークスで女の方はクリス。二人とも金髪で歳は30代前後、男性の方は筋肉質で、女性の方も健康的な体型をしていた。


「ここはバーニメル半島の玄関口と称される港町ですからね。人口もかなり多いです。しかし、私が居た時よりも、かなり町が発展していますね……」


 そう案内する男の名はムニル。マークスよりも細身で歳も少しだけ若い茶髪の青年だが、彼の身体もしっかり鍛えられていた。


 それもその筈、この三人は何れも軍人であった。


 マークスとクリスは元アメリカ陸軍特殊部隊出身で、今は情報部に所属している。ムニルの方はこの世界の出身で、今はアレキア王国に所属する兵士であった。



 この世界リストアに一斉転移させられた後、米軍の大半を保有したままのアメリカ政府は、地元地域を支配していたアレキア王国と早期に手を結んでいた。


 最初こそ小さな諍いもあったが、今ではお互いに友好関係を築き、現在も協力体制は続けられている。


 そんな両国の軍属である三人には、とある重要なミッションが与えられていた。それは、ここメルキア大陸にいるであろう旧地球国家の調査だ。


 その中でも取り分け重要視されているのが、旧世界での敵性国家の動向と友好国の状況確認、それと外国に駐屯していたアメリカ軍の居場所を把握する事だ。


 度重なる人工衛星の打ち上げによる成果で、この半島内だけでも全部で四つの旧地球文明が関わったとされる都市の存在を確認する事ができた。ただ、宇宙からの観測はまだまだ拙く精度も大分荒い。軌道観測できる時間も僅かで、更なる情報を得る為にはこうやって現地に直接赴くしか方法が無いのだ。


 第一目標は港を保有していると思われる東にある都市だ。どうやらそこが一番発展しているそうなのだ。それに、もしそこが友好国で、その港を使用できるのだとしたら、今後は大陸間の移動もスムーズに行えるだろう。


 この世界では初となるアメリカの軍艦はもう間もなく完成を迎える。今後はわざわざ旧文明の木造船で海洋を渡るような危険な真似をせずに済むのだ。


 その使命を帯びた情報部二人の案内人として、昔バーニメル半島に住んでいたという王国兵ムニルを借り受けた。ただ、彼が半島に住んでいたのは十年以上も前の話らしく、今とは情勢も異なるそうだ。



「まずはどうする?」

「この国の通貨を得ましょう。十年前と変わっていなければ、半島内はガーディー通貨が使われているはずです」


 ここニューレだけならルルノア大陸の通貨も利用できるが、他の町や国ではまず使用できない。両替商に行って現地の通貨に替える必要があるのだ。



 三人は早速行動を開始した。

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