第139話 三人のS級冒険者

 氷蜘蛛と討伐隊が激突したであろう戦場跡から離脱して20分間、俺と冒険者三人組は森の中をずっと走り続けていた。


「はぁ、はぁ……」

「や、やるじゃねえか……嬢ちゃん……くっ!」


 20分程度ののマラソンなら闘力が高い者なら余裕だろうが、それがフル装備で、尚且つ足場の悪い森の中を全力疾走ともなると話は変わってくる。


 リーダー格っぽいお姉さんはまだまだ平気そうだが、他の二人は既にバテバテであった。


 俺はというと、この速度ならまだまだ余裕なので、汗一つ掻かずに彼女らと並走し続けていた。


「ん、体力には自信がある」

「はぁ、はぁ……うそぉ……」


 見た目が自分と同年代か、それより幼そうに見える俺に負けるのが悔しいのか、ニーアは息を切らしながらも必死に走り続けていた。


 その様子を苦笑いしながら見ていたお姉さんが声を掛けた。


「ここまで離れれば大丈夫ね。ちょっと休憩よ」


 俺よりニーアと大男の方が先に参ってしまったので、一同は一旦休憩を取ることにした。


 バテている二人は地面に腰を下ろし、汗を拭いて水分を取っていた。どうやらニーアは水魔法が使えるようで、自ら生み出した水を水筒に入れて飲んでいた。


「あなた、とんでもなくタフね」

「そっちも随分と余裕そう」

「ふふ、闘力には自信あるからね」


 成程、お姉さんは前衛タイプの冒険者みたいだ。帯剣しているので、剣士だと思われる。大男の方も戦士だろうが、重装備なのが長距離を走るのに仇となったようだ。


「自己紹介がまだだったわね。私はティッケ。あっちでダウンしているのがハンスとニーアよ」


 20代の美人お姉さんがティッケで、30代くらいの大男がハンス。そして10代後半の少女がニーアか。


「私たちはB級冒険者パーティ≪親緑の民≫よ。クラン≪滅竜の剣≫所属のね」


「しんりょくのたみ? めつりゅうのけん……」


 当然、半島内でしか活動していない俺にはどれも聞き慣れない名だ。


 だが、そんな俺の態度に三人は驚いた。


「え? もしかして、≪滅竜の剣≫を知らない?」

「結構有名なクランなんだけどなぁ……」

「ごめん。私はバーニメル半島から来たばかりだから……」

「「「バーニメル半島!?」」」


 またしても驚かれた。


「これはまた、随分と田舎から……いや、失礼」

「じゃあ、ナレナ国のダルトゥ港からここまで来たの?」


 ナレナ国……やはり知らない国だが、ダルトゥ港の方には聞き覚えがある。


(確か……ニューレ港からも定期便が出ている一番近い港……だったか?)


「ううん。私は自力でここまで来た」

「まさか山脈越えしたの!?」

「船じゃなく陸路かよ……」

「無茶するなぁ……」


 正確には空路なのだが、わざわざ訂正する必要は無いか。


 それより、こちらも自己紹介をしなければと思い、口を開こうとしたが、ティッケの腰辺りから何やら異音が聞こえてきた。


『————るか。————こっちは……』


 小さくて聞こえづらいが人の声みたいだ。まるで無線越しのような雑音がした。


 ティッケが腰のポーチから何かを取り出した。それは螺旋のある貝殻だった。音の発信源はどうやらその貝殻のようだ。


 彼女はそれを顔の横に当て、聞き耳を立てていた。その際、彼女の長い髪の隙間から少し尖った耳が露になる。


(耳が尖ってる? もしかしてエルフか!?)


 その貝殻で彼女は暫くの間何かを聴いていると、今度はそれを口元に持ってきて喋り始めた。


「こっちも予定通り、人数分の遺体を回収した。打ち合わせ通り、ターレンの町へ戻る」

『————了解……』


 驚いた。


 どうやらあの貝殻で誰かと通話を行なっているみたいだ。あんなマジックアイテムがあるとは知らなかった。


 或いは誰かが作った魔道具だろうか?


「リーダーは無事よ。≪氷糸界≫を森で巻いて離脱中みたい。そのままターレンに戻るそうよ」


 更に驚いた。


 その話し相手のリーダーとやらは、あの≪氷糸界≫から逃げきったらしい。


(すげえな……)


 こちとらエアロカーで飛んでギリギリ逃げおおせたのだ。


「私たちはターレンの町に戻るけど、あなたは…………。そういえば、まだ名前を聞いていなかったわね」

「ん、ノーヤ。よろしく」

「ノーヤね。それで、私たちのクランリーダーと合流する予定なんだけど、一緒に町まで来る? ここからそう遠くないわ」


 それなら断る理由は何もない。


 俺としても半島を抜け出て、初めての中央部進出で碌に地理も分からない状況だ。どんな町なのか気にもなるし、何よりそのクランリーダーとやらに強い興味を抱いた。


「一緒に行く」

「なら決まりね! 休憩おしまい! ほら、立ちなさい! さっさと行くわよ!」

「はぁい……」

「へーい!」


 あまり長い間休めなかったが、ニーアとハンスの二人は渋々と重い腰を上げた。



 ある程度安全圏に入った事から、そこからは速度を落として走り続けた。


 そして更に20分後……




「ここがターレンの町よ」

「ま、俺らも昨日始めて来たばっかだけどな」


 ターレンの町へと到着した。


 大陸中央部はどんな所かと期待したが、ごくごく平凡な町並みであった。これならブルタークの方が二回りは栄えている。


 道中、俺はティッケと並走しながら色々な新情報を仕入れていた。



 まず俺たち半島の人間が呼称する”大陸中央部”という表現だが、ここでその呼称は相応しくないようだ。何故ならこの辺りは大陸でも大分南西に位置するからだ。決して中央などではない。


 ティッケ曰く、この辺りは大陸西部が正しくて、更に詳しく述べるのなら北バーニメル地方と呼称するのが正確なようだ。


 今現在俺たちが居る場所は、バーニメル山脈のすぐ北にあるオラニア王国のターレン領となる。その領都、ターレンの町へと来たのだが……だいぶ長閑な町並みであった。




「こっちにギルド支部があるわ」


 彼らのクランリーダーとは、冒険者ギルドのターレン支部で待ち合わせしているらしく、俺たちはそのギルド内に設けられている酒場までやって来た。


「リーダーは……まだ来てないわね」

「仕方ねえ。酒でも飲んで待ってるか!」

「もう! 仕事が終わったからと言って……!」


 俺たちは席に座ると、それぞれ飲み物を注文した。


 すると、ギルド職員の一人がこちらへ近づいて来た。


「ティッケさん。討伐隊の様子はどうでしたか?」

「…………残念ながら、敗北したようね」

「なんと!? それじゃあ……まさかヒューリーさんも!?」

「それこそまさかね。リーダーは≪氷糸界≫を森で巻いて、一旦こちらに戻るみたい。そろそろ来ると思うわ」


 そう告げると職員は心底安堵したようだ。


「そうですか。討伐できれば最良でしたが……。それでも別動隊の貴方たちが上手くいったのなら、次に繋がることでしょう」


 ティッケたち≪新緑の民≫は討伐隊の別動隊だったわけか。


 恐らく彼女らは、討伐隊が全滅する事も視野に入れて、怪我人や遺品の回収目的で用意された人員なのだろう。そして彼らのリーダーは≪氷糸界≫を森まで誘導して逃げて来た、という流れみたいだ。


「言われた通り遺体もなるべく綺麗な状態で回収してきましたけど……ここで引き渡しますか?」


 ニーアが尋ねると、ギルド職員は待ったを掛けた。


「いえ、どうかしばらくはそのままマジックバッグに収納していて欲しい。その方が復活の確率も上がるらしいので…………」


 何か今、聞き捨てならない言葉を耳にした。


「蘇生魔法……俄かには信じがたいが、本当に彼らは助かるのか?」


 ハンスが胡散臭そうに職員へと尋ねた。


「噂の白銀の聖女なら……遺体の状態さえ良好で、尚且つ時間経過が少ないほど、復活のチャンスがあるのだと、バーニメル半島にあるギルド支部から伺っております」


 どうやら俺、聖女ノーヤの噂はギルド経由でこの町まで伝わっているらしい。


(そういう事か。恐らく俺の蘇生魔法の噂を当てにした討伐隊が、失敗した時の次善策として、死者を復活できるよう手を打ったんだな)


 つまり、この状況は織り込み済みという訳か。聖女ノーヤがこの地に来るとは限らないだろうに、何とも博打を打ったものだ。


 しかし、どうも≪白銀の聖女≫とかいう聞いた事の無い仇名は広まっていても、肝心の名前まではティッケたちに伝わっていなかったらしい。



 いい加減、こちらの正体を明かそうとするも、またしてもそれを邪魔する者が現れた。


「お、おい。あれ……」

「ああ、ヒューリーさんだ……」

「腕を怪我してるぞ!?」


 酒場に居た冒険者たちは、一人の男に注目していた。


 年齢は30後半か40代半ばといったところだろうか。無精髭に長い髪と、身だしなみに気を遣っているようには思えない、くたびれた姿の中年男性がこちらに歩いて来た。


 その無精髭の中年には右腕が無かった。肘から先は失われており、出血こそないが、切断面辺りが完全に凍っていたのだ。


「よう、ティッケ! お役目ご苦労さん」

「リーダー!? その腕……っ!」

「ああ、しくじっちまった」


 コンコンと凍らされた自身の腕の切断面を軽く叩いた。


「すぐに【ミドルヒール】を……。いえ、それよりも一等級ポーションの方が……」


 慌てて席を立ったニーアが男へと駆け寄る。


(ニーアも回復魔法を使えるんだな)


 しかも、自分も習得していない【ミドルヒール】を使えるようである。若いのに大したものだ。


 もっとも、自分の場合はチート【ヒール】で全て事足りてしまうのだが……


「一等級ポーションはもう使った。それでも治らなかったんだ……」

「そ、そんな……」


 一等級なら部位欠損でも治ると聞いているが、恐らくはあの氷が邪魔をするのだろう。やはりとんでもない化物だが、その≪氷糸界≫を森に巻いて逃げきったこの男も十分凄い実力者だ。


 俺は席から立つと、その男の傷口を見た。


「ん、氷を溶かさないと治療は難しいかも……」

「んん? この嬢ちゃんはお前らの知り合いか?」

「ええ。この子はノーヤと言って、バーニメル半島から来たらしく――」

「――ノーヤ!? まさか……白銀の聖女ノーヤ!?」


 どうやらギルド職員の方は俺の名前を知っていたようだ。


 ギルド内にいる全員の視線が俺に集まった。


「まさか……ノーヤが、あの白銀の聖女なの!?」

「た、確かに白髪だ……」

「それにバーニメル半島から来たって……マジか!?」


 恐れ入ったか、愚民共! 聖女様やぞぉ!


 冗談は置いて、さっさと彼の治療した方が魔力の消費も抑えられて助かる。何せ後9人もの遺体を復活させねばならないのだ。


 俺はマジックバッグからガスバーナーを取り出すと、それを使って凍った中年男の腕を解凍した。


「おいおい。その魔道具はなんだ? カーター兄妹でも溶かし切れなかった氷なのに、えらく簡単に溶けやがるなぁ」


 そのカーター何某は知らないが、魔法の炎より科学や自然の炎の方が解凍効率はいいのだ。


 ある程度氷を溶かせられれば、後はチート【ヒール】の力押しでいける。魔法を行使すると、彼の腕はニョキニョキと生えてきた。


「うぉっ!? まさか【エクスヒール】か!?」

「嘘だろ!? 法国でも一人しか使い手のいない秘術だぞ!?」

「信じられない……」


(ただのヒールなんだなぁ)


 腕を取り戻したおっさんは、手を閉じて開いてを繰り返し、しっかりと新たな腕の感触を確かめていた。


「……完璧だ。ははっ、完全に元に戻っちまいやがった!」

「ん、良かった」


 この男の実力は本物だ。ここでこの冒険者をリタイアさせるのは人類の損失だろう。人外の化物と対抗できる力は多いに越したことはない。


 男は再生されたばかりの右腕を差し出して握手を求めてきた。


「ありがとう。感謝するぜ! 俺はヒューリー。クラン≪滅竜の剣≫のリーダーだ」

「ん。私、ノーヤ。よろしく」


 改めて五体満足なこの男を観察するが…………やはりこの男、とんでもなく強いな。


(……俺たち白鹿のメンバー全員で戦っても、勝てないかもしれない)


 相当の手練れだ。


 今回の討伐隊にはS級冒険者が組み込まれていた筈だが、もしかして……


「ヒューリーはS級冒険者?」

「お? 良く分かったな。そういう嬢ちゃんも、かなり強そうだ」


 ビンゴだった。


「リーダー、良かった……! ノーヤ、ありがとう!」


 ティッケたちからも凄い感謝をされた。それ程、このヒューリーという男は仲間から慕われているのだろう。








 ギルド内は一時騒然となったが、俺たちは場所をギルドの訓練場へと移し、そこで今回の討伐隊メンバーの死者たちを蘇生する運びとなった。


 その際、ギルド側から謝礼の相談を持ち掛けられたが、俺はそれを丁重にお断りした。


「しかし、いくら何でも無料ただという訳には……」

「問題ない。ただし、今後いくらお金を積まれても蘇生しない」


 あくまで今回は、俺たちが放置した氷蜘蛛の後始末という名目で活動をしている。食べ物など、物品での報酬はある程度受け取っているが、金銭の類は全て断ってきた。


 勘違いした権力者たちが、今後金で蘇生の依頼をしてこないよう釘を刺す為の措置である。


(マジックバッグは貰っちゃったけどね……)


 しかも三つも……



 死体はどれも死後間もなかったのと、どれも損傷が軽微だったことで、時間的猶予も大分あった。誰から蘇生させるか悩んでいると、ギルド職員から催促された。


「このお二人から蘇生願えませんか?」

「ん、別に構わないけど、理由は?」

「カーター兄妹はS級冒険者なんです」


 なんと、ここにもS級冒険者たちがいた。


「今回の討伐隊は俺とこいつらのS級三人、後はA級の二チーム編成だったが……奴には全く勝てそうになかった。面目ねぇ……」

「い、いえ。頭を上げてください、ヒューリーさん」


 S級冒険者ともなると、ギルド職員の態度も違ってくるようだ。


 S級の二人から蘇生するのは特に反対する理由もないので、俺はまず兄だという青年の方から蘇生した。


「う、うーん……」


「「「おおおおっ!?」」」

「本当に……蘇った……!」

「信じられん……」

「おお、聖女よ……!」


 もう、こういった反応にも慣れっこだ。


 俺は続けてカーター妹の女魔法使いも蘇生させ、更にA級冒険者二人を蘇らせた。


 これで打ち止めかと思いきや、魔力にまだ充分の余力を感じた。


(もしかして……もう一人分いける?)


 なんと最大五人生き返せられるように成長していた。


 俺の最大魔力量が増えたのか、それとも蘇生に掛かる消費量が減ったのか、とにかく後一名いけそうだったので追加で蘇らせた。


「ふぅ、ちょっと休憩」


「は、はい! お疲れ様です!」

「誰か! 美味しいマジックポーションをお持ちしろ!」

「何処かゆっくり休める場所をご案内するんだ!」

「聖女様、お食事でも如何でしょう?」


 魔力切れのこちらに気を遣ってか、ギルド職員たちが慌ただしくなるも、俺はそれらを全て断った。


「問題ない。少し休めば全快する」

「「「おおおおっ!?」」」


 なんか「謙虚だ!」とか「魔力回復が尋常ではない!?」などで、ますます尊敬の念を抱かせてしまった。




 魔力回復を図っていると、先に蘇生させたカーター兄妹が完全に目を覚ました。


「ど、どうなってやがる……?」

「ライル!? あんた、殺されたはずじゃぁ……?」


 二人は双子なのか、容姿がとても似ていて、どちらも美形だった。


「よぉ、ライル。死んで蘇った感想はどうだ?」

「はぁ!? ヒューリーのおっさん、とうとう耄碌したか?」


 最初は信じていなかったカーター兄妹の兄、ライル・カーターであったが、死んだところを目撃していた妹のリンネ・カーターや他の者の証言で、自分が一度死んで蘇ったのが事実である事をようやく理解した。


「どうもまだ記憶が混乱していやがるなぁ。妙な感覚だ……」

「いまだ自分が死んだとは思いたくねえか?」


 ヒューリーに尋ねられらライルは神妙な表情となった。


「……いや、あれは正真正銘の化物だ。殺されても不思議じゃねえな」


 そう呟いたライルは俺の方へ寄ってきた。


「あんたが蘇らせてくれたんだってな。恩に着るぜ」

「ありがとう、ノーヤ。困ったことがあったら何でも言って。私たち兄妹が必ず力になるから……」


「ん、その時は宜しく」


 S級冒険者に恩を売れたのは大きい。あくまで矢野一心ではなく、聖女ノーヤに対する恩だが、この貸しは何処かの場面で有効活用したい。




 その後も順々に蘇らせ、討伐隊は誰一人欠けることなく全員が生還した。


 ただ、命は助かっても、心までは救いようがなかった。



「あ、あんな化物の相手……二度と御免だ!」

「俺たちパーティは討伐隊から外してくれ。冒険者も……今日限りで引退する」


 まさかA級冒険者が心を折られるとは…………それほどトラウマだったのだろう。


 だが、それはS級の面々も同様であった。


「さすがにあの化物の相手は、おじさんも二度と御免だぜ?」

「そんな……ヒューリーさんまで!?」

「俺らも抜けるぜ」


 ヒューリーだけでなく、カーター兄妹も次の討伐を辞退した。


「あれは俺たち兄妹でも手が負えねえ。それこそ災厄指定でもしたらどうだ?」

「そんなすぐには無理ですよ!? それに奴がまた森から出てきたら、周辺の人を襲い始めます! 手出し厳禁なんて言ってる場合じゃないでしょ!?」


 どうやら≪氷糸界≫は、ここオラニア王国にある大きな森の中に置いてきたようだ。現在その森の中心部は全て凍ってしまっているそうだ。


 同じ国内に災厄級の化物が居るとあっては、ギルド職員の反応も理解できるというものだ。


 だが、現状あれを倒せる戦力など何処にも存在しないのだ。下手な戦力で挑んでも事態を悪化させるだけである。


(S級三人もいて無理なんじゃあ、打つ手無しじゃね?)


 それとも、S級冒険者より強い存在がいるのだろうか?


 所詮、冒険者は国家に所属しない風来坊でしかない。もしかしたら何処かの国の精鋭とかなら対処できるような人材を抱えているのかもしれない。



 とにかく、第一次選抜討伐隊は結果だけを見るのなら失敗となる。ただ、それで得られた情報は計り知れないだろう。冒険者最高峰のS級でも敗れたとなると、各機関もこの先本腰を入れるに違いないのだ。



 ここで一度区切りがついたと判断し、俺はバーニメル半島に戻る事を決めた。


 メッセン地区などは見回ったが、まだオース地区を放置したままだ。だいぶ時間も経過しているので、今更死者の蘇生は望めないだろうが、ゼトンやパナムの町の様子は一度見ておきたかったのだ。

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