第7話 世界の困惑と少女の誓い
異世界リストアは地球より凡そ5倍以上の広い世界ではあるが、凶悪な魔物や未開の地もまだまだ多く、人間の支配領域は僅かであった。
その中でも比較的人口の多い、メルキア大陸の東部に覇を唱える人族の大国がある。その名もバハームト王国といい、ここ何十年かは戦で負け知らずの強国だ。
その国の中央にある王政府では、昨日からちょっとした騒ぎとなっていた。
「それは誠なのか?」
「はい。属国にある魔導書でも確認を取りましたが、やはり間違いございません」
政務を取り仕切る大臣からの問いに文官はハッキリと答えた。
「昨日から続いて、魔法の所持者が激増しております。しかも希少な雷や闇属性の魔法所持者も含めて、です!」
王政府が騒がしい理由は、二人が目にしている一冊の魔法書にあった。この魔法書には創世初期に神が人間へと与えたとされる魔法が記載されている。
一般的な魔導書には火・水・雷・土・風の5属性合計60種
聖書には光属性12種
死者の書にも闇属性12種
実際には新規の魔法を含めるとそれ以上だが、創世期から存在したとされる各属性12種、合計84種の魔法は、それぞれ対応した属性の魔導書に記載されていた。
これらを神代の基本魔法≪原初八十四の魔法≫と呼称されており、現在は新たな魔法の種類も徐々に増え、合計107種にまで数を増やしていた。
不思議な事に新たな魔法が誕生すると、それぞれ魔導書や聖書・死者の書などに自動で魔法が登録されていく仕組みだ。魔導書はただの本ではなく、この世に生み出された魔法が自動で記載されていくマジックアイテムなのだ。
ちなみにバハームト王国が所有しているのは、その中で最も上級とされている≪魔法書≫であった。魔導書と似て非なるそれは、全7属性全ての魔法がこの一冊に記載されているという
尤も一般人には縁の無い代物であり、世間ではそれらを総称して≪魔導書≫と呼ばれているが、それら魔導書には魔法名の他に、もう一つだけ重要な情報が記載されていた。
「う~む、【ファイア】の習得者が50倍以上に増えておる。【ウォーター】に【ヒール】も凄まじい増え方だ!」
「【ライトニング】なんて先週の習得者数は僅か2桁だった筈です。それが現在412,095人……! どれも最下級魔法とはいえ、これは明らかに異常ですよ!?」
魔導書には現在その魔法が使える者の数を把握する能力があった。≪魔法書≫の管理を任されている王宮魔法士は、魔法所有者の数を把握する役目も担っていたのだが、こんな事態は初めてであった。
最初は魔法書が壊れたのではと危惧していたが、属国にある別の魔導書で確認させたところ、やはり同様の異常な数が検知されていた。だとすれば――――
「――――やはりこの人数は事実と言う訳か……」
「馬鹿な……ありえませんよ!? 【ファイア】だけ見ても、我が国の総人口以上の数がこの短期間に習得した事になるんですよ!?」
「そんな事わかっておるわ!! だが出鱈目だと決めつけて楽観視していい事態ではない! もし仮にこの新たな魔法士たちが我が国の敵対国だとしたら……」
大臣の言葉に文官は顔を真っ青にした。いくら最下級魔法とはいえ、こんな馬鹿げた数で攻め込まれたら王都も無事では済まないだろう。
「至急、王にお伝えせねば……」
しかし未だ原因不明の事態をどうやって王に報告するか、大臣は頭を悩ませるのであった。
一方その頃、別の大陸にある大聖堂でも、この異常事態を察知した者たちがいた。
「猊下、お聞きになりましたか!? 聖書の件を――――」
「おお、枢機卿ですか。聞いておるとも!」
枢機卿に呼び止められた教皇は笑顔で答えた。
「昨日から【ヒール】の使い手が急増していると耳にしておる。いや、信心深い者が増えて神もお喜びになることだろう」
それともこれは神が起こした奇跡なのかも知れぬと、教皇は自らの任期中に起こった喜ばしい奇跡に満足していた。
ただ、それは枢機卿が求めていた答えではなかった。
「いいえ、違います猊下。これを見てください!」
「枢機卿! こんな所に持ち出し厳禁の聖書を…………まぁ良いでしょう」
貴重なマジックアイテムを廊下に持ち出す行為に眉を顰めた教皇だが、すぐ近くにある部屋に管理していたこともあり、咎めはせず促されるまま枢機卿の指先を追って見た。
「ふむ? 確か使い手が増えたのは【ヒール】や【レイ】であろう? その下は中級や上級魔法の…………」
話題となっていた【ヒール】の下に連なる光属性の魔法たちを順に追っていく。今回増えたのはあくまで最下級魔法だけであり、中級、上級の所有者は変わり映えせず少ないままである。
だが、教皇はある数字に異変がある事に気が付いた。
「す、枢機卿!? こ、こ、これは一体……っ!」
そこには魔法名が空欄の箇所が有り、その右となりに習得者人数が一名と記されていた。
「そうです、猊下。遂に現れたんですよ! 神級魔法の使い手が!!」
魔法とは多様なものである。例えば光属性だけを見ても回復魔法と呼ばれる癒しの力や浄化の魔法、それと少ないながらも攻撃魔法も存在する。その為、どの魔法にも利点はあるのだが、中には決定的に序列差のある魔法が存在する。
火属性の場合だと、その殆どが火力による攻撃魔法なのだが、使用者の最も多い【ファイア】と、習得者が稀だとされている【エクスプロージョン】では、その威力も効果範囲も天と地ほどの差があった。
そこでこの世界では魔法を威力や性能で階級付けしており、同じ攻撃魔法でも【ファイア】は最下級、そして【エクスプロージョン】は上級魔法と定めている。更にはその上の神級魔法というものまで存在する。
さて、それでは光属性はというと、攻撃魔法と回復魔法にも階級が付けられていた。最下級攻撃魔法は【レイ】、最下級回復魔法は【ヒール】となる。
では光属性の神級魔法はというと、実は今までその存在が確認されていなかった。
魔導書には魔法名と習得人数の他に番号が記されている。光属性最下級補助魔法【ライト】がNo.1でNo.12までが光属性、No.13~No.24までが闇属性、その後に火・水・雷・土・風と各属性12種が属性順に名を連ねている。
これが≪原初八十四の魔法≫である。
No.85以降は人類が新たに生み出した魔法とされ、属性など関係なくこの世に認知された順番に魔導書へ記載されてきた。
その関係上、教会では一番先頭に来ている光属性こそ、最も神に愛された魔法として崇められ、聖典にも【ライト】がリストアに光を灯して世界が創造され始まったとも記されている。
ただ光魔法には一つだけ未知の魔法が存在していた。
それがNo.12の魔法である。
実は魔導書には現在3カ所ほどの空欄が存在する。No.12、No.60、No.82である。
これらを『
No.82は過去に習得者がいたという古い伝記が残されている。何でも風属性の空を飛ぶ魔法だと言い伝えられ、古い遺跡の壁画などにも記されていた。
ただしその使い手が存在したのは太古の時代で、現在は魔法名すら知らない欠番魔法扱いとなっている。最近ではその存在を疑問視する研究者もいるが、それにしても空欄というのはおかしい。
そこで今最も主流とされている説が、“魔法は使い手が不在のまま長い時が経過すると、魔法名が魔導書から消えてしまう”という仮説だ。恐らくこの3つの欠番魔法は長い間使い手が不在で魔導書から魔法名が消えてしまったのであろう。
話を戻そう。
No.12の欠番魔法だが、教会ではそれこそが光魔法の神級魔法だと信じて疑わなかった。
その根拠は光魔法しか記載されない聖書にもNo.12が飛ばされて空欄のまま記載されているからだ。
創世期の魔法は各属性12種ずつ、しかも魔導書に記載されている順番は、絶対ではないがどうも威力の低い魔法から順に記されている傾向がある。その流れから鑑みてもNo.12の
そして、その奇跡の魔法を復活させる事こそ、教会の悲願でもあった。
「そ、それで!? 使い手は誰なのです! それと、どうして魔法名は空白のままなのです!?」
「それが、まだ分からないのです。魔法名はそのうち顕現されると言い伝えられておりますが……」
だいぶ昔に、同じように欠番であった土属性の72番【アースフォート】も使い手が現れてから名称が記載されるまでタイムラグがあったらしい。理由は不明だが、恐らく今回も同じケースなのではないかと信者たちは考えていた。
「そうですか……問題はそれが攻撃魔法なのか、それとも回復魔法なのか」
「どちらにしろ神の奇跡に近い素晴らしい魔法でしょう。ですがもし、回復魔法の神級であったなら……」
回復魔法の上級は存在する。現在その使い手は不明だが、一名だけいると明記されていた。古文からの情報によると、上級魔法【エクスヒール】は部位欠損の完璧な治癒や、瀕死の者すら一瞬で治す威力だとされていた。
中にはそれが回復魔法の神級ではないかと主張する者もいたが、その意見は少数派だ。何故なら神級は必ずその属性の一番オオトリ、つまり12の倍数に記載されているからだ。
12番 光属性 欠番
24番 闇属性【デス】
36番 火属性【イグニスソード】
48番 水属性【デミ・アクア】
60番 雷属性 欠番
72番 土属性【アースフォート】
84番 風属性【テンペスト】
どれも強烈で凶悪な威力を誇る神級魔法は、その使い手一人だけで戦場をひっくり返すほどだとされている。
例えば闇属性の神級魔法は現在習得者不在だが、文献によると【デス】とはその名の通り、相手に死を与える恐ろしい魔法なのだ。そんな凶悪な魔法と対等関係にある光属性の究極魔法が、たかだか部位欠損を治癒する程度の魔法と同等な訳がない。必ずその上がある筈なのだ。
「まさか、噂は本当なのだろうか? 死者すら蘇らせる奇跡の魔法など……」
「分かりません。攻撃魔法の可能性もありますが、もし仮に死者蘇生魔法であれば……これは大事になりますよ!」
教皇と枢機卿は二人そろって聖書に記載されている“習得者一名”の文字を見つめ続けた。
時は少しだけ遡り、地球人全員の異世界転移が行われた直後――――
14才の少女シグネ・リンクスは転移の際に生じた強い光に目を顰めていた。ようやく目を開けられる状態になると、目の前には見たこともない平原が広がっていた。
「シグネ、ジーナ、無事かい?」
父であるダリウスが自分と母に声を掛け、平気だと頷き返す。シグネは改めて周囲を観察した。少し遠くに森と山脈が薄っすら見えるくらいで、後は草の生い茂った平原がずっと続いていた。
確かに現代ではなかなか見られない自然豊かな景色だが、ここは果たして夢にまで見た異世界なのだろうか?
「ここが異世界……? そうだ、スキル!」
彼女は試しに取得したスキル【鑑定】を試してみる。まずは両親から視てみると、すぐに効果が表れた。
名前:ダリウス リンクス
種族:人族
年齢:34才
闘力:13
魔力:85
所持スキル 【自動翻訳】【槍】
名前:ソフィア リンクス
種族:人族
年齢:32才
闘力:7
魔力:130
所持スキル 【自動翻訳】【水魔法】
(——っ!? よし、【鑑定】が使える!)
選んだスキルが予想通りの性能に彼女は歓喜した。そう、何を隠そう彼女は日本のアニメやゲームなどの二次創作物が大好きで、最近のお気に入りは異世界物であったからだ。
実際にスキルも使え、ここでようやく本当の異世界へ転移したのだと実感すると、無性に嬉しくなってしまった。
更に彼女は自分の事を鑑定しようとする。最初は発動しなかったが、自分の手をじっと見つめて数秒経過すると、やがて効果が表れた。
名前:シグネ リンクス
種族:人族
年齢:14才
闘力:5
魔力:119
所持スキル 【自動翻訳】【鑑定】
(これも問題無し。すぐに発動しなかったのは何か発動に条件があるのかな? 後で検証してみなくっちゃ!)
異世界物で定番のスキル【鑑定】をしっかり使えた事に彼女は小躍りしそうになった。
そんな娘の内心も知らず、両親は少しでも周囲の人と馴染もうと、改めて町会長である野村五郎に挨拶をした。
「おお、ダリウスさんだね! 本当に翻訳のスキル? とやらが効いたのかな」
異世界転移前までは日本語が分からず、コミュニケーションの取れなかったリンクス家の三人であったが、ここでは【自動翻訳】のスキルがしっかり適用されているのか、会話に齟齬は見られなかった。
五郎は鹿江町町内会コミュニティに集まった人たちに声を掛けた。
「一先ず人里か、どこか安全な場所を探しましょう。皆さん、移動しますよ」
これは事前に打ち合わせていた内容のようだ。まずは現地人との接触、もしくは安全場所の確保である。その際、足に不自由のあるお年寄りやケガ人はその場に待機か、ゆっくり移動する事になり、一部の人間が先行して様子を探るという手筈であった。
シグネの父であるダリウスも先行班に志願した。転移直前で逸れてしまったイッシンという青年を探したかったのだ。もしまだ生きているとしても瀕死状態で動けない筈だ。
先行班の中で更に人数を分けると、それぞれが別の方向を探索した。
しばらくすると、東の方へ様子を見に行っていた者たちが川を発見したと報告に戻ってきた。ちなみに東だと断定したのは方位磁石を持っている者がいたからだ。地球と同じかどうかは不明だが、それを参考に東西南北別れて探索していたのだ。
他の方角へ様子を見に行った者たちも戻って皆で話し合いをし、全員で東にある川を目指すことにした。周囲は見晴らしも良く、危険な生物もいなさそうであった。
「この辺りを拠点にして、探索活動や生活基盤を整えていきましょう!」
町会長の五郎がそう告げると、町民の中で建築や農業に明るい者がいないか尋ねた。すると何人かの経験者や、スキル持ちの者がいた。
「私は【鍛冶】のスキルを持っています。一応金槌や工具も持ってきたのですが、材料が……」
「俺は元とび職で多少の建築知識もある。【木工】なんてスキルも持っちゃいるが、どこまで役に立つのやら……。だが、肝心の材料がないぞ?」
皆、技術や知識はあるのだが、材料がないと嘆いていた。それにスキルの使用方法も曖昧だ。すると大人たちへ少女のシグネが恐る恐る声を掛けた。
「あのぉ、材料なら、これを参考にしたらどうかな?」
シグネがそう言って見せたのは、矢野一心が用意していたファイルであった。これには異世界生活で必要そうな情報が網羅されており、その中には材料の作り方や建築にまつわる項目もあったのだ。
「木材の作り方か……こいつはありがてえが、作るのに少し時間が掛かりそうだなぁ……」
「でも、この道具無しで作れるサバイバル小屋ってのは参考になりますよ! これなら雨風を凌ぐくらいのレベルならすぐに作れそうだ!」
他にも手作りの濾過フィルターや簡単な農具・肥料作り、その他現代知識で役に立ちそうなあらゆる情報がファイルに纏められていた。それらを簡単に一読した大人たちは驚いていた。
「こ、これはお嬢ちゃんが用意したモノなのかい?」
「……いいえ、これは通り魔に立ち向かったイッシンさんが残した荷物の中にあったものです」
「そ、そうか! 彼のか…………」
あの凄惨な事件は当然ここにいる全員が見ていたが、転移直前という状況で動けず、結果見殺しにしてしまった。残念ながらさっきの捜索で他の人間は誰一人見つからなかった。どうやら転移時に接触していない者は、想像以上に離れた場所へ飛ばされてしまうようだ。
「それと私はスキル【鑑定】を持ってます。それでみんなの闘力や魔力量が見えるんです。良かったら、鑑定してみましょうか?」
「とうりょく? それと魔力だったね? それは一体……」
正確な事はシグネ自身にもまだ分からないが、闘力は戦える力、魔力は魔法を扱える量ではないかと伝えると、俺も私もと鑑定の希望者が増えた。そんな人たちを彼女は順番に鑑定していき、視た情報を伝えた。
それにより皆が所持しているスキルも大体は共有できた。中には探索や戦闘に向いているスキルを持つ者もいた。これで色々役割分担する事もできると皆が喜んでいた。
シグネは定期的にステータスの情報を確認させて欲しいと頼むと、大人たちは皆了承した。今は闘力や魔力が少ない者も、何かがきっかけで上がるかもしれないと考えたからだ。
それに新たなスキルが取得される可能性もゼロではない。シグネは今回【鑑定】を選択したが、やはり一度でもいいから、ちゃんとした魔法を自分でも使ってみたいと思っていたのだ。
(これだけ人数がいれば色々検証ができる。私はこの【鑑定】とイッシンお兄さんの残してくれた知識チートで成り上がって見せる!)
少女は小さい闘志を燃え上がらせていた。
ほぼ同時刻、別の場所でも異世界での活動を始めようとしていた日本人たちの集団がいた。
「それでは、ここで暫く暮らしていこうと思う。各自、役割分担通りに動いて欲しい」
青年がそう告げると一時解散となった。と言っても魔物などの危険がある為、それほど集団から離れるわけにもいかず、各々事前に用意していた寝袋や毛布などにくるみ、慣れない野外での一夜を過ごす事になったのだ。
「…………はぁ」
「もう、そんなに落ち込まないで。仕方なかったのよ」
深いため息をついた私に声を掛けたのは、高校時代からの親友であった。
「だって……私を庇ってくれて……でも、あんな傷じゃあ、もう……っ!」
私、
最初は混乱して取り乱し、どうしたらいいのかオロオロしていたのだが、私の親友である
【察知】というスキルがどれほど優秀なのかは分からないが、彼女が選んだのはそれだ。ちなみに【鑑定】や【水魔法】は取得者が多いだろうから必要ないと助言もくれた。良く分からないが自信がありそうな親友の言葉を信じて私は【雷魔法】を選んだ。一番強そうだと思ったからだ。
「彩花の所為じゃないよ。それよりこの先、ああいう奴が増えるかもしれないから、なるべく二人一緒に行動しよう」
「……ありがとう、留美」
留美の【察知】はすぐに使い方が分かったそうだ。意識をすると、一定の距離にいる人の存在を感知する事ができるようだ。しかもそれは小鳥サイズくらいまで感知できるらしい。おかげで周囲の警戒は大分楽になったが、それでも年頃の女子二人だけでは心許ない。
このコミュニティは私たちが通っている大学サークルの連盟であった。どちらかというと文化系の仲良しサークルが合同で集まったのだ。
ちなみに体育会系だとちょっと治安に不安があったので、私たちはこちら側に所属したのだが、数名ほど邪な視線を私に向ける輩もいた。
こう言ってはなんだが、私は容姿にそれなりの自信がある。生まれつきにも恵まれたのだろうが、結構な努力もしたつもりだ。ただ昔からそれをやっかむ同姓や、異性からのトラブルも絶えなかったが、これまで上手く躱してきた。
生粋の負けず嫌いな私は勉学やスポーツにも励み、嫉妬する相手においそれと手出しできない存在になってやろうと日々努力を重ねた。その甲斐もあって最近はそういった連中も大人しくなってきたのだが、異世界騒動によりモラルが低下した今だと、その効果もあまり期待できなさそうだ。
だが、“はいそうですか”と諦めるほど、私は可愛い性格をしていないという自覚がある。
(そうだ! また一から努力をすればいいんだ! あんな卑劣な通り魔なんかに……私は負けない! あの人のように、私はもっと強くなる!)
異世界でも更に努力を続け生き抜く事を私は、自分を庇って死んでしまったあの人へと誓った。
――女神アリスと地球の代表者たちによるQ&A情報――
Q:転移される場所は安全なのでしょうか?
A:比較的人目の付かない安全な場所を配慮しますが、絶対ではありません
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