第133話 続・新日本国へ行こう!

 某掲示板にて……




【速報】新たな日本、現る! Part.1


115:名無しの日本人

これマ?


116:名無しの日本人

>115

マジらしい……


どうやらバーニメル山脈の反対側に

関西・北陸のコミュニティが多数転移したようだな


117:名無しの日本人

日本連合国、だっけ?

下手したら新日本国より規模大きくない?


118:名無しの日本人

うーん、どうだろう

こっちも自衛隊がいるし

規模はどっこいどっこいじゃないか?


119:名無しの日本人

よろしい、どちらが真の日本か戦争だ


120:名無しの日本人

>119

やめろwww


121:名無しの日本人

>119

大阪には俺の家族もいるんだぞ!


122:名無しの関西人

俺の妹も東京住まいや

同じ日本人で戦争だけはマジ堪忍な!


123:名無しの日本人

すまん、さすがに軽率な発言だった……


てか、しれっと関西人混じってない!?


124:名無しの関西人

おう、おるで!


125:名無しの関西人

俺も日本連合国側から書き込んでる


126:名無しの関西人

え? ホンマにリアルでネット使えるん?

東京もん、やるなぁ


127:名無しの日本人

おおう、結構な数がいた……


128:名無しの日本人

そっちはネット環境ないの?


129:名無しの関西人

短い距離やったら電波あるらしいけど

一般開放はまだやなぁ


ネット動画も見れるし、魔導電波サイコーや!


130:名無しの日本人

通信料も無料だしなw


131:名無しの関西人

でも、政府はホンマにどないする気や?


バーニメル山脈言うたら

超つよつよな魔物だらけちゃうん?


交流とか絶対無理やない?


132:名無しの日本人

トップレベルの探索者パーティでも

あの山脈には今のところ近づけないしなぁ


港か空港作って海か空から行くとか……


133:名無しの関西人

ん? 探索者って何?

冒険者ちゃうん?


134:名無しの日本人

>133

新日本政府が新たに立ち上げた


↓を参照してくれ

(探索者ギルド公式ホームページ)

http---------------------------------


135:名無しの関西人

何これ?www

めっちゃ楽しそうだなぁ!!


136:名無しの関西人

探索者ランキング……!?

魔物図鑑アプリ……やと!?


137:名無しの関西冒険者

冒険者ギルドの猿真似やん!?

せやけど、こっちの方が断然おもろそうや!!


わい、B級冒険者に上がったばかりやけど

探索者に鞍替えしたいわぁ


138:名無しの日本人

B級冒険者!?

それはそれで凄い気がする……


139:名無しの冒険者

こっちの日本人でB級冒険者となると

この辺りじゃあ≪東方英傑≫と……

あとは≪白鹿の旅人≫くらいじゃね?


140:名無しの日本人

≪白鹿の旅人≫ってなに?

≪東方英傑≫は知ってるけど……


141:名無しのスーパー冒険者

>140

ブルタークを拠点にしている最強チームだよ!

ゴーレム使いに雷帝、暗弓

あと超絶強い天駆がいる無敵パーティ!!


142:名無しの関西人

>141

……なんか、えらい胡散臭いわぁ








「シグネいるかー? ……ん? なんだ、またネット掲示板見てたのか?」


 スマホで掲示板を見ていたら、イッシンにいに声を掛けられた。


「イッシンにいどうしたの?」


「いや、ちょっと頼みたい事が…………」



 私はイッシンにいに、ある依頼をされた。








 新日本政府とエイルーン王国との会談がひと段落するまで、俺たちはブルタークに待機するよう侯爵にお願いされてしまった。


 たが結構な長丁場になりそうで、それまでずっと屋敷内にいるもの退屈だ。なので代替案として、侯爵には予備のスマートフォンを一つ貸し与えた。以前、新日本政府からの交換条件で入手したものだ。


 そのスマホに俺の連絡先だけを入力し、侯爵に通話の使い方を説明する。



「有事の際はこれで呼び出してください。一日以内に戻って来られる場所には必ずいますので」


「うむ、分かった」


 横で見ていた王女様がスマホを物欲しそうにしていたが、今ある予備はそれしかないので自重してもらった。今度、また政府側から何かの依頼があれば、報酬に予備のスマホを強請るとしよう。




 これである程度動きが取れるようになったが、まだ新型ゴーレム強化の一件もある。俺だけはちょくちょくマルムロース邸に顔を出す形となった。


 エアロカーを佐瀬たちに渡し、彼女らにはフリーで動いてもらう。それと彼女らには宇野事務次官との約束である鹿江町へのメッセンジャーをお願いした。


「例の件ね。重要な案件だし、必ず先輩たちに伝えるわ!」

「私も、お父さんと町長さんに伝えておくね!」


 この機会に佐瀬たちには里帰りならぬ拠点帰りをしてもらった。何時も戦いばかりだと気疲れしてしまうだろうからな。



 俺の方は新型ゴーレムの改造に居合わせながら、陰でコソコソと新たな乗り物製作に挑戦していた。この前ダンジョン内で出会った冒険者との取引で得た≪魔法の小黒球≫を動力源とした、新たなエアロカーを増やす予定だ。


(……この馬力だと、やはりバイク型の方が無難か?)


 ≪魔法の黒球≫ほどの魔力を必要とはしないが、それでも長時間飛行をするにはかなりの量を消費する。それとあまり大きいサイズだとスピードも落ちるようなので、今回はバイクをイメージして、まずは車体から造り始めた。


 材料は前回同様、エンペラーエントの幹がメインである。それと一番肝心の耐風保温効果のあるアタッチメントは再びシグネに依頼しておいた。第一号機は≪精霊の矛≫の女主人イーダとの合作であったが、二号機はシグネ一人で挑戦するらしい。


 エンペラーエントの加工には時間も掛かるので、俺はコツコツ気長に製作し続けた。




 暫く創作関連に力を入れていたら、長谷川から連絡が届いた。新たな外交団を再びそちらに向かわせたいというお伺いの事前連絡だ。


 新日本国の存在を王国へ明かした以上、今までのようにこっそり街へ来る行為は避けたいようだ。



 俺は直ぐにマルムロース侯爵にその事を告げた。



「相、分かった。だが、今度は我々がそのシンニホンとやらに赴こうと考えておる」


 どうやら既に王政府から伝令が届いているらしく、此度の交渉はマルムロース侯爵が主導で行う事が決定していた。それに加えランニス子爵と、王都から来る予定の外交官とも合同で交渉することが王命で正式に決まったらしい。


 ランニス子爵は一旦仕事を片付けにフランベールへ帰っていたが、昨日再びブルタークに戻ってきている。というか、俺たちが依頼されてお連れした。王都からの外交官とやらも明日には到着予定だ。


「私も参加しますよ」


 なんとフローリア王女も参加するそうだ。彼女が別口で王都に早馬を送ったそうだが、国王陛下直々の許可が下りたそうだ。正式には交渉団の監査役という立場で帯同するらしい。


 これには侯爵も呆れていた。


「陛下は王女には甘いからなぁ……」


 姫様のいない所でそう愚痴を零していた侯爵だが、アンタも大概だろうがい!




「そこで、君たち≪白鹿の旅人≫にはシンニホンへの道案内を任せたい」


「かしこまりました」


 この一件は俺が発案者な為、さすがに断れない。


(まさか本当に侯爵たち自らが赴くとは……しかも王女様まで……)


 やばい、ちょっと胃が痛くなってきた。


 俺は急いで佐瀬たちに連絡して呼び戻した。長谷川にも”こちらから向かうので来なくていいです”と告げると、あちらも大変驚いていた。


 新日本政府側も初の来賓を迎えるとあって、きっと今頃は準備で大忙しだろうな。



「新東京の街にはエアロカーで向かわれますか?」


「いや、空の旅も魅力的だが馬車にする。我々自身の力で行かねば、あちらに舐められるからな」


 確かに冒険者に過ぎない俺たちの乗り物に頼って来たとなれば国の沽券にも関わるか。そこら辺の考え方はいかにも貴族らしいなと思った。


 王都からもフローリア王女が乗る用にと、王族専用馬車がこちらへ向かっている最中だそうだ。侯爵家の馬車もかなり豪華であったが、王家専用ともなると、きっとそれ以上に違いない。








 翌日、佐瀬たちと合流した俺はマルムロース邸で待機していた。すると、いよいよ王都からの使者が到着した。


 だが、出迎えに行った者たちの様子が少しおかしい。外が急に騒がしくなったのだ。


 王女殿下用の王族専用馬車は王家の者が乗車する際にだけ、その従者や来賓が相席する事を許されており、それ以外では何人も乗ることは許されていない。だから当然その馬車は空席だと思われていたのだが、どうも中には誰かが乗っているらしく、その何者かが降りてこちらに向かって来ていた。しかも数多くの護衛を引き連れてであった。


 その姿を見た兵士たちが一気にざわつき始めた。


「まぁ、ケールズお兄様!?」

「「「ケールズ殿下!?」」」


 なんと王国の第三王子でありフローリア王女の一歳年上の兄君でもある、ケールズ・ロイ・エイルーン王子が現れたのだ。


 フローリア以外の者は慌ててその場で膝をつく。


「楽にしてくれていい。外交官と言っても僕はおまけの存在さ。父上には侯爵から色々と学ぶようにと外交官に命じられ、こちらに馳せ参じた次第だ。侯爵に子爵も此度は妹共々宜しくお願いするよ」


「「はっ!」」


「ケールズお兄様もシンニホンに行かれるのですね!」


「ああ、外交官兼フローリアのお守り役としてね。父上に『フローリアが暴走しないよう見張っていろ!』とも言われたよ」


「まぁ!」


 王女同様、第三王子も気さくな性格なのか、常に笑みを絶やさない明るい方のようだ。



 これで面子は揃ったが、ケールズ王子は旅の疲れもあるだろうと本日は侯爵邸の迎賓館に泊まり、明日早朝から交渉団は新日本国へと赴く事になった。




 そして出立の本日、俺は何故か王族専用馬車の中にいた。


(なんでっ!?)


 経緯を簡潔に纏めるとこうだ。


 王女様が俺たちを兄君に紹介する。

 兄君、興味を持つ。

 ちょっと話がある。馬車に乗れ。


 以上だ……いや、異常だ。



 王族専用馬車とは言っても、思ったより煌びやかな外装ではなかった。当然舐められないくらい最低限の装飾は施されているのだが、侯爵家当主の馬車を見たことがある俺としては、いたく普通に思えてしまった。


 ただ、どうやら今回用意された馬車は僻地用の実用性が高い馬車であるらしい。今まで乗ってきたどの馬車よりも座り心地が良いし、しかも頑丈そうにできていた。侯爵家の馬車も前回とは違い、悪路にも対応できる代物のようで、やはり若干質素にはなっていた。


(さすがに王族より豪華な馬車に乗る訳にはいかないか)


 ちなみに子爵家は軍人の家系故か、所有しているのはどれも実用性重視の簡素な馬車のみだ。さすがはケイヤパパ。



 少し話が逸れたが、王族専用の馬車には現在、俺とフローリア王女、ケールズ王子、そしてアーネット侯爵令嬢が相席していた。わざわざ従者を御者席に追い出しての配置である。


(平民は俺一人だけ……超気まずい!)


 むしろ俺が従者なのか!? そういうことなのか!? 肩でもお揉みしましょうか?


 馬鹿なことを考えていたら、ケールズ王子から話しかけられた。


「≪白鹿の旅人≫のゴーレム使い、君の噂は僕も耳にしているよ。フランベール要塞にて一時は陥落寸前だった防衛戦で大戦果を挙げ勝利に導き、オルクルダンジョン60階層をスピード攻略した期待のルーキー冒険者。王都近郊で活躍中の≪東方英傑≫にも匹敵する素晴らしい実績だ」


「……過分な評価を頂いて、恐縮です」


 ≪東方英傑≫とは、以前に俺たちが少しだけ手解きした日本人四人組の元高校生パーティだ。あの時の彼らはCランクの魔物相手に完勝していたし、近い内に頭角を現すだろうとは思っていたが、今では俺たちと同じB級冒険者で、王都で今最も期待されている超新星だそうだ。


 最近では王都近郊にある≪浮島ダンジョン≫で最高到達階層を記録するなど、話題に事欠かない存在である。



「父上……国王陛下も君たちの事を気にされていた。≪東方英傑≫も君たちも、末永く王国内で活躍して欲しいとね」


「あはは…………」


 これは≪東方英傑≫の四人も既に身元が割れているのだろうな。


 俺たちは侯爵たちに元日本人だとバラしたので当然と言えたが、あの王様は前からこちらを疑っていたようにも思える。まあ少し考えれば台頭してきた時期も一致する訳だし、身バレするのも時間の問題だったのか。


 だが王政府は今のところ、俺たち異世界人を無理やりに取り込もうとする動きは見せていない。幾つかの日本人コミュニティを押さえている時点で何を言っているのだと思わなくもないが、王国内のコミュニティを押さえたのは、無許可で集落を作ってしまった事に起因するので、仕方ないと言えば仕方がない。


 それに王政府は結構日本人に配慮している節もある。あまり強引な手段を取ってまで、俺たち元地球人と事を構えるつもりはないように思えるのだ。


 その証拠に、こうして王族を二人も新日本国に差し向けている。国交のない国に王族自らが向かうなど、通常ではあり得ない対応ではなかろうか?


「そうえいば、シンニホンにも冒険者と似た者たちがいるようだね? 報告書を読ませて貰ったよ」


 俺たちからは話した記憶は無いが、恐らく他の日本人から知った情報なのだろう。まだバッテリーが残っているスマホさえあれば、探索者制度は誰でも知ることのできる情報だ。


「ええ、探索者と呼ばれておりますが、基本的にやっている事は冒険者と同じです。ただし、国営ですが…………」


「国営……? それは、有事の際には兵士にもなる、という事かな?」


「いえ、どうでしょう。そんな規約はないと思いますし、第一国民がそれを承知しません。新日本国は強制的に国民を徴兵したりはしないでしょう」


「……そういえば、国民が為政者を選ぶシステムだったか? 連合国の制度とも違うようだし、ううむ……」


 王族である彼らが一番気になる点は、やはりその辺りだろう。君主制を敷いている彼らからすれば、民衆の総意で国が動かされるなどあってはならないのだ。


 まあ元々日本も国民の意思がどこまで政治に反映されているかは怪しいものであった。どんな体制の国でも、大きくなるほど舵取りは複雑で困難になってくるのだろう。



「ニホンの政治体制も気になりますが、私はそれより科学とやらに興味がありますわ!」


 フローリア王女は相変わらずブレないお方だ。自分の興味がある学問であれば、例えそれが王制と相反する国の技術だろうが、学びたいと考えているのだろう。


「ふむ、科学か……。遠くの者と情報をやり取りする技術には僕も興味がある。その伝達手段があるだけで国の防衛力も一気に増すだろうし、わざわざ馬を走らせる必要もない。それだけでも騎士団の経費が一気に削減できるな」


 例えば今回の一件を王都に報告するだけでも、片道で馬一頭と騎士を二日間要したのだ。それが電話一本で済んでしまうのだから、科学とは斯くも便利なものである。


「スマホも大変興味深いです! シグネに動画というものを見せてもらいました! 可愛い動物の映像や、絵が動く物語など……私、是非スマホが欲しいです!!」


(シグネちゃ~ん!? 一体王女様に何を見せてるのかなぁ!?)


 転移者バレしてからは、やけにシグネが王女様やアーネット嬢と仲良くしていると思っていたら、どうやらネット動画を二人に見せていたようだ。フローリア王女は侯爵に貸したスマホをずっと欲しそうにしていたし、これは新東京に行ったら確実に催促されるだろうな……


「スマホも面白かったですけど、私はニホンの化粧品に興味がございます! サヤカ姉様やルミ姉様のように、私ももっと綺麗になりたいです!」


 シグネの影響か、アーネット嬢は二人の事を姉呼びするようになった。同じ女性として、美しく強い二人に尊敬の念を抱いているようだ。


(……俺は兄様と呼ばれてないけどね! ……解せぬ)



 そんな感じで、馬車の中は日本談議に花を咲かせていた。








 以前は馬車で新日本政府とブルターク間を走行した際、おおよそ五日間の行程を要したが、今回の移動は思った以上に快適で楽に進む事ができた。どうやら新日本政府が道を整備しているらしく、馬車で通行し易くなっていたのだ。


 恐らく先住民族たちの許可を取って整地し始めたのだろう。


 お陰で三日後には新日本政府の“人類踏破領域”と呼ばれる森の切れ目まで辿り着けた。


 ただ、その“人類踏破領域”だが、最近では不適切な言葉ではないかという意見が新日本国内で増えていた。実際、領域外の新日本から近い場所には王国があり、そこに人々が住んでいる事も周知の事実となった今、人類踏破という言葉はどうにも奇妙に聞こえてしまう。


 近い内に、それらの名称を改めるというニュースが挙げられていたのだ。



 その日本の領域に入ると、人の目も一気に増え始めた。


 この辺りの森はエルフ族に配慮してか、探索者は無暗に立ち入る事を禁止されている。しかし、一歩森の外を出ると広い平野が広がっており、そこには稀に弱い魔物も出没するので、初心探索者も活動している人気スポットとなっているのだ。



「お? なんだ、あの馬車?」

「見慣れない馬車だなぁ……政府のじゃないぞ?」


 ざわざわと見物人たちが徐々に増えてきた。


 そこへ自衛隊と思われる数台の自動車が向かってた。これには王国側の御者や馬もビックリして停止した。王女なんかは目を輝かせて窓から自動車を凝視していた。


 自動車から一人の自衛官が下りてきて、馬車に向かって声を掛けてきた。


「我々は新日本国政府への案内人となります。宜しければ街まで御同行致します」


 代表者である自衛官の男が告げると、それに答えたのは馬車を降りたランニス子爵であった。


「うむ。貴君らの厚意、真に痛み入る。貴公がこの者たちの代表か?」


「はっ! 自分は首都防衛隊第一師団所属の新見にいみ一等陸尉であります!」


「私はエイルーン王国フランベール西方軍、軍団長クロード・ランニスだ。道中の案内、お任せする」


 軍団長自らのお出ましに新見一等陸尉はピクリと眉を動かすも、そこまで動揺しているようには見られなかった。恐らくランニス子爵の情報は事前に軍で共有されているのだろう。


 だが、その後の情報には彼も驚いた。


「今回の外交団には王家からケールズ・ロイ・エイルーン第三王子にフローリア・ロイ・エイルーン第三王女、それとマルムロース侯爵もご帯同頂いておられる。相応の配慮を願いたい」


「――っ!? しょ、承知致しました! 最大限に務めさせて戴きます!」


 新見一等陸尉の言葉に満足したのか、子爵は再び乗車した。


 そのやり取りを見ていたケールズ王子が興味を持ったのか、俺に尋ねてきた。


「イッシン君、ニイミ殿はイットウリクイと言っておられたが、どういった立場の者なのかな?」


「え? そ、そうですねぇ……騎馬隊の隊長クラス……でしょうか? 首都防衛隊とやらは自分も聞き覚えが無いのですが……」


 恐らくこの世界に来て新設された部隊だろう。一等陸尉は確か……大尉くらいの階級だったかな? そもそも王国の騎士階級もよく知らないので、かなり適当に返答してしまった。


「あの音を出して動く乗り物が自動車なのですね!! わあっ、凄い!!」


 王女様は初めて生で見る自動車に感動していた。


「でも、前に動画で見たお車とは違って変わった模様ですね」


「あの模様は自衛隊独自のものです。正確には魔導自動車というそうですが……まだまだ普及には時間が掛かっているようですよ」


「ふむ、自衛隊……確かシンニホンの軍隊だったかな?」


「正確には軍ではありませんが、似たようなものです」


 そんな発言をしたら偉い人に怒られてしまうかな? でも、どんなに言いつくろっても、他国からしたら軍隊に見えるだろうしなぁ……




 森からの道も大分舗装されているようで、俺たちはあっという間に新東京へと辿り着いた。


 さて、此度の会談は一体どうなるのやら…………

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