第164話 同行メンバー
「さ、皆さん。自由に席へ着いてください」
宇野の一声で、彼のうしろにいた五人の男女は思い思いの場所へと座った。
俺と同じソファーには30歳近い男性と20代の黒髪の女性が座った。
俺の隣に腰かけた男が軽く会釈してきたので、俺も頭を下げてそれに応えた。
その男性と女性はどうやら日本人のようだが、他の三名は違うみたいだ。
異国風の三人組は互いに顔見知りのようで、さっさと一つのソファーにまとめて腰を掛けていた。いずれも20代後半くらいの金髪の男性と女性、それと二人より若い茶髪の青年であった。
先程まで部屋にいた自衛隊員たちが退室し、残っているメンバー全員の着席を確認すると、宇野がようやく口を開いた。
「まずはこの場にお呼びした面々を紹介しよう。ただし、先に一点だけ。ここに居るメンバーの素性やこれからの話について、当面の間は外部に漏らすような真似を差し控えてもらいたい。いいかな?」
宇野の言葉にその場に居る全員が頷いた。どうやら表に出せない話とやらは長谷川だけではなかったようだ。
「ありがとう。では、まずは我々から。と言っても、私はこの場に居る全員と面識があるから割愛させて頂く。まずはそこにいる眼鏡の男から紹介しよう」
宇野の言葉を聞いた長谷川はその場に立ち上がった。
「彼は長谷川真、ギルド管理局保安部次長で私の後輩でもある。口は堅いので信用してくれて構わない」
「何名かはご存じかと思いますが改めて……長谷川です。宜しくお願いします」
長谷川は軽く頭を下げて名を名乗った。
「次は、そうだなぁ……Mr.マークス。貴方たちから紹介してもよろしいかな?」
「それには及ばない。私の口からお伝えしましょう」
三人組の一人、金髪の男性が代表して立ち上がった。
「私はアメリカ合衆国の中央情報局所属、マークスだ。申し訳ないが、詳しい役職などは教えられない」
「「「アメリカ!?」」」
マークスの言葉に俺だけでなく、一緒のソファーに掛けていた二人も驚いていた。
(中央情報局って……CIAか!?)
そんな人物、映画の中でしか見たこと無いぞ!?
マークスに続いて隣に座っていた金髪女性も口を開いた。
「私はクリス。彼と同じ所属よ。よろしく」
クリスと名乗った女性もCIAのエージェントらしい。二人とも名を名乗っただけの簡単な挨拶だけで済ませた。もしかしたら本名ですら無いのかもしれない。
それでは、隣にいる茶髪の青年もCIA所属なのだろうか?
「自分はアレキア王国出身の兵士、ムニルです。どうぞよろしく」
「アレキア……?」
記憶に無い国の名に、俺の隣に座っている男性が首を傾げていた。
その疑問にはマークスが答えた。
「アメリカ政府は現在、ルルノア大陸にあるアレキア王国と同盟関係にあります。ムニルは今回の作戦行動における、アレキア王国からの協力者です」
「ルルノア大陸!?」
「それって……確かここではない他の大陸ですよね?」
「作戦行動……?」
俺とまだ自己紹介を終えていない二人は驚いたり、疑問を口にしたりしていた。
「その件については互いの紹介が終わり次第、順を追って説明しよう。次は……喜多野さん」
宇野に指名され、隣に座っていた男性が立ち上がった。
「私は探索者クラン“和洋シチュー”のリーダー、喜多野順平というものです」
「探索者……? ああ、確か冒険者のような存在だったかな?」
「ええ、その認識で合っております」
マークスの問いに、彼の傍にいた長谷川が代わりに答えた。
(やっぱり探索者だったか……)
身形や雰囲気からして、そうではないかと予想していた。
では、隣にいる若い女性もどこかのクラン所属だろうか?
今度はその黒髪の女性が指名されたので自己紹介を始めた。
「探索者クラン”月花”のリーダー、藤堂ミツキです。どうぞ宜しくお願いします」
藤堂と名乗った女性は綺麗にお辞儀をした。
新日本政府が立ち上げた探索者ギルド
冒険者ギルドの真似事とも揶揄されがちだが、探索者の地位は徐々に確立され始めている。
探索者制度が施行された当初は凄まじい熱狂ぶりで、多くの者が探索業務……主に魔物の討伐や周辺調査、森の開拓作業に挑戦した。
しかし、スキルを得たからと言って全ての者がすぐに戦えたり、森を開拓できたりする訳ではない。
魔物からの襲撃を警戒しながら、地図も補給地点すらも存在しない森の中を探索する行為は想像以上に過酷で、現実に打ちのめされてリタイアする者が非常に多かったのだ。
制度がスタートして少し経つと、一時の熱狂は下火になった。探索活動で大怪我したり、命を落とす者も少なからず出ていたからだ。
だが、それでも探索者は人気の高い職業であり続けた。その最大の理由は、ごく少数ながら、成功した者たちの存在があったからだ。
(クラン“和洋シチュー”に“月花”か……)
シグネたちほど探索者の情報に明るくない俺でも知っている。どちらも探索者チームとして成功を収めた有名クランであるからだ。
クラン“和洋シチュー”
制度施行以来、初期から活動している大手クランである。
ここのクランの特徴は、入る者拒まずの精神で、探索者の能力問わず誰でも入れるアットホームな雰囲気が売りだと聞いていた。
クランに所属している探索者の数はトップクラスだが、その分質の方は玉石混合といった具合らしい。だが分母も多ければ当然宝石の数も多いわけで、クラン内の主力パーティは実力派揃いだ。
喜多野はその大規模クランの長だという。ステータスもそれなりに高いのだろう。
クラン“月花”
こちらも能力問わずメンバーを募集しているそうだが、ここのクランには一つだけ入団条件が存在した。
その条件とは女であること――――
“月花”は女性探索者のみで構成されており、やはり初期の頃から名を馳せている大手クランの一つだ。
(まさかリーダーがこんな若い子だとは思わなかったが……)
佐瀬たちとそこまで年齢が変わらなそうだ。彼女も相応の実力者なのだろう。
「……矢野さん」
長谷川に名前を呼ばれてハッとした。
もう自分以外の紹介は済んでいるのだ。何時までも考え込んでいる場合では無かった。
「矢野一心です。主にエイルーン王国辺りで活動している冒険者です。宜しくお願いします」
無難に自己紹介を終えると、ここに呼ばれたメンバーはそれぞれ思い思いの感想を述べていた。
「エイルーン王国か。まだそちらには足を運んでいなかったな……」
「その名前……君は日本人なのか!?」
「冒険者…………」
今の俺の見た目は高校生くらいの背恰好で、しかも白髪だ。多分、この中でも俺が一番異質な存在なのかもしれない。
全員が俺の方を興味深げに観察していた。
(ん? あの女性…………)
確かクリスと名乗っていた女エージェントだが、彼女の視線に俺は違和感を覚えた。表情も硬いようだが、何より彼女の瞳の動きが気になったのだ。
まるで俺ではない、別の何かを視ているような……
(……あ! この人、鑑定系スキル持ちか!)
合点がいった。
思えば一流の冒険者たち――ディオーナ婆さんやカーター兄妹は、シグネのちょっとした仕草から鑑定スキルを持っていることを見抜いていた。
今まさに俺もそれを実感できた。これもステータスが上昇し、動体視力が向上した恩恵だろうか。一流冒険者の仲間入りができたようで、ちょっとだけ誇らしい気分だ。
(……ま、別に視られても問題ないけどね)
ちょっと遊び心に火が着いた俺は、ステータス表記を弄って、だいぶ昔に流行ったネット掲示板のアスキーアートを表現してみた。
両手を広げてブーンとするやつである。あれをステータス画面に表記させたのだ。
「「ブフゥーッ!?」」
クリスだけでなく、長谷川も丁度俺を視ていたらしく、突然二人して吹き出していた。
「え? クリス……一体どうしたよ?」
「は、長谷川……?」
「べ、別に……何も~~っ!!」
「す、すみません……! くふっ……くふふっ!!」
「「「…………?」」」
如何! 想像より大きなリアクションが返ってきた。
しかも、長谷川は丁度その年代だったのか、アスキーアートがかなりツボに入ったらしく、今も必死に笑いを堪え続けていた。
(悪い事したなぁ……)
急に吹き出した二人を見て、他の者たちは意味が分からず困惑していた。
「あー、それで宇野事務次官。そろそろ俺たちを呼んだ理由を説明して頂けませんか?」
「…………そうだね」
慌てた俺は強引に話を進めようとするも、今の言動で宇野には、俺が何かしたのだと勘付かれてしまったかもしれない。
というか、絶対あとで長谷川から事情を聞くだろう。
やってしまったが……後悔はない!
「まず今回集まってもらった理由は、明日に行う日本連合国視察の打ち合わせだ」
つまり、このメンバーで日本連合国に行くという事だろうか? ちょっと意外な人選である。
「政府からの主なメンバーは私ともう一人、現職の外務大臣が視察に赴く」
「げっ!?」
俺は場所も弁えずに声を上げてしまい、それを見た宇野は笑って応えた。
「心配しないでくれ。多分君が想像した大臣ではないよ。東山元大臣は既に辞職している。明日来られるのは元外務副大臣である夏野外務大臣だ」
「あー、そういえば、そうでしたっけ……」
そうだった。あの大臣は既に失脚していたな。
そりゃあ、あんな失態犯せばそうなるわな。あんなのが大臣のままだったら、エイルーン王国との国交にも支障をきたすだろうし。
「その護衛として今回、B級探索者でもある喜多野氏と藤堂氏にお越し頂いた訳だ」
なるほど、俺が受けた依頼は宇野たちを日本連合国に送り届ける事であるが、護衛役は別に確保していた訳か。
(B級探索者、ねぇ……)
シグネ談によると、現在探索者の中でA級はたった一人、田中龍一郎という青年だけのようだ。まだ制度が出来て一年も経っていないのだ。A級はおろか、B級探索者も数えるほどしか存在しないらしい。
つまり護衛に選ばれたB級の二人は実質、新東京でトップクラスの探索者なのだ。
「本来はそこで定員オーバーだったのだが……」
宇野はチラリとマークスたちの方に目を遣った。
「話を聞きつけたMr.マークスたちが、どうしても同行したいと願い出てね。まずはそこの相談だ。彼ら三人も同行させて問題ないかな?」
ふむ、今の宇野の話に俺は色々考えさせられた。
特に“定員”というワードが気になった。
宇野が返答を待っていると、和洋シチューのリーダー喜多野が口を開いた。
「凡そ一週間の視察期間中、二名の護衛をするよう聞かされておりましたが、そこへ更にそちらの三名も護衛対象に加わる……という事ですかな?」
喜多野の問いに答えたのはマークスだ。
「あー、俺たち……失礼、我々の護衛は必要ありません。自分の身は自分で守れますので」
「Mr.マークス。ここは正式な場ではないので、普段通りの口調で構わないよ。【自動翻訳】スキルがあると言っても、口調などは補正してくれないらしいからね。それではこの先疲れるだろう?」
宇野がそう提案するとマークスは明らかに安堵していた。
「そんじゃあ、お言葉に甘えさせてもらって」
マークスが口調を崩すとクリスが溜息をついていた。
「俺もクリスも闘力はそれなりにあるので問題ない。ただ、出来ればムニルの面倒を見てやってくれないか? 彼も立派な兵士だし男だ。勿論戦えるんだが、こちらの立場上、彼を死なせる訳にはいかないのでね」
「な、なるべく足を引っ張らないよう努力致します……!」
俺にシグネのような鑑定スキルはないが、それでもある程度の力量差は伺える。マークスとクリスの二人は十分強い。恐らくB級冒険者レベルはあるはずだ。
一方、ムニル青年は……贔屓目でD級って評価だな。
「分かりました。私の方はマークスさんたちが加わるのに異存はありません」
喜多野が返答すると、今度は代わりに藤堂が手を挙げた。
「何かな? 藤堂君」
「移動手段はどうされるのですか? 日本連合国は山脈の向こう側にあると伺っております。一週間の短期間ということは、何か飛行機や船のような乗り物を利用されるのでしょうか?」
なんだ、宇野はまだエアロカーの事を説明していないのか。
恐らく俺に気を遣って、極力こちらの情報を流さないように配慮しているのだろう。
「その移動手段なんだが……その前に先に確認しておきたい。矢野君、今回君のお仲間たち三人は参加しないと伺っているのだが……だとしたら、このメンバーで構わないかね?」
なるほど、既に長谷川経由で佐瀬たちが不参加なのは、宇野の耳にも入っている訳か。
先程定員と言っていたが、元々エアロカーは八人乗り仕様だ。つまり、佐瀬たちが加わるとあと四人しか席がない。
一応荷台スペースも利用すれば、最大12人乗れるのは確認済みだが、今回はメンバーがメンバーだ。大臣やCIAエージェント、トップ探索者たちを詰め込む訳にも行くまい。
宇野もそれを考慮して、わざわざ定員の話を持ち出したのだろう。
「ええ、構いませんよ。俺と宇野さんに外務大臣、探索者のお二方とマークスさんたちで丁度定員八名……承知致しました」
俺がそう宣言すると宇野はにっこりとほほ笑んだ。
「藤堂君、先ほどの質問に答えよう。今回の乗り物は彼……矢野君が提供してくれる。空飛ぶ乗り物だ」
「え!? この子が……?」
まだ高校生くらいの見た目である俺を見て藤堂が困惑していた。
「論より証拠、良ければ実物をお見せしましょうか?」
「その方が話は早そうだが……まだ話したい事があるんだ。後でもいいかい?」
宇野にそう言われ、俺と藤堂は揃って頷いた。
「分かりました。ちゃんと人数分の移動手段があるのでしたら、私の方も問題ありません」
「よし! これで全員の同意が得られたね。それでは改めて具体的な説明をする」
そこから宇野が説明したのは、日本連合国へ赴いてからの主な活動内容であった。
まず、
ただし、米国とどちらかの日本国が話し合うのは問題ない行為らしい。そこもまた二国間との交渉なので、逆に第三国側は立ち入れないが、そもそも新日本政府は日本連合国をまだ国として認知していなかった。
それは向こうも同じで、そこが今回厄介な点でもあった。
兎にも角にも、一度現地を視察して情報を得ない事には、日本連合国をどう扱っていいのか判断がつかないのだ。
それと、護衛役は基本的に探索者である喜多野と藤堂に一任されているが、非常時には戦闘できる者が互いをサポートし合う事で紳士協定が結ばれた。
噂によると、現地では隣国と揉めている際中らしいし、少し前までは“氷糸界”の脅威もあった地域の近くでもある。更に道中は魔物の襲撃もあるかもしれない。
ここのメンバー誰一人でも欠けてしまうと、色々と不都合が生じるのだ。
(俺が死んじゃったらエアロカー操縦できないしね)
マークスたちや宇野らを死なせても外交問題になりそうだし、トップ探索者たちも世間からの人気が根強く、職務上とは言え、蔑ろにしていい駒ではないのだ。
それと、最後に重要な点が話された。
「今回の外部協力者やMr.マークスたちのスキルや能力、所持品に関して、世間に公表する事を避けて頂きたい」
外部協力者とは俺や喜多野、藤堂の事を指す。
(これは……エアロカーの件を広めるなってことなのかな?)
現状、山脈の向こう側へ行く手段はかなり限られてしまっている。
もし万が一、俺が自由自在に行き来できる乗り物を持っていると世間が知ったらどうなるか。
私利私欲で寄ってくる者は当然として、知人や家族が互いのコミュニティに居る場合、自分を連れていけ、逆に家族を運んできてくれと言い出す輩も出てくるだろう。
仮に後者の理由なら、俺はそれを非難する気持ちにはなれないのだが、こちらも身一つなので全員の要望を聞き入れるのは不可能なのだ。ご勘弁願いたい。
宇野の言葉にメンバー全員が承諾した。彼らにもそれぞれ知られたくない秘密があるのだろう。
ある程度の話し合いが進み、場所を基地内部のとある倉庫に移した。倉庫と言っても中は広く、ここならエアロカーを浮かせるデモンストレーションくらいならできるだろう。
俺がエアロカーを取り出すと宇野や長谷川以外の全員が驚いていた。
「これが……空飛ぶ乗り物?」
「まるで未来のオープンカーのようだな……」
「ねえ。これ……どのくらいのスピードが出るの?」
クリスに尋ねられた俺は少し考えてから答えた。
「正確に計測した事は無いが……多分時速80km以上は出てると思う」
「80km……障害物の無い上空でそれなら十分早いわね」
アメリカはメートルではなくマイルの筈だが伝わったのかな? 自動翻訳スキル君の仕業かもしれない。
「あのぉ……これ、何処かで売っているか、造れるのでしょうか?」
藤堂が遠慮がちに尋ねると、周囲の者たちの表情が一変した。
(うわっ! 全員の目、怖いんですけど……)
宇野たちもこれの仕組みを完全に理解していない筈だ。初対面時はエアロカーの情報を伏せていた経緯もあってか、彼らはこの手の話題をタブーだと思っていたのかもしれない。
(……今更、この情報を独占している意味はないよな?)
むしろ、俺たち以外にも空を飛べる者が増えれば、今回のように呼び出される案件も減るだろうし……メリットだらけだな!
まぁ、俺の方も日本連合国には興味があったので、今回の視察に関してはそれほど煩わしさを感じてなどいなかったのだ。
「これは俺が自作したので販売はしていません。ですが、作り方なら教えてあげられますよ?」
「――っ!? ぜひ!!」
美人にそこまで迫られると俺としても断り辛い。
俺は使用している素材やマジックアイテムを教え、それを公表する許可も与えた。ただし、俺らが所持している事は秘密にしてもらった。
最近はあまり人目を気にせず使ってはいるが、わざわざそれをアピールするつもりもない。
「なるほど……“魔法の黒球“ですか……! 確か管理局の買取目録に、そんな名のマジックアイテムがあったような……」
「長谷川、すぐに確保だ!」
鑑定士でもあり、探索者ギルドの幹部でもある長谷川は、どうやらそのマジックアイテムに心当たりがあるようだ。
一方、藤堂と喜多野はスマホで誰かに連絡をしていた。
「ええ、そうよ! そのマジックアイテムと関連素材を至急集めさせて!」
「エント種の素材を集めてください! 出来ればエンペラーエントを……! はい、そうです。見つけても決して手は出さないように! なにしろ相手はAランクですから……!」
一方マークスはスマホではなく、どこかで見た貝殻に口を近づけて誰かと喋っていた。
「はい、その通りです。ただし、そのアイテムはかなりの魔力保有者でないと利用できないらしいです。ええ、分かりました」
(あの貝殻は確か……そうだ! クラン“滅竜の剣”の冒険者たちが使っていたマジックアイテムか!?)
前に聖者ノーヤとして山脈の向こう側に出向いた際、偶々遭遇した冒険者たちが利用していた貝殻だ。恐らく通信機能があるマジックアイテムだと思われる。
(まさか……あれでルルノア大陸のアメリカ政府と通話してるってのか!?)
もしそうだとしたら、とんでもない通信距離である。
魔導電波圏内のスマホほどの利便性はなさそうだが、特定の誰かと話す事に関しては次元が違い過ぎる。何より傍受の心配もなさそうだ。
これが科学と魔法というやつだ。どちらもなかなか侮れない。
(……あれ? 魔導電波も魔法扱い……かな?)
しかし……ちょっと大事になってしまったな。
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