関ケ原・・・13
関ヶ原合戦が行われていても洋一と玲子にとってその合戦模様を見る事も出来ず資晴からの報告を後日待つ以外知る方法は無かった、そこでかねてより玲子は疑問にしてした難問への挑戦に取り組んでいた、最大の疑問、何故今成洋一が那須資晴と460年という刻を経て繋がったのかと言う難問の解答を求めて今成家と那須家に関わる史跡の再調査という名目の夫婦水入らずの旅行をしていた。
今成家に関係する史跡と言えば、今成神社と洋一家にある昔からある蔵の中身を調べるしか無く、故に那須家に由来のある地を訪ねていた。
調査と言う名目ではあるが基本旅行であり洋一は玲子の付人という雑用係、他にも玲子を持ち上げる音頭取り及び太鼓持ちの役目であった、二人が結ばれた当時から主従の関係が出来上がっており洋一はその役目に苦を感じておらず指示される方が楽であり洋一もそれなりに楽しんでの調査旅行をしていたがその主人である玲子は主に温泉三昧に浸っていた。
那須には沢山の温泉地がありこの調査では那須家に由来のある温泉に玲子は浸っていた、要するに玲子の慰安旅行とも言えた。
那須には有名な鹿の湯(元湯)を含む那須湯本温泉をはじめ、板室温泉、三斗小屋温泉、大丸温泉、北温泉、弁天温泉、高雄温泉が発見され、那須七湯と呼ばれる代表的な温泉がある、その他にも塩原温泉、湯西川温泉等の名の知れた温泉地が沢山ある、そして今宿泊している温泉地は下野の薬湯と呼ばれる板室温泉であった。
「薬湯と呼ばれるだけあって湯治客が多い処だね、なんでもこの先の旅館では自分達で食事を作って泊まれる旅館があるそうよ、その分宿泊料金が安価なんだって!!」
「その話自分も耳に挟みました、食事付きで7000円程度の所もあれば自分達で食事手配する宿もあるそうで楽しみ方も色々ですね!!」
「洋一さんこの温泉、平安期後冷泉天皇の時代の康平2
「玲子さんに言われて自分なりに考えたんだけど二人の共通する史跡とかって無いようで、仮にあるとすれば今成家で初代が勧進した川越の今成神社と那須家と何かしらの由縁とかが繋がっている様な事は無いですかね?」
「私もその点は調べたけどご先祖が勧進した神社だからと言っても神社ってどこにでもあるし、答えに近づいたと思うと結局関係無かったと言う事がありすぎて・・・神社かぁ~!! 那須家の菩提寺は大田原市にある玄性寺だけど寺の歴史は資晴よりも新しいし、神社ねぇ~!! 又神社でも調べてみようかな? でも大変なんだよ数が膨大でモチベが維持できなくて(笑)」
「玲子さんが以前調べた神社ってどこの神社なのですか?」
「あの時は資晴の父が勧進した牛頭天王の神社よ、那須烏山市の有名な山あげ祭りが今も開催されているきっかけの神社『八雲神社』牛頭天王は元はインドの祇園精舎の守護神、
「あの京都の祇園祭で有名な八坂神社と同一なんですね!! その神社とは関係無かった訳ですね!?」
「そうそう八坂神社が総評の呼び名で、この神社とは流石にご先祖の今成家でも全くの無関係だったわよ(笑)、祇園祭も当時京都で疫病が蔓延した事で無病を願う祭りでもあるし、でも那須資胤は小さい大名でもあるにも関わらず八雲神社を勧進した事は本当に偉業だと思うよ!!」
「それとね神社ってお寺より圧倒的に数が多くて神社本庁で把握している数は約88,000でその他にも廃神社となった物とか、神主が気を利かして分祀して造られた神社なんかもあって実際の数は30万社を超えるだろうと言われているの、特に五穀豊穣を願って造られた稲荷神社なんかは数が多くて調べようが無いのが実情なの!!」
「狐の稲荷神社ですか?」
「イメージはそうなんだけど稲荷の意味は田んぼの稲、お米が豊穣でありますようにって造られた神社、狐は稲荷神社の神獣だよ、熊野神社の烏と同じ扱いかな・・・あれ・・・えっ!?・・・・ 今!・・私・・・烏って言ったよね?」
「はい、烏って言いましたよ!!」
(烏は・・・八咫烏・・・八咫烏と言えばサッカーの紋章・・・サッカーは関係ないか?・・・でも八咫烏は天狗の事でもあるから・・天狗と言えば鞍馬天狗?・・・・鞍馬天狗は帝を守る志能便・・・忍者の源流・・・その組織を作ったのが聖徳太子・・・律令の国として造られたのが那須の国・・・那須の名前の由来は那珂川の中州であって那須という語源はアイヌ語・・・そして那須国造碑は建立が700年、689年に那須国造で評督に任ぜられたのが
※ 八咫烏の記録は神話の古代史、日本の誕生と深く関わっている『古事記』『日本書紀』『延喜式』のほか、キトラ塚古墳の壁画や珍敷塚古墳の横穴石室壁画、千葉県木更津市の高部三〇号噴出土鏡、玉虫厨子(法隆寺)の台座などにみられ、『続日本紀』には、朝賀の儀の折、大極殿前に立てられた7本の
玲子の頭は烏という言葉でこれまで調べ上げた数々のバラバラとなっていたピースを思い出し一つの絵を完成させようとしていた、戦国時代であれ裕福な豪商であれば神社や寺を勧進したケースは数限りなくあり北条家で高禄で仕えていた今成であれば神社を勧進していても何ら不思議では無かった、では何故に熊野なのか? 熊野は国造りに関係した神話の世界から登場する日本最古の神社と言えた、今成との関係性はあり得ない事であり考えれば実に不思議な事実であった、もしやその答えに資晴との繋がりも・・・見えなかった糸が、これまで点であった一つ一つのピースが糸として繋がる予感を玲子は感じ取っていた。
── 修験者と幻庵 ──
関ヶ原合戦が本格的に始まる半月程前に北条幻庵が目に見えぬ大きい一手を指していた、東国の中でどんなに立場が大きい者であっても指せぬ一手と言えた、これまで幻庵の経歴を説明した個所は幾つかあるが幻庵が持つ位に箱根権現というのがある、この箱根権現という立場は日ノ本の裏の社会に密接に関係した日本独自の組織の一つである修験道、即ち山岳信仰と呼ばれる山伏又は修験者の者達にとって聖域の地の一つが箱根であった、その箱根という聖域の頂点に立つ者こそが幻庵であった。
修験道とは、森羅万象に命や神霊が宿るとして
その霊山の一つである箱根で幻庵が修験者である山伏達に関ヶ原の合戦場に行き新しき日ノ本が始まる天啓を授かれと言う暗示を示した事で目に見えぬ者達の移動が始まった、修験者である山伏達に国境は無い、日ノ本全ての修験の聖地が道場である、移動するのに誰彼の承諾も承認も不要であり箱根の権現である幻庵が天啓を授かれと言った一言は修験者に取って何よりも重い言葉であった。
※ 日本各地には山岳信仰の山が沢山あり富士山はその象徴的な山でもある、又この修験道の始まりは熊野と関係が深いされ熊野三山の地は熊野信仰とも言われている。
修験道を究めようと日々修行に励む者達とは別にもう一つの表に出ていなかった者達もその動きに合わせて関ヶ原に移動する者達がいた、以前那須資晴による計らいで生き延びた伊賀の国で暮らす忍びの者達である、織田信長による天正伊賀の乱を回避した1500名の忍び達も目に見えぬ形で静かに関ヶ原に集結していた、伊賀の忍びは甲賀と違い銭雇の忍びの家が多数あり顕如や毛利が秀吉に靡き膝間付き配下となるも那須家の恩を忘れずに主家を特定せずにこの日まで静かに暮らしていた、甲賀は主に主家に仕え、伊賀は銭雇という特徴もあり比較的自由に動ける立場であり那須資晴の天下取りに是非に何某かの協力をしたく近在に潜伏していた、そこへ関ヶ原に展開する那須本陣が突如俄かに立花に夜襲を受けた事でお役に立つべく1500名の忍び達が闇の中に溶け込んだ。
── 羅刹女 ──
忠義が守る関ヶ原の本陣に次々と立花の兵が那須資晴がいるであろうと確信し襲い掛かるも那須軍も陣が破られる事の意味を承知しており両軍一死を掛けた攻防戦が繰り広げられていた、時間の経過と共に崩れかけた本陣が冷静さを取り戻しつつあり那須の騎馬隊も弓から槍に変え敵勢を徐々に蹴散らし始め劣勢を刎ね返えしたと思われたが又もや危機が訪れていた。
「者ども続け!! 立花に遅れを取るな!! 動ける者は我に続け!! 暗闇が味方する、那須本陣に激襲せよ!!」
立花宗茂が夜襲戦に及んだ事を知った前田利家が激を飛ばしそれまで落胆していた兵達に向かって夜襲に参戦の命を下した事で暗闇の大戦闘へと発展して行ったのである、味方なのか敵なのか判断に迷った方が死地に向かう、那須軍は前田が参戦した事で防戦一方となりそれも間もなく灰燼に帰す処迄崩れ始めていた、辛うじて明智光秀が率いる5千の部隊が忠義を守る小振りの円陣を組みなんとか凌いでいた。その陰には伊賀の忍び達も暗闇の中で関白側の敵勢だと判断した場合は那須資晴を守るべく闇の中で戦に参戦していた。
平野で激しい野戦が行われる最中、南宮山での本陣内では那須資晴が気を失い横たわり介抱されている最中に羅刹女の軍勢が死地に飛び込む夜襲が開始された。
羅刹女とは勿論、立花宗茂の正室、誾千代である、女城主として幼い頃より武将としての教育を受け数々の戦場で槍を振った武将であり歴戦の雄と言えた、三方向から隊列を編成し200名と言う少数ではあるが暗闇の姿見えぬ刻を生かし那須資晴が横たわる陣幕に襲い掛かった。
女性で編成されている事もあり単に力での勝負では不利となる事からその時々に応じて三位一体~五位一体という攻撃と防御に優れた人数で組を作り簡単に討ち取られぬ隊形で攻撃出来る誾千代の女性だけの部隊で本陣に突撃が開始されていた。
当初暗闇と言う事もあり襲い掛かる敵の姿がよもや女性だけによる兵で編成された部隊とは想像も付かぬ中、薙刀と槍による刃の交差する火花が散る事に、しかし戦闘が開始されて初めて相手が女性だけで編成された攻撃部隊だという事が判明した。
その驚きは鞍馬達でさえ予想付かぬ事であり対処に思案するも小太郎は那須資晴に刃を向ける者に容赦は要らぬと声を上げ交戦していた。
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