勝頼と太郎


あれは・・・あれは義兄か・・・やはり噂は本当だったのか、生きておわしたか、義兄が生きておわしたか、横にいるお方は飯富様か・・・あれは誰であろうか? 父上に似ておるが・・・もしや・・まさか爺様であろうか、今川に追放されたと言う爺様なのか?


諏訪勝頼、太郎がお家騒動で処断されたと聞き、信玄の跡取りとして今は武田勝頼と名乗っているが、本来は庶流の弟であり、太郎が武田家の後を継ぎ、自分は諏訪家を継ぐ事になっていた、武田家では庶流の家は軽く扱われ、甲斐武田家の譜代の重臣達より下に置かれ、お家騒動の前は勝頼を見ても碌に挨拶もされず肩身の狭い境遇であった。


そんな中、嫡子太郎は義兄として常に優しく接しており儂が当主に成ったら勝頼は諏訪を継ぎ、何かあったら儂が守るから安心致せと励ましてくれていた、両者には諍いも無く優しい兄であり、兄を慕う可愛い弟であった。


義兄に再会する場がこの戦場とは、それも敵と味方となっている、どうすれば良いのか?


義兄の向こうに敵の那須がいる、儂には2000もの騎馬隊がいる、父上のご命令通り突撃するべきであろうか?、義兄を倒さないと行けないのか? 



「御屋形様大変です、若様が現れました、敵の騎馬隊は若様、太郎様が率いております、その横に飯富殿、そしてご先代までもおり『御旗 楯無も ご照覧あれ!』日の丸の御旗と盾無の鎧を持っております、我ら騎馬隊の者が手出し出来ずに留まっております」



「なんだと怒怒怒怒怒!!!!! 太郎が現れただと怒怒怒怒!! 親父まで怒怒怒怒怒!!!!!」



「ゴホッ、ゴホッ・・ゴホッ・・・バタ!?」



「御屋形様・・・御屋形様・・・医師を・・医師を呼べ! 陣幕を前に!! 御屋形様しっかり・・御屋形様しっかり・・真田、狼煙を上げよ、合図を送れ、今すぐ上げよ・・ゴホッ、ゴホッ!」



「判りました、今すぐ狼煙を上げます、狼煙を上げよ、急ぎ狼煙を上げるのだ!!」



「狼煙が見えました、合図が上がっております、馬場様合図であります!!」



「確かに狼煙である、これより那須の本陣を後ろから襲う、一気に向かう、目の前敵には目もくれては成らぬ、那須資晴だけを狙うのじゃ、後はガラ空きの筈じゃ、敵は陣の前方で戦っている、我らは一気に駆け抜け、敵陣を襲う、槍を前に突き出せ! 突撃じゃ!!」



「半兵衛、今ぞ、騎馬隊の動きが止まったぞ、信玄の陣に十兵衛を向かわせよ、敵の動きが止まった!」



「御屋形様どうやら膠着となっております、太郎殿と敵騎馬隊がにらみ合ったまま動きがありませぬ!!」



「御屋形様大変です、若様の資晴様の陣後方より敵と思われる騎馬隊が向かっております、その距離半里、間もなく急襲されようとしております!」



「なんだと資晴め、油断をしおって、良し、半数は資晴の陣に向かい襲って来る騎馬隊を迎撃するのだ、我らは信玄の陣に向かう、決着をつける、半数は儂に付いて来い、鋒矢の陣形を五つ作り信玄の陣を襲う、では大田原、資晴を頼んだぞ!」



「十兵衛様、十兵衛様、武田の陣には5000程しかおりませぬ、鉄砲隊数百と馬廻役1000騎、他は諸役の者達であります、襲うには今しかありませぬ!」



「良し、ではこれより信玄の陣を襲う、槍騎馬は突撃し、弓騎馬は援護を行い、騎馬に道を作るのだ、信玄の首は我らにて取る、行くぞ!! 進撃じゃ、進め!!」



信玄の騎馬隊6000と太郎達騎馬隊2400は睨み合いの膠着となり、そこへ勝頼のもとに母衣衆の真田が駆け寄り、信玄が倒れた事を耳打ちした。



「我は武田家当主、武田太郎義信である、新しい武田家を興すために参った、儂は処断されておらん、この通りお前達の前に推参した、この旗と盾無を見よ、この旗を掲げた儂に逆らえる者がおれば儂に立ち向かって来るが良い! 立ち向かわずに儂の元に来る者は下馬し、儂に従え、我こそ新しき当主武田太郎義信である!!」



威風堂々と宣言する太郎の威圧の前にどう反応して良いのか解らず戸惑う騎馬隊、そこへ2000騎の騎馬隊を率いていた勝頼が前に躍り出た。



「義兄お久さしゅう御座います、勝頼です、会いとう御座いました、処断されましたと聞き悲しんでおりましたがお会い出来て嬉しゅうございます」



「お~義弟よ、儂も会いたかった、息災そうで何よりじゃ、儂が不在で大変であったろう、これよりは儂が勝頼を守る、共に新しき世を作ろう!」



「この勝頼、今すぐにでも義兄の元に行きとう御座いますが、今は一角の武将として兵を率いております、一旦陣に戻りて父上に兄上が現れました事を伝え差配を聞いた上でどうするか決めとう御座います、暫くこのままにて戦わずお待ち頂く事出来ましょうや?」



「他の者ならいざ知らず、可愛い弟の言葉を聞かぬ兄ではない、では暫し待つ事と致す、ここに居る者全て下馬せよ、今の話を聞いたであろう、戦う時は堂々と戦え、卑怯な手を使うな、皆下馬致せ!」



「義兄上ありがとうございます、では暫し行って参ります、皆の者義兄と儂の命である下馬せよ!! 下馬せぬ者はこの勝頼がその首を刎ねる!!」



信玄のいる陣に戻ろうとする勝頼の視界に信玄がいる陣後方より土煙が、その横からも大きい土煙が視界に入った。

同じ頃、資晴の陣にも後方より土煙が上がり、東より無数の別の土煙が上った、武田、那須の両本陣も敵と思われる軍勢が向かって来る事に、異変に気付き両陣が動きだした、近づく土煙は本陣から1キロ程と迫っていた。


武田の陣では信玄を守るべく、その周りを穴山信君を将に本陣馬廻役1000騎、真田信綱兄 、母衣衆200騎、真田昌輝弟、母衣衆100騎、鉄砲隊600、工兵隊1000、その他兵糧部隊2000が槍衾の円陣を組み、襲撃に急ぎ備え展開へ。


那須資晴の陣も半兵衛が八卦の中心に資晴がおり、芦野忠義、馬廻役1000騎(弓騎馬隊)と長柄足軽500騎他伝令100騎が隙間を固め、その周りを八卦の構成する7つの駒が時計回りにゆっくりと衛星のように回っていた。


八卦の陣は防御の陣ではない、前方に配置した第一段、二段、三段は攻撃特化の騎馬隊だが、本陣を衛星のように回る八卦は敵を誘い込む道が8本あり、そこに入った者を両側から挟撃する絶対防御と攻撃を備えた陣であり、諸葛孔明が編み出した古代三国史上不敗の陣である。



「御屋形様をお守りする、馬廻役は迎撃の態勢を作れ、足軽は槍衾を隣との隙間を作るな、騎馬隊が戻るまで耐えよ、必ず御屋形様をお守り致せ!」



「資晴様、敵騎馬隊は資晴様を目掛け飛び込んで参ります、鎧を他の者にお願い致します、急ぎ御脱ぎになって下さい」



「な~に、半兵衛を儂は信じる、逝く時は皆と逝く、梅は儂の側に、忠義、そちは儂と一緒ぞ、初めて逢った日を覚えておろうな、そちと儂は一緒ぞ、勝ち抜くぞ!!」



「この銀角に、忠義にお任せあれ、若を必ずお守り致します、騎馬隊五峰を構えよ、容赦なく打ち込め!!」



信玄は太郎が現れた事で激情し咳き込み呼吸が困難となっていた、明らかに労咳による肺を病んだ咳であり、咳を行う度に体内の酸素が外に排出され、狭くなった気道からは空気を中々吸い込む事が出来ず話す事も出来ずに横臥していた、医師は気道確保のために頭を擡げもたげ喉笛を天に向かって突き出すようにして何とか確保していた。


喘息もそうであるが、咳き込むと急激に体力を失い、気道が細くなり呼吸が出来なくなり窒息状態となる、最悪死に至る場合もある、信玄の状態は正に一歩手前と言える。



「父上が危ない・・・その方達はここに下馬し、儂の隊は急ぎ陣に戻る、急げ!!」



本陣に向かう敵と思われる軍勢の土煙、本陣には5000近くの兵もおり大丈夫であろうと予想するも急ぎ2000の騎馬隊を引き連れ戻る勝頼。


一方の太郎も資晴の陣を見れば同じ様に土煙が立ち上がり明らかに何者かが本陣に向かっている事が見て取れた。



「爺様の隊を若様の処に戻して下され、ここは儂と飯富の父上にて対処致します、間違いは無かろうと思いますが向かって下され!」



「承知、飯富後を頼んだ!!」



勝頼と信虎が戻るため移動した事で残された騎馬隊に異変が起きる武田側6000の騎馬隊に対し信虎が抜け1900騎となった事で武田側の山県が率いる1500騎が急に下馬から騎乗し攻撃の姿勢を見せた!



「お待ちあれ、山県殿、先程の若様と勝頼様の話を聞いておらぬのか、なにゆえ騎乗した、我ら騎馬隊に恥をかかせる所存か、四天王の一角である山県殿が言い付けを守らぬとあれば、我も四天王の一人として山県殿を御止め致す為に立ち塞がりますぞ! 皆の者山県殿の前に道を塞げ!!」



味方である4500騎に塞がれ動けぬ山県隊1500騎、それを身近で見ていた太郎が声を上げる!!!



「皆の者静まれ、全ての者は聞くが良い、儂がお家騒動となったは、その山県による密告にて起きたのである、今川家が衰退し、それを援ける様父信玄に助言するも、聞き入れられず、それを幸いにそこにいる山県が兄である飯富虎昌を亡き者にし、飯富家を乗っ取る企みによりありもしない事を父信玄に私が謀反を企てていると密告した事が事の始まじゃ!!!」



太郎の話を聞き、戸惑い、驚く一同、ここに居る者は誰一人真実を知らずに、太郎が信玄に対して謀反を企てたと聞いていた者達である。



「今、山県が騎乗し我らを襲い掛かろうとしたは、己の犯した企てが露見する事を恐れたからじゃ、これで判ったであろう、儂が何故ここに現れ、当主と名乗るかを、儂にやましい事が無いから堂々と御旗を持ちここにいるのじゃ、山県よ、そちの悪だくみは今ここに露見した、如何致す!!!」



「え~い、何故じゃ今更若様が現れても、手遅れです、もう遅いのだ、若様は謀反人なのだ、兄虎昌と一緒に処断されて居れば良いのに、今更もう戻れぬ、世継ぎは勝頼様であり太郎様ではありませぬ!」



「馬鹿者が、誰が家を継ぐと言った、新しい武田家を築くのだ、汚れた武田家では戦国を生き残れぬ、乱取りを繰り返し、無辜の民を襲う家などに価値は無い、その方達騎馬の者達よ、その生き方に恥を感じぬのか、恥と思わぬ者は我に掛かって来るが良い、儂の刃にて鉾にて冥途に送ってやる餓狼如き騎馬隊は新しい武田家には要らぬ、不要なのじゃ!!」



「え~い、儂の騎馬隊が相手になる、武田家四天王の山形騎馬隊の鉾を受けて見よ、どちらが正しいか証明して見せます、若様宜しいか?」



「お待ち下され、そ奴は儂の弟であり裏切者である、若様が戦うなど勿体ない事であります、某が兄として示しを付けまする、名を山県と変えても裏切者は裏切り者である、兄の情けで成敗致す!!」



「良くぞ言った、飯富よ、儂が見届ける、高坂よ、四天王としてこの勝負見届けよ、誰も手出し無用ぞ!」



「判り申した、この高坂昌信の名に懸けて、飯富殿、山県殿の勝負見届け致します、皆の者さがれ!!」



ここに山県騎馬隊1500対飯富騎馬隊(槍)500騎+弓100騎、計600騎による兄弟激突が行われる事に。



双方が時計とは逆回りに1500騎の太く大きい蛇と小振りだが毒を持った蛇が隙を狙い回り始める。



「お主も蛇行が出来るようになったか、冥途の土産に本家の蛇行を見るが良い、ちと痛いが毒もあるゆえ怪我をした者は隊列から離れるが良い、では参る!!」



1500と600身軽な飯富の騎馬隊が後ろから矢が放たれ簡単に隙間を作られ山形の騎馬隊を蛇行しながら蹂躙を始める、あっという間に3体に分断され頭を失った隊は追いかけるもそこへまた飯富が襲い掛かる、3体から4体、4体から更に細かく分断され山形の騎馬隊は蛇行の動きだけをしており、その動きは毒にもがき苦しんでいる動きとなった。


飯富の攻撃力を見ていた武田騎馬隊は恰も《ルビを入力…》本当に大蛇が騎馬隊に乗り移ったかのうような見事な攻撃に感嘆としていた。

騎馬隊での戦いに勝てぬと悟った山県は兄の飯富に一対一の勝負を申し込んだ。



「さすが兄上であるな蛇行を生み出しただけある、ではこれより兄弟での決着を付けようでは無いか、どうであるか、受けるか?」



「当然である、儂の槍を受けるが良い!!」



山県は騎馬隊では勝負にならぬと踏み兄弟による対決を叩きつけた、左足を痛めていた兄に勝てると踏んでの勝負を仕掛けたのである。

騎馬から下馬し下がる配下、数千もの騎馬隊が見る中で槍での勝負が始まった。


連続の三段突きを繰り出す山県、左右に交わす飯富、かわされた鉾を頭目掛け横に振る山県、それを受け止める飯富。



「そのような遅い三段など眠たくなる、もっと腰を入れ回数に頼らず突けぬのか?」



「何を! 手加減しておるのが判らぬか、温情で手加減しておったのだ、もう容赦はせぬ!!」



次々と連続で突きと薙ぎ払いを繰り出す山県、右への攻撃を繰り返し、痛めていた左足に負担をかけ動きを封じようと攻撃を繰り返していた、一方攻撃を受ける飯富は最初に那須に来てより板室温泉で長逗留をしており痛めていた足はとっくの昔に治っており若返っていた、今では三条のお方様とも再婚している力漲る壮年であった。



「そろそろ息が上がって来ておるぞ、冥途への準備は出来ておるか、儂の事はともかく家を乗っ取る為に若様まで罠に嵌めるとは、お主の命で償ってもらうしか無い、参るぞ!!」



防御から攻撃へ! 飯富は真っ直ぐ山形の胸目掛け突いた、払いのける為に槍を振るも突く勢いが勝り一瞬で冥途に送り勝負が決まった!。



「ようやった、見事である、高坂よ、見届けたであろうな?」



「はっ、確かに見届け致しました!」 



山県と飯富の勝負が着いた頃。



「拙い、あれは・・父上がいる本陣の後ろからも、横からも多数の騎馬が・・多数の那須の幟旗が来ておる・・・間に合え・・・間に合え・・・皆の者急げ、父上が危ない、急ぎ陣に向かい固めよ、いや駄目だ、間に合わぬ、これよりあの横から来る軍勢を迎え撃つ、ついて来い!」



信玄がいる本陣に明智十兵衛の騎馬隊1500騎と5000騎もの当主資胤が率いている騎馬隊が迫っていた、既に間に合わないと判断し、急ぎ戻る勝頼であったが後ろから迫る十兵衛の騎馬隊は本陣に任せ、横から来る資胤の騎馬隊に方向を変え、突撃した勝頼。



「御屋形様、敵の騎馬隊が進路をこちらに向け突っ込んで来ます!!」



「良し、半数は向かって来る騎馬隊に矢を討ち殲滅せよ、遠射直射にて足を止め殲滅せよ!!」



「半数はこのまま鋒矢の陣を三隊作りそのまま突撃し陣を崩し突き抜けよ、その後に矢を降らせよ!! 行くぞ! 信玄の首はそこぞ、突撃せよ!!」



「あれは・・あれは御屋形様だ、御屋形様が騎馬隊を率いている、援軍を率いて来たのだ、であれば、皆の者!! 御屋形様が来られている、先に我らが突撃する良いな、飛ばせ、このまま突撃せよ、御屋形様が来る前に梅雨払いを致す、信玄に一泡吹かす!!」



信玄の陣に矢を放ちそのまま突撃する明智十兵衛、足軽に守られている武田の陣を薙ぎ倒し分断した所に資胤の騎馬隊が雪崩を打って突撃して来た。



「え~い、盾で圧し返せ、騎馬に屈するな、槍衾を崩すな、鉄砲隊は何をしておる!!!」



4900の兵で信玄を守り、そこへ十兵衛の1500騎、資胤5000騎が突撃した、一瞬で瓦解する本陣、那須の騎馬隊は突撃し通り抜け今度は矢の雨を降らし、兵を削る、武田の鉄砲隊600は味方の足軽が邪魔となり狙うも動き回る騎馬隊に中々当たらず混乱を極めていた。



「鉄砲を所持している者を狙え、先に始末するのだ、鉄砲隊に矢を射かけろ!!」



「蛇行で食い止めろ、蛇行で行くのだ、これ以上父上の陣に行かせてはならぬ!!」



「大きい軍勢がここに来るぞ、どこの者だアウン判るか?」



「若様、那須の幟旗です、大勢来ます!!」



「那須の幟旗、誰だ? 遠眼鏡を貸せ!・・・えっ、なんか大田原殿・・・見たいな? 大田原殿のようじゃが・・・なんでじゃ?」



「間もなく敵の騎馬隊が来ます、その話は後で、八卦の本領を見せてご覧致します!」



武田の馬場騎馬隊は誘い込まれるように八本の路に次々と入るも、時計回りに動く七つの槍衾の塊の中に入り、方向を見失い何処に進んで良いのか判らず混乱する中次々と槍の餌食となる馬場騎馬隊、やっとの事で本陣の資晴の処に辿り着く者も忠義の馬廻役騎馬隊に止めを刺されてしまう。



「え~い、バラバラに入るな、狙いを定めて足軽を倒し崩すのだ、騎馬の大きさを利用し力で崩すのだ!!」



時計回りに動く槍衾、時々目に入る路に吸い込まれて行く騎馬隊、勝手に馬が目の前に道が現れる事で馬も逃げようとし進んでしまう、入れば両脇から槍の餌食となる、混乱する中、そこへ大田原の騎馬隊5000騎が怒涛の波となり呑み込まれてしまった。



「三河殿如何やら粗方終わりましたな、これにて先の大敗での鬱憤は晴れましたかな?」



「北条様と小田様のお陰にて晴れまして御座る、後は信玄だけであります、兵を纏めこれより向こうに行きとう御座います」



「我らも兵を纏めます、しかしまだ暴れたりぬ御仁があそこで暴れております、逃げ回っている敵兵も降参しておるのにあれでは災難でありますな、あっはははは!!」



僧徒3000と門徒15000の死兵は指揮官の僧徒を資晴の騎馬隊500騎の弓にて倒した事で烏合の衆となり、後は北条家、小田家鬼の真壁、徳川4000にて粗方仕留め後は蜘蛛の子を散らすように戦場から退散してしまった。




「大田原殿ではありませぬか? どうされたのですか? 何故ここへ?」



「あっははははは、何が大田原殿ですか若様、若様の悪巧みは父上の資胤様に露見しておりますぞ、あっははははは、向こうにおりますのが父上の軍勢でありますぞ、私は庇い立て致しませぬぞ、あっははははは!!」



「えっ・・・拙いぞ・・・拙いかも・・・忠義如何する?」



「さあー我らは若様の命で動いておりますので・・・若様と御屋形様の間にて始末をつけるしかありませぬな!!」



「梅・・・逃げた方が良いか? その方が安全かのう?」



「逃げれば殺されましょう、ここは御屋形様の胸に飛び込み助かりましたと演技をするしかありませぬ、泣き顔で演技を行うのです」



「お~その手があったか、それで行く、お主達も儂の演技に合わせるのじゃ!!」




「高坂、山県を葬ってやるが良い、死んだ事すら判らずに逝ったようだ、ではこれより皆の者、新しい武田を作る儂に付いて来る者は騎乗し父上の本陣に向かう、ついて参れ!」






太郎が無双してますね、資晴はちゃんとお芝居で逃げ切れるのか?

次章「悲喜と驚喜」になります。

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