第34話  正太郎の秘密基地(村)


戦国時代の関東、最北の地が那須家の領国です、京からも遠く、貨幣経済が未発達の遅れた地域。

那須家の領地は、現代の栃木県の面積30%以上あり、思ったより広く、若狭、但馬、因幡、安房、讃岐、などの一国より広いか同等と思われます、中には那須より小さい国もあります。ご参考に。




鞍馬100貫が堺より連れて来た職人をどう扱うのか、正太郎は忠義と頭を痛めていたのである、勢いで職人を探して来いと言っていた正太郎。




「どうすればよいかのう、なにか良い案はないか忠義、そちが頼りじゃ・・・」



「そう言われましても、そもそも、なにゆえ職人を呼ばれたのですか」



「それがのう、洋一からの思念でいろいろな技を持っている職人を那須家に連れて来いという、そんな感じだったのじゃ」



「その探して連れて来た職人達に何をなさる様に洋一殿は伝えられたのですか?」




「それが、その最近は何もないのじゃ、洋一殿も何かと忙しいみたいないのじゃ・・・」



「無責任な話ですな~、ではどうするのですか、連れて来て、仕事はありませんでしたなど、と言ったら、若様は大変な事になりますぞ、それこそ切腹ものですぞ」




「ちっょちょっ、何を言うか、その方とわしは一つじゃ、一蓮托生じゃ、わしが切腹する時は忠義も切腹なのじゃー」




「えっ、そんな横暴な、私は逃げますぞ、若様を恨みます」



「若様よろしいでしょうか?」 



「うっ、うん、梅、何かあれば遠慮せずに話せ」



「はい、ありがとうございます、鞍馬の里では、物を作る者達はお互いが近くの場所におります、薬師も、鍛冶師も、弓師も、それぞれが技を使い、作る者達は1つの物を作るにもそれぞれに繋がりがあり、そうしております連れて来られました職人達は若様を支える者達なれば、若様の近くに置き、一つ一つゆっくりと指示を出せば互いに動き出すのではないでしょうか」



「お~おおー、そうかいっぺんに、何かを作らせなくても、一つやり始めれば、職人達が動き出すという事だな」



「はい、その通りになります」



「でかした、梅、わしに切腹とか言う忠義より、よっぽど、良い意見じゃ、という事であれば、儂が持っている村が5つある、近くに職人達が集まっている村を作れば・・・おおーそうじゃな、そこに儂が寝泊まり出来る館もあれば・・・この城は山城なので、城から出ると、戻る時にいつも大変だ、面倒くさいのじゃ、職人達と談合するのもここでは不便じゃ・・・梅、梅・・・見えて来たぞ、うんうん、わしが行う政の基地を作るのじゃ、それじゃ、そうすれば豊かになる道筋が見えて来る・・うんうん、それだ!」



「よし平蔵の村の近くに新しい我が正太郎の村を作るのじゃ、そこを中心に強き、那須家を作るじゃ、忠義、そちの意見は、わしを見捨てた様であるが、それがきっかけでどうすれば良いか考える事が出来た、梅の話により、展望が見えた感じがする」



「わしの砦である基地を作ろう、まず手始めに各職人達が必要とする大きさの作業場を作らねば、忠義、済まぬが職人達に必要な大きさの建屋を手配してくれ、船大工たちは家も作れると言っておったから、必要な大工も集め、作らせるのだ、集めた職人達にも手伝わさせるだ、差配を頼む、必要な金は出すので頼む、それから料理人を呼んで欲しい、頼みたい事があるのじゃ」



「はっ、忠義も心を鬼にして、若様に切腹という話をしたまでです、若様に腹を切らせる事は、この忠義この身に代えて絶対にありえませぬ」



「ではそれがし、差配致します」



「料理人が来たら、百合と梅も参加してくれ、ちと相談がしたい」



「料理人の飯之助であったな、そちは駿河で料理人をしておったと申すが、子どもや女子などが好む食べ物はどんな物を食べておったかな?」



「はっ、そうですね、女子供であれば料理というわけではありませぬが、小腹が空いた時に簡単に食せる物が多かったかと」



「例えばどの様な物であるか?」



「はい、麦を臼で挽き、その粉を練り、団子にし焼き味噌を付けて食べるは子供も女子も喜んで食べておりました、裕福な家庭では砂糖などあれば、それに付けて食べれば最高に皆喜びます、干し柿などは、農家でも自前で作っておられますな。入り豆なども塩で味付けすれば簡単かと、後は季節により、栗、瓜、びわもあります」



「うんうん、実はのう砂糖を沢山買い込んだので、百合や梅なども手軽に食べれる菓子など作れないかとの相談なのじゃ、なるべく保存が効く物が良いのじゃ」



「堺で買い付けた品を一通り見てもらいたい、油屋がいろいろと品を揃えてくれた様なのじゃ、試食はこの百合と梅に頼むので、意見を聞き、良い物を作るのじゃ、例えばのう、頑張った者に、偉いぞ、褒美じゃと言って、菓子を渡せば喜ぶであろうし、さらに励みにもなる、儂が食べたいから頼むのではない、上に立つ者として相談しているじゃ」



「はっ、若様のご期待に添えます様努力致します」

 (料理人なので菓子作りは・・・不安な飯之介)



「百合蔵の倉庫に案内してくれ、では頼んだぞ」




一方の洋一の家では、何やら、ちょっとした騒ぎが、洋一の両親が玲子の家に挨拶に伺うと言い出していた。


これは家と家の事なので早めに挨拶が必要だと言い出し、5月下旬に玲子の両親に挨拶をするからと言われ、親からの話を、どう玲子に話せば良いかわからず、えっ、どうして、どうすればと、焦る洋一に痺れを切らした、母が玲子の母へ電話をした。



「もしもし、今成玲子さんのお宅で御座いましょうか」



「はい、今成です」



「今成玲子さんのお母様でしょうか」



「はい、私は川越の今成洋一の母でございます、お嬢様の玲子さんに息子がなにかとお世話となっております、昨年暮れには今成様のお宅にお泊りさせて頂き、ありがとうございました、少し、お話よろしいでしょうか」



「いえいえこちらこそ、娘が大変にお世話になっており、ありがとうございます、暮れには沢山のお野菜を頂き、大変恐縮で御座います、お礼も言えず申し訳ありませんでした」



「お電話しましたのは、昨年暮れに玲子さんより、来年の5月が二人に取って大切な時期だとお聞きし、あと1年程の期間となりますので、これからは家と家のお付き合いも大切になるかと思いまして、私どもにて、玲子様のご両親様へご挨拶にお伺いしたく息子洋一に伝えたのですが、男の子というのは、中々一歩踏み出せず、もじもじしているので、玲子さんのご家族にご迷惑をお掛けするわけにもならないので、ご挨拶のお伺いするのに、ご迷惑にならない、ご都合の良い日程をお聞きしたくお電話を致しました」



「それはそれは、ありがとうございます、本当に息子さんは素晴らしいご子息様で、きっとご両親様も立派な方なのであろうと主人とも話しておりました、本当に玲子でよろしいのかと、洋一さんにご迷惑にならないかと話していたのです」



「こちらこそ、玲子さんは大変に素晴らしい方であると、礼儀正しく、うちの主人は、洋一では釣り合わないのでないかと、申し訳ないと申しておりました」



うふふふふ・と電話越しに笑う母親達。



「では主人に都合をお聞きして、ご連絡を致しますので、どうぞよろしくお願いいたします」



という流れとなり6月初めに、両家の家族にて会う事になった、翌日、玲子より洋に・・・えーと何が、どうなっているのか、両家で食事会を行うと聞いたけど、洋一さん、説明して・・・と、電話が入る。



「それが来年の5月に向けてそろそろ両家で食事しましょうという、話しみたいで、玲子さんが年が明けて来年の5月だと、うちの両親に昨年来た時に何かの調子で話したみたいで、年が明けたから、その来年の5月なら今の内に食事をしておこうってなったと説明されたけど、俺、おぼえてなくて、玲子さん覚えている?」



「えっ、クリスマスの時に、洋一さんの両親と、どんな話をしたか、さっぱりなんだけど・・・煮物を食べていたら、お父さんから、そういえば、時期はどうなったとか聞かれたかも、私は佐竹が攻めて来る時期が5月だから・・・その事を話したのかな? 洋一さんは覚えてないの?」  



「じゃーあれかな、最初に玲子さんの家に行った時に泊まる事になって、お世話になったという話をしたから、うちの両親がお礼に行く時期を玲子さんに聞いていたのかな?」



「あ~きっとそれよ、同じ今成だから、親しみを感じて、親同士で仲良くなりましょう的な事でお互いの親が会ってみたいのよ」



「そうかも、川越に同じ今成って本当にいないから、それだね、じゃーうちの両親がちょっとお世話になるけどよろしくお願いします、もちろん俺も行くけど(笑)」



「いやいや、こちらこそ、明和まで来てくれるなんて申し訳ない限りだよ、うちの父もあんな感じだから、迷惑かけるかも知れないけどよろしくね(笑)」



「あははは、よかった、理由がわかって、ところで正太郎君はどうなっているの?」



「堺から職人が来たようだよ」



「その後はどうなっている?」



「自分が仕事柄、春から今は忙しくて、那須の事はちょっと置き去りになっていて、両親が玲子さんの家に挨拶するからと、なんでお前からいろいろ進めないのかと連日怒られていたりで、きっと精神的に疲れていたので、連絡は取れていないんだ」



「そうなんだ、洋一さんのお母さんは、農作業の関係で日程だけは早めに決めておきたかったのね、日程も決まったし、じゃー今度、明和に来た時に考えた軍略を説明するから、その時にいろいろ確認しましょう」



「わかった、じゃーおやすみなさい」



親と親、洋一と玲子、2つの違う流れは、交じり合うのか、これはこれで楽しみな展開です。

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