第35話 両家ご対面


6月初め、洋一家が玲子の家に来るという事で、玲子の家では、父親が自分のお店で、洋食屋のキッチンで自慢のビーフシチュウを肉がトロトロになるまで作り上げ準備しており、母親はお祝いだと言って赤飯を用意していた。



洋一の家でも父親が自慢の野菜を車に満載、さらに川越名物、いも菓子を箱で用意した、車中、洋一が、ちょっとこれは、やりすぎだと、玲子さんの家の人も迷惑だと思うと言うと。



「あんたは黙っていなさい、これは家と家の大切な繋がりの日なの、玲子さんと二人だけで済む話ではないの」



「そうだぞ、お父さんも結婚前に母さんの家に行った時は、これでもかって位、米と野菜を荷車に積んで挨拶に行ったもんだぞ、それが相手にとって、この家とこれからお付き合いしても大丈夫という信用に繋がるんだから、まあーお母さんの家では、鍋が1か月も続いたという伝説を作ったと言っていたけど(笑)」



「思い出すわねぇー、あっはははは、うわっはははー」



洋一はテンションの高い両親を見て、関わらない方がよいと判断したのだ、関わると自分までやっかいな事になりそうだと思い、ほっておく事にした、11時頃に玲子の家に到着した洋一家族、車を止めると玲子が駆け寄り、洋一と目線を合わせるも、洋一の父と母に。



「すいません、わざわざお越し頂いて」



深々とお辞儀をし出迎えた玲子、いや、玲子さん、こちらの我儘で押しかけてしまって、と、そこへ玲子の両親が、洋一さんのお父さんとお母さんですな、玲子の父です、と声をかけ、ようこそお越しくださいました、さあさあ、おあがり下さいと言って、案内された。



洋一から玲子に、両親からこれをと言って、野菜をどこに運べば良いかと尋ねた、空いた口が塞がらないという、膨大な野菜・・・ワゴン車の中は、市場で八百屋さんが仕入れた状態の車。



「ちょ、ちょ、洋一さんのお父さんって、限度をしらない? どうするのこれ!」



「そうなんだよな~、俺もこんなに大量にどうするのか聞いたんだけど、うちの両親が言う事聞かなくて、お父さんのお店でも使ってくれって言ってたよ」



結局家の中に入りきらなさそうなので、玄関横に満載の野菜を置いた、家の中では、既に両家の両親が、楽しそうに笑いながら話しており、玲子が、洋一の両親に改めて、挨拶し、お茶を飲みながら、お互いの親が洋一と玲子を褒め、再び談笑に花を咲かせ始めていた。



暫く、両親達は放置でいいかと思い、洋一は玲子に連れられて部屋に、扉を開けて立ち止まる洋一、洋一は暫くぶりに玲子の部屋に来たのである・・・ドアの正面窓の上に『関八州補完計画』と書かれた横断幕・・・・右側ベットの天井には、大きな家紋が、大きい〇に横に一が書かれた、那須家の家紋・・・!?



机の前の壁には、何やらいろいろと書かれている付箋が一面に、さらに室内を見ると、ベットの足元には、約1畳のボードに、地図が書かれており、山も立体的にセットされている、よく見るとミニチュアの兵士たちの人形が数十体はある・・・・ジオラマであった。



机横の箪笥の上には、大小の太刀と黒色の鳥の羽で作られている団扇、それも大きい団扇が、飾られており、その横には陣羽織・・・・玲子は洋一が驚いている姿を見て、勝ち誇った笑みを浮かべ室内に通した。



「ほら、これいいでしょう、特別に注文したの、この刀は5万円もしたのよ、この団扇見て、これ鳥の羽よ、諸葛孔明を真似て鳥の羽で作ってもらったの、天狗が関係しているから烏の羽で特注で作ってもらったのよ、いいでしょう」



笑顔で説明する玲子であった。

(言葉が出ない洋一・・・なんだこの部屋は、戦国時代を・・ここで再現しているのか、刀と陣羽織って、玲子さんって、24才の女子・・だよな、俳優とかのポスターは何もない、本棚には歴史本が・・・それも山盛り)



部屋の中の戦国グッズを洋一に説明する玲子、うんうんと、だけ返事する洋一、これが作成中なのと、ジオラマの前に、ほぼ完成に近いから、お昼ごはん食べた後で、戦略を伝えるから、それを正太郎に伝えてくれと説明を聞く洋一。



そこへ玲子の母が、食事だから降りて来てと、は~い、今行くね・・・盛り上がっているリビングの席に着く二人であった。



ほうこれは見事な料理ですな~、いや~、お恥ずかしい限りです、ささ、冷めない内にと言って食事会がスタートした、洋一の母、うわ~これは本当に美味しいシチュウですね、家庭でこれ程美味しいお料理が食べれるなんて、本当に素晴らしいですね、いやいや仕事柄手を抜けないだけですよ、盛り上がる両家の食事会。



「洋一さんのお父さんはお酒の方は行けるのですか」



「毎晩、婆さんが漬け込んだ漬物で一杯やっております」



「お~お、それはそれは、今日は洋一さんが運転してお帰りでしょうか?」



「はい、そうです」



「では、ちょっと時間が早いですが、一杯やりましょう」



飲み始める両家の父達、気分を良くした玲子の父が。



「それにしても両家が今成とは驚きですな~」



「いや~本当ですな、うちの洋一が美しいお嬢さんを連れて来たと思ったら今成というからびっくりです」



「そうなんです、今成と聞いた時は、どこかの親類のお嬢さんかと思って、どこの親類か考えてしまいました」



「私も同じです、洋一さんが川越の今成というから、川越に親戚がいたのかと思って、あまり不思議になりませんでした」



あっははは、わっはははと、笑い出す親達、勝手に盛り上がる食卓をしり目に、さっさと食事を済ませ、玲子の部屋に移動する洋一、もうしょうがないね、意気投合しているから手が付けられないねと笑う玲子、うちの親父も調子いいから、お酒まで入ったから止めようがないよ、このまま放置しかないねと言って玲子の部屋に戻る。



「じゃー洋一さん、私が那須家が戦国を勝ち抜く戦略を伝えるから、正太郎君に伝えてね」



「うん、解っている、解りやすく僕にも教えて欲しい」



いい、このジオラマを見てと言い、レーザーポンタ―で照らし説明する玲子。



「①最初はこの攻撃ね」


「ここが那須烏山城、ここが佐竹の太田城、ここが小田城ね、五月の侵攻ではこの道を通って攻めて来るの、この道よ、佐竹は3000強だから、二日目夕方には烏山城近くまで来るよ、途中で小規模の騎馬隊を何度も繰り出して、弓で攻撃を仕掛ける事、烏山に来るまでに10回は、攻撃したいね、前に伝えた戦法、ヒットアンドウェイね、接近戦は必要ないから、なにしろ相手の戦力を削る事、夜間も夜襲を何度も行う事」



「これだけでも相当佐竹は被害を受けるから」



「②次はこれよ」


「次は佐竹が烏山に、目前に来たら、野戦で待ち構える事、広い所に誘い込む、誘い込んでから、前、後、左右と、全ての方向から、一斉に四方八方から騎馬隊が佐竹に対して、弓攻撃で叩く、那須家の足軽歩兵も数組に分かれて、那須家の騎馬隊がいる方向に敵を誘い込む事を徹底する事、那須家の足軽は戦うのでなく、相手の兵を味方の騎馬隊に誘導する事」



「そもそも那須家は陣幕を張って本陣など不要、必要ないから、那須七騎がそれぞれヒットアンドウェイを出来る騎馬隊を持っているので、佐竹の兵が集まっている所へ、ヒットアンドウェイを徹底的に行う」




「③三つ目の攻撃指示は」


「那須家と佐竹の正面対決が始まった頃に、小田家が佐竹の太田城に進軍、その日の内に城を囲む、城への攻撃は力を入れないで、小田家が太田城を攻撃しているという事を、城が小田家に攻撃を受けていると佐竹本軍に伝わる様に仕向ける」




「さあ、ここからが本番よ、ここまでは前哨戦だよ、ここから一気に那須家が戦国に躍り出る戦いが始まるからね、いいね。」



「そしてこれが④」



「ここが大切な⑤」



「これが決め手の⑥」



「最後にこれよ、いいね、これで詰み⑦」



という次から次と変幻自在に繰り成す玲子の軍略、聞いていて佐竹が哀れに、ごくりと唾をのむ洋一、その頃1Fリビングでは、両家の父と母が、こちらでも既に詰めの話し合いが、いよいよ本番の話し合いが持たれていた。



「そうすると洋一さんのお父さんも来年五月が時期的に問題ないのですな?」



「調度田植えも終わり、式をあげるにはベストです、きっとそのあたりも二人で考えたのでしょう、だから五月だとお嬢さんが言っていたのだと」



「そうでしたか、そういう事でしたか、娘も恥ずかしがって時期はまだ言わないものだから、どうなっているのか、冷や冷やしておりました、あっははははー、式を挙げる場所は川越と明和だと、どちらがよろしいでしょうか?」




「車で一時間少しなので、式場でバス手配してもらえば、どちらでも大丈夫です」



「明和じゃ田舎だし農協の会館しかないから、どうしても隣の館林市になるなら、折角ですので川越の方が楽しいそうよ、式の日は川越に泊まって、翌日は小江戸の町で有名な川越で観光でもして帰りましょうよ、どうせ結婚する二人は、旅行とか行くだろうし、私達の親戚もきっとその方が喜びますよ」



「では場所は川越でと言う事で二人には決まったと伝えましょう」



「式場選びは二人に任せて、どうでしょうか、玲子さんのご家族がそれで良いのなら、では式場選びを二人に任せ、決定としましょう」



「いや~きっと親戚中も大喜びでお祝いして頂けると思います、なにしろ、今成と今成の結婚なので、今成の家ばかりが集まる、これは今成サミットですな!!」



「今成が沢山集まって今成洋一さんと、うちの玲子の結婚となれば、大盛り上がりですな、あっははは、こりゃー愉快です、楽しみですな~」



あっはははーと大笑いする両家、洋一と玲子の二人も決戦が五月となった。



夕方となり洋一の家族が玲子の家を後にする時、帰り際、洋一の父が玲子に、じゃー来年の五月に、新出発となるので、これからも洋一の事よろしくお願いしますと、両親が頭を下げ車中の人となったのである、二人を見送り、居間に戻り、父に聞く玲子。



「なにが五月に決まったの?」



「あ~何言ってんだ、洋一さんとお前、玲子の結婚が来年の五月に正式に決まった」



と、一言、酔っぱらった父が言ったのであった、その横で母が嬉しいそうに、良かったわね玲子と声を掛けたのである。

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